世論調査部(視聴者調査)渡辺洋子
皆さんが使っているSNSは何ですか?そして、それを使う理由は?
SNSは何を使っている?
私はプライベートでは、LINEとInstagramがメインでFacebookは主に閲覧だけ、Twitterはほとんど使っていません。と、ここまで書くと大体年齢がわかってしまいます。
こちらのグラフは、男女年層別にSNSのサービスごとの利用率を示したものです。
LINEはTwitter、Instagram、Facebookと比べて別格に多く、全体では7割弱が利用しています。ただし年層差は大きく、50代以上になるとぐっと利用率が下がります。LINEを除くと、20代以下ではTwitterの利用率が高いことがわかります。30代以上の男性ではFacebook>Twitter>Instagram、30~40代女性ではInstagram≒Facebook>Twitterという傾向がみえますね。
ということで、“Instagram とFacebookは使うけれどTwitterは使わない”というと、30~40代女性の特徴となり、女40代の筆者は、調査結果の通りここに入るということになります。
このように、利用するSNSは男女や年齢によって異なりますが、さらにSNSを利用する理由も年齢で大きく違っていたんです。
SNSを使う理由は?
40代の私にとって、SNSは友達の投稿を見ることがメインです。なので、SNSって“つながり”とか“コミュニケーション”を目的に使うものだよね、と当然のように思い込んでいました。ところが、若い人たちにとってはそうではありませんでした。
こちらのグラフは、Twitter、Instagram、Facebookのいずれかを使う人に、それらを使う理由を尋ねた結果です。
全体では、「個人的に知りたい情報が得られるから」「家族や友人、知人の近況を知りたいから」がどちらも50%程度ですが、16~19歳では「個人的に知りたい情報が得られるから」という情報収集を目的とする人が74%にものぼる一方、「家族や友人、知人の状況を知りたいから」というコミュニケーションを目的とする人は42%と大きな差があります。
若い人たちにとってのSNSは、“つながり”のためというより、情報収集のために使う道具だったんです。
『放送研究と調査』2019年5月号では、「SNSを情報ツールとして使う若者たち~「情報とメディア利用」世論調査の結果から②~」と題して、SNSから多くの情報を得ている今の若者にとって、SNSやテレビはどのような存在なのか、さらにニュースに対してはどう接しているのかについて、調査の結果をもとに分析しています。どうぞご覧ください。
世論調査部(社会調査)荒牧 央
文研では1973年から5年ごとに「日本人の意識」調査を継続して行い、日本人のものの見方・考え方の変化について分析を続けています。
先日、同じように長期の時系列調査を実施している博報堂生活総合研究所(以下、生活総研)の研究員お二人と、文研の「日本人の意識」調査チームで「平成」の価値観の変化をテーマに座談会を行いました。
博報堂生活総研 三矢さん・内濱さん NHK文研 村田・荒牧・吉澤
生活総研では「生活定点」調査や「家族調査」などの時系列調査を、長いものでは30年にわたって実施し、それらの調査データからの知見を最近書籍にもまとめられています。
今回、お互いの知見を持ち寄ったことで、
・家庭に対する意識や家族のあり方は大きく変わったものの、家族の価値は決して低くなっていないこと
・人間関係などで「公」よりも「私」を重視する考えが強まっていること
などが共通の傾向としてみえてきました。
そのほか、一見似たような質問なのに食い違う結果が出ている質問や、私たちの調査では全く尋ねていないような質問などもあり、興味はつきませんでした。
そもそも別の研究機関の方と、それぞれの調査データについて時間をとって議論するという機会は、実は多くありません。そういう意味でも非常に有意義な時間になったと思います。
今回の座談会の様子は博報堂のウェブサイトに掲載され、文研のサイトにも掲載しています。ぜひご一読いただければと思います。
座談会を終えて
『放送研究と調査』5月号と6月号では、2018年に実施した「日本人の意識」調査の最新の結果について詳しく報告しています。こちらもぜひご覧ください。
世論調査部(研究開発)萩原潤治
「世論調査部の萩原です」と自己紹介すると・・・
「あー、内閣支持率のニュースをよく見ますよ」とか「電話で調査してるんですよね?」とか言われることが多いですね。
確かに、NHKは毎月、内閣を支持するか否かなどを聞く「政治意識調査」を電話で行い、結果をニュースにしていますので、世論調査=電話という印象が強いのかもしれません。ただ、世論調査には電話法のほかにもいくつか手法があるんです。
「個人面接法」では調査員が調査相手のご自宅を訪問し、面談して回答していただきます。また、「郵送法」では質問紙を郵送し、回答を記入して返送していただきます(NHKでは、調査員が質問紙を届ける「配付回収法」という手法も行っています)。
冒頭の「政治意識調査」は、その時々の内閣支持率や時事問題などについて、人びとの意識を把握する調査ですので、調査期間はできるだけ短く、また結果もなるべく早くお伝えすることが望ましいでしょう。それで、最も機動性の高い「電話法」が選ばれているというわけなんです。
さて、この「電話法」に携わっている人たちにとって、2016年は大きな転機の年でした。
それまでの全国電話調査は固定電話だけが対象でしたが、これに加えて携帯電話にも発信する「固定・携帯RDD」を報道各社が導入し始めたのです。NHKも2016年12月からこの手法を採用しています。携帯電話しか持たない人にも調査できるようになったことで、若い人の回答数が増え、調査の精度がアップしました。
しかし、問題も残っています。全国ではなく、都道府県など地域を限定した電話調査では、携帯電話の番号からは地域が特定できないので、今も固定電話のみで調査をせざるを得ないのです。せっかく、「固定・携帯RDD」を始めたのに、地域調査は固定電話だけのまま・・・もどかしいですが、今のところ解決策は見つかっていません。
さらに、この固定電話調査は、若年層の回答数が少なく、高年層の回答数が多いという傾向があります。「世論調査=国民の縮図」として公表する以上、この状況が深刻化する前に手を打たなければ、世論調査への信頼は揺らぎかねません。
(前置きが長くなりましたが・・・)そこで!今回の神戸市などを対象にした地域限定の世論調査では、固定電話による調査の代わりに、「郵送法」を改良して行い、その効果を検証しました。
「郵送法」は、有効率の高さや多様な質問文・選択肢を作ることができるという特長がありますが、機動性では「電話法」にかないません。このため今回は、いつもの「郵送法」よりも、どの程度、調査の期間を短くできるのかを工夫して設計してみました。
この改良版・郵送法は、固定電話調査の代わりになりうるのでしょうか。手法の詳細と精度の検証結果について『放送研究と調査』5月号に書きました。ぜひご覧ください。
世論調査部(社会調査)小林利行
「ふだん信仰している宗教がありますか」
みなさんがこんな質問をされたらどう答えますか?
NHKが去年10月から11月にかけて行った「宗教」に関する世論調査(全国の18歳以上対象)の結果によると、「仏教」と答えた人が31%、「神道」が3%などと、何らかの宗教を信仰していると答えた人は合わせて36%になりました。
この調査は2008年にも実施しているのですが、何らかの宗教を信仰していると答えた人の割合は、この10年でほとんど変化していません。
宗教に関する意識や行動は、10年ぐらいではあまり変わらないのかなと思って他の質問をみてみると、むしろこの結果が例外で、他の多くの数字は増加したり減少したりしているのです。
例えば、信仰心があるかどうかを尋ねた質問では、信仰心が「ある」という人が2008年は33%でしたが、去年は26%に減っています。
では、仏教や神道など、何らかの宗教を信仰している人に限ってみるとどうなるでしょうか。
(①のグラフで、緑や赤などのカラフルな部分の人を100%として考えるということです)
「何らかの宗教を信仰している」と答えた人の中で、信仰心「あり」と答えた人は2008年は65%でした。しかし、去年は53%に減っているのです。
つまり、「何らかの宗教を信仰している」と答えた人の中でも、信仰心を持つ人が少なくなっていて、最近では約半数になっているということです。
私は宗教学の専門家ではないので詳しく解説できないのですが、日本人にとって宗教を信仰するということは何を意味するのかということを考えさせられる結果ではないでしょうか。
実は、この調査は20年前にも行っていて、多くの質問で過去20年間(3回分)の比較が可能です。
ここで紹介した以外にも、「へえ~」と思える結果がたくさんあります。
例えば、「人に知られなくても悪いことをすれば必ずむくいがあると思うか」という質問があります。
20年前には74%の人が「そう思う」と答えていましたが、去年は何%だったと思いますか?
多くなったのか少なくなったのか? その変化はどの程度なのか?
気になる方は『放送研究と調査』4月号をご覧ください。
※ブログ内では、選択肢をある程度まとめて示しているグラフもあります。
メディア研究部(メディア動向) 入江さやか
編成局 編成センター 西 久美子
■大都市・大阪を襲った「直下型地震」
2018年6月18日午前7時58分ごろ、大阪府北部を震源とするマグニチュード6.1の地震が発生。
大阪市北区、大阪府高槻市、枚方市、茨木市、箕面市で震度6弱の強い揺れを観測しました(以下、大阪北部地震と表記)。この地震で、関西地方の多くの鉄道が当日の夕方にかけて運転を見合わせたため、いわゆる「帰宅困難者」が多数発生しました。NHK編成局編成センターとNHK大阪放送局では地震発生当日のメディア利用動向を早期に把握するため、大阪府在住の16~79歳の男女・2,051人を対象にインターネットによる調査を行いました。さらにこの調査結果を揺れの大きかった大阪府北部とそれ以外の地域に分けて分析しました。
■大阪北部在住の回答者の4分の1が「帰宅困難者」に
調査結果をみますと、大阪北部に在住する回答者(1,014人)のうち、25%の人が「歩いて帰宅した」「自宅に帰らず外出先などに泊まった」「普段と違う交通機関を使って帰宅した」などと回答し、いわゆる「帰宅困難者」になっていたことがわかりました。
これらの「帰宅困難者」が、帰宅の可否を判断するのに利用したメディアについては、「インターネットのポータルサイト(Yahoo!・Google等)」が27%で最も多く、次いで「NHKテレビ」(23%)「交通機関のサイト・乗り換え案内アプリ」(17%)「民放テレビ」(16%)などとなっていました。自分の行動や対応を決めるための情報を、主にテレビやネットから得ようとしていたことがわかりました。
図1 大阪府北部在住の「帰宅困難者」が帰宅の可否の判断に利用したメディア
(複数回答・上位5位まで)
■もしもテレビやスマホが使えなくなったら?
今回の大阪北部地震では、交通・通信・ライフラインなど大都市を支える機能が一時的に停止・低下しましたが、テレビ・スマートフォンなどの情報機器はほぼ使用できる状況でした。一方、この地震から2か月半後の「北海道胆振東部地震」では、北海道のほぼ全域が停電(ブラックアウト)し、テレビやスマートフォンやパソコンが利用しにくい状況になり、ラジオが主な情報源になりました。
都市直下型の大地震の際に正確な情報が得られないと、帰宅できないばかりか、大きな混乱につながるおそれもあります。今回の地震を受けて大阪府では、災害時の一斉帰宅の抑制とともに、「安否確認・情報収集手段の確保」も呼びかけています。テレビやネットが使えなくなった場合に備えて、電池で使える「ラジオ」もぜひ1台備えておきたいものです。
図2 大阪府が作成したチラシ「STOP!一斉帰宅」から
(http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/23998/00000000/chirashi.pdf)
今回の調査結果の詳細は、NHK放送文化研究所のウェブサイトでご覧いただけます。
「放送研究と調査」2019年3月号
都市直下型地震 その時役立つメディアとは? ~大阪北部地震のメディア利用動向インターネット調査とは?~
あわせて、「北海道胆振東部地震」の調査報告もぜひお読みください。
「放送研究と調査」2019年2月号
北海道ブラックアウト どのメディアが機能したのか ~「北海道胆振東部地震」メディア利用動向インターネット調査から~
メディア研究部(メディア動向) 入江さやか
編成局 編成センター 西 久美子
■ 北海道で震度7 北海道がほぼ全域で停電
2018年9月6日午前3時すぎ、未明の北海道を震度7の激しい揺れが襲いました。地震の規模はマグニチュード6.7、北海道厚真町で震度7、安平町・むかわ町で震度6強を観測。厚真町で発生した大規模な土砂崩れなどで41人が亡くなりました。私(入江)は、東京にいましたが、地震発生を知らせるメールで目を覚ましました。テレビで緊急ニュースを見ていたところ、函館市の函館山に設置されたNHKのロボットカメラに映っていた夜景が一瞬で闇に沈んだのです。震源から函館市までは直線距離でも約150キロあります。「なぜ函館まで!?」最初は何が起きたのかわかりませんでした。
経済産業省によると、北海道最大の火力発電所である「北海道電力苫東厚真発電所」が地震の揺れによる自動停止や障害で停止。電力供給のバランスが崩れ、地震発生から18分後の午前3時18分に北海道全域約295万戸(発電所を持つ離島を除く)への電力供給が停止、過去に例のないブラックアウト(大規模停電)となったのです。道内ほぼ全域での停電は約11時間続き、全域への電力供給再開は約64時間後の9月8日午後7時でした。
■テレビ・ラジオにも大きな影響
停電のため各家庭などでテレビが見られないばかりか、北海道内の地上波テレビ放送の中継局160局のうち28%にあたる45局が停波しました。NHKはウェブサイトや防災アプリでテレビ放送を同時配信したほか、6日朝の『おはよう日本』ではアナウンサーが北海道以外の視聴者に向けて「NHKが報道する情報をメールやSNSなどで北海道の家族や友人などに伝えて」という異例の呼びかけをしました。北海道の民放4社も、各社のウェブサイトやYouTubeで地震関連情報を同時配信しました。
■その時使えた情報機器は?
NHK編成局編成センターでは地震発生当日のメディア利用動向を早期に把握するため、北海道全域(16~79歳の男女・3375人)を対象にインターネットによる調査を行いました。地震発生当日に使用できた端末・機器は、時間によって変わっていったことがわかりました(図1)。
すべての時間帯を通じて利用できた割合が高かったのは「ラジオ」でした。「テレビ」は、68%が「当日利用できなかった」と回答しました。
「インターネット(スマートフォン・タブレット端末)」は、「地震発生直後から未明」までは40%の人が利用できていましたが、夜間にかけて20%台まで下がりました。停電が長期化する中、電源節約のために使用を控えたことや、北海道内の各地で基地局の停波が相次いだことが背景にあると考えられます。
「ラジオ」を利用した人にその理由を尋ねたところ、NHK・民放ともに「情報が信頼できるから」「欲しい情報が得られると思ったから」というコンテンツへの評価も高かったのですが、「他になかったから」「電力やバッテリーの消費を節約するため」という理由も目立ちました。
図1 地震発生当日に利用できた端末・機器(複数回答)
■「情報ブラックアウト」を避けるために
平常時はスマートフォンやタブレット、パソコンでラジオを聴くこともできますし、防災情報や交通情報などあらゆる情報が欲しいときに手に入ります。しかし、災害時に同じように使えるとは限りません。携帯電話事業者や電力事業者なども災害時の早期復旧対策に力を入れていますが、電力のブラックアウトが「情報ブラックアウト」にならぬように個人レベルでも情報面の防災対策をしておきたいものです。
ちなみに、災害情報の調査・研究に携わっている私は「紺屋の白袴」ではいけませんので、携帯ラジオ(テレビ音声・AM・FM受信可)を、スペアの電池と一緒にいつも持ち歩くようにしています。非常食や水の備蓄も大事ですが、情報面での備えも忘れないでください。
今回の調査結果の詳細は、NHK放送文化研究所のウェブサイトでご覧いただけます。
北海道ブラックアウト どのメディアが機能したのか~「北海道胆振東部地震」メディア利用動向インターネット調査から~
なお、『放送研究と調査』3月号では、昨年6月に発生した「大阪府北部の地震」に関するメディア利用動向調査の結果も掲載しています。こちらもあわせてお読みください。
世論調査部(視聴者調査) 保髙隆之
いま話題の映画「ボヘミアン・ラプソディ」、ご覧になりましたか?
私は公開直後にドルビーアトモス版を鑑賞。ラスト20分あまりのライブシーンは圧巻でした。(余談ですが、懐かしさのあまりクイーンが過去に楽曲提供した「フラッシュ・ゴードン」(オープニング「だけ」は最高!)や「ハイランダー/悪魔の戦士」といった作品のBDを久しぶりに奥から引っ張り出しました。)
さて、場内が明るくなった後の客席の空気感から、私が思い出したのが「シン・ゴジラ」と「カメラを止めるな!」。いずれもSNSを通じての情報拡散が大ヒットにつながったとされる映画ですが、個人的には、上映後の観客たちの「一体感」、まさにこの日のこの上映回を共有したという実感があり、作品それ自体はもちろん、劇場での体験こみで楽しんだ作品でした。よくマーケティングでいわれる「リアル」イベントの価値とは、こういうことなのだろうな、と肌感覚で納得したものです。(それぞれの作品で「応援(発声)上映会」が話題になったのも偶然ではないと思います。)
この「リアル」という価値、私がこの1年あまり携わってきた研究で、大学生たちから何度も聞いたキーワードでした。
研究の一環で、10代後半から20代のみなさんに話を伺ったのですが、テレビとSNSの情報を比較したときに、「テレビで放送されている内容はどうせテレビ局に都合のいいように編集されていそうでリアルさを感じない」。一方、「SNSからの情報は当事者の生の声なのでリアルに感じる」「自分が知っている(逆に自分のことを知っている)人と共有した情報はリアル」といった声が共通して聞かれました。例えると、SNSからの情報は産地直送の生の食材で、調理をするのも自分自身なので「リアル」。テレビからの情報はどんな人が間に入って調理したか分からない加工品として届けられるから「非リアル」、といった“イメージ”があるようでした。そして自分にとって「リアル」な情報を共有できるSNSは「自分たちの側のメディア」で、テレビは「あちら側のメディア」である、と、テレビ局の人間としては耳の痛い発言をする若者もいました。こういったテレビに対する微妙な距離感は、利用時間の比較だけでは分からないものです。あらためて、いまの若年層のメディア利用行動と情報に対する意識の関係を世論調査で探りたいと思いました。
そんな「情報とメディア利用」世論調査の結果を、『放送研究と調査』12月号と文研のホームページで報告しています。はたして若年層の情報観やニュースの入手先の特徴とは? ぜひ、ご一読ください!
世論調査部(視聴者調査) 斉藤孝信
2018年も残すところ、ひと月余り。開催決定の頃には「まだ先の話」と思っていた2020年東京オリンピック・パラリンピックも、いよいよ近づいてきましたね。
皆さんは、2020年の東京オリンピックで、どんな競技の観戦を楽しみにしていますか?
文研が2018年3月、全国の20歳以上の男女3600人を対象に実施した「2020年東京オリンピック・パラリンピックに関する世論調査」では、リオデジャネイロ五輪で日本選手が上位入賞した競技や、東京五輪から正式種目となる競技、開閉会式など合わせて25の中から、「見たい」と思うものをいくつでも選んでもらいました。
上位10競技はご覧のようになりました。
「体操」が69%で最も多く、「陸上競技」も約6割。「競泳」「開会式」「卓球」は約半数の人が見たいと回答しました。
こうみますと、リオデジャネイロ大会で日本勢がメダルを獲得した競技が多いですね。「東京でもぜひメダルを!」と熱望する皆さんの声が聞こえてくるようです。
どうですか?あなたが「見たい!」と思う競技はたくさん入っていましたか?
この調査は2020年の東京五輪まで続ける予定ですが、今後、各種目の代表選手が決まったり、ラグビーのワールドカップやサッカーのアジアカップなども行われたりする中で、「見たい競技」の順位や割合がどう変化していくのか。あるいは(少し気が早いですが)大会終了後、皆さんが「見た」と答える競技はどんなものになるのか。今から楽しみです。
というのも…。
今回紹介する2018年3月調査は、韓国・ピョンチャンで行われた冬季五輪の直後だったので、同五輪でどんな競技を「見た」のかを尋ねました。それを開催前の2017年10月に尋ねた「見たい競技」と見比べると、とても興味深いのです!!
本編を楽しくお読みいただけるように、クイズ形式で!
「見たい」「見た」人が2割以上となった競技を並べてみました。
黄色で塗った「あの競技①」は、事前の「見たい」でも、事後の「見た」でもトップでした。皆さん、おわかりになりますでしょうか。多くの人がメダルを期待し、期待通りに(いや、期待以上だったかもしれません)メダルを獲得してくれた、そう、「あの競技」です!
一方、見比べて面白いのが、緑の「あの競技②」。事前調査では「見たい」が25%だったのに、大会後には70%もの人が「見た」と回答しました。わかりますか?ヒント。女子チームがメダルを獲得し、競技中のやりとりで彼女たちが口にした言葉が流行語にもなった、「あの競技」です。
この「あの競技②」以外にも、スピードスケートも「見たい」37%→「見た」70%、スノーボードも「見たい」29%→「見た」50%と大きく増加していました。日本勢の活躍やメダル獲得に加えて、決勝戦などが連日、テレビなどのメディアで大きく取り上げられたことも寄与しているのではないでしょうか。(かく言う私も、ほとんど知識もなかったスノーボードの迫力とカッコよさに魅せられ、夢中で応援した一人です。)
そう考えると、2020年東京五輪でも、事前の「見たい」が、実際にはどこまで「見た」になるのか。楽しみです!
特に、2020年東京大会から正式種目となる「野球・ソフトボール」「スポーツクライミング」「空手」「スケートボード」「サーフィン」にも注目しています。
17年10月調査、18年3月調査とも、野球が4割あまり、その他の4競技は2割未満でした。今後、競技や選手への注目が高まる中で、どの競技もどんどん「見たい!」と思う人に増えていってほしいですね!
詳細な分析結果は、『放送研究と調査』11月号で、詳しくご報告いたします(クイズの正解もぜひチェックしてみてください!)。どうぞお楽しみに!
メディア研究部(メディア動向) 大野敏明
2020年の東京パラリンピックまであと2年を切りました。
NHKのみならず、民放の番組やCMなどにも「パラアスリート」が登場する機会、増えていますよね。
この写真に写っている、バトンを次の選手に渡そうとしている左端の女の子。実は大活躍するあの有名なパラアスリート!
…ではなく、知的障害がある私の姉なんです。もう40年以上も前、養護学校(今でいう特別支援学校)時代の運動会での様子です。
姉は学校一と言えるくらい足が遅くて、とても「パラアスリート」になれるような器ではありませんでしたが、一生懸命ゴールに向かう姿には、弟ながらウルッとしたことを覚えています。
ところで、皆さんの周りには障害がある人っていますか?
町で障害者に出会ったら、どんなふうに思いますか?
小さい頃、姉と一緒に歩いていると冷ややかな目で見られたり、心無い言葉を投げかけられて母親が猛然と抗議したりすることがしばしばありました。
姉に対して、幼い私はシンプルに「何も悪くないのに、かわいそうだなぁ」と思う反面、友達に姉のことをからかわれたりすると「恥ずかしい」と思ったり、「人に知られたくない」「障害がない姉ならよかったのに」と思ってしまったことが何度もあります。正直言えば、今だってほんの少しはあります。
そんな自分は心底最低だなと反省しながらも、ダメな自分に少しでも気づかせてくれる姉は、今思うと人生の中で最も影響を受けた人かもしれません。実際、仕事でこんな原稿を書いているわけで。
と、個人的な話はさておき、子供の頃に比べると、近頃は随分と周囲の目が温かくなったように感じます。障害者に対する人々の意識の変化…要因はいろいろとあるかと思いますが、パラリンピックもそのひとつではないでしょうか?
文研が実施した世論調査の中で、パラリンピックなどの障害者スポーツについて感じることを聞いたところ、「選手の頑張りに感動する」(70%)、「障害者への理解が深まる」(43%)など、障害者への共感や理解が深まるという意見が多く見られました。そういった意味でも、2020年の東京パラリンピックを機に、障害者の存在をメディアが大きく取り上げることには、大きな意義があると思います。
しかし一方で、障害がある人たちは、このパラリンピックをどう受け止めているのでしょうか?
文研では3月に開催されたピョンチャンパラリンピックの直後、前述の世論調査と並行して、障害者を対象にしたWEB調査を実施しました。パラリンピックに対する声の一部を紹介すると…
「困難を乗り越え競技に取り組む選手たちに感動。自分も出来ることから始めようと思った」(視覚障害)
「前向きな気持ち、チャレンジ精神を思い出せてくれた」(肢体不自由)
こんな風にポジティブな声がある反面、実はネガティブな声も。
「障害者はスポーツをするものだという偏見を植えつけて、とてもウザイ」(肢体不自由)
「聴覚障害者の五輪、デフリンピックも放送してほしい」(聴覚障害)
「メディアのお祭り騒ぎでしかない」(視覚障害)
ひと言で「障害者」と言っても、障害の種類や重さ、発症時期、現在置かれている状況などなど、背負っているものはもちろん人それぞれ違います。パラリンピックやメディアに対する思いもさまざまで、前向きに捉えている人もいれば、そうでない人もいます。
寄せられた声のひとつひとつに、当たり前だけれども大切な「多様性」について改めて気づかされ、同時に、まずはこういうことを包み隠さずに、自由に話せるような社会になることこそ大事なのではないかと考えさせられました。
こうした障害者の皆さんの声を、『放送研究と調査 』11月号にまとめて掲載しました。世論調査の結果も掲載されていますので、お時間がある時に是非ご覧ください。
ちなみにうちの姉、スポーツには全く興味がないようで、もっぱら歌番組ばかり見ています。そういう私もまぁ似たようなもので、宮本浩次×椎名林檎や松任谷由実、あいみょんの出場が決まったばかりの紅白歌合戦、今から楽しみでしかたありません。姉の影響ですかね。