文研ブログ

調査あれこれ

調査あれこれ 2018年10月26日 (金)

#150 幼児のインターネット動画利用が増加中!? ~2018年6月「幼児視聴率調査」から~

世論調査部視聴者調査) 行木麻衣


先日、我が家の息子(3歳)をスマホで撮影していたら、カメラに向かって「○○チャンネルまた見てね!」と、YouTube(ユーチューブ)に出ているお子さんのまねを始めました。(「○○チャンネル」とは、子どもの名前やニックネームをつけたチャンネルでおもちゃレビューなどを行っている動画です)。インターネット動画が大好きな息子ですが、とうとうYouTubeごっこを始めたのかと驚きました。
近年、小学生の将来なりたい職業でYouTuber(ユーチューバー)と答える子もいると聞きます。小学生にもインターネット動画利用が広まってきていますが、幼児はインターネット動画をどのくらい見ているのでしょうか。

文研では、毎年6月に2~6歳の未就学児(東京30km圏)を対象として「幼児視聴率調査」を実施し、テレビの視聴状況、録画番組・DVDの利用状況などを聞いています。
きょうは、今年6月4日(月)~10日(日)の1週間に実施した「幼児視聴率調査」から、幼児のインターネット動画利用と保護者の意識を紹介します。

「幼児視聴率調査」の付帯質問で、幼児の休日を除くふだんの日1日にインターネット動画をどのくらい再生しているのかを尋ねています。「15分未満」から「2時間以上」まで「見る」と答えた人すべてを足し上げると(視聴計)、インターネット動画を見る幼児は、今年は50%で、2015年以降、増加傾向が続いています。男女別・年齢別でみても、今年はそれぞれ50%前後と性別や年齢による差はみられませんでした。

150-1026-1.png

また、インターネット動画の再生時間量をみると、インターネット動画を見ている幼児の中では「30分未満」が最も多く、続いて「30分以上1時間未満」でした。2016年と比べて1時間を超える長時間利用者が増加し「ほとんど、まったく見ない」が減少しました。

150-1026-22.png


インターネット動画の再生時間は「30分未満」が多いものの、1時間以上の長時間利用者が増加しているという現状を受けて、一児の母として、子どもがインターネット動画を見ることに対して保護者の方々はどのように感じているのか気になってきました。
こちらは、付帯質問で「お子様がインターネット動画を見ることについて、どのように思うか」を尋ねた結果です。


150-1026-33.png

「子どものためになる動画を見せたい」が51%と最も多く、約半数の保護者が「子どものためになる動画」を期待していることが分かります。一方で、約3割の保護者が「動画は子どもに悪い影響がある」と感じています。「その他」を選択した方には具体的に記入してもらいましたが、その中には「時間を決めている」「長時間でなければよい」といった時間制限をしている、「移動中など、仕方なく」といった本当は使いたくないけれど仕方なく使っているなどの回答がみられました。
約半数の幼児がインターネット動画を利用している中で、インターネット動画に対して不安に思う面がある一方、ためになる動画を見せたいという保護者の気持ちや、時間を制限するなどしてインターネット動画と上手に付き合っている保護者の姿が見えました。
今回、上の5つの選択肢に入らなかった「その他」は21%で、想定よりもさまざまな意見があがりました。保護者の方々が「お子様がインターネット動画を見ること」について日ごろから幅広い視点で考えていることの表れだと感じます。今後も幼児とインターネット動画の関係について、保護者の意識がより的確につかめるような調査設計を検討していきたいと思います。

幼児にテレビはどのくらいの時間見られているのか、録画番組やDVD利用の状況…など、今年の詳細な結果は『放送研究と調査』10月号で報告していますので、お読みいただければ幸いです。

 

調査あれこれ 2018年07月13日 (金)

#135 動画コンテンツ業界の"黒船"を迎撃する日本の"ストレス社会"砲

世論調査部(視聴者調査) 有江幸司

“黒船”が日本にやってくる!2015年、メディア関係者は戦々恐々としていました。その黒船というのは、当時、既に世界の映像業界を席巻していたNETFLIXです。すでにご存じの方も多いかもしれませんが、NETFLIXはインターネットで映画やテレビドラマを有料配信するアメリカの企業です。2013年にNETFLIXのオリジナルコンテンツ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」がエミー賞を受賞し、動画コンテンツを配信する“インフラ”の会社が、動画コンテンツを制作する会社よりも優れたコンテンツを生み出したことで、NHKの番組制作者の間でもNETFLIXが話題にあがるようになりました。2015年、ついにNETFLIXが日本でサービスを開始。日本支社の代表をNHKに招いて講演をしていただくと会議室は満席。立ち見でも会議室に入れず、廊下にこぼれてくる音声だけでも聞き取ろうという職員もたくさんいました。

あれから2年。2017年時点で、世界のNETFLIX契約者数が1億人を超える中、文研では2017年11月の世論調査「メディア利用動向調査」で、NETFLIXの利用者を調査しました。すると前年と比べても増加しておらず、未だ1%にとどまっていました

135-0713-11.png


こうした実情を海外の人に話すと一様に「え!?」と驚愕します。その表情を見て、いっそうNETFLIXが海外ではどれほど当たり前のサービスになっているかを実感します。日本に住んでいても海外の情報に敏感な人たちはNETFLIXを利用している人が多い印象を受けます。時々、大学で留学生や帰国子女の学生にお話をさせていただく機会があるのですが、「(私の話がつまらないので…)飽きちゃっているな」と感じるタイミングで「日本でのNETFLIXの利用率はどのくらいだと思う?」という質問を投げかけるようにしています。回答の多くは20%~30%です。そこで調査結果を伝えると「えっ!?」と驚いて目を覚ましてくれます。もはや私の鉄板ネタとなりました。

NETFLIXが日本でなかなか広がらない原因として、2つのことが考えられます。

ひとつは「有料」であること。NETFLIX発祥の地、アメリカでは、(ケーブル)テレビを視聴するために月々支払われている平均金額は10,000円と言われています。それに比べればNETFLIXの1,000円程度の月額料金は格安と言えるでしょう。一方、日本のテレビは広告収入で支えられています。そのため、動画コンテンツはタダで見られることが当たり前と感じている人が多くいます。昨年行ったインタビュー調査で、20代のYouTubeのヘビーユーザーに「YouTubeが課金をしたらいくらまで許容できる?」と聞いたところ「1円でも払わなければならないならばもう利用しない」という人が何人もいました。実際、今回の世論調査でも、1か月に動画配信サービスに支払ってもよい金額を尋ねたところ、約半数の人が100円も支払えないという回答でした。

2つ目の原因として考えられているのがNETFLIXのコンテンツが「ハイクオリティ」であること。以前、NHKが行ったグループインタビュー調査で、日本人がバラエティ番組を好む理由として「ストレス」が挙げられました。長時間労働の日本社会では、仕事を終えて帰宅するころには疲れ果て、「家ではとにかくリラックスしたい」。そんな中で、しっかりと見なければ楽しめないクオリティの高さが仇になっているというのです。

有料動画配信サービスの今後の展望は『放送研究と調査』7月号「ユーザーからみた新しい放送・通信サービス~2017年11月メディア利用動向調査の結果から~」でお伝えします。ぜひご一読ください。 

調査あれこれ 2018年06月29日 (金)

#133 孤独なオジサンたち?!

世論調査部(社会調査) 村田ひろ子 

133-0629-1.png
※写真はイメージです。

「友達は大勢いますか?」と聞かれたら、なんと答えますか?「自分は友達が多い方なのか少ない方なのか…」「あの人を友達として数えていいのだろうか・・・」と悩み始める人など、さまざまでしょう。試しに同僚の男性に聞いてみたら、「なんだかイヤな質問。あまり答えたくないな~」と少しとまどっている様子でした。


日本人は友人が何人くらいいるのか。そして友人とどのようなつきあいをしているのか。NHK放送文化研究所が全国で実施した調査※1)からみていきましょう。悩みごとを相談できるような友人が「いない」という人の割合をみると、男女ともに高齢の人ほど多くなる傾向があり、特に男性で顕著です。男性の50・60代で3割台、70歳以上では半数を超えています。同じ年代の女性と比べてかなり多いと言えるでしょう。

悩みごとを相談できるような友人が「いない」(男女年層別)

133-0629-2.png


それでは、困ったときに最初に友達を頼る人はどのくらいいるのでしょうか。落ち込んだときに親しい友人を頼る、と答えた人が多かったのは、男女ともに18~29歳と女性50代で、いずれも半数程度を占めています。これに対し、男性50代以上では2割台にとどまっています。

落ち込んだときに最初に頼る相手は「親しい友人」(男女年層別)

133-0629-3.png


家庭の問題についてアドバイスがほしいとき頼る相手についてみると、「友人」と答えたのは、男性では18~29歳、女性では50代までの各年代で半数程度を占め、多くなっています。これに対し、男性50代以上では3割程度にとどまっています。中高年の男性では、困ったときに友人をあてにする人が少ないことがみてとれます。

家庭の問題についてアドバイスがほしいとき、最初に頼る相手は「親しい友人」(男女年層別)

133-0629-4.png

オジサンたちは友人づきあいが苦手なのか、それとも忙しくて友人と交流する時間がないのか?理由はさまざまありそうですが、「オジサン」研究家の岡本純子さんによれば、「男性は人と繋がる時、(中略)一緒にスポーツをする、ゲームをするなど、何かの物理的なきっかけを要する」ために、友人を作りにくく、孤独に陥りやすいのだそうです※2)。一方、女性はそうしたきっかけがなくても、会話を続け、関係性を成り立たせることができるようです。誰かと何かを一緒にするのは、ただ話すのと比べて時間も労力もかかるため、男性は女性と比べて新しく友人を作るのに苦労し、年齢が高くなるにつれて親しい友人が少なくなっていく、とみることもできそうです。

『放送研究と調査』6月号では、調査からみえる、他者との接触や友人づきあい、人間関係と生活満足度との関連について考察しています。中高年男性の友人づきあいのほか、高齢者のSNSの利用頻度と成人した子との接触などについても取り上げています。ぜひご一読ください!

※1)ISSP国際比較調査「社会的ネットワークと社会的資源2017」 133-0629-5.png
※2)岡本純子、2017、「日本のオジサンが『世界一孤独』な根本原因 この国をむしばむ深刻な病とは?」、「東洋経済ONLINE」、4月4日

調査あれこれ 2018年06月22日 (金)

#132 WEBで世論調査はできるのか

世論調査部(研究開発) 萩原潤治


「51%」

インターネットを「毎日のように」利用していると答えた人の割合です。年配の方も含めた16歳以上の日本人の約半数ですね。去年11月にNHK放送文化研究所が行った「メディア利用動向調査」のデータで、この割合は、男性16~29歳で86%、女性16~29歳で90%に上ります。

今やスマートフォン、タブレット、PCなどのデジタルデバイスは、私たちの日常生活に深く浸透しています。その用途は、SNS、情報検索、動画視聴、ゲームなどの趣味や娯楽から、銀行口座の管理、自治体への申請手続きなど、幅広い分野に広がっています。こうした、多くの人にとって欠かせないものになりつつあるデジタルデバイスを世論調査でも活用できないだろうか。これが研究の出発点でした。

なぜなら、世論調査は今、大きな課題に直面しているからです。有効率の低下です。有効率とは、全国から調査相手に選ばれた方のうち、調査に回答してくださった方の割合です。たとえば、「全国個人視聴率調査(6月)」の有効率は、1973年の81.9%から2017年の67.6%へ約14ポイント低下しています。特に20~30代の若年層で低下が目立ちます。

 図1 有効率の推移「全国個人視聴率調査(6月)」<配付回収法>
131-0622-1.png

そこで、若年層の有効率UPのために、この世代と親和性が高いデジタルデバイスを利用した“WEB世論調査”を試してみました。住民基本台帳からランダムに選んだ調査相手に、郵送で調査への協力を依頼しWEBで回答してもらう方式です。調査用のWEBサイトに簡単にアクセスできるようにQRコードも作成しました。「紙に書くのは面倒だけど、スマホでできるなら回答してみようかな」そう思ってもらえるような調査設計を心掛けました。

たとえば、図2の左側がスマホの回答画面です。あてはまる選択肢をタップすると自動的に次の質問に切り替わるため、サクサク答えられるようになっています(ただ、サクサク答えられるからよいとは限らないのです。「簡単に回答できる」=「紙での回答と比べて、あまり考えずに回答してしまう」という可能性もあるため、回答結果を検証しなければいけません)。

 図2 マトリクス形式の質問
132-0622-2.png


この“WEB世論調査”を、2016年と2017年の計2回、試験的に行いました。気になる2016年調査の有効率は43.5%とイマイチな結果に・・・。ただ、初めての挑戦ですから、課題がたくさん見つかりました。その課題を一つ一つクリアし臨んだ2017年調査の結果は・・・『放送研究と調査』6月号でご覧ください!

この中では、有効率だけでなく、調査相手のサンプル構成や回収状況、さらにWEB回答者のアクセスログからWEB回答に要した時間や「途中離脱」などの分析も行っています。WEBで調査をするのに必要なポイントがぎゅっと詰まっていますので、ぜひご覧ください。

調査あれこれ 2018年05月11日 (金)

#124 トランプ政権1年 日米同時世論調査から

世論調査部(社会調査) 吉澤千和子

124-0511-1.png

世界に衝撃を与えた2017年1月のトランプ政権の発足から1年3ヶ月あまりが経ちました。メキシコ国境に壁を建設して移民の規制を強化する方針を打ち出したり、TPP=環太平洋パートナーシップ協定から離脱したり、さらには鉄鋼製品などの輸入制限措置、初の米朝首脳会談を行う意向表明など、トランプ大統領にまつわるニュースを目にしない日はないかもしれません。

先月、フロリダで日米首脳会談が行われました。一緒にゴルフを楽しみ親密さを示した両首脳、北朝鮮に非核化に向けた行動を求めることでは一致しましたが、経済や貿易の問題では、自国の利益を優先する姿勢を鮮明にしているトランプ大統領が日本との間の貿易赤字削減に強い姿勢を示し、今後厳しい交渉となることも予想されます。

私たちの暮らしに大きな影響を与えるトランプ大統領の政策や言動について、アメリカや日本の国民はどう見て、今後についてどう考えているのでしょうか。NHKでは就任1年を前にした去年12月にアメリカと日本の両国民の意識を探る日米同時世論調査を実施しました。

 124-0511-2.jpg

■トランプ大統領に良い印象を持っているのはどんな人?

124-0511-3.png

トランプ大統領に良い印象を持つ人は、アメリカで3人に1人、日本では5人に1人と多くはありません。
では、アメリカでトランプ大統領に良い印象を持っているのはどんな人なのでしょう?まとめると下の表のようになり、共和党を支持する白人の男性で、地方に住み、年齢は40歳以上の中高年、そして年収の高い人たちとなります。
逆に、トランプ大統領に悪い印象を持っているのは、民主党支持層、黒人、女性、都市在住者、若年層です。 

124-0511-4.png


■アメリカ第一主義は支持されているの?

124-0511-5.png

トランプ大統領がスローガンに掲げるアメリカ第一主義をどう思っているかについても聞きました。日本では3人に2人が良くないと思っていますが、アメリカでは6割の人が支持しています。アメリカでは、トランプ大統領へは悪い印象を持つ人が多い一方で、アメリカ第一主義については、多くの人が支持しています。

このほか、調査では「アメリカは分断が深まったと思うか」や「アメリカは世界で指導的役割を果たすべきか」「北朝鮮問題の解決方法」「日米関係の展望」なども聞いています。詳しい分析結果は『放送研究と調査』5月号 に載っていますので、ぜひご一読ください。

調査あれこれ 2018年04月06日 (金)

#120 東京オリンピックまで2年余り。あなたが見たい競技は!?

世論調査部(視聴者調査) 斉藤孝信

年度替りのこの時期はただでさえせわしなく感じるものですが、今年は桜の開花が早かったせいか、あるいは日本勢の活躍に沸いたピョンチャンオリンピック・パラリンピックに夢中になっていたせいか、特にあっという間に時間が過ぎ去った気がします。
あっという間といえば、2020年東京オリンピック・パラリンピック。開催決定の頃には「まだ先の話」と思っていたのに、気が付けば、残すところ2年余りに迫ってきました。
世界の一流アスリートを直接見られるチャンス!楽しみです。テレビ観戦でも、最近の夏のオリンピックは、2012年ロンドン、2016年リオデジャネイロと、「地球の裏側(?)」で開催されたため、深夜・早朝の競技中継が多く、寝不足に悩まされた方も多かったと思いますが、2020年は「良い時間」に見られそうで楽しみですね。

皆さんは、2020年の東京オリンピックでどんな競技の観戦を楽しみにしていますか?
文研が2017年10月、全国の20歳以上の男女3600人を対象に実施した「2020年東京オリンピック・パラリンピックに関する世論調査」では、東京オリンピックでどんな競技や式典を見たいと思うかを、複数回答で尋ねました。

120-0406-1.png

 
トップ5をみてみると、「体操」が71%で最も多く、以下、「陸上競技」「開会式」「競泳」「卓球」も半数以上の人が見たいと回答しました。前回のリオ大会で、男子団体が「体操王国」の意地を見せて金メダルを勝ち取った「体操」や、男女とも団体でメダルを獲得した「卓球」(すさまじいラリーに、手に汗握った方も多いのではないでしょうか)など、日本勢の活躍が印象的だった競技が上位を占めています。きっと調査にご協力くださった皆さんが、あの感動を思い起こしながら調査票に○をつけてくれたのだろう、と想像しながら集計しました。

前回私が担当したブログ(2017年11月10日号)では、1964年の東京オリンピック直前にも、文研が東京都民を対象に世論調査を行っていたことをご紹介しました。再び当時の調査結果をひもといてみると、そこにも「どんな種目を見たいか」という質問項目がありました。

120-0406-2.png


当時のトップ5は、「水泳」「体操」「開会式」「マラソン」「陸上競技」。やはり直前の大会(1960年ローマ)で日本が多くのメダルを獲得した水泳や体操を見たいと答えた方が多く、「次も活躍してくれるはず!」「東京でも勇姿を見せてくれ!」という期待が大きかったのだろうと想像できます。

ちなみに、1964年東京大会終了後の11月に行われた調査では、「とくに印象に残っている競技」を1人3種目まで挙げてもらっているのですが、この結果も面白い!

120-0406-3.png 

 

大会直前の「見たい種目」としては37%だった「バレーボール」が78%でトップになったほか、事前には8%だった「重量あげ」も44%の人が「マイ・ベスト3」に挙げたのです。皆さんご存知の通り、バレーボールでは「東洋の魔女」の愛称で知られる女子チームが当時のソ連を破って金メダル、男子も銅メダル。重量あげでは三宅義信選手が金メダルを獲得しています。こうしたデータを振り返ると、気が早いようですが、2020年の東京大会ではいったいどんな競技のどんな選手が私たちに感動を与えてくれるのか、今から楽しみです!

話を戻しますと、2017年10月調査で尋ねた「見たい競技」を男女別に集計してみると、興味深い違いが明らかになりました。果たして男性、女性、それぞれが見たいと思っている競技とは!?さらに、2020年東京大会から追加種目となる「野球・ソフトボール」「スポーツクライミング」「空手」「スケートボード」「サーフィン」は、現時点でどの程度の人が見たいと思っているのでしょうか?
こうした分析結果は、『放送研究と調査』4月号で、詳しくご報告いたします。
どうぞお楽しみに!

調査あれこれ 2018年03月09日 (金)

#116 仕事のストレスが多い日本人

世論調査部(社会調査) 村田ひろ子

ISSP_logo.png

皆さんは、仕事でストレスを感じることがどのくらいありますか?仕事でストレスを感じるのは、通勤時の満員電車、なかなか達成できないノルマ、上司や同僚とのトラブルなど、さまざまな原因が考えられそうですね。職場を離れた後も、上司からの叱責や人事評価のことなどをあれこれ思い返して、胃が痛くなるという方も結構いらっしゃるのではないでしょうか。

さて、日本では仕事でストレスを感じている人が各国と比べて多いのか。NHKが参加している国際比較調査グループISSPが実施した調査からみていきましょう。仕事でストレスを感じることが『ある(いつも+よく)』という男性は、日本で5割を占めていて、先進各国と比べて多くなっています。働き盛りの30、40代の男性に限ってみると、日本では6割にのぼり、各国の中で最も多いという結果です。女性についてみても、日本人で『ある』という人は半数近くで、各国の中で多くなっています。

116-0309-1-8.png


なぜ、日本では仕事のストレスを感じる人が多いのか。次に、ストレスと関係の深い職場の人間関係についてみてみましょう。経営者と従業員の関係が『良い(非常に+まあ)』と答えた男性は、多くの国で7割以上を占めている一方で、日本では半数程度。各国と比べて低い水準です。女性についても、日本で『良い』と答えているのは6割で、男性同様、各国と比べると少なくなっています。

116-0309-2-8-2.png

最近セクハラなどの被害を訴え出る「#Me Too」運動が世界的に広がっていますが、ISSP調査では「この5年の間に、職場の上司や同僚から、いじめや身体的・精神的な攻撃といったハラスメントを受けたことがあるか」どうかを尋ねています。セクハラに限らず、さまざまな嫌がらせを受けた経験を聞いているわけですが、ハラスメントを受けたことがあるという日本人は、男性で20%、女性で33%となっています。各国と比べると多くなっていて、職場の人間関係の悪さと合わせて気になる結果です。

116-0309-3-8-5.png

「ハラスメントを受けたことがある」と「経営者と従業員の関係」についてみると、特に女性で関連が強くなっています。つまり「ハラスメントを受けた」と答えた人が多いと、「人間関係が良い」が少なく、日本はその傾向が顕著です。

116-0309-4-9.png

日本には、人間関係やハラスメントに悩む人が多い、ストレスフルな職場がたくさんありそうです。ここで、今回の調査からはちょっと離れて、ストレスへの対処法をひとつご紹介します。自分にとっての「気晴らし」をできるだけたくさんリストアップし、その気晴らしについてあれこれ想像をめぐらせるだけで効果があるそうです。私なら、「チョコを食べる」「映画をみる」「猫のモモちゃんをなでなでする」・・・。うんうん、確かに効果がありそうです。

116-0309-5.png「放送研究と調査3月号」では、最新の国際比較データから、仕事のストレスをもたらす要因について探るほか、各国との比較において日本人が仕事をどうとらえているのかについて考察しています。「働き方改革」の進め方についてのヒントも得られるかも!?

※)ISSP国際比較調査「仕事と生活(職業意識)」(Work Orientations Ⅳ-ISSP 2015)。
参考文献:NHKスペシャル取材班、2016、『キラーストレス 心と体をどう守るか』、NHK出版

調査あれこれ 2017年11月10日 (金)

#101 東京オリンピック、ふたたび!

世論調査部(視聴者調査) 斉藤孝信

◆嗚呼(ああ)、なつかしのオリンピック ~文研の倉庫を掘り起こしてみれば~

2020年の東京オリンピック・パラリンピックまで、早いもので残り3年を切りました。そこで今回のブログでは、オリンピックのお話をさせていただきます。
皆さんの記憶に残っている一番古いオリンピックは何大会でしょうか?40歳の私にとっては、1984年のロサンゼルス大会です。ロケット・ベルトを装着した宇宙飛行士のような格好の人が空を飛んだ開会式。柔道の斉藤仁さんと山下泰裕さんの感動の金メダル。毎日、家族と一緒に、ブラウン管テレビにかじりついて観戦した思い出があります。
53歳以上(「記憶」ということでいうと、50代後半ぐらいからでしょうか)でしたら、「1964年の東京オリンピックだ!」という方も多いと思います。開会式やバレーボール「東洋の魔女」の映像は今でもよく目にしますが、大会前に高速道路や鉄道網の整備が急ピッチで進んだこともよく知られています。きっと東京の街は大騒ぎだったのだろうなあ、と想像します。
当時の人々はどんな思いでオリンピックを迎えようとしていたのか。実は開催直前の1964年6月に、文研が東京23区民を対象に世論調査を行っていました。
101-1110-1.jpeg
文研の倉庫に保管されている64年調査の資料


それによると、「オリンピックが開かれるのをうれしく思うか」という問いには、92%が「うれしい」(「大変うれしい」+「うれしい」)と答えていました。

101-1110-graph11.png

さらに時代を反映していて面白いのは「どんな点で一番関心をもっているか」という問いで、最も多かったのが「外国に対してはずかしくないオリンピックの運営ができるかどうか」の36%で、「日本選手がよい成績をあげるかどうか」の23%を上回っていました。戦後最大の国際イベントだっただけに、人々が、日本の復興を世界にアピールできる機会を喜び、並々ならぬ思いで成功を願っていた様子がひしひしと伝わってきます。

101-1110-graph22.png


◆迫る!2020年東京オリンピック・パラリンピック 人々の期待と不安の「現在地」を報告します

それから半世紀あまり。東京で2度目となるオリンピックが迫る中、文研では全国3600人を対象に「2020年東京オリンピック・パラリンピックに関する世論調査」を昨年10月に実施しました。
開催都市になることへの評価を尋ねたところ、8割を超える方が「よい」と答えました。9割以上の方が開催を喜んでいた1964年調査とは質問も対象の地域も違うので単純に比較はできませんが、多くの人が肯定的にとらえていることがわかります。こうした調査は2020年まで毎年10月に実施しますので、今後、人々の思いがどのように変化していくのかも楽しみです。

101-1110-graph33.png

今回の調査結果は、『放送研究と調査』11月号に掲載中です。「東京都民」と「東京都民以外」での比較分析もしています。期待や不安の度合いに、果たしてどんな違いが見られるのでしょうか!?
さらに!実は今年10月に、2回目の調査も実施しまして、今まさに鋭意分析中です!いずれ皆さんにご報告できればと思っておりますので、そちらも合わせて、どうぞお楽しみに。

調査あれこれ 2017年10月27日 (金)

#100 憲法改正への賛否、半世紀の推移

世論調査部(社会調査) 荒牧 央

今年は日本国憲法が施行されてから70年になります。少し前の話になりますが、5月の憲法記念日の前後には各地で記念行事や催しが行われました。東京の国立公文書館で開催された特別展では、日本国憲法の原本や、制定に至る過程で作成された資料が展示されていました。

100-1027-11.jpg
日本国憲法の原本(筆者撮影)

NHKの世論調査で憲法について尋ねたのは、1962年の「第6回参議院議員選挙全国調査」が最初です。今の憲法を改正する必要があるかどうかという質問に対し、「改正する必要があると思う」20%「改正する必要はないと思う」21%で、ほぼ同じ割合でした。残りの6割は「どちらともいえない」などです。

この質問は現在まで50年以上にわたって繰り返し使われており、(間隔の空いている時期はあるものの)改正に対する賛否の長期的な推移をみることができます。1960年代から70年代前半にかけては、「必要」が多くなったり「不要」が多くなったりしながらも、どちらかがもう一方を大きく上回ることはありませんでした。92年、93年の調査でも同様のことが言えます。

大きな動きがあったのは2000年代です。2002年の調査では「必要」が58%と半数を超え、「不要」を大幅に上回りました。1990年代以降、自衛隊と国際貢献のあり方について議論が高まったことや、「新しい権利」など憲法改正のテーマが多様化したことが影響したのではないかと考えられます。

今年3月に実施した直近の調査では「必要」43%、「不要」34%。「必要」が上回ってはいますが、両者が再び接近しました。憲法改正の論議が現実味を帯びる中で、人びとが改正に対して慎重な姿勢を示すようになったのかもしれません。

100-1027-222.png

22日に行われた衆議院選挙では、与党が憲法改正の発議に必要な3分の2の議席を維持し、改憲に前向きな野党も含めると議席の8割を占めました。内閣支持率の低下などから先行きが不透明になっていた憲法改正論議も、再び活発になると考えられます。世論調査部ではこれからも憲法に対する国民の意識を追って行きたいと考えています。

『放送研究と調査』10月号では、1974年、1992年、2002年、2017年の4回の世論調査の結果を中心に憲法意識の変遷について報告しています。

調査あれこれ 2017年10月20日 (金)

#99 幼児に人気の番組、いまむかし

世論調査部(視聴者調査) 星 暁子

最近の小さい子どもたちがよく見ている番組をご存じですか?
きょうは、文研が毎年6月に2~6歳の未就学児(東京30km圏)を対象として実施している「幼児視聴率調査」の結果から、幼児に人気の番組についてご紹介します。
こちらは、今年6月5日~11日の1週間で、幼児によく見られた番組のリスト(20位まで)です。
(このあとご紹介していく番組について、文字に色をつけています)

99-1020-11.png今回最もよく見られたのはEテレの「おかあさんといっしょ」です。長く続いている幼児向けの番組として知られていますが、さかのぼって調べてみたところ、実は調査が始まった1996年以降で視聴率がトップになったのは初めてのことでした。Eテレ(教育テレビ)の番組がトップになったのも初めてです。
では「おかあさんといっしょ」の人気が高まってきているのか(だとしたら嬉しい!)と調べると…実は、ほかの人気番組の視聴率が徐々に低下してきているため、「おかあさんといっしょ」がトップに浮上したということのようです。

では、過去はどんな番組がどのくらいの視聴率だったか、10年前(2007年)、20年前(1997年)の、幼児によく見られた番組のリスト(10位まで)を見てみましょう。

99-1020-23.png今も続いている番組やシリーズがいくつもありますね。アニメやヒーロー・戦隊シリーズは今でもたいへん人気がありますが、当時の視聴率は今よりだいぶ高いことがわかります。
アニメに注目すると、2007年には「Yes!プリキュア5」「サザエさん」「ちびまる子ちゃん」が30%を超え、1997年には「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」が50%を超えていて、当時の人気ぶりがうかがえます。
ヒーロー・戦隊シリーズをみると、今年は「仮面ライダーエグゼイド」「宇宙戦隊キュウレンジャー」が10位圏外になっています(ちなみに「キッチン戦隊クックルン」は、食育番組です)が、2007年には「仮面ライダー電王」が30.9%、「獣拳戦隊ゲキレンジャー」が25.9%でした。1997年にはヒーローシリーズの「ビーロボカブタック」が39.8%、「ウルトラマンティガ」「電磁戦隊メガレンジャー」が29.2%と、いずれも高視聴率を記録していました。

ただ、この調査の「視聴率」はテレビの放送と同時の視聴(リアルタイム視聴)についてのものなので、録画やDVD、動画で見られているものを含めると、一概に「アニメやヒーロー・戦隊シリーズの番組が見られなくなってきている」とはいえないのかもしれません。この調査では、自由記述で「お子さんが録画してよく見るテレビ番組/DVD/動画」のタイトルを書いてもらっているのですが、アニメやヒーロー・戦隊シリーズの番組名も数多く挙がっており、今でも子どもたちの「お気に入り」には違いないようです。
見ている子どもたちは成長とともに入れ替わっていくのに、20年以上もの長きにわたって支持され続けている番組があるということは、テレビ業界にとっての「財産」なのでは、と思えます。

幼児にテレビはどのくらいの時間見られているのか、録画番組やDVD利用の状況…など、今年の詳細な結果は『放送研究と調査』10月号で報告していますので、お読みいただければ幸いです。