メディア研究部(メディア史研究) 東山一郎
NHK放送博物館(東京・港区)では、企画展「減点パパ+減点ファミリー展」を開催しています。
「減点パパ」「減点ファミリー」というフレーズにピンとくるのは、おそらく40代半ばを過ぎた方々ではないかと思います。ピンとこなかった方にも楽しんでいただけるように、「減点パパ」「減点ファミリー」とは何か、どんな展示なのか、簡単にご紹介していきます。

「減点パパ」「減点ファミリー」は、1970年代から80年代にかけて放送されたNHKのバラエティー番組『お笑いオンステージ』のなかのひとつのコーナーです。『お笑いオンステージ』は日曜日の大河ドラマの前、よる7時20分からの放送で、番組前半のショートコメディ「てんぷく笑劇場」と番組後半の「減点パパ」「減点ファミリー」が人気のコーナーでした。「減点パパ」は73年4月から始まりました。俳優や歌手、芸人など著名人の子どもがまず登場して、司会の初代 三波伸介さんがその子に顔の特徴を聞きながら、パパの似顔絵を描いていく。似顔絵が完成すると、そこで初めてパパが登場。そして、お子さんが得意なものは? 将来の夢は? など、子どもに関する質問がパパに次々に投げかけられ、答えられなければ、似顔絵に×印がつけられていく・・・、コーナーの最後には、子どもがパパに向けた作文を披露する。似顔絵、Q&A、作文という三つの要素を通して、著名人の意外な一面が垣間見えたり、ほのぼのとした親子関係が見えたりというコーナーでした。75年からタイトルが「減点ファミリー」となり、パパだけでなく、ママ、おじいちゃん、おばあちゃんも登場するようになりました。

初代 三波伸介さん(当時の番組宣伝用写真から)
今回の企画展は、放送博物館に保存されていた三波伸介さんによる似顔絵およそ100点を、著名人のお子さん、お孫さんによる作文や二代目三波伸介さん所蔵資料などとともに構成したものです。三波伸介さんは当時、『笑点』(日本テレビ)の司会をはじめ、数々のテレビ番組にレギュラー出演していた喜劇人で、昭和のテレビを代表するスターのひとりです。三波さんによる上手な似顔絵の数々がまず、この企画展の見どころです。
その似顔絵を見ていくと、「減点パパ」「減点ファミリー」のゲストが実に多彩だったことに驚かされます。30数年前のバラエティー番組に「この人が!?」という意外な方も多数出演されていました。例えば、細川隆元さん、毒舌で知られた政治評論家です。現在、テレビで活躍中の加藤一二三さんも現役の棋士として出演していました。そして俳優の大滝秀治さんなど、多彩で意外な方々が出演されていました。大滝さんは似顔絵とともにお嬢さんによる作文も展示させていただいています。

展示したおよそ100人の似顔絵からは、芸能関係に限らず、この当時の放送、そして文化を彩っていた方々、今も彩り続けている方々の姿を見ることができると思います。
「減点パパ・減点ファミリー」のコーナーを締めくくっていたお子さんたちの作文は、数は多くはありませんが、作文実物のほか、映像でも紹介しています。俳優の吉田義夫さんの放送回も映像で紹介しています。吉田さんは、当時の「週刊TVガイド」の記事にもあるように、稀代の悪役俳優として知られた方でした。その吉田さんが、お孫さんが読む作文を聞いて、はにかんだような嬉しいような、何とも言えない表情をされているのがとても印象的です。子どもたちの作文の展示にふれると、なんとなくほっこりとした気分になると思います。

「週刊TVガイド」1980年10月3日号(東京ニュース通信社)
*次回のゲストは誰かを読者に予想してもらう記事で、似顔絵には目隠しがされていました。
今から30数年前のテレビ番組を題材とした展示ですが、番組を知らない若い世代の方にとっても、親の世代はこういう番組を見ていたんだとか、この人はこんなに昔から活躍していたんだとか、何か発見がある展示だと思います。
7月8日(日)まで開催しています。ぜひ、NHK放送博物館にお越しください。
4月29日(日)には二代目 三波伸介さん出演の企画展関連イベントも開催されます。こちらもぜひご参加ください(事前申込制)。
NHK放送博物館
休館日 :月曜日(月曜日が祝日・振替休日の場合は火曜日休館)、年末年始
入場料 :無料
開館時間:午前9時30分~午後4時30分
所在地 :〒105-0002 東京都港区愛宕2-1-1
TEL : 03-5400-6900

(ホームページはこちら)
計画管理部(計画) 大森龍一郎
3月7日(水)~9日(金)、千代田放送会館で「NHK文研フォーラム2018 テレビの未来 メディアの新地図」を開催、3日間でおよそ1400人のみなさまにご来場いただきました。ありがとうございました。
CNNやPBSなど海外メディアの責任者をゲストに招いたシンポジウムや、日米世論調査の報告、学生と共に「テレビの未来」を考えるワークショップ、民放連会長をゲストに迎えた対談、NHK老舗料理番組の歴史研究、ドキュメンタリー番組・放送用語に関する研究発表など、多様なプログラムを展開しました。
また、1Fラウンジでは「文研カフェ」をオープン、登壇者と来場者、文研所員との交流の場としてよろこんでいただきました。さらに、今回初めての試みとしてデジタル特別展「東日本大震災 伝え続けるために」のデモサイト限定公開も行いました。

◆海外からゲストを招いたシンポジウム。

◆終了後には、1階「文研カフェ」で登壇者・ゲストと来場者の交流も。

◆大学生を招いたワークショップ「大学生たちと考える“テレビの未来”」、注目を集めました。

◆デジタル特別展「東日本大震災 伝え続けるために」も3日間開催。幅広い年代の方が体験しました。
3日間を通した来場者アンケートでは、およそ5割が「とてもよかった」、4割が「よかった」と、とても喜んでいただけたようです。
文研では今年いただいたアンケートなどを元に、次回、また新たな気持ちで文研フォーラムを開催したいと思いますので、ご支援よろしくお願いいたします。
メディア研究部(番組研究) 亀村朋子
春の訪れを感じる今日このごろ。あと2週間もすれば新学期ですね。
とある「朝ドラウォッチャーさん(仮名)」が以前Twitterでこんなことを言ってました。

そうかーなるほどね…「新しいクラスは?」「担任は?」「毎日楽しく過ごせるといいなぁ」「面白い先生がいい」…そんなワクワクするような期待が、新しい朝ドラを見る時にはあるのかもしれない…
朝ドラ常連のこの方は、4月と10月になると「新学期気分」を味わいながら見続けているんですね。有り難いことです。新しく作品が入れ替わっても、次を楽しみにしながら見続けてくれている方が大勢いる。朝ドラは、まさにそんな「味方」に支えられている番組だと思います。
朝ドラには、ご存じの通り、二つのタイプがあります。
「実在モデルありの一代記もの」と、「モデルのいないオリジナルもの」です。
昨年4月から放送された『ひよっこ』は、それまで3作連続で(『あさが来た』『とと姉ちゃん』『べっぴんさん』)「モデルあり」が続いたあとに放送された、久しぶりの「オリジナルもの」でした。
主人公は、何かを成し遂げる偉人ではなく、茨城に住む普通の庶民の女の子。昭和への懐古や、庶民の生活への賛歌を感じ取れる『ひよっこ』は、放送中盤のアンケート結果では、「明るくて」「健全で」「前向きで」「さわやかな」イメージを呼び、8割近くの回答者から「満足」と支持されました。しかし、同じアンケートの中で「(モデルがいない話なので)物語がどこに向かっているのか分からない」と答えた人が6割以上いました。
「見て満足」なのに「分からない」とは、これいかに?…ちょっと矛盾していますよね。
そこで、朝ドラを見るときに皆さんがどのような「見方」をしているのかを探ってみれば、「何かヒントになるかもしれない」と思いつきました。「見方」とは、言い換えれば、「どういう心構え(目線)で朝ドラを見ようとしているのか」ということです。2年半にわたって朝ドラ調査を継続していますが、今回初めて「見方」に注目して、アンケートや聞き取り調査で聞いてみることにしました。
そもそも「朝ドラの見方」なんてものが存在するのでしょうか?
そしてその調査結果は…?
『放送研究と調査』3月号 に掲載した「朝ドラ研究 視聴者は朝ドラ『ひよっこ』をどう見たか ~柔軟に見方を変えて楽しむ視聴者~」で報告しています。ぜひご一読ください。

現在放送中の『わろてんか』に続く今後の朝ドラは、『半分、青い』『まんぷく』『夏空』と、「モデルあり」と「オリジナル」とが1作ごとに交互に続いていくことになっていて、なかなか目が離せません。これからも、「視聴者はどのように朝ドラをミタカ?」=「朝ドラのミカタ」を探っていきたいと思います。
メディア研究部(メディア史研究) 東山一郎
メディア研究部(メディア動向) 入江さやか
東日本大震災プロジェクト事務局 三森 登
展覧会そのものをデジタルアーカイブ化することはできないだろうか?
NHK放送博物館(東京・港区)で昨年3月から9月まで開催した特別展「東日本大震災 伝え続けるために」の展示内容をデジタルアーカイブ化する試みを現在進めています。この試みの途中経過として、デジタル特別展「東日本大震災 伝え続けるために」と名付けたデモサイトをNHK文研フォーラム2018(3月7~9日 東京・千代田放送会館)の会場内で限定公開します。
特別展「東日本大震災 伝え続けるために」は、震災の記憶を風化させてはいけないという思いのもと、震災報道に関わった職員の手元や東北の各放送局に残されていた資料を収集し、NHKが保存する映像や写真資料、記者・カメラマンなどに綴ってもらった手記、そしてニュース送出卓などの立体物を加えて構成し、実施したものです。
特別展のチラシ(2017年3月~9月開催)
特別展終了後、収集した資料や展示物の保存・活用について話し合うなかで、「デジタルミュージアム」的なものはできないだろうかという声が上がりました。映像や文書そのものの保存とデジタルアーカイブ化は行われていても、展示やイベントという「情報のパッケージ」まるごとの保存・アーカイブ化はあまり例がないように思えました。展示構成ほぼそのままに、展示の疑似体験ができるようなサイトができないだろうか。まずは、NHKのイントラサイトとして作ってみよう。これが、今回の試みのスタートでした。
このブログを書いている時点では、下図のような感じのデザインのサイトになりますよ、としかお伝えできませんが、文研フォーラムの会場では、出来たばかりのデモサイトを公開する予定です。


制作途上のデモサイトとなりますが、みなさまのご意見をいただき、より良いものに仕上げていければと考えています。
文研フォーラム開催中は、千代田放送会館の1階で下記の時間帯にご覧いただけます。ぜひお越しください。
・3月7日(水)15時~(17時ごろ)
・3月8日(木)12時~(16時ごろ)
・3月9日(金)12時~(17時ごろ)
