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美人 の側 べ席 くば奪合 ちょい同窓会 湧水町 / 安藤 微苦笑 さん
(同窓会では美人の側の席を奪い合っている という意味です)
キャスター:この作品を最優秀作品に選んだ理由はなんですか
寿星 :リズムはもちろん良いですが、何といってもユーモアそのものです。そしてその状況をいろいろ想像させてくれます。
キャスター:それはどういうことですか?
寿星 :これが「美人の横に座った」だけではそれだけのことになりますが、課題に合わせて席を奪い合ったところで狂句になりました。これは千秋楽の星の奪い合いと違ってあからさまな動きはないかもしれません。平然とした顔で美人の横を狙っているのではないでしょうかね。でれっとなったその後が次々と展開されてゆきます。
美人 の側 べ席 くば奪合 ちょい同窓会 <唱>
腰 しゃ曲 がってん そげんごわすか
(若い時の思い出でしょうが、年をとってもそうですか という意味です)
老けないためにはそれも大事だそうですよ -
可愛 ぜ赤子抱 こち奪合 こたや火 の叫 っ志布志市 / 伊地知 孝 さん
(可愛い赤ちゃんを抱こうと奪い合ったら大声で泣かれてしまった という意味です)
キャスター:「火の叫(おら)っ」とは大声で泣くということなんですね。
寿星 :「絶叫する」という意味ですが、赤ちゃんですから火が付くような大声で泣いたのでしょう。奪い合った後に大逆転の展開が見事で句がしっかりと締まりました。
キャスター:おじいちゃんに抱かれたのでしょうね。
寿星 :それだからこそ、「火の叫(おら)っ」が生きてきて狂句になります。これはお孫さんかもしれませんが、里帰りの状況ではないでしょうか。「やいややいや」という残念そうなおじいさんと、「どらな、あたいが抱っもんが」というお婆さんの声まで聞こえてきます。可愛 ぜ赤子抱 こち奪合 こたや火 の叫 っ
<唱> どしてん
妖怪 に 見えたとじゃんそ
(赤ちゃんにとっては妖怪に見えたのでしょう という意味です)
無精ひげは剃って、笑顔の練習をしましょう -
奪合 こっ食 た 羽釜ん焦 げい母 ん笑顔 鹿屋市 / 永田 紀子 さん
(奪い合って羽釜の焦げご飯を食べる子供たちを、お母さんが笑顔で見ている という意味です)
寿星 :鹿児島のことわざに「大釜(うがま)ん飯に小鍋ん汁(しゅい)」というのがあります。大釜で炊いたご飯と小鍋の汁はどちらも美味しいという意味ですが、これがぴったりあてはまるような、懐かしさを覚える句でした。今はわざわざお焦げが出来る炊飯器もあるらしいですが、やはり羽釜のあの美味しさは奪い合って食べるほど格別でしょう。羽釜飯の句は他にもありましたが「焦げ飯」との小さいところまでの気づきがとてもよかったです。お母さんの優しさと相まって、ほっこりとした気持ちにさせていただきました。
奪合 こっ食 た 羽釜ん焦 げい母 ん笑顔
<唱>
米 櫃 ちゃ直 き空 れないもんそ
(三度三度そのような状況では米びつはすぐに空になるでしょう という意味です)
親子ともいつまでも忘れない思い出でしょう
今月のポイント「意味の重なりはもったいない」
今月紹介した中に「銭失い」と「後悔」がありましたが、他には「競(せ)ろ奪合(ば)こっ(競って奪い合う)」とか「子供の親権」という表現が見られました。どちらも似たような意味ですので、そこに別な言葉を使えばもっと句に広がりが出来ます。わずか17音字です。大事に使いましょう。