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9月の兼題
「余計(じんじ)」

  • 赤飯まめんめす 余計じんじ作って 誕生たんじょゆえ

    鹿児島市 / 中村 澄子 さん

    ,赤飯|まめんめ,す ,余計|じんじ,作って ,誕生|たんじょ,,祝|ゆえ 鹿児島市 中村 澄子

    (誕生祝にかねてより余計に赤飯を作った という意味)

    寿星 :何の飾りもなく淡々と述べておりますが、93歳の作者の元気な様子が浮かんで来るようです。自分の誕生祝に大勢来てくれるので、張り切って赤飯を作ったと解釈しました。長生きのおすそ分けとでもいえるのではないでしょうか。

    キャスター:料理に狂句にとお元気ですね。

    寿星 :これは俳句の先生の話ですが、「毎月句づくりに取り組むことで自分の心が満たされる効果がある」と言っております。私達もそのお手伝いが少しでもできればと思います。


    赤飯まめんめす 余計じんじ作って 誕生たんじょゆえ


    <唱> 釜屋ん蒸籠せろが 大忙うぜしけしたろ

    (煮炊き小屋のせいが大忙しだったでしょう という意味)


    来年もたくさん作りましょう。

  • はかい 余計じんじ添えたち 念ぬ

    鹿児島市 / 永栄 寿桃 さん

    ,量|はか,い,売|う,い ,余計|じんじ,添えたち 念ぬ,押|え,っ 鹿児島市 永栄 寿桃

    (量り売りをしている人が、余計に添えたからねと念を押した という意味)

    キャスター:私は、量り売りと聞くと、精肉店やデパートのお菓子の量り売りをイメージしました。

    寿星 :今ではそれが一般的でしょうね。しかし私は「余計に添える」という表現から行商などの昔のサオバカリだろうと思いました。

    キャスター:昔はどんなものを売っていたのですか。

    寿星 :私が覚えているのは天秤棒をかついで売りに来る魚屋さんでした。「添える」ですから、きびなごのような小魚でしょうね。「もんめ」という使われなくなった言葉も思い出させてくれます。ところで「余計」も「添える」のも同じような意味なのですが、この句の場合は特に強調されるようです。「念を押す」でお得意さんとの親しい関係まで表現されました。


    はかい 余計じんじ添えたち 念ぬ


    <唱> ほらちおもゆば 跳ね上がらせっ

    (おもりを跳ね上がらせてみせた という意味)


    鮮魚ぶえんないいやはんどかい(鮮魚は要りませんか)」の声が聞こえてきます。

  • 孫んしゃき ごて美味うんめち 余計じんじ

    南さつま市 / 中釜 どんこ さん

    孫ん,酌|しゃ,き ,違|ち,ごて,美味|うん,めち ,余計|じんじ,,飲|ぬ,っ 南さつま市 中釜 どんこ

    (いつもと違って孫が酌をしてくれたから、一段と美味しくなって余計に飲んでしまった という意味)

    寿星 :今回は「余計じんじん」の句がたくさんありましたが、「ごて美味うんめ」の「ごて」が良かったですね。そうかと納得させてくれる言葉です。わずか3音字でも句全体を左右する言葉でした。お盆に久しぶりに帰省した孫ではなかろうか、そしてそれが大きくなった孫ではと次々想像させてくれるのです。玄関先まで、にぎやかな笑いが響いてきます。

    キャスター:全部を言っていないということがポイントなのですね。

    寿星 :省略そのものが奥深い句にさせてくれるということです。


    孫んしゃき ごて美味うんめち 余計じんじ


    <唱> 今夜こんにゃばっかや ちくろて

    (今夜ばかりは酔っぱらってもいいぞ という意味)


    孫が帰って夫婦二人だけに戻るお盆過ぎはまた寂しかったでしょう。

今月のポイント「直接的な言葉で表現しない」

上5、中7で具体的に説明しているにもかかわらず、下5で「利口じく女房かか」とか「いみ女房かか」と、だめ押しをしている句が見られます。そこは情景の描写だけにとどめましょう。