9月の兼題
「希(まれ)けん」
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末子 あ希 けんまわっ新 か着物 南さつま市 / 玉利 眞智子 さん
(末っ子もたまには新しい着物に恵まれる という意味)
寿星 :一読明快の句です。何にも飾らずにリズムよくすぱっと述べられております。課題にぴったりの素材を探したところがお見事でした。昔を懐かしんでいる様子まで伝わって来ます。
キャスター:「末っ子」を「しいたれ」というのですね。
寿星 :「尻」が変化した「しい」に、接尾語の「たれ」がついたものだそうです。「ばかすったれ」とか「しみったれ」とかの言い方と同じです。末子 あ希 けんまわっ新 か着物
<唱>
良 か値 で牛 が 売れた時 じゃろ
(飼っている牛が高い値(ね)で売れた時でしょう という意味)
正月が来たような気分でしょうか。 -
昔 しゃ道 希 けん通 っ け迷 れっ鹿児島市 / 仮屋園 好青年 さん
(昔は道だったところをたまに通ってみたら迷ってしまった という意味)
キャスター:これはどのような場面なのでしょうか?
寿星 :小さい頃遊び回ったふるさとの情景を詠んでいるのでしょう。どちらかと言うとスパンの長い「久しぶり」かもしれませんが、このような現実味のある句は共感出来ます。過疎化が進んで田畑も荒れた山里の現状に絡ませて、「迷ってしまった」という表現に作者の寂しさも込められております。「昔(むか)しゃ道(みっ)」と上5に据えたところで、はて何だろうと後の展開も楽しませてくれます。昔 しゃ道 希 けん通 っ け迷 れっ
<唱>
猪 も避 けそな藪 べなっちょろで
(いのししも避けそうなぐらい、昔の道はやぶになっていたのでしょう という意味)
お墓も街に移ったのでしょうか。 -
希 けんな どん星 し居 いか仰向 っ鹿屋市 / 日高 べら さん
(亡くなった旦那様がどの星にいるのか時々夜空を仰ぎ見る という意味)
キャスター:この句を天に選んだのはどこが良かったのですか?
寿星 :課題の言葉に絡ませてほのぼのとした情景を描いているところです。きれいな夜空で「絵になる句」になりました。そして対象が誰かは述べられていないところで奥深くもなりました。ここで「亭主が」と述べたいところを我慢したところが成功しました。
キャスター:「説明句」でないということですね。
寿星 :それが句づくりで大事なところです。希 けんな どん星 し居 いか仰向 っ
<唱>
愛情 が薄 しど毎晩 逢 わんにゃ
(愛情が薄いですよ、毎晩あってくださいよ という意味)
えしれんお節介でした。すみません。
今月のポイント「無理な当て字をしない」
投句の中には17音字に収めるために無理な当て字が見られます。一例ですが「禁煙」に「やむっ」との当て字などです。これでは耳で聞いた場合、何をやめるのかさっぱり分かりません。全部が全部そのようにはできませんが、出来るだけ耳で聞いても分かりやすいような表現を心がけましょう。この場合は「きんえん」とするということです。