文研ブログ

メディアの動き 2023年01月27日 (金)

#447 これからの"放送"はどこに向かうのか? ~「公共放送ワーキンググループ」のこれまでを振り返る<第4回の議論から>~

メディア研究部(メディア動向) 村上圭子

◇はじめに

 総務省の「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会(以下、在り方検)」の「公共放送ワーキンググループ(以下、公共放送WG)」について、先日のブログ1では第2回・第3回の報告・ヒアリングのポイントを整理しました。今回は第4回の議論を紹介します。
 第4回は、私がこれまで約10年にわたり放送政策に関するこの種の検討会を傍聴してきた中でも、最も刺激的な議論が行われた会合の1つではなかったかと感じています。NHK、民放連、新聞協会、総務省、そのそれぞれに対して、構成員たちからかなり厳しい要望や意見が投げかけられたからです。これらは、デジタル時代において旧来型の放送政策議論を続けていては、拡張する情報空間における伝統的メディアの役割を再定義できないのではないか、という問題提起でもあるように感じました。そして、このWGの議論の主役であるNHKに対しては、本来やるべきものをやっているかどうか、その成果を測る指標等を設定すべきであり、その役割が果たせていなければNHKはいらないのではないか、といった発言まで出されました。
 どういう議論が行われたのか、詳細を見ていきたいと思います。なお、本ブログ執筆時にはまだ総務省から議事要旨が公開されていなかったため、私の手元のメモをもとにしています。

◇繰り返される主張

 第4回ではまず、第3回でヒアリングを受けたNHK、民放連、新聞協会に対し、構成員たちからの追加の質問とそれに対する回答が紹介されました2。主なものを紹介しておきます。
 NHKに対しては、“公共放送としてのあるべき姿をどのようにデザインされているか自身の言葉で語ってほしい”“何が公共放送として求められる役割なのか、NHKとして日本においてはどのようなものが(メディアとして)公的な性質を持った役割と考えているか”という問いかけがありました。それに対しNHKは、“現在の放送と同様の範囲・効用のあるものは提供の態様が異なっても役割を果たしていくことが出来る、今後はWGの議論の深まりに期待したい”と答えました。
 民放連に対しては、“NHKのネット活用業務の拡大や存在が、民放との競争関係にどれだけの影響をもたらすと考えられるのかエビデンスや調査はないか”という問いかけがありました。それに対して民放連は、“そうした結果は持ち合わせておらず、政府やNHKが必要に応じて民放や新聞に不利益が生じるかどうか明らかにする調査を実施してほしい”と答えました。また、“NHKのネットオリジナルのコンテンツの制作・配信が民放との競争上具体的にどのような問題につながるか”という問いかけに対しては、“現行の受信料制度を維持したままNHKの新たな業務範囲を検討するのであればオリジナルコンテンツが含まれないことは当然であり、財源(受信料)の問題を抜きにしてはこの話はできない”と答えました。
 新聞協会に対しては、“情報空間の全体構造との関係でNHKとの協力のあり方についてどう考えるか”という問いかけがありました。それに対し、“NHKがネット活用業務に関して具体的な内容や範囲、それに伴う受信料制度なども含めた全体像を現時点で示していない段階では答えられない”としました。また、“現状でもネット活用業務のなし崩し的な拡大がみられる、ネット時代における公共放送の役割について議論するのであれば、まず公共放送として取り組む業務範囲から検討が必要だ”という従来からのスタンスを強調しました。

◇問われるメディア自身の説明責任

 ここまでは事務局が事業者の回答を紹介するという形で進められましたが、その後は、オブザーバーとして参加していたNHK及び民放連に対し、構成員が更に突っ込んで質問をしていくという流れになりました。NHKに対しては宍戸常寿構成員から、“NHKは今後どういう風に公共放送の役割を果たしていくのか、その全体像を示さない限り、議論は暗礁に乗り上げている気もする、その答えはしっかりNHKから出してもらえるのか”という趣旨の問いかけがありました。NHKはこれに対し、第3回の報告の内容を繰り返した上で、“WGでの議論の深まりを期待したい”と回答するに留まりました。しかし、落合孝文構成員からは、“BBC等の場合はこういうものを公共性がある情報だということをもっと具体的に示している、NHKが力点を入れるという「あまねく伝える」「安心・安全」だとなんでも入ってしまいそうな気がするので、どこかでNHKから明確な意見をまとめてほしい”と重ねて要望がありました。
 落合構成員は民放連に対しても、“仮にNHKのネット展開拡大で悪影響があるにしても、それを是正する措置としての協力・連携、資金の投入等の点も考慮して検討してほしい”という趣旨の要望を述べました。
 また新聞協会に対しては大谷和子構成員から、“ネット活用業務のなし崩し的な拡大がみられるという発言があるが、私から見たらNHKは慎重に拡大してきたという認識。具体的にどういう点で課題となっているのか、漠然とした懸念ではなく、数字等も含めて具体的に教えてもらえないと公正競争のフレームワークを議論しにくい”という発言があり、三友仁志座長からも新聞協会に再度質問するようにと事務局に対する念押しの発言がありました。

◇問われる行政の責任

 また、宍戸構成員は総務省に対して、“放送政策の効果について抽象的な話のやりとりではなく、データや指標に基づいて議論すべきであり、放送法を所管されている以上、データを把握し提示する責任があるのではないか、デジタル化が進んでいる社会全体の中でこれまでのような放送政策の流儀が成り立つのか非常に危機感を持っている”と発言しました。この問いかけに対し総務省の事務局は、“どのようなデータが必要なのかも含めてWGの構成員と一緒に議論を進めていきたい”と回答するにとどまりました。

◇今後の議論に向けた構成員からの論点案

 後半の議論では、今後の施策を考えるための具体的な論点案が相次いで構成員から出されました。今後、諸外国の制度等も参考にしながら議論が深められていくと思いますので、こちらについては改めて海外の状況と共にブログで紹介していきたいと思います。ここではどんな意見が出ていたのか、備忘録的に項目だけ挙げておきたいと思います。

  • プラットフォームとの交渉における伝統メディア間の協力の枠組みつくり
  • メディアの競争政策について、“市民の利益”という観点から検討する
  • NHKの活動について指標を定めて成果を計測する仕組みを作る
  • ガバナンス強化が求められるNHKの経営委員会に、デジタルや競争政策の専門家という選任要件を設ける
  • NHKは非競争領域(例:国際業務)においては、BBCのように積極的にビジネス活動の展開を検討する
  • 受信料についてNHK業務以外での活用用途を検討する
  • WGの議論を視聴者・国民に対してわかりやすい形で情報発信する

◇議論を傍聴して感じたこと

 前述したように、後半には構成員から積極的な論点案が提示されました。特に、前回で曽我部構成員が提起した、視聴者の利益を消費者の利益と市民の利益に分け、公共放送に対してはより市民の利益を重視する方向で公共的役割を定めていこうという議論の方向性は、第4回の議論でより深まってきたという印象を持ちました。ただ、これらの議論を、放送事業者の一員、NHKの一職員として聞いていてある種のむなしさも感じました。
 メディアの自主自律を標ぼうするのであれば、デジタル情報空間についての問題意識を、新聞、民放、NHKの伝統メディアが共有した上で、まずそれぞれの事業者が、自らの価値の再定義について日々の実践を踏まえて具体的に言語化し、それをもとに、これまで切磋琢磨して民主主義を支えてきた事業者どうしがどうすみ分けどう共創していくのか自ら調整し、それを政策当局に提示し、その内容を政策に反映させていく、それが本来のあるべき姿だと考えます。ただ、第4回の事業者に対する構成員の反応をみると、いずれのメディアも自社のもしくは自身の業界の利害という狭い視野でしか発言していないように受け取られてしまったのではないかと推察しています。
 公正競争のフレームワーク作りは、メディアの多様性、それを支える多元性のために必要不可欠なことは言うまでもありません。それをNHKのネット活用業務という枠でのみ考えるのではなく、現在の放送サービスも含めた全体から改めて考えていくべき、という民放連、新聞協会の意見については、私自身は納得感を感じています。例えば地域のメディア機能をどう維持していくのか、供給不足をどう補っていくかということを考えた時、その議論はネットサービスの範囲だけの議論にはとどまらないからです。NHKは、第3回のヒアリングで、自身に今後求められる役割としてメディアの多元性の確保に貢献するという分析をし、提示しています。NHKは、ネット活用業務という狭い範囲ではなく、放送サービス全体まで視野を広げ、それぞれの業務が“市民の利益”にかなうものなのか、今一度点検し、説明責任を果たしていくという姿勢が今後求められるのではないでしょうか。
 また、民放連や新聞協会が、NHKの現在の理解増進情報への取り組みや、今後、ネットのオリジナルコンテンツを制作することに対して競争上問題があると発言するのであれば、もう少し具体的に自身の業務のどの部分とバッティングするのか、今後伸ばしていきたいどの業務の部分の成長を阻害する恐れがあるのかを説明する必要があると思います。これは、多くの構成員が指摘したところであり、私もそう感じます。また、第4回では海外の放送政策について事務局から紹介がありましたが、ドイツでは新聞メディアとの関係から、公共放送のテキスト配信や地域コンテンツの全国ネット展開に制約がかけられているということでした。私自身はNHKの現場の取り組みを見ていて、これらに制約がかけられることに対しては消極的な立場ではありますが、具体的な議論を進めていくためには、こうした政策の背景に何があるのかについて、事務局報告任せにせず新聞協会自らが取材・調査し発信していく、そうした姿勢も必要なのではないかと思います。もちろん、NHKが現在、理解増進情報において何に取り組んでいるのか、対応番組のリストの公開だけでなく、それがどう“市民の利益”に貢献すると考えて取り組んでいるのか、NHKでなければできない理由をどう考えているのか、その説明をしていくことも必要だと考えます。
 宍戸構成員から、デジタル時代の放送政策として、もしくは公共放送の成果を表すものとして、エビデンスをデータで示すべき、という問題提起がありました。確かに指摘はもっともだと思います。ただ、そう思うと同時に、仮にメディアの働きかけが視聴者・国民にどのような影響、行動変容を及ぼしているのか、というものを指標化し測定するということが行われるとすれば、それが行き過ぎることには怖さも感じます。今行われている議論は、今後の情報空間において信頼されるメディアをどう維持すべきか、という非常に大きな枠組みの議論です。もちろん民放連が指摘する通り、その議論を公共放送のネット活用業務を議論する場で行っていることには違和感もあります。ただ、既にこのWGで議論が開始されている以上、メディアの意思が不在のまま、今後の日本のメディアに関する政策が決定してしまうということには、メディアに所属する一人として大きな危機感を感じます。文研が、こうしたテーマを考え、業界横断的な議論を促していく旗振り役になるべきではないか、第4回を傍聴して最も強く感じたのはそのことでした。今後、何ができるのか、改めて考えていきたいと思います。


メディアの動き 2023年01月25日 (水)

#446 これからの"放送"はどこに向かうのか? ~「公共放送ワーキンググループ」のこれまでを振り返る<第2回・第3回>~2023年1月のNHKを巡る動き~

メディア研究部(メディア動向) 村上圭子

(はじめに)

 総務省の「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会(以下、在り方検)1」の「公共放送ワーキンググループ(以下、公共放送WG)」では、インターネット時代における公共放送の役割や、現在は"任意業務"として行われているNHKのネット活用業務のあり方の検討が進められています。ネット活用業務を拡大すべきか否か、もし拡大する場合には"必須業務"とする等の制度改正を行うかどうか、具体的な業務の範囲や内容は?他のメディア事業者との競争環境をどう確保していくのか?2022年12月まで4回にわたって議論が行われましたが、第4回には、「議論が暗礁に乗り上げているのでは」といった発言も出るなど、厳しい議論が続いています。第5回は2月末に開催が予定されています。本ブログでは第1回の議論を整理2して以降フォローしていませんでしたので、これまでの会合の内容を確認しておきたいと思います。今回は、第2回・第3回のうち、報告・ヒアリング部分について、私がポイントと感じた部分を資料の抜粋と共に振り返ります。

(第2回 2022年10月17日 構成員からの報告)

 この日は経済学・産業政策が専門の青山学院大学教授の内山隆氏と、憲法・情報法が専門の京都大学教授で、NHK会長の諮問機関「NHK受信料制度等検討委員会」に設けられた「次世代NHKに関する専門小委員会(以下、次世代小委)3」委員長の曽我部真裕氏の2人の構成員からの報告がありました4

*内山氏の報告5

 内山氏は、メディアやコンテンツの産業政策の観点から、NHKの今後の役割を考えるという立場で報告を行いました。
 図1は、日本のメディア産業の各分野が、どのようなプレイヤーで構成されているのかを示した図です。内山氏は、世界には国内メジャーを持てない国が数多くある中、日本市場は各分野において、国内メジャーと米国資本を中心としたグローバルメジャーが競争できている国であるといいます。国内メジャーを持つということは、メディア産業において核となる、配給、編成、流通、プラットフォーム機能を失わないという点で重要であり、もしも国内メジャーを失ってしまうと、文化や思想の自主性、独自性を相当失う懸念があると訴えました。そして、映像配信において、Netflix、Amazon、Disney+等に対抗する国内メジャーは育っているのかと、内山氏は問いかけました。現状の選択肢はTVerとNHKプラスなので、これをどう回していくかということが現実的だろうとコメントしました。

(図1)

 また、内山氏は世界のメディア関連企業の中で国内メジャーはどのくらいのポジションにあるのかを、時価総額と売上高の2つのデータで説明しました。時価総額ではほとんど存在感のない国内メジャーですが、売上高でいくと、2020年の世界のメディア関連企業トップ50には、ソニー、任天堂に続いてNHKは23位にランクインしているということを紹介しました。また、在京キー局も50位以内に入っており、日本の地上放送は上位の米国ハリウッド勢等とも、世界で間違いなく伍して戦うことが期待されるポジションにあると訴えました。
 その上で内山氏は、国際競争上の圧力や映像配信の市場・産業の導入期として、NHKは民間よりリスク投資をしやすい財源を持つ立場で、「業界リーダーとして何かを開拓する」上で先行するのはミッションではないか、と主張しました。

*曽我部氏の報告6

 曽我部氏は、放送メディア、公共放送の位置づけに関して確認した後、NHKネット活用業務の今後を検討する上で考えるべき5つの論点例を示しました。(図2)。

(図2)

 aからeまでいずれも重要な論点ですが、ここではbの業務範囲について詳細をみておきます。曽我部氏はNHKのネット活用業務の範囲を考えるための論点として以下の4点をあげました。

⑴ アセットを活かす観点
⑵ 情報空間の不備補完
⑶ 利用者ニーズ
⑷ 国民文化/国内コンテンツ確保

 ⑴のアセットとは、資産・資源・財産という意味です。曽我部氏は、人材、拠点、取材・制作能力、アーカイブ、信頼・ブランド等をNHKのアセットと位置づけ、これを別チャンネル、つまり放送ではなくネット上でも活かすという観点で業務範囲を広げることが考えられるのではないか、と述べました。また、そのことは受信料を含めた国民負担の有効活用につながる一方で、既存の組織維持を正当化するという批判もあるだろうと指摘しました。
 ⑵については、曽我部氏が最も重要な論点と位置づけたところです。詳細は後述します。
 ⑶については、ニーズが多い少ないで判断すべきではないという考えを示しました。曽我部氏は、視聴者の利益を"市民の利益"と"消費者の利益"に分けて考えるという英国の議論を紹介し、公共放送が貢献してきたのは主として"市民の利益"に対してであり、公共放送の役割は、単にニーズに応えるのではなく、共有すべき情報を提供するという規範論からも考えなければならないとしました。
 ⑷の国民文化については、例として朝ドラと大河をあげながら、NHKは「時代を象徴するような番組を放送し、国民文化の一翼を担ってきた」とし、"国民統合的な側面"で考えるべきだとコメントしました。こうした番組については、テレビ視聴が減少していく中、ネットも活用して少しでも多くの国民に届けていくことが必要なのではないか、そういう意味で曽我部氏は論点としてあげていると私は理解しました。また、国内コンテンツ確保という"産業政策的な側面"は、内山氏が詳細に報告されたので割愛します。
 図3に示したのが、⑵情報空間の不備補完に関する論点を3つの観点から説明した資料です。1つ目が、供給が少ないジャンルの情報を補うという観点、2つ目がデジタル情報空間の弊害を直接是正するという観点、3つ目がNHKの潜在利用者のニーズを充足するという観点です。曽我部氏は、1つ目については、具体的にこういう発想の下で議論していくとなると色々と限界があるとし、2つ目については、ネット上でNHKのコンテンツがバラバラに流通していたり、自前のPFではセレンディピティ(偶然の出会い)を提供できたとしてもリテンション(ユーザーとの関係性の維持)が困難だったりして、NHKが情報空間の弊害を直接是正する可能性は限定的であると述べました。一方、3つ目については、本来であればNHKを見てもおかしくないような層に公共放送の価値を届けるということは当然あり得るのではないか、と述べました。

(図3)

 先に触れたように、曽我部氏はNHK会長の諮問機関の次世代小委の委員長を務めており、デジタル情報空間の課題とそこにおけるNHKの役割について、公共放送WGの議論をいわば"先取り"するかたちで2年前から議論を行っています。最近では、テレビを持たない人を対象にNHKが実施した社会実証の詳細な分析をもとにした議論も複数回行っており、曽我部氏の報告には、次世代小委の議論で積み重ねてきた認識も少なからず反映されていると推察しました。
 また曽我部氏は、情報空間の健全化にNHKの役割が期待されるとしても、メディアの多元性が提供する価値を毀損してはならず、NHKがネットに進出することで他のメディアの存在が脅かされることになれば、情報空間全体としてプラスにならず、本末転倒だとしました。

(第3回 2022年11月24日 NHK・民放連・新聞協会へのヒアリング)

 この日は、NHK、民放連、新聞協会の順番でヒアリングが行われました。第2回同様、それぞれのヒアリングのポイントを資料の引用とともに振り返ります。

*NHKへのヒアリング7

 NHKの発表の最近の傾向は、自身が実施した調査をベースに論を組み立てるスタイルのため、資料の枚数は多いです。今回の報告は80ページでしたが、その中から、NHK自身の問題意識と論点を示した3枚を紹介しておきます。

(図4)

 まず、図4はメディアの構造変化の分析と、そこで生じている影響や課題、それに対する対策の必然性について、曽我部氏の資料も引用するかたちで述べています。
 続いて図5は、こうした状況の中でNHKが寄与できること、すべきこととは何かをまとめたものです。NHKは様々な調査結果から、SNSを毎日利用するようなネットヘビー層や、テレビを視聴しているいないにかかわらず多くの人々が、デジタルに拡大し続ける情報空間において、信頼できる情報、基本的な情報、いわば"情報空間の参照点"に対する期待があるとしています。同時に調査結果から、新聞、民放、NHKに対する人々の信頼や期待が大きいということから、伝統的なメディアがそれぞれの特性を生かしながら参照点としての役割を果たしていくという"多元性の確保"が重要だとしています。そこからNHKには、この2つの期待にどう貢献してくかが求められているという結論を導き出しています。

(図5)

 図6は、今後、NHKのネット活用業務の範囲をどう考えていくのかについて、NHKが現時点で考えている論点を示したものです。"情報の参照点"の存在として貢献し、情報提供者の"多元性の確保"に寄与することを前提とした場合、放送と同様の公共性をもたらす範囲はどのようなものになるのかー。その範囲は、"効用"という観点から見た場合、NHK自身による同時配信・見逃し・それ以外の動画やテキスト配信だけでなく、PFを通じた提供のところにまで役割を伸ばして考えることが論点となるのではないかとしています。一方、その範囲をどこまで放送と同等と捉えるかということを考える場合には、また別の論点から考えなければならないとしています。
 NHKは以前から、ネット活用業務が現在の放送の補完という位置づけになっていることは、放送と通信の融合が進んでいる海外と比べると社会の現実に合わなくなっているのではないか、とくりかえし述べてきました。この報告は、NHK自身がどの範囲まで業務を拡大したいのか、どんな業務を実施したいのかという自らの意思の表明ではなく、今後、どんな観点から検討がなされるべきかという分析を示したものだと私は理解しました。

(図6)

*民放連へのヒアリング8

 民放連はこれまで、ネット上はグローバル企業を含めた様々なプレイヤーが切磋琢磨している事業領域であり、NHKのネット活用業務のあり方によっては民放の事業環境に大きな影響を与える可能性があるとして、NHKの業務拡大には懸念を示してきました。そして、基本的なスタンスは、NHKのネット活用業務の議論は財源及び受信料徴収の問題とあわせて議論して結論を得ていく必要がある、テレビ受信機にひもづく従来の受信料制度との整合性や、負担の公平性などの議論を先送りしてはならないというものでした。
 今回のヒアリングでも、直前のNHKの報告を受ける形で、NHKは明示的には必須業務化を要望しなかったけれど、もし必須業務化を検討しているのであれば、その趣旨や業務内容を具体的に説明してほしい、その上で、民放や視聴者、国民の意見を広く聞いて、丁寧な議論をお願いしたいと述べました。
 より具体的な要望も今回行いました。それは、放送番組の「理解増進情報」を拡大解釈しないこと、ネットオリジナルコンテンツの制作・配信はしないこと、広告収入を得ないこと、予算に厳格な歯止めを設けること、これらの取り組みが最低限必要だと述べました(図7)。

(図7)

 この「理解増進情報」についてはご存じない方もいると思うので少し説明しておきます。先に述べたように、NHKのネット活用業務は任意業務であり、予算も業務の範囲も限定的に行われています。予算については、2022年度、2023年度とも200億円を上限に設定しており、業務については、基本的には放送した番組をネットで配信するということに限られています。そのため、例えばネットオリジナルコンテンツを制作して配信するということは認められていません。ただし、特定の番組に関連付けられた補助的な情報の範囲のものに限り、番組の周知・広報や、番組内容の解説・補足を行い、放送だけでは提供しきれない情報を発信していくことが可能となっています。これを「NHKインターネット活用業務実施基準9」で理解増進情報と位置づけ、NHKは対応する番組のリストを定期的に公表しています10。民放連の主張は、この理解増進情報の解釈を拡大すべきではないというものでした。これについては、次に紹介する新聞協会がヒアリングでより詳細に述べているので後述します。
 最後に民放連は、本日のテーマがインターネット時代の公共放送という設定だったため、意見もNHKのネット活用業務に焦点を当てた内容になってしまったが、そもそものNHKの存在意義は、商業ベースと民間事業者だけでは十分ではないところを補うことにある、民間でできないことをするのがまずNHKの一番の役割であろう、ということを述べました。

*新聞協会へのヒアリング11

 新聞協会のヒアリング内容の大半は、NHKとの競合領域に関するものでした。まず、NHKのネット活用業務の上限予算の200億円という規模について、新聞社の総売上高は約1兆4,690億円で一般紙の売上高に占めるデジタル関連事業収入の割合は約2.3%、単純に掛け合わせることはできないが、その大きさをイメージしてほしいと訴えました。そして、ポータルサイト、ソーシャルメディア経由でニュースに接触する利用者が年々増える中、多くの新聞社がサブスクでの収益拡大を目指しているが、こうした厳しい環境下での収益化は容易ではないとし、こうした中、NHKのネット活用業務が本来業務に格上げされた場合、予算の歯止めすらなくなる可能性があり、事業が継続できなくなるメディアも出てきかねないおそれがあるとしました。また、NHKのページには広告が掲載されないためページの表示速度が速く、検索順位で有利になるとの指摘もある、ということも述べられました。
 更に現行のNHKのネット活用業務に対する批判として、大きく2つの観点から意見を述べました(図8)。まず理解増進情報について。NHKは自らが特定の放送番組に関連付けられた補助的な情報の範囲のものと定義しているが、この範囲を逸脱しているものがあるのではないか、なし崩し的な業務拡大につながっている理解増進情報の在り方を抜本的に見直すべきではないかとしました。次に、プラットフォームを通じて行っている記事配信について、NHKがこのままプラットフォーム事業者との結びつきを強め、無料コンテンツの配信を拡大すれば、民間報道機関のデジタル事業が影響を受けるのは明らかだとしました。そして、公共放送WGのこれまでの議論の中で、フェイクニュースなどネット空間のゆがみの是正にNHKの役割が大きくなるほうが望ましいという声もあるようだが、その是正効果が示されていない上に、そうした効果以上に民間事業者への悪影響が大きいのでは、と問いかけました。

(図8)

(おわりに)

 今回はそれぞれの報告・ヒアリングのポイントの部分を私なりに整理してみました。民放連と新聞協会のヒアリングは、NHKが同時配信を要望し始めた2015年頃からスタンスはほとんど変わっていないと感じました。ただ、メディア環境の構造変化が進展する中、伝統メディアのビジネスモデルは年々厳しさを増していることは事実です。新聞協会からは、一般紙の売り上げに占めるデジタル関連事業収入は約2.3%というデータが示されましたが、地上放送の広告費全体に占める動画広告収入の割合も約1.5%と、いずれも厳しい状況にあります。そのため、両者がNHKのネット活用業務拡大に懸念をいだくのは理解ができます。一方で公共放送WGでは、宍戸常寿構成員の「日本では、同時配信の実施が遅れた結果、情報空間に若い世代が参加できなかったり、偽情報が流布されたり、場が海外サービスに左右 されたりすることが危惧される」という発言、林秀弥構成員の「わが国がこのまま制度を変えずに放置したままだと、インターネットを含めた情報空間全体の中で市民の健全な情報アクセスにおいて日本がますます周回遅れになる」といった発言のベースにある危機感も共有されています。NHKは、民放連や新聞協会、複数の構成員から、ネット活用業務を拡大するとしたらNHKは具体的に何を行いたいと考えているのか、今後のネット上での自身のあるべき姿をどのようにデザインしているのか自分の言葉で語るべきではないか、との指摘を受けていますが、今回のヒアリングでも、意思ではなく分析を提示するという内容になっています。
 今後議論はどう進んでいくのか。次回は、第4回の主な議論の内容を整理していきます。


メディアの動き 2023年01月23日 (月)

#445 これからの"放送"はどこに向かうのか? ~2023年1月のNHKを巡る動き~

メディア研究部(メディア動向) 村上圭子

 毎年1月、NHKは新年度の「収支予算、事業計画及び資金計画(以下、事業計画等)」を公表します。これは、新年度にNHKは何を目指し、どういう分野に力を入れていくのか、そのためにどのくらいの予算を組み、どうやってその資金を使っていくのかについて、受信料を負担する視聴者・国民、そして社会に示す極めて重要なものです。この事業計画等は経営委員会(以下、経営委)で議決後、公表すると共に、NHKは総務大臣に提出します。その後、内閣を経て国会に提出され、審議・承認を受けるという流れになっています。
 令和5年度の事業計画等1は1月10日に公表されました。国内放送費、国際放送費、契約収納費、広報費等、業務別に具体的な内容が示されており、文研の業務は調査研究費という項目の中に示されています。図1に文研の主な業務、図2に業務別予算の全体像を抜粋しておきます。

(図1)

(図2)

 この事業計画等の発表の他、今月は例年以上にNHKを巡る動きが多い月となりました。いずれもこれからのNHKがどこに向かうのかを考える上で重要な内容だと思いましたので、本ブログでは3つの動きに分けてまとめておきたいと思います。

① 1月10日 「"スリム"で"強靱"な新しいNHKの3年目は?」 修正経営計画 経営委員会で議決

 1月10日、事業計画等と共に経営委で議決されたのが、「経営計画(2021-2023年度)」の修正2(以下、修正計画)です。この内容については、修正案が意見募集されている時に書いたブログ3でも少し触れましたが、改めてポイントを引用しておきます(図3)。

(図3)

 NHKはこの3年間、前田会長のもとで、"スリムで強靱な新しいNHK"への変革を目指してきました。今回の修正計画も、衛星波(BS2K)の1波削減と地上・衛星契約料金のそれぞれ1割の値下げという、"スリム"化が強く打ち出された内容となっています。前田会長は経営委議決後に行われた10日の会見4で、「2024年度以降も収入が大きく減少することとなり、最終的には事業規模は6000億円を下回る形で全体のスリム化も進む予定」としています。ちなみに、1つ前の経営計画(2018-2020年度)のもとで策定された2020年度の事業収入は約7200億円でした。
 では、もう一つの柱である"強靱"さはどこに示されているのでしょうか。修正計画では、「"安全・安心"の追求」「"あまねく"の追求」の2つの重点項目を強化するとしています(図4)。ただ、重点項目は取り組みの大枠を示すものであるため、より具体的に内容が示されているものとして、前述した令和5年度の事業計画も参照しておきたいと思います(図5)。

(図4)

(図5)

 修正計画の重点項目(図4)と事業計画の重点事項(図5)には直接の対応関係がないので、並列すると少し混乱を招くかもしれませんが、詳細は、修正経営計画と事業計画をごらんいただければと思います。NHKは事業計画において、新年度、「経費の削減等で生み出した原資の一部を、事業計画の重点事項に配分」するとしており、図5に示された4つは、強靱なNHKを目指すための具体的な取り組みの1つと考えてもいいと思います。
 この中で私が最も注目しておきたいと思うのは、1つ目にあげられている「デジタル時代に新たな公共性を確立」です。なぜ注目しておきたいかというと、一昨年に開始した総務省の「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会5(以下、在り方検)」や、そこに設けられた公共放送ワーキンググループ(以下、公共放送WG)の議論の中で、NHKはこれまで以上に、情報空間において公共性を発揮していくべきではないかという趣旨の指摘がくりかえしなされているからです。そのためこの事項は、これらの発言に対するNHKの応答として見ることもできると思います。事業計画には、この事項に関する詳細な記載もあるのでこちらも紹介しておきます(図6)。

(図6)

 NHKには、公共的な番組・コンテンツ・ネットサービスとは何かについて、日々模索し続けている現場があります。こうした現場の取り組み1つ1つについて、なぜNHKでなければ手がけられないのか、なぜNHKが今それをやる意義があるのかを問い直し、その結果を積み上げ、体系化した上で真摯に問いかけていく、そのことによってしか、国民・視聴者の理解、他のメディア事業者の納得を得ていくことはできないのではないかと私は考えています。
 総務省の検討会のような憲法学者や経済学者、弁護士等の有識者が数多く名を連ねる場は、とかく抽象度の高い議論になりがちです。その場において、NHKはジャーナリズムやコンテンツ制作の担い手として、"新たなNHK"が確立したいと考える"新たな公共性"をどのように示していくのか・・・・・・。こちらについては回を改めて詳細にリポートしたいと思います。

② 1月18日「"割増金"制度導入へ」 放送受信規約の変更 総務省が認可

 2つ目は制度改正についてです。割増金という少し耳慣れないキーワードがメディアに頻出しましたので、既に内容をご存じの方も少なくないかもしれません。ここでは、なぜこの制度が誕生したのか、そもそものところから少し整理しておきたいと思います。
 日本の受信料制度は、テレビを受信できる受信設備を設置した者が、NHKにそのことを届け出てNHKと受信契約を締結する義務(放送法64条1項)と、受信契約後にNHKに対して受信料を支払う義務(受信規約)の、いわば"2つの義務"によって構成されています。今回、総務省が認可した割増金の制度は、受信設備を設置したにもかかわらず、正当な理由なくNHKに受信契約の申込みをしなかった場合、もしくは不正な手段により受信料の支払いを免れた場合、NHKは所定の受信料に加えて、その2倍に相当する額を設置者に請求することができるというものです(図76)。また、これまでは受信契約の申込みの期限を「遅延なく」としか示していなかったものを、「受信機の設置の翌々月の末日まで」と明確化したのも大きな変更点です。
 これらの内容は、2022年10月に施行された改正放送法7を踏まえた「日本放送協会放送受信規約」の変更8にあたります。NHKの申請を受けて1月18日に総務省が認可し9、2023年4月から施行されることになっています。

(図7)

 この制度を巡り、メディアの記事やSNS上では、NHKに対する批判が散見されます。しかしこの制度、NHKの要望がきっかけでできたわけではないということをご存じでしょうか。詳細は、「これからの放送はどこに向かうのか?Vol.6~公共放送・受信料制度議論10」で経緯をまとめているので関心があればお読みいただけばと思いますが、本ブログでも振り返りを兼ねて、少し紹介しておきたいと思います。
 割増金制度が誕生した舞台は、在り方検の前身である「放送を巡る諸課題に関する検討会11」に設けられた「公共放送の在り方に関する検討分科会」です。分科会では主要テーマとして、受信料の公平負担の徹底の方策が議論されることになり、NHKは2つの制度の設置を要望しました。1つは受信設備を設置した際にそれをNHKに届け出る、もしくは設置しない場合は未設置であることを届け出ることを義務づける制度、もう1つは受信料未契約者の氏名・居住地情報の照会ができる制度です。2つをワンセットで導入することで、当時、問題となっていた訪問営業によるトラブルを防止できると共に、公平負担も徹底していけるというのがNHKの主張でした。しかし、後者の要望については、NHKが個人情報を取得することに対して構成員から相次いで懸念が寄せられ、NHKは要望を撤回せざるを得ませんでした。
 一方、総務省の事務局側は分科会に対し、受信設備を設置した段階で直ちに受信料の支払い義務が発生するという法的枠組みの方向性を議論してほしい、と提起しました。ちなみに、受信料制度が存在する大半の国では、日本のような"2つの義務"のような方法はとられておらず、受信設備設置=支払い義務となっています。そして、支払率は日本よりはるかに高いという状況もありました。事務局側からは、こうした海外の受信料制度に関する資料も提示されました。私は長らく国の検討会の取材や傍聴をしていますが、事務局側がこのように明確な意志を持って問題提起するケースは珍しく、当時、このテーマに対する総務省の強い意気込みを感じていました。
 しかし、この事務局側の提起に対して、一部の構成員たちから猛反発の声があがりました。構成員たちの主張はこうです。受信者とNHKの関係の構築が日本の受信料制度の根幹であり、それは2017年の最高裁大法廷判決12でも確認されている、それを変更するということは放送制度全体に関わる大きな議論になるのではないかー。そして、現行法より強力な手段をNHKに求めるということになれば、それによって受信者とNHKの絆が弱くなってしまうのではないかー。そして、反発した構成員の側から提案されたのが、今回の割増金という制度だったのです。制度の趣旨としては、本来契約すべき受信料契約をしなかったことによって、NHKあるいはほかの受信者に一種の損害を与えている、その損害の部分を補てんする、という考え方が示されました。議論の結果、この提案が採択され、制度化に至ったのです。
 つまり、この割増金という制度は、受信料の公平負担の徹底と、NHKと視聴者・国民との信頼関係の構築、この2つを両立させていくための制度だといっても過言ではないと思います。NHKは制度導入にあたり、「割増金が導入されても、NHKの「価値や受信料制度の意義をご理解いただき、納得してお手続きやお支払いをいただくという、これまでのNHKの方針に変わりはありません」と説明しています。また松野博一官房長官も1月19日の記者会見で、NHKに対して、受信料制度の丁寧な説明と支払いを要請する努力を重ねるよう求めています。制度の実効性はどうなのか、スタートする4月以降、見ていきたいと思います。
 また、前述した在り方検の公共放送WGでは、ネット経由のみで放送コンテンツを視聴する人に対して受信料制度をどのように考えていくのかという、新たな局面の議論も開始されています。こちらの議論についても、また回を改めて触れていきたいと思います。

③ 1月24日「前田会長退任」 稲葉延雄会長体制スタートへ

 3つ目は前田会長の退任です。1月24日に3年の任期が終了し、NHKは稲葉延雄会長の新体制がスタートします。"スリムで強靱な新しいNHK"を標榜した前田会長のもとでの3年間は、NHKにとって、またメディア業界全体にとってどのような意味を持つものだったのでしょうか。メディアの最新動向を取材、分析、記録する立場として、もう少し時間をおいてからしっかりと検証したいと思いますが、ここでは1月10日の最後の会長会見の中から、NHKの今後、放送の今後を考える上で示唆的だと私が感じた発言内容を5つ抜粋し、それぞれに少し論じておきたいと思います。

 1つ目の発言はNHKのデジタル展開についてです。「率直にいって、NHKは相当出遅れたと思います。どうしても放送を中心でやってきましたので、放送のおまけみたいな形でデジタルを発信するという形になっていました。今やデジタルファーストの時代になりましたので、(中略)そちらに合わせないと情報が届かないという現実があるわけですから、そこも大胆なシフトをしました」
 NHKのインターネット活用業務は、放送法上、任意業務という位置づけであり、業務内容や予算規模については、NHKは毎年、実施基準及び実施計画を策定し、総務大臣の認可を得て実施しています。前田会長が就任してほどなく、NHKは地上波の同時・見逃し配信サービス「NHKプラス」を開始。その後、ネット活用業務の予算規模について、前田会長はこれまで設定していた「受信料収入の2.5%以内」とするという上限を撤廃します。この2.5%を巡っては、上田良一元会長の時代に、民放連・新聞協会とNHKの間で長年にわたり攻防が続いていた案件だっただけに、スピーディーな決断に驚いた記憶があります。現在は、NHKが実施基準を策定する際、NHK自らが上限額を設定することになっており、新年度は今年度同様、200億円を上限としています。
 では、今後のNHKには何が待ち受けているのでしょうか。まず、テレビを持たない人たち(NHKと受信契約をしていない人たち)を対象とした「社会実証13」の第2期です。こちらは当初2022年中に実施する予定でしたが、まだ実施されていません。また、総務省の公共放送WGでは、ネット活用業務を本来業務とするかどうかの議論、つまり"放送のおまけ"ではない形でのデジタル発信を認めるかどうかの議論が行われています。もしもこれが変更となれば、NHKがネット活用業務を開始して以来の大転換点となり、より"大胆なシフト"になります。公共放送WGは2月末に議論が再開されます。

 2つめの発言は受信料制度についてです。「スマホだけで見ている人から受信料を取った方がいいとか、そういうことにいきなり飛びつくのはやめた方がいいと思います。今のところは、テレビを持っている人が受信料を払っていただくというシステムで、約8割の方が払っていただいているわけですから(中略)。ただ、時代がずっと進んで、そのまま維持できるかというとそれはちょっと分からない」「機が熟したら、私は総合受信料のほうがいいと思います」
 NHKは既に現在の経営計画で、「衛星付加受信料の見直しを含めた総合的な受信料のあり方について導入の検討を進めます」としています。2020年9月からは会長の諮問会議のNHK受信料制度等検討委員会の中に「次世代NHKに関する専門小委員会14」を設け、様々な角度から議論を進めています。
 公共放送WGで受信料制度に関する議論は本格化していませんが、テレビを持たない人がNHKプラスを利用したい場合にどうするかについては論点の1つとなっています。また、民放連や新聞協会からは、ネット活用業務のあり方の検討と財源の問題、つまり受信料制度の議論は切り離せないという意見も出ています。どのタイミングで本格的な議論が始まるのか、注視していきたいと思います。

 3つ目の発言は人事制度と組織改革についてです。「今まで誰も手を付けなかったところに全部着手しようと考え(中略)今までのNHKの非常に強烈な縦型、年功序列型のところを縦と横を両方組み合わせて、フラットな組織」にしました。「フラットにして意志決定を早くしないと世の中についていけないと思います」。このほかにも、この改革に最も力を入れてきた前田会長ならではの発言が相次ぎました。
 私は昨年開催した「文研フォーラム2022」で、前田会長の下で行われた人事制度改革の1つ、若手への権限委譲を議論のテーマとして取り上げました15。改革の目玉の1つに、社内公募で40代の地域局長を誕生させるというものがあり、その1人であるNHK富山放送局の葛城豪局長に登壇してもらいました。葛城局長は、着任早々、若手職員に権限を与えて新企画を次々と始めたり、自ら地域に飛びこんで様々なつながりを積極的に作ったりと、意欲的な活動をしていました。ただ、ディスカッションでは、世代交代や権限委譲のような人事改革は進め方によっては世代間の分断を引き起こしかねないといった懸念や、行うべき人事改革は"意識交代"ではないか、時代の変化に対応できない意識の人こそ交代すべきであり世代のみで判断されるものではない、といった意見が出ました。
 前田会長は人事制度改革の今後について、「制度を作れば運用の問題ですから、十分いけると私は思っております」と語っています。ディスカッション時の発言に呼応しますが、時代の変化に対応したいと考える意欲的な中高年層のモチベーションが上がるような施策や、世代交代にとどまらない、より多様性が生かされる施策を期待したいと思います。

 4つ目の発言は、コストとクオリティーとの関係です。「品質管理をするときに8割まで品質を管理するのと、99パーセントまで管理するのでは、原価コストが、ものすごく変わります。(中略)完璧なものを作るには、コストは多分めちゃくちゃ上がっていきますよね。それでは過剰品質なので、許容できるところまで落としていいよと。そこは具体的にこのレベルまでで良いという基準を内部で作るしかないんです」
 この発言は番組制作の文脈で出てきたものですが、私はこの内容から今後の放送インフラのあり方を想起しました。
 現在、地上放送はユニバーサルサービスとして全国津々浦々に放送を届ける義務があり、そのために数多くの小規模中継局やミニサテライト局、NHK共聴施設を設置しています。しかし、それらの施設の維持・更新にかかるコストは、スカイツリーなどの大規模局に比べて極めて高く、それが放送局の経営をじわじわと圧迫してきています。このコストをいかに減らしていくかが、大きな課題となっています。そのため、こうしたエリアでは、これまで整備していた放送波の仕組みではなく、ブロードバンド、それも汎用性の高いIPユニキャストでその仕組みを代替することでコストを減らしていけないかという検討が総務省で開始されています。
 ただし、ブロードバンドで代替する場合、これまで放送波で届けていたクオリティーを100%保証することはなかなか難しいという問題があります。では、視聴者はどこまでなら受容してくれるのか、放送事業者はどこまでクオリティーを下げることが許されるのか。それは99%なのか、それとも90%なのか・・・・・・。もちろん、視聴者の意向をなおざりにするという判断は決してあってはなりませんし、IP化したからこその付加サービスも検討していくことになると思いますが、今後一層、IP化が進んでいく中、そしてNHKも民放も財源が限られる中で、コストとクオリティーのバランスを考える議論は避けて通れないテーマになるのではないでしょうか。

 最後の発言はNHKらしさについてです。「NHKは戦う相手、公共放送がほかにないんです。これは、悪くすると完全に自己中心的になりやすいですよね。」「NHKは民放とどう違うのか、同じ事をやっていたら何もNHKらしくないじゃないか、何が違うんだと」「要するに毎日の実績がNHKらしさかどうかということを自問自答すると。時代の要請でたぶん変わると思いますが、それを含めてやっていただくということです。だから、らしさの定義はしない方がいっていいと言っているんですよ」
 NHKらしさとは何かということは、私もNHKの職員の一人として日々考えています。しかしそれ以上に考えているのが、公共放送らしさとは何か、ネットも活用する時代の"公共メディア"らしさとは何かです。これについては、らしさの定義をしっかりとしていく必要があると考えており、その上に初めてNHKらしさがあるのではないかと考えています。
 最初にも触れましたが、NHKは新年度の事業計画で、「デジタル時代における新たな公共性を確立」するということを重点事項に掲げています。私は、公共放送らしさ・公共メディアらしさとは何か、というアプローチから、このテーマに向き合っていきたいと思います。


メディアの動き 2023年01月23日 (月)

#444 シリーズ「深刻化するネット上の誹謗中傷・いま何が必要なのか」(2) ~「匿名表現の自由」にどう向き合うべきか

放送文化研究所 渡辺健策

 シリーズ第2回は、社会のデジタル化が進む中で論議を呼んでいる「匿名表現の自由」について考えます。
 3年前の2020年4月に設置された総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」では、ネット上の誹謗(ひぼう)中傷被害が深刻化している中、従来の制度では被害者の法的救済に時間と費用がかかりすぎるという観点から、有識者による見直しの議論が行われました。最も重要な論点になったのはバランスの確保、「被害者救済」を進めると同時に、正当な投稿をしている人の「匿名表現の自由」をどう守るか1という問題でした。

<匿名表現の自由とは>

 日本国憲法21条が保障する「表現の自由」には、氏名を隠した状態や偽名・仮名による表現も含まれるのか?日本では従来、この問いに対する詳細な研究は展開されてこなかったと指摘されていますが2、憲法学者らによると、何らかの事情により匿名でしか発信できないことがあり、それによって国民が知ることのできなかった事実を知ることができる、とりわけネットでは匿名性を担保することで活発な議論が可能になる、それらをふまえると匿名表現の自由は憲法21条によって保障される3という理解が一般的です。国内の裁判例としては、2020年に大阪市のヘイトスピーチ対処条例の合憲性などが争点となった裁判の1審判決で「匿名による表現活動を行う自由は、憲法21条1項により保障されているものと解される」という判断が示された例があります。4(2022年2月に最高裁判決も合憲判断)

「大阪ヘイトスピーチ 市の条例は合憲の判断示す」NHKニュース映像より(2020年1月17日放送) 「大阪ヘイトスピーチ 市の条例は合憲の判断示す」NHKニュース映像より(2020年1月17日放送)

大阪市のホームぺージより 大阪市のホームぺージより

 「匿名表現の自由」を考える上で重要なのは、匿名性が担保されないことが表現活動を行おうとする人に対する萎縮効果を与えないかどうか、という点です。立命館大学の市川正人教授は、「政府や多数者から見て好ましくないと思われるような内容の表現活動を行う者は、素性を明らかにすることによって『経済的報復、失職、肉体的強制の脅威、およびその他の公衆の敵意の表明』にさらされる可能性が高いのであるから、素性を明らかにしての表現活動しか認めないことはそのような表現活動を行おうとする者に対して大きな萎縮効果を与えるであろう」と指摘しています。5また、京都大学の曽我部真裕教授は、「表現の自由の歴史を振り返ってみても厳しい検閲に対抗する手段として、匿名での出版物が大きな役割を担ったのであって、そこからも、匿名表現の自由の重要性を認識することができる」と記しています。6

 冒頭で触れた総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会(以下、研究会)」でも、最近起きている具体的な事例を挙げて、匿名表現の自由の重要性が議論されました。例えば、消費者被害を訴える匿名のネット投稿に対し、販売方法などに問題のある企業側が投稿者の発信者情報の開示請求をして消費者側の発信を萎縮させるといった"制度の悪用例"が 目立っていることが指摘されています。7投稿内容が悪意による誹謗中傷なのか、それとも事実に基づく正当な批判なのかは、最終的には裁判所が開示命令を出すか否かの形で判断することになるわけですが、立場の弱い一個人にとっては、身元をさぐる開示請求が行われること自体がプレッシャーになります。発信者が誰なのかが簡易・迅速な手続で判明するようになることは、誹謗中傷被害の早期救済に役立つ一方で、正当な批判をする人を萎縮させることにもつながる恐れがあるのです。

<「匿名表現の自由」をめぐる議論の歴史>

 日本の発信者情報開示制度は、欧米の制度を参考に2001年に導入されました。とりわけアメリカでの匿名表現の自由論に大きな影響を受けていることが指摘されています。8
 アメリカでは匿名表現(=匿名言論:Anonymous Speech)の自由をめぐって争われた裁判が数多くあり、連邦最高裁がたびたび合憲・違憲の判断を示してきました。このうち1960年のTalley v. California事件では、人種差別問題に関して作成者の氏名を記載していないビラを配布した人が逮捕されたことの是非が争点となり、連邦最高裁は、匿名の冊子の配布を禁止していた市条例を「違憲」としました。判決では、古くは独立戦争後、各州に合衆国憲法の批准を促した「フェデラリスト・ペーパーズ」という文書も「パブリウス」という仮名で書かれていたことに言及し、「匿名言論は歴史上、自由を擁護する際の武器であった」と位置づけています。9その根底には、匿名の言論を長く保護してきたアメリカ合衆国の伝統があり、匿名であることは少数者の言論を守り、多数者の専制を抑制するために必要だという理念があると評価されています。10

アメリカ連邦最高裁(資料画像) アメリカ連邦最高裁(資料画像)

 また、この分野で特に著名な判例とされているのが、1995年のMcIntyre v. Ohio Elections Commission 事件の判決です。選挙や住民投票に関するビラに責任者の氏名・住所を記載するよう義務づけたオハイオ州の法律を「違憲」としました。連邦最高裁は、その判決の中で、マーク・トウェインやO・ヘンリーのように偉大な文学者の作品が匿名(ペンネーム)で書かれていることに触れ、「著者の匿名を維持するという決断は合衆国憲法修正1条により保護される言論の自由の一側面である」とした上で、匿名で出版する自由は文学の領域を超えて政治的主張にも及び、特に受けの悪い主張をしようとする者にとって匿名性は必要とされてきた伝統である、としました。11,12
 では果たして「匿名言論の自由」の保障はインターネット上の誹謗中傷にまで及ぶのでしょうか。
 McIntyre 裁判などでは表現内容に対する事前の規制が問題になっていたのに対して、ネット上の誹謗中傷のケースでは既に行われた投稿に対する事後的対応が争点であり、その内容も政治的主張ではなく誹謗中傷という違いがあります。このためMcIntyre判決で示された匿名言論者の権利がそのまま認められるわけではないという考え方がある一方、発信者情報が強制的に開示されれば匿名言論の保護が形骸化しまうという指摘13もあります。結局は、「発信者の匿名言論の自由」と「誹謗中傷を受けた人の救済を受ける利益」との比較衡量がポイントになるわけです。
 アメリカでは、被告が匿名のままでも訴訟を起こすことができます。インターネット上の匿名投稿をめぐって権利侵害の救済を求める場合もその方法が取られ、裁判所からプロバイダーに対し被告を特定するための文書提出命令を出してもらう「ディスカバリー」という手続きが行われます。その際には、とりわけ厳格な基準に基づいて裁判所が可否を判断することになります。匿名を前提に投稿した発信者の実名を明かすことは匿名言論の権利を否定することになるからです。その背景には、原則として匿名表現を保護する判例が積み重ねられてきた伝統があり、例外をどこまで認めるか、慎重な判断がなされているのです。14,15

<日本の制度改正をめぐる議論の焦点>

 アメリカでも長く議論となってきた「匿名表現の自由」と「権利侵害の救済」との関係。これらの両立は、総務省の研究会でも重要な論点になっていたことを冒頭お伝えしました。ここからは、11回に渡って繰り広げられた研究会での議論を議事録や資料からたどります。

日弁連の意見書(一部) 日弁連の意見書(一部)

 発信者情報開示制度をめぐっては、以前から不備を指摘する声が実務を担う弁護士たちから上がっていました16。2011年6月には、日弁連=日本弁護士連合会が制度の抜本的な見直しを求める意見書をまとめています17。この中では、制度の手続き上の課題に加えて、裁判所が発信者情報の開示を命じるか否か判断する際の要件の1つである「権利侵害の明白性」を重要なポイントとして言及しています。「明白性」とは、匿名投稿の流通(拡散)によって原告(被害者)の権利が侵害されたことが明らかである場合、という要件の規定ですが、日弁連は、「明らか」という文言の意味があいまいである上、厳格かつ抽象的で、「被害救済のみちを閉ざすものと言わざるを得ない」と批判していました。その後、インターネットの普及に伴って誹謗中傷被害が増加したこともあり、有識者で作る総務省の研究会が 制度の見直しにどこまで踏み込むか注目されていました。

「SNS上のひぼう中傷 新たな制度創設へ」NHKニュース映像(2020年10月26日放送) 「SNS上のひぼう中傷 新たな制度創設へ」NHKニュース映像(2020年10月26日放送)

 研究会の議事録をたどると、権利侵害の「明白性」要件は、手続きの簡易・迅速化と並ぶ主要な論点として検討されていたことが分かります。そこから見えてくるのは、この要件が課す高いハードルを安易に下げてしまうと、匿名を前提に投稿をした人の権利が不当に侵害される恐れがあるという「匿名表現の自由」とのバランスの確保への配慮でした。18
 研究会では、企業の不正を内部告発する従業員の身元が特定されてしまえば、公益通報者を守ることができず、企業への批判や告発をすることは難しくなる、自分の体験や感想を口コミサイトに書き込んだだけなのに、『この商品は私には合いませんでした』と投稿しただけで誰が書いたのか突きとめられトラブルに巻き込まれる恐れが生じる―――そんな濫用を可能にしてしまっていいのか、という熱を帯びた議論が交わされていました。19
 そこからは、今の時代の私たちが「匿名表現」の"可能性"と"危険性"にどう向き合うべきか、という根源的な問いが見えてきます。

最終とりまとめの主な内容(筆者作成) 最終とりまとめの主な内容(筆者作成)

 研究会は、2020年12月の『最終とりまとめ』で、発信者情報を特定するために必要な通信ログを迅速に特定・保存するため、簡易な非訟手続でログの特定や保存を命じる「提供命令」「消去禁止命令」を新設し、これまでの要件より一定程度緩やかな基準で判断することが適当であると提言しました。その一方で、発信者の身元を明らかにする「開示命令」の可否を判断する際は、表現行為に対する萎縮効果を生じさせないよう、現在と同様の厳格な要件を維持することを求めました。20
 曽我部真裕座長は、「攻撃されやすい人々がしばしばいわれのない誹謗中傷を受ける、その痛み、苦しみを思うとき、迅速な救済のために多様で実効的な手段が用意されることの不可欠性というのを痛感するところです。活力のある自由で民主的な社会を維持するためには表現の自由が極めて重要なことは言うまでもなく、とりわけ一般市民が声を上げることのできるSNSにおいては、匿名表現の自由というのは重要です。本研究会では、被害者保護と表現の自由とのぎりぎりのバランスを確保すべく真剣な議論が行われ、現時点で可能なベストな提案ができたと思っております」(一部抜粋)と述べ、一連の議論を総括しました。21
 自由で活発な意見交換を促し、表立っては言いにくい本音や真実を伝えることができるデジタル時代の「匿名表現」。無責任で攻撃的になりやすいという問題点に向き合いながら、その新たな可能性をどういかしていくかが、私たちに問われているように思います。
 シリーズ最終回の次回は、ネット上の誹謗中傷被害に向き合う上でマスメディアに期待される役割とは何かを考えます。


【注釈および引用出典・参考文献】
  • 総務省「発信者情報開示の在り方に関する研究会」最終とりまとめ(令和2年12月)5頁
  • 海野敦史「匿名表現の自由の保障の程度-米国法上の議論を手がかりとして-」(情報通信学会誌37巻1号,2019年)2,5頁、曽我部真裕「匿名表現の自由」(ジュリスト2021年2月#1554)44頁
  • 松井茂記『インターネットの憲法学(新版)』(岩波書店,2014年)384頁、毛利透「インターネット上の匿名表現の要保護性について-表現者特定を認める要件についてのアメリカの裁判例の分析」 樋口陽一ほか編『憲法の尊厳』(日本評論社,2017)212頁、
    曽我部真裕ほか『情報法概説(第2版)』(弘文堂,2019年)15~16頁
  • 大阪地判2020.1.17 裁判所WEB判決文34頁、曽我部真裕 前掲2「匿名表現の自由」46頁
  • 市川正人『表現の自由の法理』(日本評論社,2003年)380頁
  • 曽我部真裕 前掲2「匿名表現の自由」46頁
  • 「発信者情報開示の在り方に関する研究会」第1回議事録37-38頁、第2回22-23頁、31-32頁
  • 丸橋透「媒介者の責任-責任制限法制の変容」(ジュリスト2021年2月#1554)19頁、大島義則「匿名言論の自由と発信者情報開示制度――日米の制度比較」(情報ネットワーク・ローレビュー14巻,2016年)24頁
  • Talley v. Californiaアメリカ合衆国連邦最高裁判決(1960年)、毛利透 前掲3「インターネット上の匿名表現の要保護性について」196頁、岩倉秀樹「アメリカの匿名言論の法理と情報開示の法理」(高知県立大学文化論叢4号,2016年)42頁
  • 高橋義人「パブリック・フォーラムにおける匿名性と情報テクノロジー」(琉大法學87号,2012年)24頁、岩倉秀樹 前掲9「アメリカの匿名言論の法理と情報開示の法理」44頁
  • McIntyre判決には、匿名言論の権利保障に批判的なスカリア裁判官らの反対意見が付されている
  • 毛利透 前掲9「インターネット上の匿名表現の要保護性について」196-197頁、
    岩倉秀樹 前掲9「アメリカの匿名言論の法理」45頁、
    大島義則 前掲8「匿名言論の自由と発信者情報開示制度――日米の制度比較」25頁
  • 大島義則 前掲8「匿名言論の自由と発信者情報開示制度――日米の制度比較」26頁
  • 毛利透 前掲9「インターネット上の匿名表現の要保護性について」195-196頁、
    大島義則 前掲8「匿名言論の自由と発信者情報開示制度――日米の制度比較」28-29頁
  • 最近では有害コンテンツ対策の観点から、プロバイダーの広範な免責を認めた通信品位法230条の 見直しをめぐる議論も出てきている。詳しくは、山口真一『ソーシャルメディア解体全書 フェイクニュース・ネット炎上・情報の偏り』勁草書房(2022年)258-261頁、丸橋透 前掲8「媒介者の責任~責任制限法制の変容」21-22頁を参照。
  • 壇俊光・森拓也・今村昭悟「発信者情報開示請求訴訟における『対抗言論の法理』と『権利侵害の明白性』の要件事実的な問題について」(情報ネットワーク・ローレビュー12巻,2013年)
    山本隆司「プロバイダ責任制限法の機能と問題点-比較法の視点から-」コピライト495号(2002年)18頁
  • 日本弁護士連合会「プロバイダ責任制限法検証に関する提言(案)」に対する意見書(2011年6月30日)
  • 「発信者情報開示の在り方に関する研究会」第1回議事録40頁、第2回議事録24-28頁、
    第3回議事録31-34頁、第4回議事録22-23頁ほか
  • 同上 第2回議事録25頁、第3回議事録31-34頁ほか
  • 同上 『最終とりまとめ(令和2年12月)』21,28頁
  • 同上 第10回議事録23頁
メディアの動き 2023年01月19日 (木)

#443 シリーズ「深刻化するネット上の誹謗中傷・いま何が必要なのか」(1) ~「発信者情報開示」の制度改正で被害者救済は進むのか?残された課題は?

放送文化研究所 渡辺健策

 亡くなった女性プロレスラー、木村花さんに対するSNS上の誹謗(ひぼう)中傷の問題などをきっかけにインターネット上の悪質な投稿への対策強化が議論され、他人の権利を侵害する投稿をした当事者の氏名などを明らかにする「発信者情報開示」の手続を簡易・迅速化する法改正が2022年10月に施行されました。繰り返される深刻なネット被害に対し、新たな制度は十分にその力を発揮できるのでしょうか。このブログでは、①被害者の救済を進める発信者情報開示制度の改正の効果と課題、②発信者側の匿名表現の自由とのバランスをどう図るべきか、③いまマスメディアに期待される役割とは、という3回シリーズで考えます。
 第1回は、制度改正の効果と今後の課題について、誹謗中傷の被害者の訴訟代理人として救済を求める多くの裁判で対応に当たっている東京弁護士会の小沢一仁弁護士へのインタビューです。

wkj_2301_1_1.jpg 小沢一仁 弁護士
2009年弁護士登録。インターネット上の誹謗中傷投稿の削除や発信者情報開示請求など、被害者救済の裁判を数多く手がける。常磐自動車道のあおり運転殴打事件の際に加害者車両に同乗し犯行の様子を携帯電話で撮影していたいわゆる"ガラケー女"と人違いされた女性のSNS被害(2019年)や、山梨県道志村のキャンプ場で行方不明になった女児の母親に対する誹謗中傷(同年)をめぐる裁判などを担当。

―― ネット被害に対する損害賠償訴訟を数多く担当されている小沢さんからご覧になって今回の発信者情報開示の制度改正をどう評価していますか?

小沢:制度改正によるメリットの部分と、なおうまくいっていないデメリットの部分を合わせて考えると、全体としては手放しで喜べない、つまりまだプラスの評価はしにくいと思っています。

<何がどう変わった?改善点は>

―― 個別の論点ごとに伺いますが、まず評価できる改善点は?

小沢:まず評価できる点は、アクセスプロバイダー(=インターネットに利用者の端末を接続する通信事業者など)に対する発信者情報の開示請求の手続きが従来より早くなりそうだというところです。改正施行後、これまでに審理を終えた事件では、申立てから審理が終結するまでおよそ5週間しかかかりませんでした。従来は、簡単な事件でも半年以上かかっていたと思います。

(総務省 プロバイダ責任制限法改正の概要説明資料より)
wkj_2301_1_1-1.png

(筆者注)従来からの制度では、誹謗中傷を受けた被害者が発信者を相手に損害賠償裁判を起こす場合、まずSNS事業者に対し発信者特定の手がかりとなるIPアドレスなどの開示を求め、その後、発信者とインターネットを接続する通信事業者に発信者の氏名等の開示を求めなければならない。損害賠償請求も含めると3段階の手続が必要で、時間と費用がかかるため、被害救済をあきらめざるを得ないケースが多かったと指摘されている。

―― 従来は発信者を特定するだけで半年とか1年以上かかることが多かったそうですが、どんな効果が期待できるのでしょうか。

小沢:具体的には今後の実例のなかで実績を積み上げていくしかないですが、少なくとも今までより早く発信者情報を入手することが期待できます。今回導入された新しい手続きは「非訟手続」なので裁判所の裁量によってある程度柔軟にできる、決定が出るのも早い。ただし、新制度で開示命令が発令されたとしても命令を受けたプロバイダー側は異議の訴えというのができて、その場合はやはり裁判手続に入るのでこれまでと同じように時間がかかります。だからプロバイダーが「うちは全件異議の訴えを行う」みたいな態度を取ってしまうと、この制度の簡易迅速化のメリットは全部つぶれかねません。結局はプロバイダーの姿勢によるので、これはもう各事業者の理解を得るしかないと思います。

―― 開示される発信者情報の対象の見直しという点では評価できる点はありますか?

小沢:悪質な投稿そのものの発信者情報の記録が残っていなくて誰が発信したか特定できない場合でも、その投稿をした人物がログインした時の記録があれば特定できる、それが開示対象に含まれるかがこれまで裁判でもたびたび争点になり、ケースごとに裁判所の判断が分かれていました。今回の法律改正でログイン時(およびログアウト時)の発信者情報も開示対象に含まれることが明確になりました。これはかなり大きな改善点だと思います。

wkj_2301_1_3.jpg 常磐道あおり運転殴打事件のNHKニュース映像より(2019年8月31日放送)

小沢:私が裁判を担当した常磐道あおり運転殴打事件の時に加害者の車に同乗していて犯行の様子を携帯電話で撮影していた、いわゆる"ガラケー女"と人違いされた女性のケースでも、人格を否定するような明らかに権利侵害に当たるネット被害を受けているのに、ログイン時の情報が対象外と判断され、裁判で敗訴したことがありました。その点、今回の改正で、投稿とログインの時間的に一番近いところで接点を見つけてその通信を媒介した事業者は開示対象者にあたるとしっかりと決めてくれた。その点が立法的に解決されたというのは大きいです。

<残された課題は>

―― 改正後もなお課題として残されているのはどんな点でしょうか?

小沢:プロバイダ責任制限法には、通信ログ(=通信履歴・記録)の保存について規定がなく、通信ログを保存するかどうかをインターネット接続事業者の判断に任せています。極論を言えば「そもそもうちは何も残していません」なんていう事業者も中にはいます。その点を何とか保存を義務付けてくれないかと思っています。半年とか、可能であれば1年間は、保存すべきということを法律で定めてほしいです。

(筆者注)『電気通信事業における個人情報保護ガイドライン』では「業務の遂行上必要な場合に限り通信履歴を記録することができる」と定めており、必要以上の長い期間、通信ログを保全しないことが原則になっている。多くの通信事業者のログ保存期間は3か月ないし半年程度と言われる。

―― 道志村の女児不明のケースでも母親に対する誹謗中傷の通信ログが提訴時にはすでに消えていたものもあったと聞きましたが?

小沢:通信ログが残っているかどうかということは、すべての案件で問題になるんですけど、道志村不明女児の件でも母親が個人攻撃ともいえる誹謗中傷の投稿を受けてから提訴の検討まで1年くらい経っていたので、当初の投稿の通信ログはもう消えていて、直近の投稿に絞り込んで対応せざるを得ませんでした。最近でこそネット上の被害が増えているから、被害にあってすぐ弁護士に相談に行く人が増えていますけど、あの頃は少なくともそこに思い至るかというとそうではなかったと思います。

wkj_2301_1_4.jpg 山梨県道志村女児行方不明のNHKニュース映像より(2019年9月23日)

―― 保存が義務付けられていないというだけでなく、そもそも通信事業者がログを実際に持っているかどうかも通信事業者側にしか分からないですよね。

小沢:現状では「ログは残っていない」と言われると、その通信事業者の言っていることを性善説で信じるしかないみたいな状況です。法律で、こういう種類の情報をいつまでは取っておくことと決めてくれれば被害者救済には役立つと思います。

―― 実務の面から見て、他に課題と感じるところはありますか?

小沢:あとはダイレクトメールの問題ですね。誹謗中傷の被害の実態として最近目立つのは、例えばツイッターだったら攻撃する相手のフォロワーに対してダイレクトメールを多数送りつけて、誹謗中傷の情報を広めていく、受け取った人が「なんかこんなの来たんだけど」と反応を書き込むことで次々に拡散していく、フォロワーというのは基本的に本人にある程度は親和的な人たちなんですけど、そういった人たちの信頼が失われたりフォロー解除になったりという実情があるわけです。元々プロバイダ責任制限法というのが色んな人から見える場所における不特定多数の通信における権利侵害に対する救済を念頭に置いているので、一対一の通信はそもそも対象にしていないんですよね。今回の改正でもこの点は変わりませんでした。それを逆手にとって誹謗中傷を広めるケースが出て来ているので、なぜこの点は救済のケアができないのかと疑問を感じています。発信者の「表現の自由」や「通信の秘密」を必要以上に制限しないためというのが理由の一つだと思いますが、開示請求を認める際の要件面で一定の高いハードルを課していることで、バランスが取れているといえないだろうかと思います。被害としては何年か前から目立ってきているので、何とかしてほしいという思いがあります。

<メディアへの期待>

―― 小沢さんが裁判を担当された"ガラケー女"人違い案件、それと道志村不明女児のケースもそうですが、そもそも発端としてマスメディアの報道があって、その情報が広まった環境の中で誹謗中傷が発生したという側面もあります。そうした観点では当事者とも言えるマスメディアに今後何を期待しますか。

小沢:誹謗中傷に対する抑止力としては、他人に対する誹謗中傷を書いたら自分の身元に関する情報が開示される可能性が高いんだということを強く認識させることが抑止になると思うんです。何か違法なことを書き込んでも責任を追及されることがめったになければ、そうした行為を助長してしまうんですよね。それが例えば通信ログの保存期間が一律1年間義務づけということになれば、「1年も通信履歴を取られたらいつ賠償請求されるか分からないからちょっとセーブしよう」という抑制が利きやすくなります。だから何らかの形で通信ログ保存が法制化されたり義務化されたりすれば被害者救済はしやすくなる。そういったところの必要性をメディアが訴えていってほしいし、必要な手続きをしたら発信者にすぐたどり着くようなそういう仕組みになってほしい。被害に苦しんでいる被害者の声をクローズアップして正しい世論形成をしていってもらうことが一番ありがたいと思います。

―― 救済以前の段階で、そもそも誹謗中傷の被害の発生・拡大を抑止するという点では、マスメディアにはどんなことを期待しますか?

小沢:例えば、人違いによる誹謗中傷の被害なんかの例でいうと、やはりネットで炎上すればマスメディアの人にはすぐ人違いだと分かるわけじゃないですか。そういう時には少なくとも「この人ではないですよ」という伝え方はできる。実際あの時は、メディアだけでなく警察に対してもそう思ったんですけど、人違いで攻撃を受けているあの女性は指名手配された容疑者に同行している"ガラケー女"と同一人物ではないんだ、と公式に否定してくれれば、それですぐ解決する話なので、ネットの情報が間違っていたら訂正情報の方を広めてほしいという点でメディアへの期待はありますね。

―― 最近マスメディアの中にはネット上の偽情報に対してファクトチェックを試みる動きも出ていますが?

小沢:偽の情報を否定する時には、ある程度多くのメディアが歩調を揃えて複数社同時に出してもらえたらなと思います。訂正情報を報じるのが1社だけだと、「特定のマスメディアの誘導だ」といって疑う人たちも居て、それがまた炎上につながる。だから例えば警察取材等で「違うんだ」という確実な情報を得たら、マスメディアから一斉に流してもらえると本当はありがたい。もちろんいろいろなケースがあるから、すごく難しいことですけど、強い影響力をもつマスメディアの"火消し"の対応というのは今後考えてもらわないといけないことかなと思います。

<インタビューを終えて>

 今回インタビューをさせていただいて最も強く感じたのは、数多くの裁判対応でネット被害者に向き合ってきた実務家だからこそ言える現場の教訓の重さでした。制度改正によって手続きの簡易迅速化の面では一定の改善が期待される一方で、通信ログの保存期間の問題やダイレクトメッセージによる被害への対応など、法制度の現状に起因する課題がなお残されていることをあらためて認識しました。
 実は、今回の制度改正をどのようなものにすべきか検討してきた総務省の有識者会議の議論でも、従来からの制度が誹謗中傷の被害を受けた人たちにとっては費用と時間の負担が重い、決して使い勝手の良いものではないことは繰り返し指摘されていました。それでもなお、投稿の発信者が誰であるかを容易には明らかにせず、一定の歯止めをかける制度上の仕組みを維持した背景には、匿名の発信者の「表現の自由」を最大限尊重すべきだという考え方がありました。
 次回、シリーズの第2回は、発信者側の「匿名表現の自由」にどう向き合うべきか、そして第3回は、マスメディアに期待される役割とは何かを考えたいと思います。

調査あれこれ 2023年01月19日 (木)

#442 幼児のネット動画視聴が急増。調査からみえたテレビとの使い分けの実態は? ~2022年「幼児視聴率調査」から~

世論調査部 (視聴者調査) 舟越雅

文研ではこれまで、年に一回のペースで幼児を対象にした視聴率調査を行ってきましたが、この調査は「視聴率」と銘打ちながら、実は録画番組やインターネット動画の利用状況についても把握することができます。
テレビのリアルタイム放送の視聴だけでは、多様化する幼児のメディア利用を正確につかめないことから、調査項目に加えているのですが、最近はその存在感が以前より増してきており、2022年に行われた最新の調査でも、勢いが裏付けられました。

2~6歳の幼児「リアルタイムのテレビ・録画番組やDVDの再生・インターネット動画」の週間接触者率

こちらのグラフは2~6歳の幼児の、「リアルタイムのテレビ」、「録画番組やDVDの再生」、「インターネット動画」の週間接触者率(調査期間の1週間で15分以上利用した割合)です。今年を入れて3回分の調査結果です。(2020年はコロナ感染拡大により実施せず)
2019年から2022年にかけて、リアルタイムと録画+DVDは減少しているのに対して、インターネット動画は2019年の4割弱から今年は67.8%と、大きく増加しました。2019年の時点では、リアルタイムとインターネット動画のボリュームはまだまだ差がありましたが、次第に肩を並べつつあります。

そんなインターネット動画ですが、ではどのような形で利用されているのでしょうか。
「幼児がインターネット動画をどんな機器で見ているのか」について尋ねた結果(複数回答)では、今年は「テレビ」が73%、ついでタブレット端末が44%、スマートフォン(携帯電話)が38%でした。昨年はテレビ65%、タブレット44%、スマートフォン39%でしたので、テレビで視聴する子どもが増加しています。
昨年の調査結果をご紹介したブログでも、「インターネット動画視聴にテレビ画面が最も利用されているのは幼児の特徴」と書きましたが、今年はその特徴がより強まっていることが分かります。

また、テレビやインターネット動画などを視聴する「場面」について聞いた結果をみると、それぞれがシーンによって微妙に使い分けられていることもみえてきます。

テレビを利用する場面(付帯質問・複数回答) インターネット動画を利用する場面(付帯質問・複数回答)

こちらはテレビが視聴される場面について、テレビとインターネット動画それぞれで分けたグラフです。
テレビでは「保護者が家事や仕事などで手が離せない時」(50 %)や「子どもが番組を見たがる時」(46 %)、「家族で番組を楽しみたい時」(35 %)などが上位に来ます。物理的な理由や子どもの主体性、そして周囲の家族との団らんなど、さまざまな場面でテレビが選択されていることがわかります。
ではインターネット動画はどうでしょう。「子どもがコンテンツを見たがる時」が69%と、かなり多く、「保護者が家事や仕事などで手が離せない時」(51%)が続きます。テレビとの違いに注目すると、「手が離せない時」はいずも5割強でいずれも同程度ですが、「コンテンツを見たがる時」はインターネット動画の方が、「家族で楽しみたい時」はテレビの方が、それぞれ高くなっています。
保護者の手が離せない時は様々な場面があり、テレビもインターネット動画も選択されますが、子どもが「自分が見たい」と思う内容を選択できたり、見たい時間帯に都合の良いコンテンツが見られるかといった側面では、ネット動画の使い勝手が良いのかもしれません。一方で、家族と一緒に番組を楽しむなどその場でのコミュニケーションを重視したい時には、テレビが選ばれる場面もあるようです。

テレビとインターネット動画のボリュームは拮抗しつつあり、いずれもテレビの大画面で見ている子どもたちが多いようですが、実際に見ているシーンやその背景をみていくと使い分けがされているのは興味深いですね。
ではこの傾向は、果たして幼児全体に言えるものなのか、あるいは年齢が増すにつれて強まるものなのでしょうか。そしてテレビとネット動画を利用している時間帯や、見ているコンテンツなどもまた異なっているのでしょうか。このあたりの詳しい結果は「放送研究と調査」12月号に掲載しています。気になった方は、ぜひそちらをご覧ください!

調査あれこれ 2023年01月16日 (月)

#441 進むか? 放送アーカイブの「公共利用」

メディア研究部 (メディア動向)大髙 崇

今年、テレビ放送開始から70年という節目を迎えました。

これまで、星の数ほど、というと大げさかもしれませんが、とにかく毎日毎日、膨大な数の番組が放送されてきました。
そして今、NHK・民放とも、再放送やインターネット配信、過去の出来事を伝える新たなコンテンツの制作など、放送アーカイブの活用に力を入れています。(ここでは、放送局が保存する、過去に放送した番組やニュースの音声・映像とその素材を、ひとまとめに「放送アーカイブ」と総称します)

放送アーカイブが貴重な文化資産であることは論をまたないでしょう。放送局が、自らのコンテンツとして、アーカイブを発信する取り組みは今後もますます盛んになるはずです。どんな面白いコンテンツが生まれるか、ぜひご期待ください。

ただ同時に、放送アーカイブ活用に向けた調査研究を続けている私としては、「それだけでいいのか?」という思いも募ります。
視聴者側である一般の皆さんが、この膨大な放送アーカイブを手軽に視聴し、それぞれの目的のためにもっと利活用しやすい環境を整備することも、必要だと思うからです。

「〇年前に放送した番組の上映会を開催したい」
「研修や授業に活用したい」
「とにかくもう1度見たい」
「静止画でいいから使わせてほしい」
……などなど、放送局にはアーカイブの提供を求める数多くの要望が寄せられます。
さまざまな立場の人が利活用することで、私たち放送関係者だけでは気づかなかった放送アーカイブの価値が見出されるはずです。
しかし、こうした要望に放送局は応えられている、とは言い切れないのが現状です。

『放送研究と調査』2022年12月号に、「放送アーカイブ×地域と題した論文を発表しました。
石川・富山・福井の北陸3県の博物館や図書館などを主な対象に、展示や講座などで放送アーカイブを利用したいか、を問うアンケートの結果をまとめ、考察しています。
高い利用ニーズが確認されたことに加え、その理由や利用方法などに関する回答からは、放送アーカイブが持つたくさんの可能性が浮き彫りになりました。

博物館など、地域の文化施設でそれぞれのニーズに応じた利用が進むとすれば、放送アーカイブが地域文化の一翼を担える未来が見えてきます。それは放送局にとって、新たな地域貢献になるはずです。
学校などでの教育目的の利用、学術研究目的の利用などもまた然り。
公共性と公益性の高い、「公共利用」がより多く実現することで、“テレビ離れ”が進む今、放送局の存在意義の再構築につながるでしょう。

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放送アーカイブが、放送局による新たなコンテンツとして展開するだけでなく、多くの人々によって「公共利用」される未来は来るのか。その可能性と課題に向き合っています。ぜひともご一読いただき、ご意見をいただけますと幸いです。
『放送研究と調査』2022年12月号
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これまで筆者が執筆した放送アーカイブに関する主な論文
※「放送アーカイブ "懐かしい"のその先へ ~NHK回想法ライブラリー活用の現場から~」
 『放送研究と調査』2019年7月号(https://www.nhk.or.jp/bunken/research/domestic/20190701_6.html
※「再放送の可能性を探る(前編)」
 『放送研究と調査』2021年2月号(https://www.nhk.or.jp/bunken/research/domestic/20210201_7.html
※「再放送の可能性を探る(後編)」
 『放送研究と調査』2021年7月号(https://www.nhk.or.jp/bunken/research/domestic/20210701_5.html
※「放送アーカイブ活用と肖像権ガイドライン 過去の映像に写る顔は公開できるか」
 『NHK放送文化研究所年報2022』第65集(数藤雅彦と共著)(https://www.nhk.or.jp/bunken/research/domestic/20220201_2.html
※「『絶版』状態の放送アーカイブ 教育目的での著作権法改正の私案」
 『放送研究と調査』2022年6月号(https://www.nhk.or.jp/bunken/research/domestic/20220601_6.html

調査あれこれ 2023年01月11日 (水)

#440 年明けも変わらない低空飛行~消えぬ岸田政権の懸念材料~

放送文化研究所 研究主幹 島田敏男

 新年最初に岸田総理大臣が国民に向けて声を発したのは、4日に伊勢神宮に参拝した際の年頭記者会見でした。柱は「インフレ率を超える賃上げの実現」「異次元の少子化対策への挑戦」の2点。

kishidanentou.jpg1月4日 三重県伊勢市

 1年前の年頭記者会見は、押し寄せるオミクロン株の感染拡大に対処する受け身の発言に終始していました。それと比べると、この1年で新型コロナウイルスへの守りの態勢が定まってきていることもあって、岸田総理は先々に向けて何とか前向きなトーンを打ち出そうとしているように感じました。

 しかし、年明け早々の1月7日(土)から9日(月・祝)にかけて行われたNHK月例電話世論調査の数字は芳しいものではありませんでした。

☆あなたは岸田内閣を支持しますか。それとも支持しませんか。 

 支持する  33%(対前月-3ポイント)
 支持しない  45%(対前月+1ポイント)

この33%という内閣支持率は、一連の閣僚辞任ドミノが始まってから記録した昨年11月調査の支持率と同じで、岸田内閣発足後、最も低い数字です。

 年末の12月27日になって秋葉復興担当大臣を事実上更迭し、後任には元復興担当大臣の渡辺博道衆議院議員を据えました。秋葉氏は政治資金をめぐる問題などで野党側の追及がやまず、通常国会に備えて守り固めを図ったわけです。とはいえ、昨年10月以降、次々と4人の閣僚が辞任というのは岸田総理の任命責任が厳しく問われる事態に他なりません。

2gamen.png秋葉復興相          渡辺復興相

 岸田総理は新しい年を迎えるのに合わせて心機一転を図ろうと考えたのでしょうが、国民の側は厳しい視線を向け続けています。

☆岸田内閣は2か月で4人の閣僚が辞任することになりました。あなたは、岸田総理大臣の任命責任についてどう思いますか。

 任命責任がある  71%
 任命責任はない  22%

 任命責任があると答えた人は与党支持者で7割、野党支持者では8割以上、無党派で7割以上に上っています。政権を支える与党支持者の7割が総理の任命責任ありとしている点は見過ごすことができません。

 さらに岸田内閣が低空飛行を続けている理由には、昨年末に駆け込むように政府・与党で決定した防衛費の大幅増額に対し、幅広い国民の理解が得られていないことが考えられます。とりわけ防衛増税に対する反発が目立ちます。

☆政府は、増額する防衛費の財源を確保するため増税を実施する方針です。あなたは、これに賛成ですか。反対ですか。

  賛成   28%
  反対   61%

これを与党支持者について見ると防衛増税に賛成4割、反対5割ですが、野党支持者では反対8割、無党派で反対7割と反発の強さは明らかです。相手国に対する「反撃能力」を保有するなど、国の根幹をなす歴史的な政策変更にも関わらず、政府・与党の中だけで決めたことへの不満。幅広い理解には程遠い数字です。

1004bouei.jpg この「反撃能力」というのは、これまで敵基地攻撃能力としてきたものを、あくまでも専守防衛の考え方の範囲内と説明するために改めたものです。しかし、従来、敵国に対する攻撃は日米安全保障条約に基づいて、アメリカ軍に担ってもらうというのが基本姿勢でした。それを一部とはいえ自衛隊自身が射程距離の長い攻撃兵器を保有し、使いこなそうというのですから大転換に他なりません。

 この問題は1月23日に召集される見通しの通常国会で論戦の柱になるでしょう。いや、公然と議論しなくてはいけないテーマです。

 論点の一つに、敵国の攻撃着手をどの時点で把握したと判断するかという問題があります。国際法上、相手に先に戦争を仕掛ける先制攻撃は認められていませんので、政府も先制攻撃は意図していないという立場です。

 日本周辺で相手国が弾道ミサイルなどを発射した場合、瞬時にそれを感知できるのはアメリカ軍の早期警戒衛星だけです。その端緒情報の提供を受けて自衛隊のイージス艦が搭載する高性能レーダーなどで追尾し、迎撃するというのが現在の防衛システムです。

 これと同じ情報収集システムを利用しながら、どの段階で日本に対する攻撃と評価するのか、あるいはできるのかは極めて微妙で、難易度の高い問題です。

 国際法に反する先制攻撃と見られないようにするには、確実に日本の領土に攻撃が及び、国民に被害が出る蓋然性が高いと判断できるまで「反撃能力」を行使しない、つまり具体的な能力として保有する長距離ミサイルや巡行ミサイルを使わないという説明が必要でしょう。

 しかし、自民党内の強硬派の中には「実際に被害が出るまで使わないと宣言するならば意味がない」「張り子の虎だ」といった意見もくすぶっています。
この問題が自民党内政局、自民党の中で政治的な対立や抗争が起きる火種にもなりかねません。

 歴代の内閣が憲法の下で培ってきた専守防衛の考え方を、岸田総理が今の安全保障環境に照らしながらどう具体的に説明するのか。防衛力の強化に一定の理解を示しているものの、不安も抱えている国民に納得してもらう説明ができるのか。かたや自民党内の強硬派を抑えることができるのか。

 これだけ考えても難題中の難題です。懸念材料の最たるものです。しかし、岸田政権を取り巻く懸念材料には、旧統一教会と政治の関係、とりわけ自民党議員との関係についての不明瞭さも加わってきます。
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 4月に行われる統一地方選挙、中でも41の道府県議会議員選挙を前に、長年にわたって旧統一教会の支援を受けてきた立候補予定者の存在が浮上しかねません。与野党問わず、実務の先頭に立ってきた選挙プロの人たちが口をそろえる点です。

 通常国会の論戦、そして統一地方選挙を乗り切りながら、岸田総理がリーダーシップを発揮し続けることができるのか。

 首脳外交でポイントゲットを狙う5月のG7広島サミットに至る道のりには、地雷原が横たわっていると考えておいた方が良さそうです。

 

調査あれこれ 2022年12月20日 (火)

#439 2月24日と7月8日が今年の原点~私のメディア研究

メディア研究部 (メディア動向) 上杉慎一

 国内メディアの動向を担当している私にとって、2022年の2月24日と7月8日はテレビ報道の研究を進めるうえで大きな原点となりました。2月24日は「特別軍事作戦」としてロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始した日、7月8日は安倍晋三元総理大臣が銃撃され死亡した日です。

 2月24日に始まったウクライナ侵攻は、21世紀に起きた侵略戦争として連日大きく報道されました。侵攻初期の段階で、テレビの主なニュース番組が何を伝えたのかは、「ウクライナ侵攻初期にテレビは何を伝えたか~ソーシャルメディア時代の戦争報道~」(「放送研究と調査」7月号)にまとめています。

 ご紹介した論考でも述べているのですが、2022年春の時点で、戦闘が長期化するおそれが指摘されていました。現在の状況を見ると、当時の指摘は文字通り現実のものになったと言えます。ウクライナは当初、陥落が時間の問題とさえ言われていた首都キーウを奪還しただけでなく、その後、反転攻勢に出て、冬を迎えた今も双方の攻防が続いています。
 この間、テレビ各局は毎月24日に「侵攻開始から〇か月」というスタイルで情報をせき止め、様々な角度から報道を続けていました。しかし、事態の長期化もあってか、このところこうしたスタイルでの報道も減ってきています。NHKの「ニュース7」「ニュースウオッチ9」、日本テレビの「news zero」、TBSテレビの「news23」、テレビ朝日の「報道ステーション」の5番組を見ると、「侵攻から8か月」の10月24日にウクライナ侵攻を取り上げた番組はありませんでした。「侵攻から9か月」の11月24日には、「ニュース7」だけがこのニュースを取り上げていました。無論、事態に大きな変化があれば各局とも手厚く報道しています。例えばポーランド国内にミサイルが落下し犠牲者が出たこと(※ウクライナが迎撃のために発射したとみられている)を伝えた11月16日には、4番組がこのニュースをトップで扱い、「報道ステーション」は20分近くの時間を割きました。とはいえ、長期化する戦争をどう伝え続けていくのかが、これからますます問われることになりそうです。

 一方、国内で起きた出来事に目を転じると、忘れられないのが安倍晋三元総理大臣が奈良市の駅前で街頭演説中に銃で撃たれて死亡した7月8日の報道です。この日、NHKと民放キー局では深夜までこのニュースを報じ続け、地上波の放送時間は合計60時間におよびました。その全体像は「安倍元首相が撃たれた日~テレビが伝えた7月8日~」(「放送研究と調査」11月号)に詳しく記録しています。

 事件のあと注目されたのが、9月27日に行われた安倍氏の国葬を巡る問題、それに旧統一教会=世界平和統一家庭連合と政治家との関係を巡る問題でした。とりわけ旧統一教会との関係を巡る問題は、山際経済再生担当大臣(当時)の辞任にもつながりました。また、12月に入って被害者救済を図るための新たな法律が成立したうえ、文部科学省が宗教法人法に基づいて2度目の質問権を行使しました。安倍元総理大臣死亡の衝撃が全国に広がった7月8日の時点では、事件のあとこのような展開になるとは誰も予期できなかったはずです。
 旧統一教会に対し2度にわたる質問権を行使した文部科学省は、今後、解散命令に該当しうる事実関係を把握した場合、裁判所への請求を検討することにしています。一方、安倍元総理大臣の銃撃事件で殺人容疑で逮捕され、精神鑑定を受けている容疑者は、鑑定の期間が2023年1月10日までとなっています。奈良地検は鑑定結果などを受けて、容疑者を起訴するかどうか判断することにしています。いずれも年明け以降の動きが注目されます。

 2022年に注目されたニュースは、これまで述べてきた2つだけに限りません。例えば北朝鮮の相次ぐミサイル発射の問題、日本の安全保障や防衛費の増額を巡る問題、ウクライナ情勢などを受けた物価高騰の問題、言論統制を強める中国の問題、さらに依然、衰えることのない新型コロナウイルスの問題など、挙げていけばきりがないほどです。メディア研究では1つの1つの事象に真剣に向き合えば向き合うほど、調査・研究に時間が必要です。このため直面する課題すべてを網羅することはできませんが、そうした課題を日本のメディアがどのように伝え、人々がそれをどう受け止めたのかという視点を持ち続け、新しい年も研究に取り組んでいきたいと考えています。

調査あれこれ 2022年12月19日 (月)

#438 サッカー日本代表への応援熱はいつまで続く?

計画管理部(計画) 斉藤孝信

 前回に引き続き、FIFAワールドカップ2022で大健闘し、多くの感動をもたらしてくれたサッカー日本代表のお話です。
 試合後の会見で、森保監督は「これから先、日本サッカーが最高の景色を願い続ければ、必ず壁は乗り越えられます。そのためにもこの素晴らしい選手たちを今後も後押ししていただき、日本一丸となって世界に臨めば必ず乗り越えられます」と語りました。
 今大会の日本代表の活躍に多くの人が感動し、大いに盛り上がったことはたしかですが、森保監督が望むように、"今後も日本一丸となって世界に臨む"という状況が実現するかどうかは、今大会で盛り上がった応援熱が、果たしてどれだけ持続するかにかかっています。

 それを考える参考として、文研の「東京オリンピック・パラリンピックに関する世論調査」で、「東京五輪で見たい競技」として挙げた人の割合の推移を、リオデジャネイロ五輪(以下、リオ五輪)で日本がメダルを獲得した主な競技に絞ってみてみます。

東京五輪で「見たい」と答えた人の割合(複数回答の結果)

 リオ五輪の1年後に実施した第2回では、男子4×100mリレーで銀メダルを獲得した「陸上競技」が66%、男子シングルスの水谷選手のほか男女とも団体でもメダルを取った「卓球」が50%、メダルラッシュ(12個)となった「柔道」が48%、金4つを含む7個のメダルを手にした「レスリング」が38%、そして「サッカー」は43%でした。
 ところが、五輪1年半後の第3回では「陸上競技」「柔道」「サッカー」が減少、さらにその半年後の第4回にかけては「卓球」「柔道」「レスリング」も減少しました。やはり、大きな大会直後の熱気をその後も長く持続することは簡単ではないようです。
 ただし、「サッカー」が第4回以降続落せず、第5回には第2回と同程度まで盛り返した背景には、2018年6月にロシアでのW杯、2019年1月にアジア杯、同年6月にコパアメリカと、五輪以外にも大きな国際大会が定期的に開催され、そのたびにメディアでも試合中継や関連ニュースなどで取り上げられるという、この競技ならではの事情があるのかもしれません。
 その2018年6月のW杯ロシア大会でも、日本代表は今回と同じくベスト16でした。西野監督に率いられた、本田、香川、大迫、柴崎などタレントぞろいのメンバーが、1次リーグで格上の相手を撃破し、決勝トーナメント初戦で惜敗。テレビ各局の試合中継の視聴率も今回同様に高く、試合後には渋谷のスクランブル交差点で大盛り上がりする若者たちの騒ぎぶりに"DJポリス"まで出動したことを覚えていらっしゃる方も多いと思います。
 あれだけ盛り上がったのだから、応援熱は大会前よりも格段に高まったのだろうと思いますよね? そこで、文研の「全国個人視聴率調査」から、ロシア大会1年前と1年後に行われたキリン杯の日本代表戦の、関東地方の視聴率をみてみます。なお、以下の3試合はいずれも19・20時台キックオフでした。

サッカー日本代表の試合の視聴率(関東・男女年層別)

 全体は8~9%と同程度、男女年層別にみても、男性60代以上が高めで、女性が低めであるという傾向には、大会前後で目立った変化がありませんでした。大会時、女性も含めて、若い人たちが大いに盛り上がっていた姿が目に焼き付いていた私にとっては、少し意外な感じがしました。
 これを、"W杯のおかげで下がらずに済んだ"とみるべきか、"たった1年でW杯の熱気が冷め、通常に戻ってしまった"とみるべきか。皆さんはどう考えますか?
 ちなみに、東京五輪・パラに関しては、大会後『楽しめた』と答えた人が7割を超えましたが、一方で「盛り上がりは一時的なものに過ぎない」といういささかクールな意見を持つ人も同じく7割近くに上っていました。

東京五輪・パラ 大会後の感想

 なお、W杯初戦前に掲載したブログで、女性50代以下では、ふだんスポーツを『見る』人が4~5割程度しかいないのに、東京五輪・パラを『楽しみ』にしていた人は8割前後に上り、"スポーツの中でも、五輪は別モノ"として受け止められていたようだと紹介しましたが、サッカーについても、W杯時にはあれだけ盛り上がったのに、その後の試合の視聴率が特段上がるわけではなかったことをみると、彼女たちにとっては五輪同様に、"W杯は別モノ"であり、それ以外の試合は"ふだんのスポーツ"であるということなのかもしれません。

 サッカーでは、来年・2023年6~7月にアジア杯、7~8月に"なでしこジャパン"の女子W杯、再来年・2024年にパリ五輪と、大きな国際大会が続きます。果たして、今大会で新たにサッカーや日本代表を好きになった人々によって、応援・視聴の熱が高い状態が維持され、再始動する代表チームを後押しすることになるのか? それとも、一時的な盛り上がりで終わってしまうのか。
 "熱しやすく冷めやすい"私自身への自戒の念と、"これだけの感動をもらった恩返しとして応援し続けます!"という誓いの気持ちも込めて、今後も、代表チームの活躍ぶりと、人々の視聴行動に注目していきたいと思います!