11月の兼題
「潮時っ」
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諍 こてん潮 時 きゃ分 かい老 夫 婦 肝付町 / 吉井 酔狂 さん
(言い争いをしても、そこは長年連れ添った夫婦ですからやめる潮時は分かりますよ という意味)
寿星 :夫婦喧嘩の句が他にも寄せられましたが、老夫婦なればこその味が出ているこちらをいただきました。「夫婦喧嘩」とせずに、「いさかい」という、表現にしたところが良かったと思います。軽い口喧嘩ぐらいというところでしょう。
キャスター:そうなんだろうなあと思わせてくれますね。
寿星 :いつもべたなぎよりは、時には波風も立てて刺激も必要でしょう。
諍 こてん潮 時 きゃ分 かい老 夫 婦 <唱> 「うん、じゃっどね」で
何 時 も幕 く引 っ(分かった、その通りだ、と亭主が折れていつも終わりにしている という意味)
旦那さんの本当のところは「じゃねどん(じゃないけど)」かもしれませんけどね。
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潮時 ち言 が替えきらん可愛 ぜ車 南九州市 / 前原 稔 さん
(車の買い替え時期だと言われるが、愛着があって離せない という意味)
キャスター:この場合の潮時の引き金とは車検だろうと思います。
寿星 :私が以前発表した句に「ボロ車(ぐい)め 潮時(しおどっ)じゃがち 言(ゆ)う車検」というのがありましたが似たような状況ではないでしょうか。私と違って、作者は車を丁寧に扱っているようです。
キャスター:車検先からの話でしょうかね。
寿星 :そうかもしれません。日常よくある小さな事柄に目を付けて課題に結び付けたところが良かったと思います。
潮時 ち言 が替えきらん可愛 ぜ車 <唱>
板金 塗装 で寿命 を延ばせっ(板金塗装をして寿命を延ばしている という意味)
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潮時 ち女房 ん咳 払 れ知 たん振 い宮崎県 / 南田 嘉弘 さん
(良い時間ですよとの奥様の合図の咳払いにも、知らない真似をした という意味)
キャスター:どのような場面なんでしょうかね。
寿星 :奥様同伴ということは通夜の座とかでしょうが、訪問先で飲んでいる場面としたら面白く展開します。同じような発想で「奥様の目配せに素直に腰を上げた」というお利口な句もありましたが、狂句的にはこのような「きかんたろ(強情な人)」が楽しいです。あくびをしながら「まだいいですがね」という相手の言葉を真に受けている人のようですね。
潮時 ち女房 ん咳 払 れ知 たん振 い<唱> しびれを
切 らし後 ちゃ抓 まれっ(しびれを切らした奥様につねられてしまった という意味)
尻の長い人には焼酎を出さないことです。
今月のポイント「っ」抜き表現に注意
今回の投句に「猫は逃げ」「止(や)めっ儲(も)け」「こさっ出せ」「縁談(はな)しょ受け」のような「っ」抜き表現が見られました。本来の鹿児島弁の使い方としては「猫は逃げっ」「止(や)めっ儲(も)けっ」「こさっ出せっ」「縁談(はな)しょ受けっ」としなければなりません。言葉の位置を変えるか言葉を変えるなどの工夫が必要です。