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1月の兼題
「うったっ」

  • 塩・米で るっうったっ 二日山ふっかやま

    鹿児島市 / 中野 大八 さん

    塩・米で ,祓|は,るっうったっ ,二日山|ふっかやま,鹿児島市 / 中野 大八 さん

    (正月二日に山に入り、塩と米でおはらいをしてから、木の切り始め、なたの使い始めをする という意味)

    寿星 :鹿児島の正月の伝統行事を詠んでおります。

    キャスター:伝統行事というのは?

    寿星 :鹿児島では、「おねっこ」という「鬼火焚き」、「ななとこずし」という「七草祝い」などが有名ですが、仕事始めではこの「二日山(ふっかやま)」、鍬の使い始めの「鍬入れ」、船の乗り始めの「船祝い」などがあるようです。薩摩の狂句ですからこのような故郷に関する句は嬉しいですね。残してゆきたい鹿児島の歳時記です。そして山の神様への信仰そのものでもあります。

    キャスター:今しかないこの時期にぴったりのことばということですね。

    寿星 : 受け継がれてきた行事、風習を調べていることがよく分かります。鹿児島は小正月の行事が多く残っておりまして、これも狂句に取り上げられる材料です。


    塩・米で るっうったっ 二日山ふっかやま


    <唱> やまかんあ しっかいちょろ

    (きちんとやっているなと、山の神様はしっかり見ているでしょう という意味)


    そしてやまかんまつりがもうすぐですね。

  • 霜ん朝 どりうったち 母親ママ下知げっ

    鹿児島市 / 福迫 もみじ さん

    霜ん朝 ど,鈍|ぬ,りうったち ,母親|ママ,ん,下知|げっ, 鹿児島市 福迫 もみじ

    (ぐずぐずして準備がはかどらない霜のおりた朝に、母親の指図が飛んでいる という意味)

    寿星 :霜の朝という季節にマッチした場面設定が良かったですね。これが単なる「冬の朝」ではそれだけのことですが、「霜の朝」と突っ込んだところで、動きが一段と鈍くなっている様子が思い浮かびます。以前発表された句に「あと5分 寝床が引張そびっ 霜ん朝(霜の朝はあと5分だけと寝床が引っ張っている)」というのがありましたが、そのような状況が目に見えるようです。うったっどころか寝床の中の感じです。

    キャスター:細かい描写が大事ということですね。

    寿星 :この「どり(超のろい)」の「ど」は意味を強めるための接頭語ですが、たった1字が「霜の朝」の動きを効果的に表現しております。


    霜ん朝 どりうったち 母親ママ下知げっ


    <唱> キンキン声が とないもひび

    (母親のキンキン声が隣の家まで響いている  という意味)


    近所にしたら面白い冬の風物詩でしょう。

  • うったっの いおは ねっ

    鹿児島市 / 松下 ジャンボ さん

    うったっの ,振|ふ,い,鐘|が,ね,魚|いお,は ,飛|つ,っ,跳|は,ねっ 鹿児島市 松下 ジャンボ

    (競りの開始のがね(手に持って鳴らす鐘)の音に、魚が飛び跳ねている という意味)

    キャスター:この句を天に選んだのはどこが良かったのですか?

    寿星 :着想の良さに加えて、音と動きの両方が楽しめる、ということです。競りは毎日あるわけですが、この句の「うったっ」は初競りを詠んだと解釈しました。新年最初の魚市場に響く威勢のいい振り鐘の音、そして元気な競りの声が聞こえてくるようです。寒い時だからこそ音の響きもいいでしょう。そして、そこに飛び跳ねる魚を持ってきたところなど、音と動きがいきいきと描かれました。


    うったっの いおは ねっ


    <唱> 買えち アピールじゃろで

    (高い値で買ってくださいよ、とのアピールでしょう  という意味)


    鹿児島の魚はどれもほんとに美味しいですが。

今月のポイント「より鹿児島弁らしく(その2)」

今月は、「うったっは」「うったっに」「もっつっを」などの中途半端な表現がありました。 鹿児島弁にこだわってそれぞれ「うったちゃ」「うったち」「もっつく」として、言葉の位置を変えれば収まります。