9月の兼題
「二人(ふたい)」
何処 け行 っも二人 じゃっがち戯言 じされっ 鹿児島市/井ノ上 清十四 さん四国 路 い同行 二人 の爺 の仕舞 え 出水市/井戸川 満 さん爺 は天 で婆 は縁台 で花火 びょ見 っ 鹿児島市/松下 ジャンボ さん
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何処 け行 っも二人 じゃっがち戯言 じされっ何処 け行 っも二人 じゃっがち戯言 じされっ鹿児島市/井ノ上 清十四 さん
(どこへ行くのにも夫婦二人だと冷やかされるいる という意味)
キャスター:難しい鹿児島弁が出て来ました。
寿星 :この「ひょじされっ」は死語に近い鹿児島弁になっておりました。私も久しぶりに出会いました。下5にこの言葉を使ったことでこれぞ薩摩狂句となりました。語源ははっきりしないのですが、「冷やかし、はやし立てる、ふざけて言う、冗談」という意味です。以前発表された句に「何(ない)相撲部屋(べや)な 湯治(とっ)で戯言(ひょじ)ない 二段腹(どこの相撲部屋ですかと湯治の場で二段腹が冷やかされた)」がありました。このような言葉も残してゆかなければという思いもさせてくれました。世界自然遺産は自然保護、薩摩狂句は鹿児島弁の保護、と大きく出てみました。何処 け行 っも二人 じゃっがち戯言 じされっ
<唱> うっ
放置 っきゃんせ そんたあ妬 ん
(それは妬(ねた)みだから構うな という意味)
今日もまたお二人お揃いでしょうか -
四国 路 い同行 二人 の爺 の仕舞 え出水市/井戸川 満 さん
(おじいさんはやるべきこととしてお遍路をやりぬいた という意味)
寿星 :夫婦二人の句が多かった中で、もう一人に弘法大師を持ってきた着想がざん新でした。同行(どうぎょう)二人(ににん)というのはお遍路さんの笠などに書きつける言葉で、弘法大師と常に一緒だと意味です。
キャスター:よく目にする映像ですね。
寿星 :あの映像の中から「二人(ににん)」に焦点をあてた眼力が素晴らしいです。バスを乗り継いでゆく方法もあるらしいですが、狂句としては徒歩でやり通したとしましょう。
四国 路 い同行 二人 の爺 の仕舞 え
<唱>
優 しゅなっせえ家族 も驚 っ
(優しくなって帰ってきて家族もびっくりした という意味)
自分を見つめるいいチャンスだったでしょう -
爺 は天 で婆 は縁台 で花火 びょ見 っ鹿児島市/松下 ジャンボ
(おじいさんは彼(あ)の世(よ)から、お婆さんは縁台(えんだい)で花火を見ている という意味)
寿星 :着想の意外性と花火との組み合わせの妙に引き込まれました。ほのぼのとした共感を持たせてくれます。そして「縁台」に座らせた表現も光ります。
キャスター:課題の言葉が入ってないですがよくわかりますね。
寿星 :この句は二人という言葉を使わなかったからこそ、いろいろな想像をさせてくれるのではないでしょうか。生前のお二人の寄り添った情景が目に浮かんでくるようです。おじいさんも見ているだろうなあという、語りかけているような胸の内まで分かるようです。
爺 は天 で婆 は縁台 で花火 びょ見 っ
<唱>
次 が十五夜ん月 でち約束
(次は十五夜の月でランデブーしましょうと約束した という意味)
まだそちらには行かないからねとつぶやいたかもしれません
今月のポイント「素材の幅を広げよう」
今回は夫婦二人の句が多いでしたが、例えば「相合傘」「フォークダンス・チークダンス」「デュエット」などなど、課題の言葉を入れずに面白い句が出来そうな素材がたくさんあります。 今後の句づくりに取り入れてみましょう。