11月の兼題
「赤(あ)け」
-
西空 ん赤 けお日 様 に御礼 をしっ日置市/馬場 充 さん
(沈む夕日に今日もありがとうとお礼を言った という意味)
寿星 :薩摩狂句は人を詠まなければなりません。似たような句が他にもありましたが、「夕日が沈む」だけでは狂句とはいえません。この句のように人を絡ませてこそ薩摩狂句として景色も生きてきます。
キャスター:情景も浮かんでくるようですね。
寿星 :まさに西海岸なればの景色でしょう。「串木野さのさ」の文句に「朝日をおがむ人あれど、夕日をおがむ人はない」がありますが、作者は朝も夕も拝んでいらっしゃるのでしょう。句は人柄を表すとも言いますが、それが伺えるようです。西空 ん赤 けお日 様 に御礼 をしっ
<唱>
今日 ん一日 をば無事 じ過ごせたち
(今日一日を無事に過ごせたことに感謝だ という意味)
間違いなくきっといい明日が訪れるでしょう -
神様 が山 め零 さった赤 け絵の具鹿児島市/仁禮 京子 さん
(神様が赤絵の具を零したような山々の紅葉だ という意味)
寿星 :「秋の夕日に照る山もみじ 濃いもうすいも・・」そのものです。この句は余計な説明をしないで、秋の景色を課題どおりに描いてくれました。これ以上ないように擬人法がしっかり決まっております。ぼそっとつぶやいているような表現がまた良いですね。
キャスター:丁度今の時期ですね。
寿星 :狂句をする人は短歌や俳句も勉強すべきだと、先達から言われたことがありましたが、いろいろされていらっしゃるのかもしれません。そこまで伺える句です。神様 が山 め零 さった赤 け絵の具
<唱>
霧島 辺 い沢山使 こっ
(霧島辺りに沢山零(こぼ)したのでしょう という意味)
旅心を誘います -
薄 化 粧 い 夕日が桜島 を赤 こ染 めっ鹿児島市/中野 大八 さん
(桜島が薄化粧をしているように夕日が赤く染めている という意味)
寿星 :この句から私は鹿児島出身の北村維章(きたむらこれあき)作曲のタンゴ「夕映え」を思うことでした。ここにうたわれている景色から名曲が生まれたのだそうです。ところで過去の名句に「拝(おが)まれっ 桜島(しま)も初日い 頬(ふ)を染(そ)めっ(拝まれた桜島が初日に頬を染めている)」というのがありました。朝日と夕日の違いはありますが共に桜島にしっかり色付けされた句です。夕焼けの桜島は言葉にはできない、絵にも描けない美しさがあります。時期的にも空気の澄んだ今頃が一番です。
薄 化 粧 い 夕日が桜島 を赤 こ染 めっ
<唱>
赤 富士 じ負けん誇 るい景 色
(富士山の赤富士にも負けないような誇れる景色だ という意味)
毎日、心の洗濯をしてくれます
今月のポイント「投句には句の説明は書かない」
投句の中に句の説明を書いている方がみられます。説明を書かなければ選者にわかってもらえない句は推敲不足と言えましょう。あくまでも5・7・5の17音字だけで勝負しましょう。