湯上がいに 団扇が疲れた 滝の汗
日置市 池上 日新 さん
解説
(湯上がりにうちわが疲れるほど瀧のような汗が出たという意味の句です。)
キャスター:この句も分かりやすいですね。その場の様子がすぐ浮かんできます。
黒柱 :分かりやすいということが、狂句作りでは一番大切なことの一つです。つまり、イメージしやすいような詠み方を心がけることです。やたらとむつかしい薩摩語(鹿児島方言)を使う必要はありません。この句の良いところはどこでしょうか?
キャスター:黒柱さんお勧めの中七の「団扇が疲れた」という「擬人法」ですね。
黒柱 :正解!です。それともう一つ、湯上がりでうちわを激しく動かしている様子が、「瀧の汗」という言い方でもわかりますね。これは今のようにエアコンもない時代のことかもしれません。皆さんも、この擬人法を使って薩摩狂句にチャレンジしてみてください。
キャスター:では、唱です。
<唱> 冷てビールを 余計ひん飲ん
(冷たいビールを余計に飲んでしまったという意味です。)
汗が収まらないのを口実にして、ビールのお代わりをしているのでしょう。縁側か涼み台で飲んでいる古きよき時代の情景が浮かんできますね。まさに至福の時でしょうね
句作りにはいろんな方法がありますが、そのひとつに、「辞典を利用する」と言う事があります。易しい言葉ほど辞典を引いてみましょう。今回の「汗」という兼題で辞典を引いた方は少ないのではないでしょうか。辞典など引かなくても分かっていると考えがちです。
ところが、辞典を引いてみると、思ったより沢山の意味があることに気付きます。そして辞典に載っている例文などが句作りのヒントになることがよくあるのです。例えば、「汗」にもいろんな「汗」がある事が分かります。「脂汗」「大汗」「玉の汗」「血の汗」「一汗」「冷汗」など。これだけでも発想の枠が広がるのではないでしょうか。
兼題が出たら、おっくうがらずに、先ず辞典を引いてみることをお勧めします。