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2月の兼題
「半端」

  • にち 仕事しごちゃ半端で くどえっ

    鹿児島市 / 有馬 靖雄 さん

    ,日|にち,,曜|よ,,大|で,,工|っ, ,仕事|しご,ちゃ半端で ,休|よ,くどえっ 鹿児島市 有馬 靖雄

    (日曜大工は仕事は半端なのに休憩しっぱなしだ という意味)

    寿星 :よく使われる「日曜大工」としておりますが、毎日が日曜の定年退職者の素人大工と解釈もできます。楽しんで取り組んでいる様子が伝わってきます。

    キャスター:一日では作業が済まないという感じですね。

    寿星 :これがスムーズにいったのでは訴えるものはありません。こんなはかどらない状況だからこそ狂句になります。度々休憩しながら、自分のペースで作業されているのではないでしょうか。


    にち 仕事しごちゃ半端で くどえっ


    <唱> 十時ん茶じゃち っ缶ビール

    (10時のお茶と言って缶ビールを飲んでいる という意味)


    ゆったりの感じで健康寿命が延びるでしょう。

  • 高齢としん 半端な作業さぎょも うれし過疎

    日置市 / 池上 日新 さん

    ,高齢|とし,な,衆|し,ん 半端な,作業|さぎょ,も ,嬉|うれ,し過疎 日置市 池上 日新

    (高齢の人達の半端な作業でも、過疎集落の共同作業に出て来てもらうのは嬉しいことだ という意味)

    キャスター:「半端な作業」というのは、「十分ではないけれども」というニュアンスですかね?

    寿星 :そうだろうと思います。集落の共同作業と言いますと、私の地元の南さつまでは昔は「テンニャク」という道路の補修作業がありましたが、今は道路の草刈りなどでしょうか。温かみがただよってほんわかとさせてくれる句です。

    キャスター:そして意味も分かりやすいですね。

    寿星 :「半端な作業でも嬉しい」という表現に優しさがあふれております。何時も声を掛け合っていることまで想像されます。過疎地域なればこその嬉しい状況でしょう。


    高齢としん 半端な作業さぎょも うれし過疎


    <唱> そげんしっせえ 引張そびさんな

    (そのようにして引っ込みがちなお年寄りを外に引っ張り出してください という意味)


  • 半端本気まじ じゃろがち豆を えっ

    鹿児島市 / 南谷 久瓜 さん

    半端,本気|まじ, じゃろがち豆を ,投|な,げ,返|か,えっ 鹿児島市 南谷 久瓜

    (節分の豆まきで思いっきり投げつけられたので、投げ返した という意味)

    キャスター:この句を天に選んだのはどこが良かったのですか?

    寿星 :鹿児島では節分を「せっわい(節変わり)」と言います。分かりやすくていい言葉です。それを言わずに課題の言葉とうまくマッチさせておもしろく表現されたところです。時期的にも詠むのは今しかありません。

    キャスター:「半端本気まじ」が面白いですね。なかば本気になって投げた、ということですよね?

    寿星 :そうです。「本気まじ」という若者言葉がぴったり決まりました。実際はそうではないのに大げさにするのも狂句を面白くするために効果的に使われます。そして半端の程度は読み手それぞれの想像に任されております。


    半端本気まじ じゃろがち豆を えっ


    <唱> まれけんなか レクリエーション

    (時にはよいレクリエーションでしょう という意味)


今月のポイント「課題に忠実に」

今回は、サッカーの大迫勇也選手についての「半端ない」「半端ねえ」という句が多く寄せられました。しかしこの「半端ない」は「素晴らしい、完璧だ」といった良い意味で使われています。しかし、今月の兼題の「半端」は、「中途半端だ」というような完璧ではないことを指していますよね。「半端」だからこそ狂句であり、おもしろいのです。