文研ブログ

調査あれこれ

調査あれこれ 2020年10月09日 (金)

#275 高齢者の「情報ライフライン」としてのテレビ

メディア研究部(メディア動向) 入江さやか


 東日本を中心に記録的な豪雨をもたらした昨年10月の台風19号(東日本台風)からまもなく1年を迎えます。台風19号では84人(災害関連死除く)が亡くなり、65歳以上の高齢者がその6割以上を占めていました1)。NHK放送文化研究所が被災地で行った調査から、高齢者の「情報ライフライン」としてのテレビの重要性が改めて浮かび上がってきました。

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写真1:国土交通省の河川カメラで阿武隈川の氾濫発生を伝えるテレビ画面
      多くの文字・画像が盛り込まれている
     (2019年10月13日午前2時半ごろ NHK総合テレビ)


■「テレビの映像が唯一の頼れる手段です」
 NHK放送文化研究所は、台風19号で被災した長野県長野市、宮城県丸森町・石巻市、福島県本宮市・いわき市で、浸水したとみられる地域の20歳以上の男女計3,000人を対象に、郵送による世論調査を行いました。地元の自治体が発表した「避難勧告」を知った手段を聞いたところ、いずれの自治体でも、年代層が高くなるほど「テレビ」の割合が高くなる傾向がみられました。
さらに今回の調査では「台風19号のような豪雨災害のおそれがある時、テレビやラジオはどのような放送をすべきだと思いますか」という質問に自由に答えてもらいました。その回答には、高齢者からの切実な訴えが数多く記されていました(すべて原文ママ)。高齢者にとってはテレビが情報の「ライフライン」であることに改めて気づかされる内容でした。

 「私達夫婦二人生活 80才近くの者です。テレビとラジオが知るすべてです。あまり難しい
  表現でなくとにかくわかりやすい言い方等で知らせてください」(宮城県石巻市・70代女性)

 「アプリ・ラインなど使えないのでテレビの映像が唯一の頼れる手段です
  (福島県本宮市・70代以上女性)

 「高齢者に情報を届けたいのであれば『スマホを利用して』ということは除外すべき
  持っていたとしても使いこなせていないのが現状」(福島県いわき市・70代以上男性)

■テレビ画面にあふれる情報 高齢者に届いているか?
 災害時のテレビ放送について、高齢者からの具体的な要望も多く書かれていました。

 「一覧表が流れる帯状のテロップだと他の多くの地名にまぎれて、自分の地区を見落とした」
 「画面の文字をもう少し長く残してほしい」
 「重要なことは大きな文字で知らせてほしい」
 「高齢者は音を聞き取りにくいので、もっとゆっくり・はっきり話してほしい」
 「『越水(えっすい)』ではなく『水が堤防越しました』など、普段の使い慣れた言葉で呼びかけてほしい」

 今回、改めて台風19号の際の放送を見直してみると、テレビ画面にはL字スーパーやレーダー画像、二次元コードなどのさまざまな文字情報や画像があふれています(写真1)。近年、防災気象情報が高度化・細分化され、放送を出す側も、できる限り地域に密着したきめ細かい情報を届けようと努力しています。それが高齢者にとって見やすい・聞きやすい放送になっているか、今一度立ち止まって考える必要があるのではないでしょうか。

■避難情報の「見逃し」を防ぐ取り組みも
 災害時に命を守るために欠かせないのが避難に関する情報です。避難勧告や避難指示(緊急)の「見逃し」を防ぐ取り組みが始まっています。朝日放送テレビ(ABC)が2017年に全国に先駆けて導入した「災害情報エリア限定強制表示」やNHKが2020年6月から全国展開している「エリア限定地域避難情報自動表示」です。これらのシステムでは、避難勧告などが出た時、対象となる地域にだけ、テレビ画面上に文字スーパーが表示され、視聴者がリモコンを操作しなければ一定時間は消えません(写真2)。放送メディアは、インターネットによる情報発信を展開しながらも、テレビをライフラインとしている高齢者の切実な声にも応えていかなければなりません。

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写真2:NHKの「エリア限定避難自動表示」画面のイメージ
     (画面左側の枠で囲んだ部分が表示される)

 詳しくは、今回の調査の結果をご一読ください。
令和元年台風19号における住民の防災情報認知と避難行動調査報告①(長野県長野市)
令和元年台風19号における住民の防災情報認知と避難行動調査報告②(宮城県丸森町・石巻市)
令和元年台風19号における住民の防災情報認知と避難行動調査報告③(福島県本宮市・いわき市)


1) 内閣府「令和元年台風第19号等を踏まえた高齢者等の避難に関するサブワーキンググループ」
  第1回資料(2020年6月19日)



調査あれこれ 2020年10月02日 (金)

#274 パソコン?スマホ?家庭における学習で利用されているメディアとは?

メディア研究部(番組研究) 渡辺誓司


 
いまだ終息の気配がみえない新型コロナウイルスの感染拡大は、教育の分野にも大きな変化をもたらしました。例えば、オンライン授業や動画教材を配信するなど、児童・生徒が登校しなくても、家庭でインターネットを利用して学習できるような対応を進めている学校もみられます。

 文研では、家庭における学習でどのようなメディアが利用されているのかを探るウェブ調査を、昨日から開始しました。昨年に続き2度目になります。調査の対象は、中学2年生と3年生、高校1年生です。学年の区切りがちょっと中途半端なのは、この調査には、昨年10月、つまりコロナ禍前に実施した同じ調査に協力してもらった当時の中学生たちに、今回も協力をお願いしているからです。調査対象を同一にすることで、コロナ禍前と今との変化を、正確に把握することを目指しています。

 オンライン授業の配信などを考えると、今回の調査は、家庭学習で、パソコンやスマートフォン、タブレット端末などのデジタル機器が利用される割合が高くなることが予想されます。しかし、そもそもコロナ禍前の家庭学習ではどのような機器が利用されていたのでしょうか。次の図は、昨年10月の調査の結果から抜粋したものです。

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 ウェブ調査の対象の中学生(1,168名)のうち、家庭で、「英語、国語、数学、理科、社会、総合的な学習の時間」の6教科のうちいずれかの教科の学習を行っている中学生(1,055名)に、家庭学習で利用している機器を尋ねました。結果は、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、電子辞書の利用が多く、ほかの機器の利用は少ないというもので、学年による差はほとんどみられませんでした。
 注目されるのは、図に示したいずれかの機器を家庭学習に利用していた割合は57%で、4割を超える中学生がこれらの機器を利用せずに学習していたことです。この中学生たちの家庭のうち、スマートフォンは73%、パソコンは63%、タブレット端末は46%の家庭で、彼らがそれらを自由に利用できる環境にあったことから、機器を利用できるからといっても、必ずしもそれらが家庭学習に利用されていたわけではないことがわかりました。一方で、教科書や参考書、問題集、塾の教材などの紙媒体を家庭学習の教材として使っていた割合は9割と高く、機器を使えても紙媒体だけで学習している中学生の存在もありました。コロナ禍の前に行った調査の結果が、コロナ禍の真っただ中にある今回の調査ではどのように変化するのか、家庭学習における機器の利用は増えるのかどうか、結果がまとまり次第改めて『放送研究と調査』で報告します。 

 ここでご紹介したデータを含め、昨年実施した調査の結果の詳細は、『放送研究と調査』8月号に掲載しています。また、この調査では、調査対象の中学生の母親にも同時にウェブ調査を行っており、論考では、母親の家庭学習におけるデジタル機器の利用観や、家庭学習からみた親子関係の分析も取り上げています。コロナ禍前の実態を把握したものとして、ぜひご一読ください。


調査あれこれ 2020年09月11日 (金)

#271 外国人の増加に賛成?反対?世論調査から見えてきた本音

世論調査部(社会調査) 岡田真理紗


皆さんは、日常生活で、外国人と接する機会がどのくらいありますか?
新型コロナウイルスの影響で、外国人観光客は大幅に減少していますが、コンビニエンスストアやファストフード店などでは外国人が接客する姿がよく見られます。職場にさまざまな国籍の同僚がいる、という人もいるでしょうし、留学生と一緒に学んでいる学生もいると思います。
NHK放送文化研究所では、外国人労働者の受け入れを拡大する「改正出入国管理法」が施行されて今年4月1日で1年になるのを前に、3月中旬に「外国人との共生社会に関する世論調査」を実施しました。
日常生活で、外国人と接する機会については、次の様な結果が出ました。

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 普段の生活の中で外国人と接する機会が『ある』という人は38%。接する機会が『ない』という人は59%で、全体では、外国人と接する機会が『ない』という人のほうが多くなっています。
 しかし、年層別にみると、50代までは、50%前後の人が外国人と接する機会が『ある』と答えています。現役世代では、およそ半数の人が、外国人と日常的に接していると答えているんです。

 それでは、日本で働く外国人が増えることについては、どう思っているのか。結果は、このようになりました。

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 全体では、70%と多くの人が『賛成』していて、『反対』は24%にとどまっています。年層別でも、『賛成』は60代までは70%を超え、70歳以上でも58%と、すべての年層で半数を超えています。外国人労働者が増えることを容認する人が多いことが、今回の調査から分かりました。

 ただ、そうした外国人が、自分の家の近くに住むとなるとどうでしょうか。

自分の住む地域に外国人の住民が増えることへの賛否を尋ねた結果です。

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 全体では、『賛成』は57%と半数を超えていますが、日本で働く外国人が増えることに『賛成』の人が70%だったのに比べると、賛成の割合が減っています。
 これを、日本で働く外国人が増えることへの賛否別でみてみると、外国人労働者の増加に『反対』の人では、86%の人が、自分の住む地域に外国人が増えることにも反対しています。また、外国人労働者の増加に『賛成』の人でも、21%、およそ5人に1人は『反対』と答えていて、外国人労働者が増えることに賛同しながらも、身近には住んでほしくないと思っている人が、少なからずいることがわかります。

 調査では、外国人の増加に対する不安や期待、外国人が地域社会に溶け込めるようにするために国や自治体が取り組むべきこと、などについても尋ね、人々の意識を詳しく分析しています。調査の結果は、『放送研究と調査』8月号に掲載していますので、ぜひご一読ください。


調査あれこれ 2020年09月08日 (火)

#269 「データをもっと身近に!~国民生活時間調査の新サイト誕生」

世論調査部(視聴者調査) 木村義子


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文研サイトには、さまざまな調査結果の論考がPDFで掲載されています。
でも何だか「とっつきにくいな」とか、「調査データを使ってみたいけどPDFは扱いにくいな」…など感じたことのある、メディア関係者や研究者の方も、いらっしゃるのではないでしょうか?
 この新サイトは、それらを解決し、世論調査データをもっと多くの方に利活用して頂きたけたら…という思いでスタートした試みです。ぜひ、実際にサイトを、ご覧いただければ幸いです!

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 ・・・とその前に、このブログでは、国民生活時間調査について少しだけご紹介した後、
「ここをぜひ見て!」というポイントを3つご紹介します。手っ取り早く、サイトの魅力を知りたい方は、ぜひもう少しだけ、お付き合いください。

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 「日本人は1日をどんなふうに過ごしているのか」。国民生活時間は、ズバリ、日本人の生活そのものがデータから見えてくる調査です。1960年から5年ごとに、NHK放送文化研究所が行ってきた歴史ある調査で、統計の基礎データとして、各方面で活用されてきました。マスメディアへの接触のみならず、睡眠・仕事・学業・家事・レジャー活動・食事など、生活行動別に時間の使い方がわかることが特徴です。

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 今回、サイト制作で心掛けたのは、データを身近に感じてもらうこと。そのために、まずはデータを見て、実際にふれてほしい、と作られたのが、この動くバブルチャートです。

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 好きなデータを選び、時計を動かすと…様々な生活行動を表したバブルチャートの大きさが、時間と共に変わります。グラフは左右2つあり(スマホ版は「矢印」で左右グラフを切り替え)、2つのデータの比較もできます。使用しているのは、「時刻別行為者率」=1日の中で、ある時刻に該当の行動をしている人の割合を、15分ごとに示したデータです。
 例えば、この画像では、左側に2015年20代男性の平日、右側に2015年50代女性の平日のデータが選ばれていますが、朝7時~7時15分に、男性20代は【睡眠】【身のまわりの用事】【通勤】が大きく、女性50代は【家事】【マスメディア接触】【食事】が大きいことがわかります。同じ時刻でも、属性の違いで、生活行動が大きく違うことが、円の大きさで直観的にわかるようにしました。

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 調査結果を、1テーマごとに簡潔に紹介した「データにまつわる話」。いわば、コラムです。2015年調査の結果を中心に、全部で5つのコラムを掲載していますが、2020年秋にも調査を実施するため、新しい結果が出たら、コラムは増やしていく予定です。もし、コラムを読んで、詳しく知りたいと思ったら…「放送研究と調査」の関連記事ともリンクしていますので、ぜひ、あわせてお読みください。

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 そして最大のポイントは、1995年~2015年までの主な調査結果を、CSVデータとしてダウンロードできること。研究者の方やデータに関心のある方に、ご活用頂ければと思います。ダウンロードできるデータの種類は、バブルチャートの元となっている「時刻別行為者率」や、「全員平均時間量(日本人全体が、その行動に費やした時間量の平均)」などです。調査年や、どの種類の層(国民全体・男女年層別・職業別・在学別・都市規模別)のデータが欲しいか、選んでダウンロードできます。
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 生活時間調査のチームでは、この秋の2020年調査の実施に向けて、準備を進めています。今回は期せずして、コロナ禍での日本人の生活を調査でとらえることになりそうです。この新サイトと共に、2020年の結果(2021年公表予定)にも、ぜひご期待ください。


 

調査あれこれ 2020年09月01日 (火)

#267 千曲川決壊 住民の「8割避難」を可能にしたものは何か?

メディア研究部(メディア動向) 入江さやか


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写真:台風19号で堤防が決壊した千曲川 手前が長沼地区
(2019年10月13日午前7時すぎ NHK総合テレビ)


 東日本を中心に記録的な豪雨をもたらした昨年10月の台風19号(東日本台風)。千曲川が決壊し、集落が濁流にのみこまれました(写真)。しかし、決壊地点の長沼地区では住民の8割が、早い段階で危険を察知し、自宅を離れて避難していたことがNHK放送文化研究所の調査でわかりました。

住民の8割が「立ち退き避難」をしていた長沼地区
 NHK放送文化研究所は、台風19号で浸水したと推定される長野市長沼地区と隣接する豊野地区の20歳以上の男女1,000人を対象に、郵送法による世論調査を実施し、77.5%から回答を得ました。
 この調査では、回答者の51%が「自宅からほかの場所に避難した」、すなわち「立ち退き避難」をしたことがわかりました。過去の一級河川の氾濫事例に比べて、非常に高い避難率です。決壊地点のある長沼地区に絞ってみると、回答者(193人)の84%もの人が立ち退き避難をしていました。避難を始めた時間帯を聞いたところ、長沼地区では決壊前の午前3時台に78%の人がすでに避難しており、立ち上がりの早さも顕著でした(図)。

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図 長沼地区の住民が立ち退き避難を始めた時刻

早期避難の3つのキーワード 「(いぬ)満水(まんすい)」「隣互力(りんごりょく)」「川の防災情報」

 調査結果からは、こうした早期避難の背景には、3つの要因があることがわかりました。第一は、多くの住民が地域の「水害リスク」を認識していたことです。長沼地区には、1742年にこの地域を襲った大水害(いぬ)満水(まんすい)の浸水深を記録した水位標など、地域のあちこちに水害のリスクが「見える化」されていました。
 第二は、平常時からの取り組みです。毎年6月に地域ぐるみで防災訓練を行い、台風19号の際には、自治会役員が一人暮らしの高齢者などに声をかけて早めの避難を促しました。前・長沼公民館長の宮澤秀幸さんは、地域特産のリンゴにちなみ、この地域の防災力を隣互力(りんごりょく)と呼んでいます。
 第三が、積極的な防災情報の取得です。当時、防災情報を得ていたアプリやウェブサイトを聞いたところ、国土交通省の「川の防災情報」1)が35%で最多でした。「川の防災情報」では、川の水位や河川カメラの映像がリアルタイムで確認できます。自治体からの情報を受け身で待つのではなく、「取りに行く」姿勢も、早めの避難につながっていたようです。

新型コロナで「早めの避難」が一層重要に
 新型コロナウイルスの感染拡大により、避難場所での「3密」の回避が大きな課題になっています。今年7月の豪雨では、感染防止のために避難場所の定員が減らされていて、別の場所に“再避難”を余儀なくされたケースもありました。「3密」を避けるためにも、時間に余裕をもった「早めの避難」が一層重要になっています。

 今回の調査の詳細をぜひご一読ください。
令和元年台風19号における住民の防災情報認知と避難行動調査報告①
~長野・千曲川決壊 住民の「8割避難」を可能にしたものは何か?~


1) 国土交通省「川の防災情報」
  https://www.river.go.jp/portal/#80


調査あれこれ 2020年07月15日 (水)

#259 「なるほど!NHK世論調査」はじめました

世論調査部(研究開発) 原美和子


文研が実施した世論調査の結果は通常、このHPや「放送研究と調査」などで公開しています。単純集計、年層別の結果のグラフ、さらに過去の調査との時系列比較など、見ているだけで面白くて、もういくらでも時間が過ぎてしまいます。
知りたい母集団(たとえば有権者など、ですね)の意識や実態の分布がここから推測できるのは、世論調査ならではの醍醐味ですよね!ね!ね!

なんて熱くつぶやいても、「いいね!」してくださる方
は、残念ながらそう多くはないでしょうね。
事実、文研が2018年9月に実施した世論調査によりますと、テレビやインターネットなどで世論調査の結果を見聞きする頻度が「(よく+ときどき)ある」という人は60%、結果について、家族や友人と話題にすることが「(よく+ときどき)ある」という人は29%程度です。

これは残念、いやいや、あまりにもったいない。
     伝える工夫がまだまだ足りないんじゃないだろうか・・・・・

ということで、世論調査部でも、遅まきながら調査結果のデジタルコンテンツによる発信をぽつぽつと始めています。

今回新たにご紹介するのは、文研で1973年から実施している「日本人の意識」調査から、「男女・家庭の役割」です。

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たとえば、「結婚した女性が職業を持ち続けるべきかどうか」について。
「結婚して子どもが生まれても、できるだけ職業をもち続けたほうがよい(両立)」と考えている、としましょう。この場合、この意見を持つ人は、えー、最新の2018年調査では60%、多数派ですね。じゃあ調査を始めたころはどのくらい?と知りたくなったらこちらをスライド・・・

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1973年は20%とかなり少数派だったらしい・・・。
調査結果が次第に変化したのか、あるいは、変化しなかったのか、時系列変化の様子が、このスライドを使って視覚的に確認できます。

2018年調査の年層別結果もご紹介。少しだけ解説も付けました。

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最後の画面の仕掛けは、ぜひ実際に確かめてくださいね!

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さわってなるほど!NHK世論調査
冒頭の熱い思いを共有していただけるかどうかはさておき、まずはこのコンテンツ、ちょっと試してみませんか?

 

調査あれこれ 2020年07月10日 (金)

#258 中学校の授業で広がるメディア利用、でもスマートフォンは?

メディア研究部(番組研究) 宇治橋祐之


 新型コロナ感染拡大防止に伴う休校期間中、子どもたちは各家庭で学習を進めざるをえなくなり、デジタルメディアを活用したオンライン学習のニーズが高まりをみせ、さまざまなデジタルコンテンツの配信が進められました。
 文部科学省では、「子供の学び応援サイト~臨時休業期間における学習支援コンテンツポータルサイト~」1)を立ち上げ、経済産業省は「新型コロナ感染症による学校休業対策『#学びを止めない未来の教室』」2)で、教育(Education)にテクノロジー(Technology)を活用しようとしているEdTech事業者の期間限定・無料公開のコンテンツなどを紹介しています。
 また、小学校や中学校では「1人1台の学習者用PC」と「高速ネットワーク環境整備」を進めるGIGAスクール構想3)が前倒しで実施されることとなり、学校現場のメディア環境の整備はイラストに示すような方向に着実に進み始めています。

0710-1.jpg こうした学校のメディア環境の変化をとらえるために、放送文化研究所では継続して定期的な調査を行っています。昨年10月から12月にかけては、「NHK中学校教師のメディア利用と意識に関する調査」を実施しました。調査をお願いした全国の中学校の先生(理科、社会、国語、外国語)の6割以上の方からご回答いただきました。本当にありがとうございます。

 調査時期はコロナ禍の前になりますが、調査結果からは、テレビやパソコンなどのメディア機器を教師が利用できる一定の環境が整い、特にタブレット端末を利用できる環境にある教師が4教科とも6割を超え、生徒は1人1台での利用が多いことが明らかになりました。その一方で教室のインターネット環境は無線接続が6割を超えたものの、まだ動画を問題なく再生できるまでには至っていないこともわかりました。
 また、こうした機器で提示するメディア教材の利用は4教科とも8割を超え、授業でNHKの学校放送番組やウェブサイトNHK for Schoolを利用している教師は理科で63%、社会で56%に達しました。

 その一方で、生徒の学習へのスマートフォン利用については、授業での利用についても、家庭での学習においても否定的な意見が多いという結果も出てきました。主な否定的な意見には次のようなものがありました。
 「生徒の発達段階を考えても上手に学習にのみ利用することはかなりむずかしいのではないかと思う。」
 「視力の低下(画面の明るさによる)、姿勢の悪化(机やイスを使用せず長時間利用すると)などを考えると、あまり良くない。」
 「経済的に難しい生徒がいる以上、統一してやるには抵抗がある。」
学習効果や健康面への懸念、自己管理の難しさや経済的な負担について心配する先生方の声が寄せられました。

 ただし、少数ではありましたが、肯定的な意見もありました。
 「オンライン授業が多くなっており、生徒自身わからなくなった時にすぐ視聴できるのでいいと思う。」
 「これからの社会で生きていく上では、スマートフォン等を上手く活用する力が求められるため、中学生のうちからモラル、スキルを身に付けるべきだ。」

 調査後の2020年6月24日には文部科学省「「学校における携帯電話の取扱い等に関する有識者会議」審議のまとめ(素案)」4)で、「中学校における、学校への生徒の携帯電話の持込みについては、持込みを原則禁止としつつも、一定の条件のもと、持込みを認めることが妥当と考えられる。」とされ、持ち込み禁止を解除する方向性が示されました。中学校の先生の意識は今後変わっていくかもしれません。

「放送研究と調査」6月号『1人1台端末時代に向けて広がるメディア利用とその課題~2019年度「NHK中学校教師のメディア利用と意識に関する調査」から~』は、コロナ禍前の中学校のメディア環境や先生方の意識をまとめたものですが、これから先の中学校でのメディア利用について考える基礎的なデータを紹介しています。教育や子どもに関わる方以外にも、これからの社会を考えるためにぜひ読んでいただければと思います。


1) 子供の学び応援サイト~臨時休業期間における学習支援コンテンツポータルサイト~https://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/gakusyushien/index_00001.htm
2) 新型コロナ感染症による学校休業対策『#学びを止めない未来の教室』
https://www.learning-innovation.go.jp/covid_19/
3) GIGAスクール構想の実現について
https://www.mext.go.jp/a_menu/other/index_00001.htm
4) 「学校における携帯電話の取扱い等に関する有識者会議」審議のまとめ(素案)
https://www.mext.go.jp/content/20200624-mxt_jidou01-000007981_1.pdf


調査あれこれ 2020年06月24日 (水)

#256 減少する中流意識と変わる日本人の社会観

世論調査部(社会調査) 小林利行

みなさんは、下の図が何だがわかりますか。

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左の「A」は、底辺が分厚くて、中間が細く、天辺もやや分厚くなっています。
その隣の「B」は、底辺が分厚いのは同じですが、上に向かう程、細くなるピラミッド型です。
反対に、いちばん右の「E」は、逆ピラミッド型で、下が細く、上が分厚くなっています。

実は、これらの図は、下から上に行くほど豊かになる階層社会をイメージした図なんです。
底辺の「下流層」が最も多く、次に「上流層」が多くて、「中流層」が少ない「A」は、
格差が大きな社会を表しています。「B」⇒「C」⇒「D」と右に行くほど格差が小さくなり、
「下流層」が少なくて「上流層」が多い「E」は、格差が小さな社会というわけです。

NHK放送文化研究所では、1993年からISSPという国際比較調査グループに参加して、
10年ごとに、同じテーマで調査を行っています。
去年(2019年)のテーマは、さまざまな格差についての意識を探る「社会的不平等」で、
上の図を示して、どの図が理想の社会で、どの図が現実の社会だと思うか選んでもらいました。

日本の調査結果を示したのが下のグラフです。
20年前(1999年)と10年前(2009年)と比較しています。

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「理想」の社会では、20年前も、今も、「D」が最も多くなっています。
「中流層」が分厚く、「上流層」と「下流層」が少ない社会を「理想」と考える人が多いのです。

ところが、「現実」の社会は違います。今回、最も多かったのは「B」のピラミッド型でした。
2番目に「C」が多く、「D」は3番目になっています。
「現実」の「D」の20年間の変化をみると、1999年は32%だったのが、2019年は20%と、12ポイントも減っています。

これは、日本が「中流層」よりも「下流層」が多い社会になっていると思う人が、20年間で増えたことを示しています。

「中流意識の減少」という変化がみられる一方、日本人の社会観にも注目すべき変化が現れています。


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現在の日本の社会が、「学歴がものをいう社会」だと思うかどうか尋ねたところ、
『そう思う』という人は、20年前の86%から、今回は73%と10ポイント以上減りました。

その一方で、「自然や環境を大切にしている社会」だと思う人は、20年前は21%だったのが、
今回は37%と15ポイント以上増えています。

「出身大学がものをいう社会」「お金があればたいていのことがかなう社会」なども減り、
代わって「人との結びつきを大事にする社会」「人と違う生き方を選びやすい社会」などが増え、
若い年代を中心に、社会に対する見方が変わってきていることが、調査から見えてきました。

この論文は、「放送研究と調査」5月号に掲載しています。是非、ご一読ください!


調査あれこれ 2020年05月27日 (水)

#250 何が避難行動を後押しするのか!? ~「災害に関する意識調査」結果から~

世論調査部(視聴者調査)  中山準之助

 

突然ですが、いま、あなたが、大きな災害に見舞われたとします。 どういう状況になれば避難しますか?

また、放送で、アナウンサーに“どう呼びかけられたら”避難しますか?

 

阪神・淡路大震災から今年で25年。

地震や豪雨などの自然災害に人々はどう向き合っているのか、全国世論調査を実施しました。

 

その中で、「どうすれば避難行動を起こしてもらえるのか」、避難行動を後押しする “トリガー” について探りました。

まず、どのような状況のときに避難しようと思うのか。避難行動を後押しすると思うものを選んでもらった結果です。

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グラフからもわかるように、複数回答でも、1番目に答えた回答でも、順番はほぼ変わらず、

最も多いのが、「周囲の状況から危険を感じたとき」で、次いで、「消防団などから直接避難を促されたとき」、

「家族や知人に避難を強くすすめられたとき」など“身近な人などからの直接的な呼びかけ”が上位を占めました。

つまり、危険を自分事として捉えられたとき、人々は避難行動を起こすことがみてとれたのです。

 

また、アナウンサーからどのように言われたときに避難しようと思うかを尋ねた結果は、次のようになりました。

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最も多いのが、「詳細かつ身近な地名を言われたとき」。次いで、「直ちに、避難してください」。

これらから、差し迫った危険を自分事として感じてもらうためにも、

「どこ」にいる人が、「いつ」避難すべきなのか、具体的に示されることが必要であることがみえてきたのです。

 

では、放送で、“誰に”呼びかけられたら避難しようと思いますか?

その結果は、「放送研究と調査」2020年4月号で、詳しく紹介しています。

 

今回の調査では、避難行動を後押しする“トリガー”のほかにも、様々な質問をしました。

 

▼自宅での災害への備えが「不十分」と思う人が大半を占めている。

▼食料や飲み水を自宅で備蓄する人が減ってきている。

▼地域の高齢化や近所づきあいが減っていることを背景に、

  大災害時に住民どうしの助け合いが「期待できない」という人が増えている。  等々

 

調査結果から浮かび上がった災害や防災に対する人々の意識を参考に

地域の実情にあわせて、被害を減らす対策に役立てていただければ幸いです。

是非、ご一読ください。

 

メディアの動き 2020年05月22日 (金)

#249 放送局とメディア・リテラシーの歴史を振り返る

メディア研究部(番組研究) 宇治橋祐之

 

 新型コロナ感染拡大防止に伴う緊急事態宣言で、4月から5月は多くの人が在宅で過ごされたことと思います。家にいる時間が長くなるとメディアに接する時間も長くなり、テレビを見る時間や、スマートフォンやパソコンでインターネットに接する時間も通常より長くなっています。(こうした調査結果は今後の『放送研究と調査』でも報告が出る予定です。)

  メディアに接する時間が長くなると、メディアについて考えたり、疑問をもったりすることも出てくるでしょう。今こそメディア・リテラシーが必要だという声も、ネットで目にする機会が多くなりました。メディア・リテラシーとは具体的にはどういうことなのでしょうか。

  メディア・リテラシーという言葉は、ユネスコやEUなどがそれぞれに定義を示しており、また情報リテラシーやデジタルリテラシーというような用語も使われています。それぞれの定義には共通する部分も多いのですが、現状では多義的な言葉と言えそうです。

  日本ではメディア・リテラシーという言葉は「マスメディアが伝える情報を批判的に読み解く能力」という意味合いでとらえられることが多く、1990年代後半から広く使われるようになりました。この時期にNHKや民放でメディア・リテラシーに関する取り組みが進み、「放送分野における青少年とメディア・リテラシーに関する調査研究会 報告書」(2000年6月)では、下記の3つを構成要素とする複合的な能力として定義しています。

1.メディアを主体的に読み解く能力。

2.メディアにアクセスし、活用する能力。

3.メディアを通じてコミュニケーションを創造する能力。

  特に、情報の読み手との相互作用的(インタラクティブ) コミュニケーション能力。

「読解力」、「活用力」、「創造力」の3つの力の「相互作用」がメディア・リテラシーあるということになります。

 

 放送を通して、メディア・リテラシーについて、学んでもらう取り組みも行われています。NHKでは2001年度から、メディア・リテラシー教育に関する番組を放送しています。現在は『メディアタイムズ』というタイトルで、放送とあわせてウェブサイトNHK for Schoolでも動画を公開しています。

 番組はドラマパートから始まります。舞台は様々なメディアを取材する架空の映像制作会社メディアタイムズです。続くドキュメンタリーパートで、新聞やテレビ、ネットニュースなどメディアの現場を紹介。最後に再びドラマパートに戻って「メディアとの向き合い方を考える問い」を提示します。メディアのあり方について「対話」を通じて考え続け、ゆるやかな合意を形成していくことを重視しています。

 

『メディアタイムズ』

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 『放送研究と調査』4月号「テレビの読み解きからネットでのコミュニケーションまで~放送局のメディア・リテラシーへの取り組みの変遷~」では、こうした放送局のメディア・リテラシーへの取り組みの歴史をまとめています。

 メディアに接する時間が長いこの時期、今回紹介した番組や論考を通してメディア・リテラシーとは何かを考えてもらえると嬉しいです。