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調査あれこれ

調査あれこれ 2021年09月08日 (水)

#341 被災地の人々が求めている復興とは? ~「東日本大震災から10年 復興に関する意識調査」結果から~

世論調査部(社会調査) 中山準之助


 大津波が、太平洋側の沿岸部に押し寄せ、広い範囲に甚大な被害をもたらした東日本大震災の発生から、今年の3月11日で、10年になりました。
 あの日、私は、岩手県盛岡市にあるNHK盛岡放送局で勤務していました。緊急地震速報を知らせるアラーム音と自動音声が、館内に鳴り響いた直後に、放送局の建物全体が激しく揺れて、立っていられないほどの衝撃を感じました。その後、取材で目にした、津波や地震によって壊れた街の光景は、10年たった今も、鮮明に覚えています。

 あれから10年。復興と防災、原発事故に対する人々の意識を把握するため、世論調査部では全国世論調査を実施し、特に被害が大きかった岩手、宮城、福島の被災3県と全国の回答者の意識を比較して、分析を試みました。その結果、被災した県の人たちと、全国の人たちの意識には、大きなズレがあることが分かりました。

 例えば、震災直後に思い描いていた復興が、実現できていると思うかどうかを尋ねた質問では、「道路や建物」(図①)では、『実現できている』と答えた人が、被災3県で83%、全国でも75%に上ります。ハード面の復興については、被災した県以外でも、多くの人が、復興したと感じています。
 これに対し、「被災者の暮らし」(図②)では、『実現できている』と答えた人は、被災3県が59%なのに対し、全国は39%と少なく、意識に大きなズレがあることが分かります。
生活の復興については、地元で暮らす人たちのほうが、復興を実感できているようです。
ただ、同じ被災県でも、宮城県が65%に上るのに対し、岩手県は50%にとどまっていて、復興に対する意識に差が見られました。

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 そうした意識の差は、何から生じているのか、「国の復興対応の課題」への回答から見てみます。
 図③は、国の復興対応で大きな課題だと思うものを8つの項目から選んでもらい、その結果を、左から、全国の回答の多い順に並べたものです。

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 一番左の「原発事故への対応」は、全国、被災3県ともに、6~7割を超えています。
「復興予算の使い道」や「復興予算の規模」も、全国と被災3県の差は、あまりありません。

 しかし、「住宅再建への支援」や「人口減少への対応」では、全国と被災3県で、大きな差があることが分かります。
 さらに、被災3県のグラフを比べてみると、岩手県が、他の被災県より、回答が多くなっているものがあります。例えば、「人口減少への対応」は、岩手県では、被災する前から深刻な課題になっていました。震災後も、こうした地域の課題が解決されていないことが、復興を実感できない背景にはあるようです。

 今回の調査では、福島県の復興を進めるうえで、大きな妨げとなっている「原発事故」についても、詳しく聞いています。その結果の一部をご紹介します。

▽約7割の人が、国内では原発の利用を減らすか、やめるべきだと考えている。
▽福島第一原発の処理水の海洋放出に、全国では『賛成』18%、『反対』39%、『どちらともいえない』44%。
▽処理水を海に流すと魚介類への風評被害が起きると『思う』人は8割を超える。

 調査結果の詳細については、「放送研究と調査2021年7月号で紹介していますので、是非、ご一読ください。


調査あれこれ 2021年08月04日 (水)

#336 GIGAスクール構想と「オンライン学習」に向けたメディア利用

メディア研究部(番組研究) 宇治橋祐之


 今年の夏休み、小学生や中学生の子どもがいる家庭では、子どもたちが学校からパソコンやタブレット端末を持ち帰ってきているかもしれません。

 2021年度は「校内通信ネットワークの整備」と「児童生徒1人1台端末の整備」を柱とするGIGAスクール構想の実現により、全国の多くの小・中学校で1人1台の端末を使った学習が始まりました。夏休みについては、文部科学省から「ICT端末を活用した課題(生活の記録、日記、自由研究等)の検討」や、「緊急時の自宅等でのオンライン学習を想定した試行」などが全国の教育委員会に求められており1)、家で端末を使って自由研究をしたり、オンライン学習をしたりしている子どもたちの姿をみることもあるでしょう。

 これまで授業でのメディアの利用は、教師がデジタルテレビやプロジェクターなどの大きな画面に教材を提示する形式が中心でした。子どもたちがパソコンルームなどで1人1台の端末を利用することはありましたが、今年度から本格的に自分だけの端末を使えるようになったのです。

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 文研では2013年度から、各クラス(教師)単位でのメディア環境や利用の実態、そして教師のメディア観や教育観を調べるために「教師のメディア利用と意識に関する調査」を継続して行っています。小学校、中学校、高等学校、特別支援学校それぞれの調査結果は、文研のウェブサイトに公開しています。

 2020 年度は小学校教師を対象とした調査を予定していましたが、①新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う学校の臨時休業があり、経年比較が難しいこと、②「オンライン学習」への関心が急速に高まっており、NHKでも新規サービスを行ったこと(この調査では、教室での対面授業をオンラインで行う「リアルタイム型または録画授業型のオンライン授業」とともに、学校が指定したインターネット上の教材を利用して、児童・生徒が家庭で行う学習全てを「オンライン学習」に含めています。)、③「GIGA スクール構想」によって学校のメディア環境が変わろうとしていること、などの理由から新型コロナ下の小学校、中学校、特別支援学校(小学部、中学部)のメディア利用の全体状況を把握するための特別調査を行いました。

 調査結果からは、教師が利用できるメディア機器やインターネット接続の環境は整い、「指導者用のデジタル教科書」や「NHK for School(NHKのテレビ学校放送番組とウェブサイト)」などのメディア教材の利用が、すべての学校種で9割を超えていることがわかりました。また、全体で9割前後の学校が,パソコンとタブレット端末のいずれかを児童・生徒に利用させていて、授業での利用が浸透している様子がみられました。

 また、家庭における「オンライン学習」は,臨時休業の期間(2020年4~5月)のみ実施した学校も一定数存在しましたが,調査時点(2020年10~12月)でも,学校種により差はあるものの3~4割の学校が実施していて、今後の実施意向もみられました。

 「放送研究と調査」2021年6月号「GIGAスクール構想と「オンライン学習」に向けたメディア利用~ 2020 年度「新型コロナ下の小学校,中学校,特別支援学校での メディア利用に関する調査」から~」では、こうした各学校種のメディア利用の状況と、オンライン学習の実施状況とその課題についてまとめています。学校でのメディアを利用した学習だけでなく、家庭でのメディアを利用した学習にこれから何が必要かを考える基礎情報として、読んでいただけるとありがたいです。


1) 「GIGA スクール構想の下で整備された1人1台端末の積極的な利活用等に向けた夏季休業期間中における取組について」(文部科学省)
    https://www.mext.go.jp/content/20210713-mxt_jogai01-000011648_1.pdf


調査あれこれ 2021年08月02日 (月)

#335 国民生活時間調査サイトに新しいコラムを追加しました

世論調査部(視聴者調査) 渡辺洋子


1日にテレビを見ている人の割合は?
日本人の睡眠時間の平均は?

このようなことがわかる国民生活時間調査ですが、結果を目で見て比較出来たり、ダウンロードできたりする便利な特設サイトがあるのをご存知でしょうか?

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特設サイトには、分析を担当した研究員による結果の紹介や、生活時間調査にまつわる話のコラムも掲載しています。

8月からは、新たにこの2本を追加しました。
「コロナ禍で睡眠時間は増えた?減った?」
「在宅勤務はどこまで広まった?」

今後も随時、コラムを追加していくので、是非ご覧ください!

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答え    国民全体で平日にテレビを見ている人の割合 79%
      平日の国民全体の睡眠時間 7時間12分


調査あれこれ 2021年07月28日 (水)

#334 予想外?予想どおり? 日本人の環境意識

世論調査部(社会調査) 村田ひろ子


210728-11.jpg 皆さんは、スーパーやコンビニで買い物をするとき、レジでレジ袋をもらっていますか?それとも、持参した袋に買った商品を入れていますか?
 文研が実施した環境に関する世論調査※1の結果をみると、レジ袋の有料化が義務付けられる前(206月以前)では、レジ袋を「毎回もらっていた」が53%と過半数を占め、「必要なときにだけもらっていた」(41%)を合わせた『もらっていた』は94%に上ります。
一方、有料化が義務付けられた後(207月以降)では、「毎回もらっている」は、わずか3%で、「必要なときにだけもらっている」を合わせた『もらっている』は50%です。レジ袋をもらっている人は、有料化が義務付けられた後、大きく減少したことになりますが、これは、ほぼ予想どおりの結果でした。

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 一方で、レジ袋の有料化が、プラスチックごみの削減につながると思っている人は、予想以上に多くいました。有料化がプラスチックごみの『削減につながる』という人は70※2で、『削減にはつながらない』の28%を大きく上回っていたのです。ペットボトルなどのプラスチック製品も大量に使われているので、レジ袋を有料化してもプラスチックごみの『削減にはつながらない』と考える人が多いのでは?と予想していたので、私はやや意外に感じましたが、皆さんはどう思われますか?

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 調査では、人々が気候変動問題をどうとらえているかについても尋ねています。「気候変動による世界的な気温の上昇」が危険だと思っている人は、どれくらいいたのでしょうか・・・?
 答えは75%! 調査方法が異なるため単純な比較はできませんが、10年前の調査でも、76%もの人が気温の上昇を危険視していて、多くの日本人が気候変動を心配していることがうかがえます。

 「放送研究と調査」2021年6月号では、「脱炭素時代」を迎え、日本人が環境問題とどう向き合い、行動しているのか、世論調査の結果からご紹介しています。2011年の福島第一原子力発電所の事故を受けて、原発や放射性廃棄物に対する意識がどう変わったのかも注目のポイントです。ぜひご一読ください!!



※1 ISSP国際比較調査「環境」・日本の結果 時期:20201028日~122日、
   調査方法:郵送法、調査対象:全国18歳以上の2,400人、調査有効数(率):1,491人(62.1%) 

※2 回答結果をまとめる場合は、実数で足し上げて%を計算しているため、
   単純に%を足し上げた数字と一致しないことがある。

調査あれこれ 2021年07月16日 (金)

#333 コロナ禍のストレス事情 ~「新型コロナウイルス感染症に関する世論調査」から~

世論調査部(社会調査) 原 美和子


 毎日発表される感染者数やワクチン接種の進捗状況、そして感染拡大の不安の中で開催される東京五輪・パラリンピック大会・・・・・。新型コロナウイルスに振り回される日々が相変わらず続いています。
 NHKは、この新型コロナウイルス感染症について、2020年11月から12月にかけて、初めて体系的な世論調査を実施しました(調査結果の詳細は、「放送研究と調査」6月号「新型コロナは私たちの暮らしや意識をどう変えたか」で報告しています)。
このブログでは、その中から、“コロナ禍のストレス事情”についてご紹介します。

withコロナはwithストレス
 感染拡大前と比べて、ストレスを感じることが「大幅に増えた」人は14%、「ある程度増えた」人は53%で、3人に2人がストレスを感じることが『増えた』と感じています。

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 そのストレスの中身は、具体的にどのようなものなのでしょうか。ストレスを感じることが『増えた』人に、11の選択肢の中からいくつでも選んでもらった結果がこちらのグラフです。
「マスクの着用など感染防止対策に気を遣うこと」(グラフでは「感染防止への配慮」)、「気軽に遊びに行けないこと」、「自分や家族が感染するかもしれないと考えること」(グラフでは「感染するかもしれないと考えること」)をストレスと感じている人が、いずれも7割を超えています。

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 ところで、こうした「ストレス要因」の中には、若い人にはストレスになっているけれど、高齢の人はそれ程つらいと思っていないもの、また、特定の年代の人に特にストレスになっているものがあるようです。

次のグラフは、11の項目のうち、4項目について、男女年層別の結果を示したものです。

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このAからDのグラフは、次の4項目のどれに当たると思いますか(正解はブログの末尾をご覧ください)?

「感染防止への配慮」
「家事や育児、介護の負担が増えていること」
「気軽に遊びに行けないこと」
「仕事や学業が思うように進められないこと」

コロナ禍のストレス解消法は?
 何とかしたいコロナ禍のストレス、みなさんはどう解消していますか?
ストレスを感じることが『増えた』人に、ストレスの解消法について自由に答えてもらった結果をご紹介します。 

その1)「自宅で●●」
 「庭の手入れ」「読書やパズル」「料理やお菓子作り」「テレビや録画した番組、動画を見る」など、ステイホームが求められる中、家でできる楽しみが多く挙げられました。

その2)密を避けつつ外へ
人が少ない時間帯に散歩や運動をしたり、市民農園で畑仕事をしたり、ドライブに行くなど、感染防止に気を使いつつ、外に出て気分転換をしている人も多いようです。

その3)誰かとつながる
電話やメール、SNSでのやりとりや、オンライン飲み会など、会いたい人と思うように会えない中、さまざまな形でコミュニケーションをとっていることがうかがえます。

その4)今はひたすら・・・・
我慢する・あまり深刻に考えないようにしている・あきらめるという人もいました。ストレスが解消されるというより、あまり振り回されないようにすることで、ストレスを増やさない、ということでしょうか。

その5)なるほど!
 最後に、印象に残ったものをいくつかご紹介します。どうでしょう、気持ちがちょっと前向きになる気がしませんか?

「大きな声で歌う」 「笑顔で過ごす」 「感染が収束したあとにやりたいことを考えて準備する」 「新型コロナについて正しい知識や情報を得る」

 ワクチン接種がようやく軌道に乗りつつあるとはいえ、感染の収束は見通せない状況です。新型コロナとの生活はまだまだ続き、すぐにストレスが減ることは期待薄かもしれません。自分に合ったストレス解消法を見つけて、少しでも気分よく毎日を過ごしていきたいですね。


【正解】
感染防止への配慮=A
家事や育児、介護の負担が増えていること=D
気軽に遊びに行けないこと=B
仕事や学業が思うように進められないこと=C



調査あれこれ 2021年04月22日 (木)

#316 「エヴァとラジオと私の25年」

世論調査部(視聴者調査) 保髙隆之


1996年3月27日の夕方。入社式を数日後に控えた私は大学の同級生の部屋にいました。
友人は地元の会社に就職して実家に戻ることになっており、ちょっと感傷的な気分だったのを覚えています。
その友人から、パソコン通信(!)で話題になっているアニメの最終回の放送があるので見よう、と誘われて戸惑いました。ツイッターもLINEもない時代、子ども向け以外のアニメは一部のマニアだけが盛り上がるもの。私は全く知らない作品だったからです。しかしながら、その後の30分にわたる放送時間は、学生時代の最後の思い出として、強烈に胸に刻まれました。
そのアニメのタイトルは「新世紀エヴァンゲリオン」です。(最終回がどんな内容だったかご存じでない方は、検索をしてみてください。リアルタイムで、しかも、人生のあの時期に見ることができたのは幸運でした。)

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あれから25年目の春。
現在公開中の映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は、(これはネタバレにならないと思いますが)観客が現実の世界で過ごした25年間という時間の経過さえ取り込んだ、孤高のエンターテインメントになっており、また、強く「卒業」を意識させる作品でした。見終わった後、すっかり忘れていた学生時代の自分の姿が思い出され、あれから「変わったこと」と「変わらなかったこと」を改めて考えさせられました。
自分語りが長くなって申し訳ありません。もう少しだけ、お付き合いください。
25年前から「変わったこと」。その1つが「ラジオ」です。
私の学生時代、受験勉強の友といえば、深夜のラジオでした。音楽の流行も、好きな有名人の日常も、情報源はラジオ。家族そろってお茶の間でみるテレビとは違い、自由でとんがった話や、ほかのリスナーやパーソナリティーとの「共犯感覚」は、まだまだ青く、自意識過剰だった当時の私にとって、もっとも身近に感じられるメディアでした。
しかしながら、社会人生活が続く中で、ラジオはいつのまにか遠い存在になってしまいました。それは私だけではないようで、文研の「全国個人視聴率調査」の結果をみると、25年前、1996年のラジオの週間接触者率は43%。直近の2019年調査では30%まで落ち込んでいます(NHKと民放、AMとFMを含む)。代わって、SNSやYouTubeが日々の暮らしの中に入り込むようになってきました。
ところが、2020年。コロナ禍の日本でラジオが再び脚光を集めたのをご存じでしょうか。雑誌で次々に特集が組まれ、ネットラジオ「radiko」ユーザーの急増がニュースになりました。文研が7月に実施したグループインタビュー調査でも、「ジムに行けなくなり、代わりに始めたジョギングのお供に聴き始めてハマった」とか「在宅勤務中、音がないと寂しくてラジオをつけるようになったが、暗いニュースやリモート演出ばかりのテレビと違って、以前の日常が続いている感覚がして落ち着く」など、ラジオを再評価する声が相次ぎました。いったい、ラジオは今、どのように聞かれているのでしょうか。(やっと本題です。)
次のグラフは2020年7月に文研が郵送法で実施した世論調査の結果です。(図1)

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上の棒グラフは全国の7歳以上の人が、伝統的な「放送」と「インターネットラジオ」をどう組み合わせてNHKと民放のラジオを聞いているか(週間接触者率)を示しています。

「放送のみ」が3割近くを占め、まだまだネットラジオの比重を大きく上回ることがわかります。
ただ、年層別に分けてみてみると、20代では「ネットラジオのみ」で聞いている人が「放送のみ」で聞いている人と同程度に迫っています。また、図2のとおり、「radiko」は近年、利用経験率が順調に伸びていて、今回の調査では11%に達しました。

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少ないと感じられるかもしれませんが、この調査の1%は総務省の人口統計で換算すると100万人超に相当するので、おおまかにいっても1,000万を超えるユニークユーザーが利用したことになります。日本でこれだけのメディアパワーを持つインターネットサービスはそう多くないはずです。
25年という時間は、1人の大学生をくたびれた中年サラリーマン(私のことです。)にし、「エヴァンゲリオン」を完結させただけでなく、「ラジオ」というメディアが新しく生まれ変わるのに必要な時間だったのかもしれません。
コロナ禍に揺れた2020年の日本のメディア環境の動向について、「放送研究と調査」3月号の「人々は放送局のコンテンツ,サービスにどのように接しているのか」では他にも詳しく報告しています。ぜひ、ご一読ください。


調査あれこれ 2021年01月25日 (月)

#295 「オンデマンド化」と「有意義な」時間へのニーズの高まり ~「新型コロナウイルス臨時休校・休園時と再開後の,子どもと保護者のメディア行動調査」から~

メディア研究部(番組研究) 宇治橋祐之


 このブログを書いている1月21日現在、11都府県で2回目の緊急事態宣言が出ています。今回は小中学校や高校などへの一斉休校の要請はありませんでしたが、学級や学年単位での休業や、感染リスクの高い部活動などの制限は行われています。大人の生活だけではなく、子どもたちの生活も大きく変わらざるを得なくなりました。学びたいのに学べない状況も生まれています。
 NHKでは現在「#学びたいのに いま、学びを守ろう」というキャンペーンを進めており、学びを守るために何が必要か、みなさんの声をもとに取材・放送した内容を特設サイトで紹介しています。

 子どもたちはいったいどんな状況にあり、どんなことを感じているのでしょうか。文研では、昨年4月の臨時休校・休園時と6~7月の再開後に緊急調査を行いました。
 限られた期間の調査だったこともあり、ウェブを使った全国調査をまず行い、さらにMROCという専用の掲示板を利用した調査を組み合わせました。ウェブの調査では、全国の幼稚園・保育園児から小学生、中学生、高校生までの子どもを持つ保護者と高校生に回答をお願いし、MROCでは小学生、中学生の保護者と中学生、高校生に協力を頂きました。

 調査では大きく「メディア行動の変化」と「生活の変化」についてと、パソコンやタブレット、スマートフォンなどの機器で利用されるさまざまな「デジタル学習教材」について調べました。

 「メディア行動の変化」については、「休校・休園前の通常時」「4月の休校・休園時」と比べて「6~7月の再開時」にどう変わったかを尋ねました。その結果「テレビ」については、「6~7月の再開時」に「休校・休園前の通常時」と比べて利用時間が「増えた」子どもは「減った」子どもより多い傾向でした。また「4月の休校・休園時」との比較では「増えた」と「減った」が、ほぼ同じ程度でした。それに対して「スマートフォン」は、「休校・休園前の通常時」、「4月の休校・休園時」と比べると、いずれも「6~7月の再開時」に利用時間が「増えた」子どもが多いという結果でした。休校・休園期間を経て子どもたちの生活に「スマートフォン」がますます定着した様子がみられます。さらに分析を進めると、好きな時に自由に見られる「オンデマンド」という要素の重要性が高まっているようでした。
 この背景には「生活の変化」がありそうなこともみえてきました。「ストレス」に関する質問への回答からは、「ストレスが多重にかかる状況」が継続している様子がみられ、ストレスを感じている子どもほど、メディア接触時間が長いという傾向もありました。そしてオンライン掲示板のMROCの投稿内容の分析から「有意義へのニーズ」というキーワードがみえてきました。ただし求める有意義の意味は休校・休園時と再開後では少し異なります。休校・休園時は、家族で過ごす時間が長くなる中、テレビに対して「家族で楽しむことで、家族間のコミュニケーションをよくする効果」を感じている人が多いようでしたが、再開後は「貴重な少ない時間の中で、いかに有効・効率的にストレス解消をするか」にはスマートフォンで動画やゲームをするほうがよいと考える人が増えたようでした。

 「デジタル学習教材」についてみると、休校・休園期間を経て利用は広がったけれど、それは学校などからの指示によるためで、必ずしも興味をもつ子どもや保護者が増えたわけではないこともみえてきました。その一方で実際にデジタル学習教材を利用した結果、これまでみえなかった多様なニーズがわかってきました。その大きな方向性は、メディア接触の変化でみられた「オンデマンド化」と「有意義へのニーズ」と重なることが多く、自分のペースで学べることや、「楽しさ」だけでなく「わかりやすさ」を求める傾向がみられました。

 この先の状況はまだわかりませんが、臨時休校・休園というこれまでにない時間を経て、子どもたちにどんな変化があったのか、詳細な結果と、保護者や子どもたちのリアルな声は「放送研究と調査」2020年11月号12月号で紹介しています。これから先の子どもたちに何が必要かを考える際に、読んでいただけるとありがたいです。



調査あれこれ 2021年01月22日 (金)

#294 江川と銚子商業と、親父の1973夏

メディア研究部(メディア動向) 大髙 崇


現在、コロナ禍を契機として昨年春から激増した再放送(総集編なども含むアーカイブ番組の再利用)についての調査研究を行っています。
(※昨年の11月25日12月25日のブログもご参照ください)
今回は、この研究をしようと思った動機のひとつについて書きたいと思います。ただ、とてもローカルでプライベートな話なのでお目汚しにならないといいのですが・・・。

「きょうの、BSの、江川と銚子商業。見たか?」
昨年(2020年)、6月14日の午後。
実家を訪ねた私に、82歳になる父親が興奮気味に話しかけてきました。

その日の午前中にNHK・BS1で放送されたこの番組のことです。
『あの試合をもう一度!スポーツ名勝負 1973夏 銚子商×作新学院 “怪物江川 最後の一球”』

のちに読売ジャイアンツのエースとして活躍した江川卓選手。1973年、作新学院(栃木県)の投手だった頃は、豪速球で三振の山を築き、高校野球界で「怪物」の異名を轟かせていました。
その江川投手の、夏の甲子園最後の試合が、2回戦での銚子商業(千葉県)との一戦。
0対0で迎えた延長12回裏、満塁のピンチでフォアボールを与え、押し出しサヨナラで作新学院は敗退したのです。

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番組は、当時の試合の中継映像(しかもモノクロ!)を、初回から試合終了まで、ほぼ全編放送していました。

千葉県銚子市に近い街に住む父親は、この試合をリアルタイムで見ていました(47年前、父・35歳の夏)。
父親にとって、「黒潮打線」で鳴らす銚子商業は地元の誇りであり、怪物・江川を攻略したこの一戦は、数え切れないほど見た高校野球の中でも最も印象深い思い出のひとつでした。

その前年(1972年)、銚子市の球場で銚子商業と作新学院の試合が行われ、父親は観戦に行ったそうです。黒潮打線は江川の豪速球にまるで歯が立たず、次々と三振を重ね、満員の観客席で呆気にとられたとか。その日の銚子の海風の酷さも手伝って、途中で帰りたくなったと言います。
その悔しさもあって、翌年の甲子園で、ついに宿敵・江川に勝利した試合をテレビで見ていた時の緊張と興奮の記憶が、47年ぶりに蘇ったようでした。

さらに、銚子商業を率いた名将・斎藤一之監督が地元の人々にどれほど尊敬されていたか、漁師町・銚子のあの頃の活気、仲間たちとの思い出・・・。父親は実に機嫌よく、饒舌に語りました。
挙句の果てに、「いいもの見せてもらった。ありがとう」と私に礼まで言う始末。この番組の放送に私は何ら関わっていないのですが、そこはまぁ、これも一つの親孝行ということにして、曖昧に照れ笑い、といたしました。

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でも私はつい、「結果がわかっている試合を、最初からずっと見せられるのでは途中で飽きてしまうだろう。延々と0対0のままだし」と水を差してしまいました。

コンパクトに編集したダイジェスト版のほうが見やすいのではないか
、と思ったのです。

しかし、これを父親はきっぱり否定しました。
「いや違う。あの時、俺が見ていた『そのまま』がいい。その時の気分に浸れるからいいんだ。あれやこれや、じわじわ蘇ってくるのがいいんだよ。短くされちゃこうはいかない。気分が乗らないよ」

そう言われた私は、再度この番組を全編見直してみました。すると、いろいろと発見があって面白いことに気づきました。

平日で天気が悪く、2回戦であるにも関わらず、球場は56,000人の超満員。外野席、センターのバックスクリーンにも観客があふれて、当時の江川人気が実感できます。
この日、江川の調子は万全ではなく、たびたびピンチに陥ります。ただ、ここぞという時にはギアチェンジして剛速球を投げ、ピンチをしのいでいました。銚子商業の粘り強い攻撃と、雨。江川は明らかに消耗し、敗戦に至ったことがわかります。

再編集によるダイジェスト版では伝わらない時間の流れや細部は、リアルタイムで見ていた父親には臨場感とともに記憶を生き生きと蘇らせ、私には新鮮な発見をもたらしました。
結果がわかっているスポーツ中継であっても、あえて編集しない良さに気づきました。
昔の番組を放送で再利用する場合、「本編そのまま」「再編集・ダイジェスト」など、どのような作り方が望まれるのか。この時の父親とのやりとりも、再放送の調査研究に取り組む動機になった、という次第です。お粗末様でした。

再放送に関する調査研究の内容は、「文研フォーラム2021」で、また、まもなく発行の『放送研究と調査』2月号でもお伝えする予定です。どうぞお楽しみに!


調査あれこれ 2020年12月11日 (金)

#289 新型コロナ・休校・休園で家庭とメディア利用に何が起きたのか?~「新型コロナウイルス臨時休校・休園時と再開後の,子どもと保護者のメディア行動調査」から~

メディア研究部(番組研究) 谷 正名


 それは、かなり唐突な印象を受けるニュースでした。今年2月27日,安倍首相(当時)が、新型コロナウイルス感染症対策本部において,全国すべての小学校,中学校,高等学校,特別支援学校に臨時休校・休園を要請したのです。休校・休園という大枠だけが頭ごなしに決まったこのニュースを聞き、あとの諸々の具体的なことへの「対応」は、学校や家庭など、現場や子どもの周囲の人々に「丸投げ」になりそうだな、と直感した記憶があります。

 私事ですが、我が家には、高校3年と中学1年(当時)の子どもがおります。また、妻は非常勤とはいえ仕事を持っています。まず頭をよぎったのは、自分たち家族のくらしが、この休校・休園宣言によってどうなるのだろう、というさまざまな「不安」でした。勉強はどうなるのか、部活はどうなるのか、上の子の卒業式やその関連行事はどうなるのか、そして家にいて子どもたちはどう過ごすのか、昼の食事はどうするのか……、不安要素を数え上げれば、きりがありません。そもそも当の親も、この先まともに仕事場に行けるかすら、定かではないのです。

 実際、自分の子どもたちの休校が始まると、空間的には家に閉じこもるしかなく、一方で時間だけはありあまるほど自由にある、そして学校からの指示は皆無に等しい、という、かなり「非日常的」な状況が現出しました。その結果、上の子はスマートフォンに、下の子はテレビゲームの「フォートナイト」に、どっぷりとはまっていきました。親が家庭学習などをやってほしいと思っても、宿題が出ていない以上やる気配はありません。さらに(意外と大きかったなと思うのが)保護者同士の井戸端会議的なものもなくなり、他の家庭の情報もあまり入ってこないのです。夫婦ともに在宅勤務が増えると、その状況をずっと目の当たりにすることになります。不安はさらに募っていきます。親子とも機嫌の悪い日が増え、どうにも家庭内がギスギスします。そして、これがいつ終わるか、誰からも全く見通しが示されないのです。

 そんなタイミングで、局内で、新型コロナによる休校・休園で親子のメディア行動やデジタル教材の認知・利用動向はどうなっているのか、緊急に調べてみたらどうか、という声が上がりました。自分の実体験から、実態やその背景にある意識など、調べて記録すべきことは山ほどあると思いました。また、「子どもも保護者も相当なストレスを抱えていて、そのことがメディアをめぐる意識や行動に影響を与えているのでは」という仮説が、すんなりと頭に浮かびました。

 「放送研究と調査」11月号12月号の2号にわたって結果・分析を報告した調査は、こうしてスタートしました。不安・ストレスとメディア利用の関係についても、当初の私の想像以上に明確な結果が現れました。アップ・トゥ・デートな報告・論考になっていると思います。ぜひご一読ください。

調査あれこれ 2020年12月04日 (金)

#288 日本は世界で何番目? 文研が担う国際比較調査「ISSP」

世論調査部(社会調査) 村田ひろ子


突然ですが、下のグラフ、なんの結果だかわかりますか? 日本は57%で過半数ですが、それでも最下位です。

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 答えは、「仕事に満足している」男性の割合です。日本の結果だけをみれば、仕事に満足している人は6割近くいて、それなりに多いようにもみえますが、諸外国と比べると、かなり少ないことがわかります。
 このように、調査データの国際比較を行うことで、国内の調査だけでは把握できない、日本の国際的な立ち位置を知ることができます。
 冒頭で紹介したグラフは、国際比較調査グループISSPInternational Social Survey Programme)が2015年に実施した「仕事と生活(職業意識)」調査の結果です。
 ISSP1984年に発足し、約40の国と地域の研究機関が加盟して、毎年、共通のテーマで世論調査を実施しています。

12042.png                  ISSPに加盟している国・地域(202011月現在)

 日本の調査は、NHK放送文化研究所が担当していて、1993年以降、毎年欠かさず調査を実施しています。これまでに、「政府の役割」「家庭と男女の役割」「環境」「宗教」など多岐に渡るテーマで調査を行ってきました。そうした調査からは、政治や社会、家庭生活、働き方などに対する日本と世界の人々の意識の違いをみることができます。
 ISSPのデータは、各国の研究者に高く評価されています。世界中で様々な調査が行われているなかで、ISSPが評価されるのはなぜでしょう。理由の 1つには、ISSPの加盟国が、科学的な手法に基づいて国民を代表するサンプル(調査相手)を選び、精度の高い調査を実施していることが挙げられます。また、毎年1つのテーマで調査を行い、特定の領域に対する人々の意識を詳細に把握できることや、10年ごとに同じテーマの調査を繰り返し実施することで、10年前、20年前の結果と比較した時系列の変化をとらえることもできます。

 そんなISSPも新型コロナウイルスの世界的な流行により、大きな影響を受けています。今年4月下旬にアイスランドで開催される予定だった年に一度の総会は、ISSPの発足以来、初めて中止されました。しかし、各国間のやりとりは、メールやオンライン会議で活発に行われ、来年(2021年)実施する調査には、コロナ関連の質問を盛り込むことになりました。人類が直面している課題について、世界規模での世論調査を実施し、各国の人々が感染症の脅威にどう立ち向かっているのかを把握することの意義は大きいと言えるでしょう。

 「放送研究と調査」2020年11月号では、英文を翻訳して3年がかりでつくる調査票作成の裏話など、担当者しか知らないISSP調査の舞台裏を惜しみなく(?)紹介しています。ぜひご一読ください!!