5月の兼題
「両方(まんぼ)」
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両方 ん手挙 げっそろいと初歩 っ霧島市 / 前平 のいちご さん
(両手を挙げながらそろりと生まれて初めて一歩を歩いた という意味)
寿星 :初孫を詠んだのでしょうか、そこまでの気づきに引かれました。一瞬を切り取った描写がお見事です。その場の情景がくっきりと浮かんで来ますし、「あらよう」と喜ぶおばあちゃんの声まで聞こえてくるようです。他人との違いを出すという作者の気持ちが伝わってきます。
キャスター:「そろいと」という鹿児島弁が何となく分かるような感じがします。
寿星 :「そっと・そろりと・おもむろに・ゆっくりと」などいろいろな意味ですが、この場面ではこれしかないという鹿児島弁ではないでしょうか。
両方 ん手挙 げっそろいと初歩 っ<唱>
餅 踏 んの時 き そゆしっ見 せっ(餅を踏ませる一年目の誕生祝いの場でそれをしてみせた という意味)
ドラマにしてみました。
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両方 攣 っ痛 かも痛 か 朝ん脚 霧島市 / 篠原 文兎 さん
(朝方に、両足がつって痛くてたまらない という意味)
寿星 :いわゆる「こむらがえり」ですが、実は私もこの症状に悩まされておりまして薬のやっかいになっております。脳天に響く痛さで、「同病あいあわれむ」そのものです。痛みをこらえながら課題に結び付けたところが狂句人ならではです。笑いながら拍手を送ります。
キャスター:「痛かも痛か」が面白い表現ですね。
寿星 :言葉を反復することで、そのことがより強調されるという効果があります。これ以上ないという痛さの表現が決まりました。
両方 攣 っ痛 かも痛 か 朝ん脚 <唱>
凄 いか叫 か隣 も起 こせっ(ものすごい叫びに隣の家まで起こしてしまった という意味)
急にごそっと動かさずに片っ方の足から「そろいと」動かしましょうか。
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長 げ相 撲 い行司 が両方 ん尻 つ叩 てっ姶良市 / 鬼丸 勝弘 さん
(動きが止まった長い相撲の両力士に、行司がハッパをかけた という意味)
キャスター:この句を天に選んだのはどんなところですか。
寿星 :今回は「大谷選手」と「夫婦げんか」の句がたくさんありすぎまして選びようがありませんでした。このような中ですからこの句の着想が光りました。誰も考えつかないような素材を選んだことと、その中でもまた細かいところへの気づきが良かったと思います。行司の「はっけよい」の「動」と動きの止まった両力士の「静」の対比がうまく描かれました。そして大事な要素の「絵になる句」でもあります。
長 げ相 撲 い行司 が両方 ん尻 つ叩 てっ<唱>
息 が上がって中 憩 くじゃろで(息が上がってしまって中休みをしているのでしょう という意味)
どちらも相手が先に動くのを待っているのでしょうか。
今月のポイント「句の説明は書かない」
句の説明を書かなければ分かってもらえないというのは推敲不足ということです。さつま狂句はあくまでも5・7・5だけで勝負しましょう。