6月の兼題
「スマホ」
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替えたどん スマホにゃ
合 わん爺 の目と手鹿児島市/ 坂元 朗 さん
(スマホに替えたけれどじいさんの目と手には負えない という意味)
寿星 :ホームページの投稿で多いのがメッセージ欄に句の説明を書いてあるのが見られます。説明を書かなければ意味が分からないようでは狂句とはいえません。やはり5・7・5だけで勝負すべきです。ところで、ごつい手にはスマホがなかなか塗(まみ)れないという似たような句が沢山見られましたが、嘆きが大きくて狂句的に楽しいこの句をいただきました。
キャスター:入力が難しいでしょうかね。
寿星 :これは狂句の面白さを出すために大げさに表現しているだけでしょう。ばっちり使いこなしているにおいがしますが。替えたどん スマホにゃ
合 わん爺 の目と手
<唱>
小指 ぶ使 こたい工夫 をしもんそ
(入力に小指を使ったりして工夫してみましょうか という意味)
楽しいおもちゃと思って使いこなしましょう -
新 けスマホ鳴 っ度 び騒動 で女房 け頼 ん南九州市/ 前原 稔 さん
(スマホに替えたら、着信のたびに騒動して奥様に頼んでいる という意味)
寿星 :スマホをすんなり使いこなしていたら、狂句にはなりません。この句のように薩摩狂句でよく使われる「ばたぐろ(狼狽)」してこそ狂句になりますし、その方が絵にもなります。
キャスター:いじわるな見方ですね。
寿星 :それが狂句作りには大事なことですね。他人の幸せや喜びの句にはあまり響きません。この句のような、落とした自分を笑い飛ばしている句が共感を持たれます。新 けスマホ鳴 っ度 び騒動 で女房 け頼 ん
<唱> 猫い小判が そんままじゃんが
(ことわざの「猫に小判」そのままだ という意味)
奥様から馬鹿にされないよう、ちっと頑張りましょう -
見渡せば
全部 スマホを しちょいバス鹿児島市/ 肝付 雲水 さん
(バスに乗って見渡したらほとんどみんなスマホをしている という意味)
寿星 :リズミカルで難しい言葉もなく一読明快の句です。誰でも詠みそうな風景ですが競合はありませんでした。この句では「バス」を電車としても通じますが、ここでは乗り物全般と見てもらいましょう。
キャスター:おしゃべりもできませんからなおさらでしょうか。
寿星 :全部が全部ではないでしょうが、より大げさにすることで、なお面白味が増すという効果もあります。しかしこれも程度が問題です。見渡せば
全部 スマホを しちょいバス
<唱>
吊 い革 でやい器用 な奴 もおっ
(吊り革に下がりながらやっている器用な人もいる という意味)
目が悪くならなければよいですが
今月のポイント「余韻を残す」
わずか17音字で余韻を残すには理屈や説明の句では無理があって、句としては死んでしまうことにもなります。
これでもか、これでもかと説明するのではなく、読者を信用して削るだけ削って後は想像させましょう。