文研ブログ

調査あれこれ 2022年05月10日 (火)

#394 事態長期化で試されるG7の結束~放置できないロシアの侵攻~

放送文化研究所 研究主幹 島田敏男

  ロシア軍のウクライナ侵攻が始まってから2か月半。攻撃はウクライナ南東部を中心に止むことなく続き、ウクライナ軍の反撃も継続しています。

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  5月9日の「対ドイツ戦勝記念日」にモスクワ・赤の広場で行われた式典でプーチン大統領が行った演説の2か所のフレーズに、私は「なるほど」と問題の所在を感じ取りました。

  ① 「ロシアにとって受け入れられない脅威が国境付近にある」
  ② 「我々の兵士は異なる民族同士が兄弟のように互いに銃弾や破片から身を守りながら戦っている。これこそがロシアの力だ」

  一つは今回の事態を招いたのはNATOの東方拡大を推し進めてきた西側の国々であると自らの行動を正当化する論理。もう一つは多民族国家を一つにまとめていくことが、大祖国ロシアの指導者である自分の役目だという自己主張の現れです。

  第2次大戦の反省から生まれた国際連合の発足以来、戦争・紛争の事態に対しては、当事者双方の言い分に耳を傾け冷静に判断するのが現代の常識とされています。

  しかしながら、国連の安保理常任理事国P5の一つであるロシアが、相手のウクライナ国民の大多数が望まない“ロシア化”を押しつけることを目的に、一般市民から多くの犠牲者を出し続けている行為を放置することはできません。

  この日の朝、今年のG7議長国であるドイツの呼びかけでオンライン首脳会議が開かれ、ロシアに対する経済制裁の強化を打ち出しました。具体的な内容は「ロシアからの石油の輸入を即時または段階的に禁止する」というものです。禁輸の時期に幅を持たせ曖昧にしているので玉虫色と言えば玉虫色です。

  それでも6月26日にドイツ南部のエルマウで開催されるG7首脳会合を前に結束を再確認し、各国の事情に応じて同じ方向に足並みを揃えてみせることの政治的意味は大きかったでしょう。

  G7の中で最もロシアへのエネルギー依存度が高いドイツが議長国であり、そのドイツが音頭をとったことは、アメリカ主導で物事を進めるよりインパクトが大きかったのは確かです。

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  岸田総理はドイツのショルツ首相と綿密に連携を図り、日本が非軍事的な手段でG7のウクライナ支援に積極的に加わる方針を早い段階から伝えていました。

  今回のウクライナ侵攻の事態に際し、岸田総理は一貫してロシアに厳しい姿勢を示してきました。懸案である日ロ平和条約と北方領土を巡る話し合いが一時中断してもやむをえないと判断したこと。そしていち早くプーチン大統領自身を資産凍結リストに載せたこと。この2点は内外の外交関係者の間で「極めて明確なメッセージだ」と受け止められています。

  こういう情勢の下、5月のNHK電話世論調査は6日(金)から8日(日)にかけて行われました。

☆「ロシアのウクライナへの軍事侵攻に対する日本政府のこれまでの対応を評価しますか」と聞きました。3か月連続の質問です。

  「評価する」  68%   (3月⇒58%、4月⇒71%)
  「評価しない」 25%  (3月⇒34%、4月⇒21%)

  岸田内閣のとったロシアに厳しい姿勢、そして非軍事的な方法でのウクライナ支援はおおむね肯定的に受け止められています。

  今月の「評価する」68%を詳しく見ると、与党支持者で75%、野党支持者で69%、無党派で65%となっていて、政治的な立場に違いがあっても、受け止め方に大きな違いは見られません。

☆「あなたは岸田内閣を支持しますか。支持しませんか」

  「支持する」  55%  (3月⇒53%、4月⇒53%)
  「支持しない」 23%  (3月⇒25%、4月⇒23%)

  去年10月の岸田内閣発足以来、コロナ禍にさいなまれながらも支持率はほぼ50%台で推移しています。そして3月以降は、ロシアのウクライナ侵攻に対する対応への評価が下支えしていると見ることもできそうです。

  5月9日のプーチン大統領の演説からは、ウクライナでの戦闘を一気に拡大しようという攻撃性は窺えず、国民の愛国心を鼓舞しつつ名誉ある着地点を探っているようにも聞こえました。

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  ロシアが大量破壊兵器の使用に踏み切ることは何としても思いとどまらせなくてはいけませんが、通常兵器での局地戦は長期化が避けられないという見方が広がっています。

  日本を含めG7はウクライナ支援の先頭に立つことになりますが、一方でそれ以外の国々への連携の働きかけを進めることも重要です。

  アジアで唯一のG7メンバーの日本は、中国、インド、ASEAN の国々に対し、どういう呼びかけを重ねていくことができるのか。

  5年近く外務大臣を務めた岸田総理の外交力が、いよいよ試される段階に入ってきました。

 

調査あれこれ 2022年04月26日 (火)

#393 地域の存続をともに考える~NHK山形「Yamaga-TanQ」~

メディア研究部(番組研究) 宮下 牧恵

 今、日本全国に、人口減少が進み、将来の存続が危ぶまれている地域があります。こうした地域をどうすれば存続させられるのか?すぐに答えが出ない難しい課題に、地域放送局が正面から向き合い、地域の人たちとともに課題解決に向けて踏み出そうと挑んだ番組を取材しました。
 NHK山形放送局が、金曜夜の県内向け番組「やまコレ」の特別版として放送した「Yamaga-TanQ」(ヤマガタンキュー)という番組があります。地域の人たちとともに、地域の課題解決のアイデアを探究するというコンセプトです。2020年12月の第一回の放送では、探究学習を行う山形県内の高校生と、地域のキーパーソンを引き合わせ、多様性のある社会をつくるための取り組みを考えました。今回詳しくご紹介するのは、その第二回、「やまコレスペシャル Yamaga-TanQ~飛島を未来へつなげ!~」(2021年11月26日 午後7時57分~8時42分、総合テレビで山形県向けに放送)です。

 山形県酒田市には、飛島と呼ばれる山形県唯一の有人離島があります。かつては漁業と観光で発展しましたが、現在の人口は175人、高齢化率は80%と、山形県の中でも深刻な数字になっています。特にこの10年は、毎年平均7人のペースで人口が減っており、もしこのままのペースで減り続けた場合、20年後には住人がほとんどいなくなるということになります。地域の人々は、この状況を何とかしたいと切実な危機感を抱いています。

 入局4年目(当時)の山本康平ディレクターは、酒田市を取材している中で、飛島の過疎化の実情を知りました。そこで、飛島を存続させるため、若者の雇用を生み出そうと取り組む島の出身者や、島の未来を考える活動を行う団体の代表などに話を聞くところから取材を始めました。
 そして取材を進める中で、飛島の住民が主体となって自分たちの島を存続させるアイデアを出してもらい、それを後押しするような企画ができないかと考えました。しかし、実際に島を訪れてみて、それは難しいと悟りました。島は思った以上に高齢化が進行しており、若い人が少ないため、アイデアがあっても実行する人手が足りないことを知ったのです。そこで山本ディレクターは発想を変え、山形県内の、飛島以外に住む人たちの力を借りることを思いつきました。あえて島外の人たちに、飛島を20年後も存続させるためのアイデアを競うアイデアソンに参加してもらい、さらにそこで生まれたアイデアの実行にも関わってもらえれば、人手が足らない島でも何かできるかもしれない。こうして「Yamaga-TanQ~飛島を未来へつなげ!~」の企画が生まれました。

 番組は、地域に暮らす人と人をつなぐ「場」、山形県に住む人々とNHKが地域の未来を共に創る=共創する「場」になることを目指しました。山本ディレクターは、「放送は既に起きていることを取り上げているものだが、逆に放送をきっかけに何か新しい動きにつなげるということが出来ないか」と考えたといいます。
 アイデアソンの参加者を集める担当となったのは、ともに企画を提案した入局2年目(当時)の大橋茉歩ディレクターでした。ホームページでの募集に加え、大橋ディレクターはチラシを作って、かつて自分が取材した人や関心を持ってもらえそうな人に声をかけて回りました。その結果、飛島以外の山形県内に住む10代から40代までの男女11人が参加してくれることになりました。
 企業広告やアイドルのプロデュースを通して山形県の魅力を発信している男性、地域の活性化の役に立ちたいと手を挙げた酒田市の高校生、最上地域で地元の人々の暮らしを発信しているフリーペーパーのライター、環境問題解決を目指す大学生、地域おこし協力隊の隊員など、多彩な人たちが集まりました。
 
 番組の撮影初日は、参加者たちが飛島に足を運び、3時間かけて島内のツアーを行いました。アイデアのタネを持ち帰ってもらうため27枚撮りのフィルムカメラを渡し、気になったものを撮影してもらいました。島に住んでいる人や何度も訪れた人には目に留まらないような漁具や島の植物などの写真を撮影する人や、

島を訪れている人に声をかけ、質問する人も見られました。それぞれ思い思いに飛島の魅力はどこにあるかを探していきました。

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 さらに、参加者たちは島の自治会長から話を聞きました。かつては野菜やコメも自分たちで作っていたが、耕作放棄地の増加が目立つことに寂しさを感じ、若い人に島に来てほしいと望んでいること、そして「生まれ故郷はなくしたくない」という強い思いが、参加者の心に響きました。

miyashita3.png 撮影2日目は、酒田市内の公共施設で、アイデアソンを行いました。制限時間6時間で、飛島を20年後も存続させていくためのアイデアを3チームに分かれて考え、最も優れたアイデアを審査員が選ぶものです。審査員は、飛島の行政に関わる山形県庄内総合支庁連携支援室の室長や、酒田市のまちづくり推進課長、飛島出身で地域おこしのイベントなどを手がける会社の代表など、飛島の地域づくりに関わっている人たちが務めました。


miyashita4.pngのサムネイル画像  ところで、人口減少に悩む全国の地域では、これまでUターン、Iターンなど地域外からの移住促進に努めることで地域に住む「定住人口」を増やそうという取り組みが一般的でした。しかし、それは容易なことではありません。
 そこで最近注目されているのが、「関係人口」です。その地域に居住はしなくても、様々な形で地域と関わりを持ち、時には地域の行事などの担い手になってくれるような人たちを指します。いわば地域の応援団ともいえる「関係人口」を増やすことで、地域が元気になり、コミュニティの維持につながるのではと期待されています。

 今回のアイデアソンでも、どうすれば地域外の人たちとのつながりを作り「関係人口」を増やすことが出来るかという視点で議論が進められました。
 あるチームでは、「島民図鑑」を作り、島に暮らす人たちのプロフィールを掲載したらどうかと考えました。また別のチームからは、定期船の利用や海岸のごみ拾いでポイントが貯まる「とびしマイル」を作るというアイデアが出ました。
 どのアイデアも魅力的でしたが、最も審査員の評価を得たのは、もう一つのチームが考えた「心に余白が生まれる飛島」というアイデアです。せわしなく毎日を生きている人、心にモヤモヤを抱えている人などをターゲットに、島に来て心と頭をリセットしてもらおうというものです。のんびりと時間が流れる飛島で、波の少ないビーチを楽しんだり、遊休農地でみんなで野菜を作ったりしてもらい、デジタルデトックス(スマホやパソコンから離れることでストレスを軽減すること)のためのデバイス預かりサービスも行う。心に余白が生まれる体験を通して飛島の良さを知ってもらい、「関係人口」を増やしていけば、島の存続につながるはずと考えました。
 審査員からは「飛島では不便を楽しんで豊かに幸せに暮らしていることに気づかされた」という講評がありました。この「心に余白が生まれる飛島」というアイデアが、今後どう実現されていくのか、山形局では取材を続けていく予定です。

  視聴者からは、「飛島を考えることは、高齢化や人口減少に悩む山形全体の参考にもなり、良い企画だと思う。」「人口が175人にまで減ってしまった飛島の生活を守りたい!との思いで集まった11人が、それぞれの経験や知識を生かしながら”問題解決“していく姿が素晴らしい。単なる観光紹介や、税金からの援助を求めるような趣旨に留まらない内容が良かったと思います。」などの感想が寄せられました。

yamamoto2.png 放送から4か月以上経過しましたが、今のところまだアイデアを実現するための具体的な動きはありません。担当した山本ディレクターは「参加者たちは、それぞれ学業や仕事がある中で、実際にアイデアを実行に移していくのがなかなか難しい。しかし今回の番組を通して、飛島を存続させたいという人たちがつながって、それぞれ独自に飛島を存続させる活動に参加するなどの動きも出てきたことが収穫だった」と話します。 

 

 

oohashi2.pngまた、大橋ディレクターは、「今回のような大きな企画ではなく、普段の小さなリポートでも、地域の課題点やこれはどうしたらいいのだろうなと思っているものを拾い上げられるような企画や番組を今後も作っていければ山形放送局で働いている意味があると思う。」と言います。

 制作統括の白井健大チーフ・プロデューサーに、今後について尋ねたところ、「アイデアソンに参加して下さった方々とは引き続き関係を保ち、継続取材を行っていく道筋をつけていきたいと考えています。また、今後も飛島に限らず、なんらかの形で地域課題解決に結び付く企画を夕方6時台の『やままる』や金曜夜7時半からの『やまコレ』に展開していくことができればよいと考えています。」とのことでした。
 

 地域の存続という重い課題。今回の取り組みを一過性のものに終わらせるのではなく、地元の放送局にしかできない、息の長い取り組みが求められます。




調査あれこれ 2022年04月19日 (火)

#392 自治体による災害時のラジオ活用をどう進めるか?

メディア研究部(メディア動向) 村上圭子

はじめに ~災害とラジオ~

 このところ全国各地で地震が続いています。先月16日には、福島沖を震源とする最大震度6強の地震が起きました。東日本大震災発生から11年を迎えた3月11日からわずか5日後のことでした。大震災の時と同じ地域で再び被害があったということも耳にします。一日も早い復旧を願っています。
 私の自宅のある東京は震度4でしたが、長時間の横揺れが続いたため、食器棚からお気に入りのティーポットが落下して割れてしまいました。それを機に、改めてテレビや棚類の転倒防止対策を再確認しました。いまは防災リュックをベッドの横に置いて寝ています。
 防災リュックにはラジオを2つ入れています。懐中電灯とセットになった手回し充電式と、携帯用の電池式のもので、替えの電池も10個入れています。皆さんはいかがですか?最近はラジオ端末を持っている人も減っていますし、以前は100円ショップで簡単に携帯ラジオを購入することができましたが、最近はあまり取扱われていないようです。家電量販店やネットショップ、もしくは防災グッズを専門に扱うお店では購入できると思いますので、もし防災リュックに入れていないという人は入手しておくことをお勧めします。
 なぜお勧めするかというと、よく言われていることですが、災害時に最も頼りになるメディアがラジオだからです。とはいえ、そう言われても、停電でテレビがつかなくなったり、災害情報のプッシュ通知やSNSで情報を入手できるスマートフォンが使えなくなったりする状況は、その場に身を置いた経験がない限り実感は湧きにくいと思います。私はこれまで被災地に取材に行くことが多かったので、停電で余震が続く中で眠れない夜を過ごしたり、同僚と連絡を取る手段がないまま目的地まで何キロもの道を徒歩で向かったりしたことがあります。あくまで被災した方々を取材するという立場で被災地の状況を経験したにすぎませんが、現場で痛感したのは、命を救うため、様々な行動を判断するため、不安な心を落ち着かせるため、パニックや混乱を防ぐため、信頼できる情報を得られるツールが身近にあることがいかに大事か、ということでした。
 改めてラジオの強みを確認しておきましょう。一番の強みはなんといっても停電に強いことです。2018年の北海道胆振東部地震では、道内全域で大規模な停電(ブラックアウト)が起きましたが、地震発生当日に最も利用されたメディアはラジオでした1)それから端末の持ち運びが出来て乾電池だけで動くこと。数日間であればつけっぱなしにしていても、スマートフォンのようにバッテリーの残量を気にする必要はありません。また言うまでもなく、放送は通信と異なり、錯綜することなく情報を届けることができること。もちろん東日本大震災のような激甚災害になると、放送を送り届けるラジオの送信所(中継局)そのものが大きな被害を受ける可能性もあるのですが、テレビの中継局とは構造が異なることもあり、東日本大震災の時にはテレビに比べて停波した局は少なかったです(図1)。

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 東日本大震災以降、国の進める国土強靭化計画のもと、災害情報を伝達する責務を担う自治体や放送事業者、通信事業者は、伝達手段の多様化やインフラの強化、停電対策を進めています。しかし、どんなに対策が進められたとしても、南海トラフ地震や首都直下地震などの激甚災害の場合には、やはり停電が長時間続き、通信も放送も途絶え、被災地が完全に孤立してしまうような最悪の事態を想定しておくことが賢明であると思います。

1.首都圏の市町村によるラジオ活用の道広がる

 前置きが長くなってしまいました。本ブログの本題は、災害時における自治体によるラジオ活用についてです。先月、総務省の「放送を巡る諸課題に関する検討会」が、「放送用周波数の活用方策に関する取りまとめ3)」を公表しました。あまり注目されていないようですが、災害時の情報伝達という観点から見るとこれまでにない画期的な方向性が示されていると感じたので取り上げておきたいと思います。
 今回の取りまとめで対象とされた放送用周波数は、2018年9月末まで放送大学学園4)の番組を放送していた地上テレビとFMラジオの帯域と、2020年3月末まで放送していた「新放送サービスi-dio」のV-Low帯域5)です。これらは国が放送用に割り当てている周波数であるため、今後、放送サービスとして活用したい事業者がいるかどうかの需要調査が行われました。その結果、V-Low帯域については、多くの民間AMラジオ事業者が2028年までにAMを停波してFM化を進めていることから、帯域の一部をFM放送用周波数として拡充する方針が示されました6)。また放送大学の地上テレビの"跡地"については、放送技術の高度化の実験・実証フィールドとして活用する方針が示されました。
 同時に、V-Low帯の一部と放送大学のFM放送の跡地については、自治体によるラジオ活用に道が開かれました。V-Low帯は、市町村が伝達手段として整備している防災行政無線(同報系)と連動させてFMで同じ情報を届ける「FM防災情報システム」への活用、FM放送跡地は、災害時に自治体が免許人となって開局できる「臨時災害放送局」専用帯域としての活用です。それぞれ詳細を見ていきましょう。

2.「FM防災情報システム」としての活用

 FM防災情報システムという存在、初耳の方がほとんどではないでしょうか。実は、今回の検討会の議論の中で新たに発案されたものだそうです。図2が取りまとめで示されたシステムのイメージです。防災行政無線の屋外拡声子局にFMの送信設備をつけ、防災行政無線の音声をFMで再送信するという仕掛けになっています。
 自治体の7割以上が、災害時にたまたまその地域を車で通過する人達や、車中で避難生活を送る人達に対する情報伝達に課題を感じているという調査結果を受け、車に装備されているカーラジオ等に防災行政無線と同じ内容を伝達することが出来るこのシステムが考案されたそうです。

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 防災行政無線についてはこれまで、豪雨等の時に聞き取りにくいということが繰り返し指摘されてきました。こうした中、国では、自宅等に設置する戸別受信機を自治体が住民に貸与することを積極的に財政支援してきました。しかし、専用端末であるために高額であること、持ち運びが不便なこと等がネックとなっており、普及には課題も少なくありませんでした。今回のシステムはFM波を使うことから汎用性のあるラジオ端末(カーラジオ等)が活用でき、戸別受信機ではカバーできない移動中の人達に向けた伝達も可能となります。特に、津波の到達が早い沿岸部の自治体や、氾濫の恐れのある河川を抱える自治体では、このシステムの導入を積極的に検討して欲しいと思います。

3.首都圏の「臨時災害放送局」専用周波数として活用

 災害時の自治体のラジオ活用として開かれたもう1つの道が臨時災害放送局(災害FM)です。災害時に自治体が免許人となり臨時のラジオ局を開設できるというこの制度は、阪神・淡路大震災の際に誕生し、東日本大震災で多くの市町村で開設され、認知が広がりました。その後も、熊本地震、西日本豪雨、北海道胆振東部地震等で多くの自治体が開設していて、私は現場を取材し続けてきました(図3)8)

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 なぜわざわざ自治体の情報伝達にラジオが必要なのか、先に触れた防災行政無線で十分ではないのか、と疑問を感じる方もいらっしゃると思いますので少し説明しておきます。防災行政無線は主に屋外に向けて、短い言葉で避難を呼びかけたり注意喚起をしたりすることを主とする伝達手段です。しかし、避難生活が長期化する場合には安否情報や救援情報、生活情報や各種行政情報等の情報を整理して伝え、地域内の住民たちで共有し、それらの情報が的確に更新されていくことが不可欠となります。つまり、大量の多様な情報を伝達していくことが必要であり、防災行政無線だけでは担いきれないのです。
 こうした状況に陥った際に活躍が期待されているのが、自治体を主なカバーエリアとする地域メディアであるケーブルテレビやコミュニティ放送局です。特にラジオメディアであるコミュニティ放送局は、災害対策への関心の高さから開局が年々増え続けています(図4)。大半の局が自治体と防災協定を結んでおり、いざという時にはタッグを組んで情報伝達する体制を構築しています。しかし制度上、平時から放送を行うコミュニティ放送局は自治体が免許人になれないため、民間事業者として地域内で広告スポンサーを確保し、日々の放送を維持していかなければなりません。災害対応、住民の安全確保という観点から見れば、どの地域にもくまなくコミュニティ放送局が整備されることが理想ではありますが、現状ではコミュニティ放送局の全国の自治体カバー率は5割には満たない状況に留まっています。

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 一方、災害FMはあくまで災害時にのみ限定して自治体が開設し運営する放送局です。開設するのも簡単で、機材や一定の条件が揃えば、総務省に電話1本することで放送を開始できます。そのため、コミュニティ放送局がない自治体では、災害FMに対する関心が高まっているのです。
 もちろん課題もあります。災害が発生してからの対応になるため、①自治体が開設を希望していても実際に周波数が空いていなければ開設できない、②周波数を事前に(平時から)住民に伝えておくことが出来ず、周知が発災後になるため認知されにくい、③ラジオ端末を持っている人が少なく、日頃からラジオを聞いたことがない人も少なくない、④機材の準備や運営のノウハウ、スキルを持った人の確保が必要、等です。特に首都圏エリアは他の地域に比べて①の課題が深刻でした。そもそも空いている周波数が少ないのです。
 こうした中、今回の検討会では、東京の4つの区が災害FM開設を要望するプレゼンを行いました10)。これらの自治体では、既にラジオを運営するための機材を購入していたり、実際に住民を巻き込んだ訓練を行ったりしています。検討会で行った調査では、首都圏エリアで開設を希望する自治体は現段階で14あるそうです。このため取りまとめでは、首都圏を放送エリアとしていた放送大学跡地のFM周波数を、災害FMの専用周波数としてあらかじめ確保しておくという方針が示されました。日常的に帯域を活用するのではなく災害の備えとして活用するという方針は、従来にはない画期的なものと感じました。

4.今後考えていくべきこと

 今後は示された方針を具体的に進めていくことになりますが、放送大学跡地のFM周波数は2つしかないため、希望する複数の自治体が時間を区切って共用する(○○区は9時~10時、××市は10時半~11時半等)という形を取ることになりそうです。つまり、各自治体の送信設備から放送波を出しては止め出しては止め、ということを繰り返していくことになるわけです。これまであまり例のない形で運営していくわけですから、調整役となる総務省や関東総合通信局の役割は重要です。また放送のプロではない自治体の人たちが、災害時の混乱の中で実施していかなければならないわけですから、相応の準備も必要となってくるでしょう。
 また検討会では、首都圏エリア以外でも、こうした災害FM用の専用帯域の確保や希望する自治体との調整、あらかじめ固定した周波数を住民に周知するといったことが出来ないのか、という意見があがっていました。総務省に尋ねると、首都圏エリアはもともと周波数が足りない状況の中で首都直下地震が想定されていたため、放送大学跡地の議論が今回の方針につながったとのこと。そのため他の地域で同様の議論や方針を示すことは今のところ考えてはいない、とのことでした11)
 ただ、私も災害FM関連のシンポジウムや講演会に参加させていただいたことがある近畿総合通信局では、南海トラフ地震に備えて和歌山県の沿岸自治体12市町村で、災害FMを同時開局できるかどうか周波数を選定するシミュレーションや実地調査を実施し、その結果を自治体と共有する取り組みを行っています(図5)。これは、災害FMを取り入れた防災訓練を積極的に行ってきた和歌山情報化推進協議会12)と総合通信局のディスカッションからスタートしたものです。和歌山県の場合は首都圏エリアとは逆に、空き周波数があるためにこうした取り組みが可能ですが、全国各地でそれぞれのエリアの実情に応じながら、地域の総合通信局がイニシアチブを取って、平時から自治体等と連携した災害対応の取り組みをより積極的に進めていくことが求められているのではないかと思います。

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 そして、こうしたハードの準備以上に重要だと私が考えているのが、住民にとって必要な情報をわかりやすく伝えるスキルを持った人材の確保・育成です。マイクの前に座って災害対策本部の原稿を読めばいい、というところから一歩進んで、どうしたら混乱している人達が冷静に行動できるような伝え方ができるのか、どうしたら不安な人達が安心できるような話し方ができるのかについて、あらかじめ想定した準備をして欲しいというのが、これまで災害FMを取材してきた私の意見です。
 そのために貢献できるのが地域の情報伝達のプロフェッショナルである地域メディアの存在です。首都圏エリアで災害FMの開設を希望する自治体の中には、ケーブルテレビとあらかじめ運営に関して協議をしたり協定を結んだりしている地域もあり、非常に心強く感じます。また、先に紹介した和歌山県情報化推進協議会は、県下の県域民放やNHK、コミュニティ放送局等が参加している組織で、自治体職員や地域住民に対して、取材や放送の方法等を、訓練を通じて伝える活動をしています。こうした平時からの地道な活動こそ、地域メディアの果たすべき重要な役割の一つではないかと思います。
 更に、こうしたプロフェッショナルメディア、特に災害時にも活躍が期待される県域ラジオ局と自治体の連携が深まれば、災害時に自治体の情報をそのまま放送する枠を設けるといった取り決めも可能かもしれないと思ったりもしています。あらかじめ県域ラジオ局と自治体の間で、衛星電話を繋いで情報を伝えるという時間枠を確保する協定を結んでおけば、その自治体はわざわざ災害FMを立ち上げなくても情報を伝達することが可能でしょうし、住民にはあらかじめ、災害時には県域ラジオを聞いてください、と伝えておくことも可能でしょう。もちろん、県域ラジオ局には独自の編成があるわけですから、あくまで現時点では私見ではありますが、ただ、取材に行ったり独自に情報収集したりすることすらままならない激甚災害においては、自治体のみならず県域ラジオ局にとっても有効なのではないかと思いますし、複数の県域ラジオ局がある地域においては、こうした自治体情報を束ねる災害放送を行うチャンネルがあってもいいのではないかと思います。
 災害が起きてから出来る事は限られています。いかにあらかじめ災害時を想定し準備をしておくか、その準備は、最も厳しい状況を想定しておく必要があると思います。最後に少し踏み込んだ私の意見も述べましたが、今回の「放送用周波数の活用方策に関する取りまとめ」を契機に、既存の枠組みにとらわれない柔軟で積極的な災害情報伝達に関する議論が全国各地で進んでいくことを期待していますし、私もその議論に少しでも関わっていきたいと思っています。

 

1)   https://www.nhk.or.jp/bunken/research/domestic/pdf/20190201_10.pdf  P42
      逆にテレビについては68%の人たちが利用できなかったと回答
2)    https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h24/html/nc134220.html 図表3-4-2-5
3)    https://www.soumu.go.jp/main_content/000800629.pdf 
4)    放送大学は現在、BSで放送中 https://www.ouj.ac.jp/
5)    地デジ化終了後の空き周波数の一部。95MHz-108MHz
6)    地上AMラジオ事業者のFM転換だけでなく、コミュニティ放送局が開局を希望する場合には免許できる方針も併せて示された
7)    https://www.soumu.go.jp/main_content/000800629.pdf P14
8)   下記の震災についての原稿は・・・
      東日本大震災:https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/report/2012_03/20120303.pdf 
             熊本地震:https://www.nhk.or.jp/bunken-blog/100/246229.html 
         西日本豪雨:https://www.nhk.or.jp/bunken-blog/2018/08/09/
9)   https://www.soumu.go.jp/main_content/000800629.pdf  P5 
10) https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/housou_kadai/02ryutsu08_04000457.html 
   検討会では、東京都文京区・北区・練馬区・足立区が準備の取り組みをプレゼン
11) 4月5日 本検討会事務局である放送技術課を取材
12) https://wida.jp/act/rinsai_musen/ 和歌山県情報化推進協議会では、災害FM立ち上げのためのボランティア人材の確保なども行っている
13) https://www.soumu.go.jp/main_content/000806538.pdf P46

 

調査あれこれ 2022年04月12日 (火)

#391 対ロシア経済制裁に必要な覚悟 ~ウクライナ・早期停戦に向けて~

放送文化研究所 研究主幹  島田敏男

 「第2次世界大戦後、最も恐ろしい戦争犯罪だ!」日本時間の4月5日深夜、国連安全保障理事会の緊急会合の場でウクライナのゼレンスキー大統領がオンライン演説。大統領は直前にブチャという街の惨状を視察していて、世界に向けて憤りをあらわにしました。

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 2月24日にロシア軍がウクライナに侵攻を開始してから1か月半余り。首都キーウに迫っていたロシア軍は、ウクライナ側の抵抗に阻まれて一旦後退し、東部に転じつつあると伝えられています。

 ロシア軍が引いた後、激戦があったキーウ周辺の街に、ウクライナ政府や国際機関の関係者、それにNGOの人たちやジャーナリストが入るにつれて慄然とする現実が次々に明らかになりました。

 グテーレス国連事務総長は「無差別攻撃は国際人道法の下で禁止されている」と強調し、国際刑事裁判所で民間人に対する戦争犯罪を裁くための調査を呼びかけました。


kokurenanporinairi.jpg この市民の犠牲者に関する情報は各地で跡を絶たず、連日のように世界に向けて発信されています。これに対しロシア側はプーチン大統領を筆頭に「ウクライナ側のねつ造だ」と口を揃えるばかりです。

 4月のNHK電話世論調査は、世界の耳目が市民の犠牲に関する情報に接し続ける中、8日(金)から10日(日)にかけて行われました。

「ロシアのウクライナへの軍事侵攻に対する日本政府のこれまでの対応を評価しますか」と聞きました。

「評価する」  71%(対前月+13ポイント)

「評価しない」 21%(対前月-13ポイント)

 日本は攻撃兵器の提供などの軍事支援は行わない一方で、避難民支援のために資金提供を行ったり、希望する避難民の日本への受け入れを進めたりしています。

 また欧米各国と足並みを揃えて金融制裁や経済制裁を実施し、プーチン大統領やその家族、政権関係者らに対する資産凍結も打ち出し、明確にNOの意思表示を示しています。
 軍事侵攻から2週間余りの時点で行った3月調査と比べると、日本政府のウクライナ支持の態度を評価する割合が増しています。現地から伝えられる市民の犠牲に関する情報が増すほどに、ロシアに対する国民の視線が厳しさを増しているようです。

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「日本政府のロシアに対する制裁措置についてどう思いますか。次の3つから1つ選んでください」

「適切だ」       35%
「さらに強めるべきだ」 47%
「厳しすぎる」       7%

 これを詳しく見ると、「さらに強めるべきだ」は野党支持者では6割に達していて、与党支持者の5割弱、無党派層の4割強と比べて高い割合を占めています。

「今回の軍事侵攻を受け、政府はロシアへのエネルギー依存度を引き下げていく方針です。一方で、引き下げによるエネルギー価格の上昇の可能性も指摘されています。エネルギーの価格が上がっても、ロシアへのエネルギー依存度を引き下げることを、支持しますか、支持しませんか」

「支持する」  68%
「支持しない」 17%

 日本はロシアからの石炭輸入や新規投資を禁止する経済制裁に踏み切っていますが、日ロ共同事業になっているサハリンでの天然ガスプロジェクトは今のところ継続しています。

 今回の事態で世界的にエネルギー資源や穀物資源の価格高騰が続いていますし、停戦に至らずに戦闘状態が継続するならば制裁は長期化することになります。またロシアの出方次第では一層の制裁強化も必要になります。

kishida.jpg そもそも経済制裁はどういう意味合いと可能性を持つものなのでしょう。「けしからん行為に対する懲罰」という意味合いにとどまらず、「戦争継続を抑止するための武器」でもあります。

 安全保障の世界では、抑止というのは基本的には「相手に大きなコストがかかることを実感させ、コストパフォーマンスが悪い選択を断念させる働き」と理解されています。
 つまり先々を展望することができる合理的な判断力に訴えかけ、心変わりを促すメッセージであるわけです。第3次世界大戦を望まない欧米諸国や日本が取りうるギリギリの手段です。

 しかし経済のグローバル化が進んだ21世紀の現代では、制裁を行う側も返り血を浴びることを覚悟しなければなりません。資源大国ロシアにエネルギー源を依存してきたドイツが難しい選択を迫られているのもそのためです。

 天然資源を海外からの輸入に頼る日本でも、回りまわって様々な製品の価格が上昇した場合に消費者がそれにどこまで耐えることができるか。まさに覚悟が問われます。

kishida2.jpg「あなたは岸田内閣を支持しますか。支持しませんか」

「支持する」  53%(対前月 ± 0ポイント)
「支持しない」 23%(対前月-2ポイント)

 岸田総理が外務大臣を務めていた安倍政権の当時、日本政府は経済連携を梃子にして北方領土の返還と平和条約交渉を進めるためにロシアに接近を図っていました。

 しかしロシアがウクライナ侵攻という「力による現状変更」を継続する状況では、これとは全く異なる態度で臨まざるを得ません。すでにロシア政府は経済制裁に対する日本への報復として、話し合い拒否を伝えてきています。

 今月の岸田内閣の支持率を見れば、国民から一定の支持を得ていると評価できると思います。ただ、経済制裁を継続する中で日々の暮らしに影響が及ぶ段階に至った時に足元が揺らぐことはないのか。

 世界情勢への対応が国内の政治情勢を左右する難しい局面に立っていることは確かです。

 

調査あれこれ 2022年04月07日 (木)

#390 地域の声を受けとめてドラマを制作~NHK京都「ストレス・リレー」~

メディア研究部 (番組研究) 宮下牧恵

 視聴者の疑問や悩みをもとに取材・制作を進め、ともに解決を探っていく。その過程で地域とのつながりを深める「課題解決型」の番組やニュース企画が、全国の地域放送局で増えています。その実例を、これまで2回のブログでお伝えしてきました。今回は、「課題解決型」のニュース企画に加え、地域の人々の声を反映させたドラマ作りに乗り出した事例をご紹介します。

 NHK京都放送局は、今年2022年に開局から90年の節目を迎えます。昨年夏から、開局90年プロジェクトを立ち上げ、地域のために何ができるのか、若手職員が集まって議論を始めました。そして「京都府民のもっと身近に、役に立てる放送局になりたい」といった思いを込めて、「#使い方イロイロ」というキャッチコピーを作り、それに沿って企画を考えました。

 まずは府民の生の声を集めようと、局内の全ての部署から若手職員13人が参加して「お悩み聞き隊」という名のチームを結成。約3週間かけて、府民100人に街頭インタビューを行いました。

 そして、それらの悩みの声を出発点に取材を進め、課題解決をめざす企画「こえきく!」を、「ニュース630京いちにち」(月~金、18時30分から)の中でスタートしました。

 「ハザードマップの疑問」(2021年10月6日放送)の回では、「水害時に避難するように指定された避難所が、ハザードマップを見ると浸水想定地域になっている」という市民の疑問からリサーチを開始し、なぜそのような状態なのかを行政に取材するとともに、実際の水害の際にどう備えればよいか、専門家のアドバイスも紹介しました。また、「これでOK?店の感染対策」(2021年10月18日放送)では、飲食店の関係者から「コロナ禍で、どんなに感染対策をしても、人々から厳しい声が寄せられる」という悩みが複数寄せられたことから、実際に困っている飲食店に取材し、感染対策の現状や困りごとを撮影。その映像を専門家に見てもらい、具体的な感染対策の方法をともに考えました。

 一方で、課題も見えてきました。街頭インタビューでは、「コロナで仕事がうまくいかない」「学校での活動が思うようにできない」「自粛で家にこもる時間が増えて家族と話していてもいらだつことが増えた」など、コロナ禍で感じるストレスや、そのストレスを誰かと共有することにも疲れているという声が多く聞かれました。こうした個人的なストレスやモヤモヤした気持ちは、リポートでは解決が難しいものでした。
 地域の人たちがコロナ禍で感じているストレスやモヤモヤした気持ちを、「分かち合ったり」「笑いに変えたり」「発散させたり」できる企画はできないか。また、課題解決の取り組みでは、調査報道や、情報番組のスタイルが多い中、それ以外の方法で地域や視聴者を巻き込むことはできないか。そうした議論が局内で行われるようになりました。

 そんなとき、「こえきく!」の担当者の一人、入局5年目(当時)の岩根佳奈子ディレクター(現・クリエイターセンター<第2制作センター>)は、ある小説に出会いました。芥川賞作家で学生時代を京都で過ごした平野啓一郎さんが昨年8月に発表した短編小説「ストレス・リレー」です。
 作品では、アメリカから帰国したサラリーマンが発した棘のある言葉がストレスとして人々に伝播し、東京から京都へと持ち込まれ増殖していく様が描かれています。

 岩根ディレクターは、「ストレス・リレー」を読み、「こえきく!」でインタビューをしている中で耳にしてきた人々の声と、小説の中でストレスがリレーされていく様子が重なったそうです。そこで、この小説を元に、ドラマを作ることはできないかと、小山諒カメラマン(当時・入局2年目)や木村竣一カメラマン(同・入局3年目)とともに企画を提案しました。

 こうしてドラマ「京都スペシャル ストレス・リレー」(2021年11月26日午後7時30分~7時57分、総合テレビで京都府向けに放送)が制作されました。出演は俳優の川島海荷さん、近藤芳正さんのほか、京都ゆかりの俳優や、実際に「こえきく!」のインタビューで出会った市民のみなさんにも参加してもらいました。オーディションの際には、実生活の中でどのようなストレスを感じているかについてインタビューも行い、そうした映像もドラマの中で使用されました。

miyashita1.jpgのサムネイル画像 ドラマの中では、登場人物が、イライラを人にぶつけることで、ストレスをリレーさせていきます。例えば、アメリカから帰国したサラリーマンによってストレスをぶつけられるコミュニケーションが苦手な蕎麦屋のアルバイトの店員。そのアルバイトの店員からストレスをぶつけられる母親。その母親からさらに誰かへと、ストレスがリレーされ、増殖していきます。ごくふつうの人々がストレスの連鎖を作り出す怖さと、その連鎖を止める「こころの換気」について考えるドラマです。

miyashita2.pngのサムネイル画像 最初にストレスをリレーされた、コミュニケーションが苦手な蕎麦屋のアルバイト店員役を演じた女性は、実際に、演じた役柄と似たようなストレスを抱えてきた体験があったそうです。そうした体験から、どうやってストレスをリレーさせないようにするのか、撮影の合間に母親役を演じた出演者と話し合っていました。また、ほかの出演者の間でも、自分の職場でのストレス体験や、それぞれのストレス解消法、対処法などを語り合う姿が見られました。

miyashita3.pngのサムネイル画像 また、京都放送局では、ドラマの放送日に合わせて「アフタートークイベント」を企画しました。原作者の平野啓一郎さん、ドラマの出演者、声を寄せてくれた市民のみなさんが参加しました。

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 イベントでは、自分がストレスの連鎖を止めた方法や、ストレス解消法についてどのようなことを行っているかなど、番組の作り手と市民が一緒になって、日常のストレスをどうやってリレーさせないようするか、語り合いました。参加者からは「ストレスは人から人へ渡ることもあるが、逆に温かい言葉をかけられるとホッとする。そのホッとした瞬間がストレスを軽減できるのではないか。」といった声が上がりました。平野さんからは、「優しさのリレーみたいなことが社会では本当には起きていると思う。」「人と人との繋がりがストレスを軽減するようになってほしい。」といったコメントがありました。

iwane.png 担当した岩根ディレクターによると、「初めてのドラマ制作は大変だったが、東京のドラマ部のベテラン職員の指導や、地域の皆さんの協力で成し遂げられた。テレビはマスに向けて番組制作を行っていて、ふだんはなかなか視聴者の反応をみることができないが、アフタートークイベントでは顔が見えなかった視聴者の方と対面できて、小さくても手ごたえを感じた」そうです。また、「今回作り上げた市民との繋がりをこの先どうやって繋げ続ければよいのかということが課題だと感じている。」とのことでした。
 また、ドラマに参加した市民からは、「制作サイドの人と接したことで、以前よりNHKを身近に感じることができた」 「他の市民の方と知り合うのが面白い」という声が聞かれたとのことです。

 京都放送局の伊藤雄介副部長は、「今後は、視聴者の方々にNHKをより身近に感じてもらうため、企画段階から一緒に制作することや、番組を放送するだけではなく、ゴールを対面でのイベントに置いて、地域の課題について考えた経験をみんなで分かち合うことができればよいと考えている。そうした場をいかに楽しくワクワクできる企画で生み出せるかが重要だと感じており、今回は、ドラマというスタイルだったが、歌番組やお笑いのようなジャンルでも挑戦できたらと思っている。」と言います。

 次回も、地域放送局の新たな取り組みについてお伝えします。

調査あれこれ 2022年04月06日 (水)

#389 流れを一旦せきとめる~論考「新型コロナ報道は東京オリパラにどのように影響されたか?」について~ 

メディア研究部(番組研究) 高橋浩一郎

 私たちの社会が新型コロナウイルスと向き合うことになって2年以上がたちます。3月21日にはまん延防止等重点措置がすべての地域で解除されましたが、26日時点でも1日当たりの感染者数は4万人を超え、毎日100人を超える方が亡くなっています。

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 他方で1月15日にはトンガで大規模噴火が起こり日本にも津波警報が出され、2月24日にはロシア軍がウクライナに侵攻、国内では3月16日に福島県沖を震源地とする最大震度6強の地震が発生するなど、思ってもみないような事態が次々と起こり、テレビが日々報道するトピックもめまぐるしく移り変わっています。新型コロナに関しては上記の通り事態が収束したとは決して言えないものの、より大きな関心を引く出来事が立て続けに起こり、また2年以上に渡って付き合わされ、その対策も複雑化していることも相まって、社会全体の問題としてとらえにくくなりつつある印象さえ受けます。
 さまざまな情報をネット経由で手に入れられるようになったとは言え、テレビにはいまだに大きな影響力があると考えられます。しかし、画面に映像と音声が流れ出した瞬間に消え去っていくテレビ発の情報は、多くの場合忘れられてしまいます。そのため新聞などの文字媒体と比較すると、ある時点でどのような報道がなされていたのか後から検証することが困難です。大きな事件や災害が頻発し、ある意味で“非常時”が“日常化”しつつある今だからこそ、麻痺してしまいがちな感覚を正常化するためにも、一旦流れをせきとめて、ある時点でテレビがどのような報道をしていたのかを記録・検証することが必要ではないかと思います。

 「放送研究と調査」3月号には、およそ1年前にテレビが“新型コロナの感染拡大”と“東京オリパラの開催”をどのように報道したのかを検証する論稿を掲載しています。さらに4月号には“新型コロナ”と“東京オリパラ”をめぐるツイッターの動向について短いレポートを掲載しました。
 研究テーマの軸となったのは「限られた放送時間とリソースという物理的な制約のある中で、テレビは何を優先して伝えたのか」ということです。分析の結果から見えてきたのは「テレビがどれだけ自律的かつ主体的にその判断をできたのか」という疑念、さらに「その判断に疑義が呈されるとき視聴者からの信頼が揺らいでいる可能性がある」という懸念でした。
 これまで経験したことがなく、さらに次々に変異を重ねる新型コロナにどう対応するのかの判断は、状況や時期によっても変わることがあり、また国によって一様ではありません。何が正しいのかがその時点では明確ではなく、事後になって初めて分かることもあります。複雑化・多様化を極める社会において、多くの人に情報を伝えるメディアには「何を、どのように、どの程度伝えるべきか」より難しい判断が求められますが、そういう時だからこそ大きな役割が期待されているとも言えます。テレビ報道が機能不全を起こさないようにするためにもその動向を注視し、どうしたらよいのか考え続ける必要があります。

 自分に向けられた信頼が揺らぐとき、私たちはどのような態度と行動をとるでしょうか。自分に不都合なことから目を背けたり、本質から話を逸らしたり、どこかの誰かが妙案を生み出してくれるのを期待するでしょうか。それとも自分がしたことを認めたうえで、そこから教訓を導き出しこれからに生かそうとするでしょうか。メディアがどのような姿勢を示すことができるのか、その存在の真価が試されているように思えます。



メディアの動き 2022年03月23日 (水)

#378 人と人との繋がりを生み出す ~徳島局「AWAラウンドテーブル」の取り組み~

メディア研究部(番組研究) 宮下牧恵


 NHKの地域放送局では、「課題解決型」のニュース企画や番組の制作が多数行われるようになってきていることを、2月25日のブログでお伝えしました。今回は、「課題解決」を目指しながら、地域の中で新しい人と人との繋がりを生み出そうというNHK徳島放送局の取り組みを取材しました。
 徳島局では放送だけでなく、ホームページやSNSでニュース記事や動画の配信を行っていますが、「それだけではNHKの存在意義が薄くなるのではないか」という危機感があったそうです。そうした中、ディレクター、編成、記者など職種の違う職員が集まった際に、「放送で取り上げるだけで取材先との関係が終わってしまうのはもったいない」という話が出てきました。
 「放送を出口にするのではなく、放送を入口にして関係性を繋いでいけば、取材先の人たちが抱えている悩みなどにもっと関わっていけるのではないか」と考えた、末永貴哉ディレクター(現・首都圏局)は、放送を入口にして、ニュースの取材先同士をつなげるプロジェクトを立ち上げてはどうかと発案しました。賛同した13人の職員がコアメンバーとなり、立ち上がったのが、「AWAラウンドテーブル」と呼ばれるプロジェクトです。
 「ラウンドテーブル」とは、大学の教職員や学生などの間で20年以上前から続いてきた取り組みです。報告者と聴き手に分かれ、報告者は自分が抱えている課題や悩みを心ゆくまで話します。聴き手はさえぎらずに話を聞き、報告者に寄り添ったアドバイスをすることが求められます。末永ディレクターは、学生時代に「ラウンドテーブル」の取り組みを学び、放送にも取り入れることが出来ないかと考えたそうです。

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 「AWAラウンドテーブル」で目指したのは、以下の3つのステップです。

① 地域の人をつなぐ場となるイベントを開催する
② イベントの様子や参加者の「その後」を放送する
③ 放送を見た人が「応援者」となりつながりの輪がひろがる

 まず行われたのが、NHK徳島放送局で放送されている「とく6徳島」(月~金、18時10分から)の放送の中から、「地域おこし」に関連したテーマのニュース1年間分、300本を調べるという作業でした。そのうち100本のニュースで取材し、出演してもらった地域の人たちに連絡を取りました。そして、改めてその人が放送で伝えきれなかった思いや、いま直面している課題、公共メディアに期待したいことなどを聞き取りました。そして、いくつかの共通した悩みを抱える約20人の人たちに集まってもらい、悩みをとことん話し合ってもらうイベントを2021年3月に開催。その模様を収録し、徳島県内向けの番組「あわとく」(金曜夜7時30分から7時55分まで)で5月14日に放送しました。

 イベントでは、悩みの種類によって参加者を4つのグループに分けました。PRがうまくいかない「情報のしかたを模索」するグループ、後継者がいない「担い手不足について議論」するグループのほか、「異業種との連携を模索」するグループ、「コロナ禍の地域おこしを議論」するグループです。

 例えば、「情報発信のしかたを模索」するグループでは、公務員YouTuberとして徳島県南部の観光PRを担っているものの、チャンネル登録者が伸びないという県職員が報告者になりました。聴き手の一人は7年前から動画投稿サイトで自身の酒造メーカーの商品やレコードを紹介する活動をしてきた男性。「動画はふざけていていい、行ったらすごく楽しかったということが大事」と、行政マンがなかなか思いつかない発想で、アドバイスしていました。
 また、「異業種との連携を模索」するグループでは、障害者団体の代表の女性が報告者となりました。この女性には、重度心身障害者で28歳(取材当時)になる娘さんがいます。女性はかねてから娘さんが障害者という枠を超えて、就労できないかと模索していました。


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「生産力がない障害者は仕事も持てないのか」と悩み、娘にしかできないような役割が何かないかと相談をしました。そこで、4年近く前から福祉施設と連携し、徳島県産の野菜をメニューに取り入れたり、自らも野菜を作ったりしている飲食店の経営者が、収穫したカラフルなジャガイモを味見してもらうなど、女性の娘さんにインフルエンサーの役割を担ってもらえないかとアイデアを出しました。イベントの後、このグループでは、先ほどの飲食店経営者や徳島大学の教授などが自主的にオンラインでやり取りを始め、ジャガイモの収穫祭を行う準備を進めました。その様子も、5月の放送で紹介されました。
 さらに放送後、徳島大学ではこの動きを授業で取り上げ、どうすれば収穫祭を盛り上げることができるのか、学生たちからもアイデアを募るなどして、人のつながりが広がっていきました。そして、7月に収穫祭が行われ、重度心身障害を持つ娘さんは、特製ムースなどメニューの開発補助を行ったほか、カラフルなジャガイモの詳細を伝えるビラの配布や、ジャガイモの魅力を客にPRして回るなどを行うなど広告塔としての役割を担いました。
 末永ディレクターは、収穫祭の準備や当日の模様などを再度取材し、11月に放送された「AWAラウンドテーブル」第2弾の回で短いVTRにまとめて放送しました。
 また、「あわとく」の中で放送しきれなかった他のグループのエピソードや出演した方の活動などについては、「とく6徳島」で放送したそうです。


220322-3.JPG 末永ディレクターによると、参加した人たちに公共メディアに何を期待するかを尋ねたところ、「普段から人とつながる機会が少なかったり、自分と同じような立場の人とばかりつながってしまうため、今回のように違う立場や考え方の人と出会える機会を作ってもらえれば」という声が多く聞かれたそうです。イベント自体の満足度は非常に高いものでした。一方で、悩み相談や座談会のような映像を、どうすれば視聴者に楽しく見てもらえるのか、演出面に課題を感じたということです。
 

 徳島放送局の京戸英之副部長によると、「来年度は『AWAラウンドテーブル』のスキームを一層進化させて、徳島県で必要とされ続ける地域放送局を目指します。テーマを、ツーリズムや地域活性化など、県民の関心の高い分野に絞りこみ、内容をさらに充実し、もっと多くの人に見てもらえるよう努めます。」とのことでした。

次回も、地域放送局の新たな取り組みについてブログでご紹介します。


調査あれこれ 2022年03月17日 (木)

#377 2つの大会が終わった今、改めて考える

メディア研究部(メディア動向) 上杉慎一


3月13日、北京パラリンピックが閉幕しました。大会直前にはロシアがウクライナに軍事侵攻を開始し、冬のパラスポーツの祭典にも大きな影を落としました。

一方、半年前の東京オリンピック・パラリンピックが直面したのは、新型コロナウイルスの影響でした。コロナ禍で開催されたオリンピックをメディアはどう伝えたのか、私たちはニュースの内容を分析し論考にまとめました。その際、注目した1つが、NHKがオリンピック中継で活用したサブチャンネルです。今回は論考の概要を改めて紹介するとともにとNHKのサブチャンネル放送について振り返ります。

コロナ禍の五輪 ニュースは

夏の東京オリンピック・パラリンピック大会は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、史上初めて開催が1年延期され、オリンピック開催の直前には東京に4回目の緊急事態宣言が出されました。連日、コロナ報道が続く一方で、大会を開催すべきか否かを巡り人々の意見は大きく分かれました。そうした中で聞かれたのは、「いざオリンピックが始まればテレビはオリンピック報道一色になるに違いない」といった“メディアの手のひら返し”を指摘する声でした。

実際はどうだったのでしょうか。東京オリンピックの報道をみると、新型コロナの第5波を受けて、テレビでは大会の途中からトップニュースがオリンピック関係からコロナに関するニュースに置き換わり、コロナの報道量も増加しました。その反面、大会期間中の報道量としてはオリンピック関係のニュースが最も多くなりました。詳しい分析内容は「コロナ禍の五輪 ニュースはどう伝えたか」(上杉慎一・東山一郎/放送研究と調査2月号)をご覧ください。

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オリンピック報道とコロナ報道の両方をどう伝えていくのか、メディアは対応に迫られました。その対策の1つとしてNHKが数多く活用したのが、サブチャンネルを使ったマルチ編成です。マルチ編成は1つのチャンネルでメインとサブの2番組を同時に放送するもので、これによって総合テレビで通常通り「ニュース7」を編成するとともにオリンピック中継も同じ時間帯に伝えることができました。その点でサブチャンネルは効果的だったと思います。
一方、「ニュースウオッチ9」はオリンピック中継のため、通常60分間の放送時間が2週間余にわたって15分~30分間に短縮され、一部で物議をかもしました。果たして当時の対応は適切なものだったのかどうか、今後も様々な検証が必要だと考えます。

逆転の金メダル 見逃し相次ぐ

東京オリンピックの際は、一定の効果を発揮したNHKのサブチャンネルですが、冬の北京オリンピックの中継では、逆にネックとなり、周知や運用の難しさが大きな課題として残りました。スノーボード男子ハーフパイプ決勝の中継で、金メダルを獲得した平野歩夢選手の滑走を見逃したという視聴者が相次いだためです。

2月11日。スノーボード男子ハーフパイプの中継は総合テレビで放送され、平野歩夢選手は2回目の滑走を終え2位につけていました。逆転を狙った3回目の滑走の直前だった午前11時53分にマルチ編成が始まり、スノーボード中継はサブチャンネルでの放送となりました。総合テレビのメインチャンネルでは、サブチャンネルへの切り替え方法を紹介する1分間の案内番組が放送され、続いて54分から通常通り気象情報が始まりました。その結果、リモコンを使ったサブチャンネル切り替えの操作に手間取った人たちが金メダルの瞬間を見逃すことになってしまいました。

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サブチャンネルへの切り替え方法の理解が十分進んでいないことはかねてからも指摘されていましたが、今回はそれが一層際立ったケースになりました。SNS では「最悪のタイミングだった」という嘆きも聞かれました。より丁寧な説明とともに番組編成での工夫も必要ではないかと思います。
これ以降、総合テレビではサブチャンネルの活用に慎重姿勢が見えるようになりました。日本がイギリスと戦った、2月20日のカーリング女子決勝の中継ではサブチャンネルを使わず、気象情報を休止するとともに、正午のニュースを午後1時30分までずらすという対応になりました。

浮かび上がった課題を今後どうする

2つのオリンピックを通じて、サブチャンネル1つをとっても効果と課題がそれぞれ見えてきました。今回のオリンピック・パラリンピックで浮かび上がったメディアの課題はこれにとどまりません。例えばNHKにとっては、BS1スペシャル「河瀨直美が見つめた東京五輪」を巡る問題もあります。この問題では、NHKの調査チームが報告書をまとめ公表していますが、BPO=放送倫理・番組向上機構が「放送に至った経緯について詳しく検証する必要がある」として審議入りを決めました。その推移を注視する必要があります。

この1年の間に続けて開催された東京と北京、2つのオリンピック・パラリンピック大会が終わりました。2つの大会を通して浮かび上がった課題にメディアはどう向き合っていくのか、メディア研究という視点で今後も見つめていきたいと考えています。

 

調査あれこれ 2022年03月15日 (火)

#376 プーチンの暴挙・ウクライナ侵攻~停戦のために何ができるか?~

放送文化研究所 研究主幹 島田敏男

 2月22日、日本の国会では新年度の政府予算案が衆議院を通過して参議院に送られました。これによって新型コロナ対策なども盛り込んだ令和4年度予算が、憲法の規定に基づいて年度内に成立することが確実になりました。

 総理大臣にとって1年で一番大きな仕事が「国を動かす血液循環」とも例えられる本予算の成立です。本会議場で一礼した岸田総理が思わずほっとした表情を見せたのも、就任から間もない新人として当然の姿です。

 しかし、ほっとしたのもつかの間。2日後の24日、プーチン大統領の命令でロシア軍がウクライナに攻撃を始めてしまいました。時計の針を100年前の領土拡張競争時代に巻き戻した感があります。

 ロシア政府は「軍事施設を狙ったものだ」と強弁しましたけれども、ウクライナ国内からメディアやSNSで伝えられる状況を見れば一目瞭然。市民を巻き込む軍事侵攻に他ならないことを世界は瞬時に理解しました。

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 アメリカのバイデン政権は、情報機関の分析に基づいて早い段階からロシアがウクライナに攻め込む事態を予測し、世界に警戒警報を発していました。

 21世紀初頭からのテロとの戦い、そしてイラク戦争の苦い経験を積み重ね「世界の警察官」として振舞うことを辞めたアメリカ合衆国。それでも自分たちの「目と耳」で集めた情報を世界に伝えることで、何とかリーダーの地位を保とうという切実な思いがにじんでいます。

 「国際社会はプーチン大統領の誤った行動を止めることができなかった」。
国際政治の専門家は口をそろえて指摘します。核兵器を保有し、国連の安保理常任理事国のロシアが力による現状変更に踏み切ったことで、世界は歴史に残る困難に直面することになりました。
 
 日本時間の3月3日未明、国連総会でロシア非難決議が採択されました。賛成141か国、反対5か国、棄権35か国という態度表明でした。
kokuren.pngのサムネイル画像 賛成の141か国は、G7など決議案を共同提案した96か国と、それ以外に賛成した45か国です。

 反対の5か国は、ロシア、ベラルーシ、北朝鮮、エリトリア、シリア。いずれも専制主義的国家体制の国です。
 棄権の35か国には、中国、インドが含まれています。

 決議案の共同提案国になった日本は、G7の一員として経済制裁に加わり、自衛隊が保有するヘルメットや防弾チョッキといった護身用の装備品をウクライナに提供しました。

 この決議採択の後、ロシア軍とウクライナ軍の攻防が続く中、3月11日(金)から13日(日)にかけてNHK電話世論調査が行われました。

☆「ロシアのウクライナへの軍事侵攻に対する日本政府のこれまでの対応を評価しますか」と聞きました。

  「評価する」  58%
  「評価しない」 34%

☆「日本政府はロシアに対し、プーチン大統領ら政府関係者や中央銀行などが日本国内に持つ資産の凍結や、半導体の輸出禁止などの制裁措置を決めています。これらの制裁措置についてどう思いますか」

  「妥当だ」        42%
  「さらに強化すべきだ」 40%
  「強すぎる措置だ」     7%

 これを与党支持者、野党支持者、無党派層の別に見ても、ほぼ同様の肯定的な結果を示しています。

☆「政府はウクライナから避難した人の日本への受け入れを進める方針です。この方針を評価しますか」

    「評価する」    85%
  「評価しない」 10%

 こちらも与党支持者、野党支持者、無党派層のいずれを見ても、ほぼ同様の結果です。「遠い国の話」と片づけないで、苦難に見舞われたウクライナの人たちに対し「離れていても隣人」という想いをはせている人が多いように感じます。

 この2年間、私たちは世界的規模で新型コロナウイルスに向き合ってきました。この共通体験を通じて地球上の課題が広く共有されるようになり、遠く離れた場所の出来事でも「困っているお隣さんを支援しよう」という地球市民の感覚が醸成されてきたと言ったらうがちすぎでしょうか。

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☆「あなたは岸田内閣を支持しますか。それとも支持しませんか」

  「支持する」     53%(対前月 -1ポイント)
  「支持しない」  25%(対前月 -2ポイント)

 オミクロン株による新型コロナウイルス感染第6波が年明け早々に襲来し、2月には岸田内閣の支持率に陰りが見えましたが、今月は横ばいを維持しました。

 岸田総理の内憂である感染拡大が、今の第6波の後、収束に向かうことを願わずにはいられません。

 ただ、そこに『外憂』ともいうべきプーチンの暴挙・ウクライナ軍事侵攻が眼前に現れました。国際社会の一員として、これをどう乗り越えるか?

 まず、話し合いによる停戦合意に漕ぎつけることが重要ですが、それを促すために日本政府がすべきこととして、私は次の2点を挙げたいと思います。

 一つ目は、ロシアが管理下に置いたとされるチェルノブイリ原発などウクライナ国内の原子力施設に対し、IAEA(国際原子力機関)の監視の目が十分に行き届くように支援することです。東日本大震災による福島第一原発事故の後、IAEAとウクライナ政府から事態改善に必要な様々な知見の提供を受けました。その恩返しでもあります。

 二つ目は、国連総会でロシア非難決議案に賛成せず棄権に回った中国を、これ以上ロシア支援の側に回らせないようにする日本外交の働きかけです。中国がロシアとの経済関係を今以上に強めれば、経済制裁の抜け道を広げることになります。外務大臣を5年近く務めた岸田総理のリーダーシップが試されます。
ukurussia.pngのサムネイル画像 ウクライナのゼレンスキー大統領とロシアのプーチン大統領の首脳会談が実現し、事態打開に向かうことができるのかは不透明です。(3月15日現在)
 
 インターネット、SNSの発達で様々な情報を手にすることが可能になった今日だからこそ、地球規模の課題に関心を持ち続けることが重要だと感じます。







 





メディアの動き 2022年03月11日 (金)

#375 政策目的の実現のためにどう政策手段を見直すか? ~「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」第6回から~

メディア研究部(メディア動向) 村上圭子


 本ブログでは、総務省で開催中の「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会(本検討会)」を傍聴している私が、私なりに論点を整理し所感を記しています1)
。今回は、第6回の議論についてです。

①    政策目的と政策手段

 今年に入ってから、本検討会では主要な論点として、「マスメディア集中排除原則(マス排)」と「放送対象地域」を見直すかどうかが集中的に議論されています。これは、情報空間がネットに拡張して人々のメディア接触が大きく変容する中、また人口減少が進み地域経済が衰退しローカル局の経営基盤が揺らぎかねない状況になる中、放送の「多元性・多様性・地域性」の確保という政策目的を実現するための政策手段(上記2つの制度)が時代に合わなくなっている部分があるのではないか、という問題意識からスタートしています。政策手段が政策目的の実現を却って妨げているのではないか、と言い換えてもいいでしょう。なんだか最初から堅苦しくなってしまいましたが、このことは、この論点を見ていく点で常に忘れてはならないポイントだと思っています。

②    固まってきた見直しの方向性(案)

 前回の第5回会合では、総務省側から示された「見直しの方向性(案)」を巡り議論が行われました。それを受け、今回は、より明確な方向性(案)2)が示されました。ポイントをまとめておきます。

    1⃣認定放送持株会社制度の地域制限(現状は12地域)は撤廃

    2⃣隣接・非隣接を問わず、一定の制限の範囲内で異なる地域の兼営・支配を可能に

    3⃣同一地域については現状維持。ただしハード設備連携等で緩和ニーズがあるかを継続注視

    4⃣放送対象地域は変更せず、希望する局は複数地域での放送番組の同一化を可能に

    5⃣放送番組同一化の制度を設ける場合には、地域情報の発信確保の仕組みを措置

③ それぞれのポイントについての議論の整理と若干のコメント

 1⃣についてはこれまでも構成員から反対の声は上がりませんでしたが、今回、資本関係と自社制作番組比率との間に関連性が認められない、つまり、例えばキー局持株会社の関係会社の局とそうでない局との間に比率に差異はない、という事務局側の資料が提示され、案では「撤廃」に踏み込みました。撤廃を巡っても、特段の異論はありませんでした。

 ただし、あくまでこれは現時点での比率の数字であり、ローカル局がキー局持株会社の関係会社や子会社になってからその比率が維持されてきたのか向上してきたのか、それとも減少してきたのか、といった経年での分析ではないことには注意が必要だと思いました。認定放送持株制度導入の政策目的は、「地上放送事業者に関し、多額の資金調達や経営の一層の効率化が大きな経営課題となる中、持株会社を通じた資金調達を可能とし、放送事業者の経営の安定基盤を強化する、人材、資金、設備等について経営資源の効率的運用を可能とする、放送事業者間の連携ニーズに柔軟に対応することを可能とする3)」ということであるため、必ずしも地域に向けた自社制作番組の充実は政策目的ではありません。一方で放送法163条において、認定放送持株会社の関係会社には地域向け番組制作への努力が定められています。仮に今回「撤廃」することになったとしても、経年での評価を、地域性の確保という観点から注意深く見ていく必要があるのではないかと感じました。

 2⃣については、局にとって使い勝手のいい柔軟な制度改正が必要だ、という方向で議論は進んでいきました。また、この考え方は4⃣の放送番組の同一化の対象地域を考える際にも援用できるのではないか、ということも今回、示されました。それを受け、現在、現行法では隣接地域の局において3分の1の出資規制がかからない、つまり、局同士の合併まで可能な制度(「特定隣接地域特例」)では対象外とされている広域局の扱いをどうすべきか、ということが一つの論点となりました。
 一例としてあげられたのが静岡県でした。静岡県の場合、東部は関東エリアに近く、逆に西部は中京エリアに近い生活圏となっています。しかし現行法上は、関東も中京も広域局の地域であるため、もしも静岡県にある局が経営統合もしくは番組同一化を考えたとすれば、静岡県については長野県か山梨県としか一緒になれず、生活圏を同じくする関東や中京とは一緒になれません。それは視聴者目線から考えてどうなのか、という問題提起がありました。今回は静岡県が例にあげられましたが、このほかにも同様の課題を抱える県は存在すると思います。それに対して総務省側からは、三大広域圏の資本関係が結びつくことは放送の多様性が損なわれる恐れが強いとの懸念があるため、現行法では認められてこなかった、また、資本関係の強化であれば認定放送持株会社制度を活用すれば可能であり、これまで要望もなかったという発言がありました。ただ、検討の余地はあるという発言もありましたので、次回更に議論が深められていくものと思います。
 しかし、当然ながらこうした“静岡県問題”のようなことは、放送制度特有の論点ではないということには注意が必要だと思います。今後仮に、行政単位が現在の都道府県から、道州制や広域行政圏などへ見直す議論が進んでいくとしたら、同様の問題が顕在化してくることは間違いありません。それをどう解消していくかについては、大きな政治的判断を伴うものとなってくるでしょう。そうした判断の前に、事業者の事情によって先んじて放送制度の側がこのような議論をし、新たな枠組みを設けようとしていることについては、個人的にはいささか違和感を覚えますが、今回、放送対象地域という原則を変えない、ということで、“後戻りできる”制度設計とみることもできると思います。次回は、広域局において隣接特例を拡張するかどうかが議論されると思いますが、認定放送持株制度がある中、今一度、放送3原則という大きな政策目的に立ち返りながら、幅広い議論が行われることを期待しています。

 3⃣については、ローカル局自身から、系列を超えた1局2波や、局の数を減らすクロスネット局化といった具体的な要望が出ていない以上は現状維持でいいのではないか、という構成員が多かったように思います。今回、テレビ朝日HDはヒアリングの追加資料を提出しましたが、そこにおいても同一放送地域内の緩和については否定的な見解が述べられていました4)。ただ、ローカル局の要望については、三友座長が愛媛県を訪れてヒアリングした結果が次回示されるということなので、潜在的にローカル局にこうしたニーズがあるのかどうか、少しは明らかになってくると思いますので、次回の議論を待ちたいと思います。
 また、こうした論点とは異なり、専らハード設備を前提とした連携を行うため、マス排緩和を行わなければできないような資本関係強化の必要があるのかどうかも議論されていました。今回の議論では、ハード設備といっても、“ソフト寄り”のハードとしてのマスター設備については、系列で仕様が異なるために“タテ”(つまり系列ごと)の連携が、一方で中継局設備のようなものについては“ヨコ”の連携が求められるのではないかといった、放送業界にとってよりリアリティのある議論になっている印象を受けました。その上で、ヨコ連携については、既に中継局についてはNHKも含めた共建が進んでいること、またメンテナンス会社については系列を超えて横で共同の会社を作ったり、共同で別会社に委託したりという取り組みが既に進んでいる実例がある中 5)、更に経済合理性を高めていくためにどのような姿を模索していくのか、これはユニバーサルサービスのブロードバンド代替の取り組みを本格的に進めていくことになる中で、NHKも含めた次のステージの議論として改めて出てくる論点ではないかという印象を持ちました。

 4⃣の複数地域の同一放送の可能化については、5⃣の地域情報確保の措置とワンパッケージで議論されてきました。同一放送を可能にするという政策手段によって実現しようとする政策目的は何なのか、今回の検討の中では最も重要な議論であるように思います。ここについては、まだ議論がしつくされているとは思いませんので、次項で詳細に述べていきます。

④    複数地域での番組の同一化の政策目的は何か?

 改めて確認しておくと、現行制度においても、複数地域での番組の同一化を実現する制度は既にあります。この制度は「経営基盤強化計画認定制度」というものですが、「経済事情の変動により放送系の数の目標の達成が困難になる恐れがある等と認められる」地域に指定され、そこの地域の局が計画を作成して総務大臣の認定を受けて初めて実現するもので、いわば、経営が悪化してからの対応策のような制度です。今回議論されているのは、経営が悪化する前に複数局が番組の同一化という施策を行うことで、ローカル局の経営基盤強化を図ろうという、いわば“転ばぬ先の杖”の性質のもので、既存制度とは別立てで設けていこうということを総務省側は方向性案として示しています。
 これを要望したのはテレ朝HDで、要望の際、その目的は「地域での放送の維持」であるとしていました。では、ここで想定する“地域”とは何を指すのか。これが非常に重要な論点だと思います。4⃣と共に議論されている5⃣の地域情報確保の措置についても同様です。今回の議論では、災害でも県よりも広域の地域のニーズがある、といった意見や、県よりも小さな住民自治の単位としての地域情報の確保が重要だ、と言った意見が出され、かならずしも構成員の間で、地域の範囲や地域情報のイメージが共有されているとは思えませんでした。一方で、共有できないのは当然であり、それぞれの地域によって、またそれぞれの局面によって住民のニーズも異なるため、そこは放送を行う局に委ね、局が自らの判断で行っていくべき、という趣旨の発言もありました。
 5⃣の地域情報確保の措置については、これまでのような事業者の努力義務に委ねていてはだめだ、といった厳しい意見や、地域性確保の取り組みのモニタリングが必要という意見、事業者が視聴者への責任として情報発信の見える化を自らの判断で取り組んで公表すべきといった意見が出されました。また、こうした取り組みについては、放送番組の同一化の制度を活用した局かどうかに関わらず、全ての局が公表していくべきではないか、といった意見も出ました。事業者への過度な介入にならず、しかし制度のお題目として形骸化したものにならないよう、そして何より、こうした取り組みが事業者にとって単なる義務ではなく、取り組みを行う事が地域の信頼の確保やビジネスにつながり、更に局が地域メディアとしての役割を高めていくきっかけとなる、そういう方向に向かう議論になっていくことを期待します。前回のブログで私は、単なる放送による地域情報の提供という視点ではない多面的な地域性の物差しを開発することが必要だと述べましたが、そのことを今回も改めて述べておきたいと思います。その物差しをローカル局自らが開発し、公表していくことを通じて、地域における自局の存在意義とは何かを再認識し、住民や広告主・自治体などとコミュニケーションをしていく一つのツールにしていくことができるといいのではないかと考えます。
 更に今回の議論では2つ重要な視点が提示されました。1つ目は、小さな経済圏の情報発信が減ることが懸念されるので、何らかの手段で、地域情報の総量を定量的に維持できる仕組みが必要ではないか、という視点です。番組の同一化によって局の経営合理化を進め、そのことによって地域情報の確保を図っていくという政策目的そのものは総論では同意しますが、更にもう一歩踏み込んで、“市場原理にゆだねていては減少していくことが想定される地域”における情報の確保にこそ力を入れて取り組む視点が、公共的なメディアとしての放送には重要なのではないかと思います。そのためには、複数地域の同一番組における編成の方針や取材地域の力点の置き方をどうするか、といったことも重要になってきます。こうした、地域に対する考え方についても、放送局が積極的に公表していくことが重要なのではないかと思います。
 2つ目は、放送をリアルタイム視聴する人が減少する中で、アクセシビリティをどのように高めていくか、そこを下支えする方策を考える事ができないか、という視点です。その一つのアイデアとして、ネット上の外部プラットフォームや、公共施設のサイネージに優先的に放送コンテンツを載せていくといったことが制度的に考えられないか、という意見が出ました。“市場原理にゆだねていては減少していくことが想定される地域”における情報の確保のため、欧州では、公的支援や受信料による支援の枠組みがあるといった事例が増えていますが、日本ではどのようなモデルがありうるのかを考えていく上で、アクセシビリティという視点から考えていくことも興味深いと思いました。

1)  https://www.nhk.or.jp/bunken-blog/2021/12/01/ 
     
https://www.nhk.or.jp/bunken-blog/2022/01/20/ 
      https://www.nhk.or.jp/bunken-blog/2022/02/10/
 
     
https://www.nhk.or.jp/bunken-blog/2022/03/07/ 
2)https://www.soumu.go.jp/main_content/000797980.pdf
3)https://www.soumu.go.jp/main_content/000404701.pdf
4)https://www.soumu.go.jp/main_content/000797976.pdf 
5)長崎県や青森県等では系列を超えてメンテナンスの会社を設立・運営、関東広域圏では同一会社に委託しているなどの事例がある