トップページ  番組情報  情報WAVEかごしま  さつま狂句  2022年5月26日放送分

5月の兼題
「行楽(でばい)」

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    郷中ごじゅ行楽でばい 見事みごろたが 白マスク

    霧島市/篠原 文兎 さん

    郷中行楽 見事つ揃ろたが 白マスク(ごじゅでばい みごつそろたが しろマスク) 霧島市 篠原 文兎 さん

    (集落の「おでばい」で皆さんそろって白いマスクをしていた という意味)

    寿星 :現状をしっかり捉えて課題に結び付けたところが良かったと思います。実際はまだこのような集落での「おでばい」は見られないかもしれませんが、それでも最低限のマナーは守って楽しんでいると、良い方に解釈したいと思います。
    キャスター:「郷中(ごじゅ)」は、「郷中教育」という言葉で聞いたことがあります。
    寿星 :町内会では広すぎますので、集落とか地域ぐらいに考えれば良いと思います。この言葉も今は使われなくなって薩摩狂句の中で辛うじて生き残っているようです。江戸時代、西郷さんの育った加治屋町の郷中が有名です。

    郷中ごじゅ行楽でばい 見事みごろたが 白マスク


    <唱> 誰様だいさあけなち たんねたいしっ
    (誰ですかねと尋ねたりもした という意味)

    久しぶりに皆さんに会って元気を貰ったことでしょう。

  • 座をけっ かったとぜんね はな行楽でばい

    鹿児島市/有馬 靖雄 さん

    座を空けっ かった寂ね 花行楽(ざをあけっ かったとぜんね はなでばい) 鹿児島市 有馬 靖雄 さん

    (間(あいだ)を空けて座ったので花見の席は少し寂しかった という意味)

    寿星 :これまでの「おでばい」の句では、「踊りや飲み方がない」、「マスクをしたまま」という句がでてきましたが、こちらはいわゆるソーシャルディスタンスの句です。そこに自分の気持ちを述べたところで狂句になりました。どの句も現状を課題にマッチさせたところが良かったと思います。
    キャスター:「かった」とはどんな意味ですか。
    寿星 :「何だか、何となく、と考えればよいでしょう。はっきり述べられない気持ちを表すのに、なくてはならない鹿児島弁です。

    座をけっ かったとぜんね はな行楽でばい


    <唱> かたいがえで たも
    (話が弾まないので弁当をすぐに食べ終わった という意味)

    桜と青空を眺めることが出来ただけでも良かったでしょう。

  • 行楽でばい 蝶々ちゅちゅかれっ 舞込めく

    鹿児島市/上田 喜八郎 さん

    行楽の座 蝶々も浮かれっ 舞込っ来っ(でばいのぜ ちゅちゅもうかれっ めくっきっ) 鹿児島市 上田 喜八郎

    (おでばいの席に蝶々も舞い込んで来てくれた という意味)

    キャスター:イラストは以前のみんなで花見を楽しんでいる様子ですね。
    寿星 :このコーナーでは絵になるという要素も大事です。ところで鹿児島で「おでばい」と言えばまず花見でしょうが、春の時期に限らず慰安行事としてバスに乗って観光地や温泉などに出かけることも指すようです。浜でばいといって潮干狩りもあるようです。鹿児島の伝統的な行事なのです。

    行楽でばい 蝶々ちゅちゅかれっ 舞込めく


    <唱> 焼酎しょちゅぜ 釣られもしたろ
    (焼酎の甘い香りに釣られて入り込んだのでしょう という意味)

    それぞれの春の喜びです。

今月のポイント「自分なりの世界を持つ」

沢山の句の中から共感が持たれるのは、やはりその人なりの世界があるということです。誰もが詠むような句ではなく、表現や詠む素材など人と違った句は惹かれるものがあります。