文研ブログ

調査あれこれ

調査あれこれ 2017年09月08日 (金)

#93 災害発生! 被災地で求められる「生活情報」とは?

メディア研究部(メディア動向) 入江さやか

9月1日の「防災の日」。訓練に参加したり、非常持ち出し袋の中身を点検した人も多いのではないでしょうか。7月には「九州北部豪雨」による災害が発生。今まさにアメリカでもハリケーン「ハービー」で甚大な被害が出ています。日本、いや世界のどこにいても、自然災害のリスクに備えなければならない時代です。

自然災害で、電気・水道・ガスなどのライフラインが断たれたとき、交通手段がなくなったとき、避難生活を余儀なくされたとき――水や食料などの確保はもちろん大事ですが、どこでどのような救援・支援が受けられるのかという「生活情報」が「命綱」になります。

NHK放送文化研究所では、昨年4月の「平成28年熊本地震」で大きな被害を受けた熊本県の熊本市東区、益城町、西原村、南阿蘇村の20歳以上の住民各500人、計2,000人を対象に「熊本地震被災地における住民の情報取得行動に関する世論調査」を実施しました。

地震発生から1か月くらいまでの間に必要だった生活情報」は何かを聞いたところ、4市町村のいずれでも「ライフライン(水道・ガスなど)の復旧見通し」「地震の見通し」が上位を占めました。道路や鉄道が寸断された南阿蘇村では「交通情報」のニーズが高く、役場庁舎が大きな被害を受け、行政機能の回復に時間がかかった益城町では「り災証明の交付」に関する情報が求められていました。しかし、「ライフラインの復旧見通し」については、半数以上の人が「手に入りにくかった」と回答。「食料品が買える店舗」「ガソリンスタンドの営業情報」「洗濯のできる場所(コインランドリーなど)」「介護用品の手に入る場所」などの情報も不足していたという指摘がありました。

93-0908-1.jpg
避難所に貼り出された「役場からのお知らせ」
役場庁舎が被災し、り災証明書の発行ができないことなどを告知している。
(2016年4月26日 益城町総合体育館)

情報を入手したツール(情報機器)は自治体によって違いがありました。熊本市東区、西原村では「テレビ(据え置き型)」が最多でしたが、半数を超える住宅が「半壊」以上の被害を受けた(本調査による)益城町では「スマートフォン・携帯電話」、停電が長期化した南阿蘇村では「ラジオ」が多数を占めていました。

2回の震度7の地震の後も活発な地震活動が続いた熊本地震では、自動車の中で寝泊りする「車中泊」の多さも注目を集めました。今回の調査でも各自治体で6~7割の人が車中泊をしていたと回答しています。そのような状況を反映し、カーナビやスマートフォンを使い、ワンセグ放送やインターネット同時配信(ライブストリーミング)でテレビを視聴していた人も少なくありませんでした。

73-0908-2.jpg
生活情報を伝えるNHKのデータ放送の画面(2016年4月25日)

熊本地震では、地震発生直後から自治体や放送局、新聞社などがさまざまな媒体を通じて、物資の配布や医療、交通など多様な「生活情報」を発信しました。私も発災後まもなくNHK熊本放送局に入り、生活情報の発信に携わりました。しかし、調査結果からは、多様な情報ニーズに必ずしも応えきれていなかったことがわかりました。情報の「出し手」としてこうした課題に向き合っていきたいと思います。

さて、ここまでブログを読んでくださったあなた。非常持ち出し袋の中に、情報入手のツールは入っていますか?「ラジオと乾電池」だけでなく、スマートフォンや携帯電話の充電器など、複数の手段を確保しておいてください。また、今回の調査で「スマホの充電切れで、端末に登録してある電話番号がわからなくなって困った。手帳に控えておくべきだった」という貴重な教訓を書いてくださった方がいました。いつ起きるかわからない自然災害。被災者の経験を「わがこと」として受け止め、備えておきたいものです。

上記の世論調査の詳細は、「放送研究と調査」2017年9月号に掲載されています。
また、単純集計結果は、こちらからご覧いただけます。

調査あれこれ 2017年07月14日 (金)

#87 将棋の藤井四段の大活躍から考えるメディアの今

世論調査部(視聴者調査) 北村紀一郎

公式戦の連勝記録を歴代最多の29に伸ばした将棋の最年少プロ棋士、藤井聡太四段の大活躍が、将棋界だけでなく、日本中を沸かせました。将棋のことはよくわからないけれどファンになったという方も多いのではないでしょうか?藤井四段は、先日、佐々木勇気五段に敗れ、惜しくも連勝記録が止まりましたが、勢いのある新鋭とその前に立ちはだかる先輩棋士との対局には、勝負の妙を感じました。その藤井四段の大活躍を見て私がふと思ったのは、メディアの今でした。といっても、メディアの報道姿勢についての話ではありません。「通信サービスをはじめとする新たなメディアの台頭とそれを迎えるテレビ」という構図に、何だか似ていると感じたのです。

私たち文研は、去年(2016年)11月から12月にかけて、全国16歳以上の男女を対象に、「メディア利用動向調査」を行いました。4K・8Kや放送のインターネット同時配信をはじめ、動画配信やSNSなどメディアの最新動向に対する人々の意識や利用実態をつかむためです。今回は、世論調査部とメディア研究部が共同で調査を行いました。世論調査を専門とする世論調査部とメディア動向に詳しいメディア研究部がタッグを組むことで、それぞれの問題意識に基づく新たな視点や気づきがあり、有意義な調査になったのではないかと思います。

87-0714-1.png

ところで、これは何のイラストだと思いますか?
答えは、調査で浮かび上がってきた、放送のインターネット同時配信を利用したい人の1つのイメージです。インターネットをよく利用する人が同時配信の利用意向が高いのはわかりますが、ふだんテレビを30分というわずかな時間だけ見る人が同時配信の利用意向が高いというのは、私たち担当者にとって少し意外でした。
また、個人的には、去年の夏にアナウンスの現場から文研に異動して初めて担当した世論調査でした。しかも、いまだにガラケー(携帯電話)を使っているアナログ派の私にとっては、何もかもが新しいことばかりで、大変刺激を受けました。
調査を通して感じたのは、テレビと新しいメディアとの関係についてです。期待を込めていうと、両者が単に対立するだけでなく、いい意味で競争し合うことで、メディア全体が活性化する可能性があるのではないか。そんなことを現在の将棋界になぞらえて、考えてみました。

今回の調査の詳しい報告は、「放送研究と調査」7月号に掲載されています。ぜひ、ご一読ください!
mr1707cover.gif

調査あれこれ 2017年06月30日 (金)

#85 東京圏と大阪圏をくらべてみました

世論調査部(視聴者調査) 林田将来

言葉、食べ物、文化、さまざまな点で違いがみられる東京と大阪。
ためしにネットで「東京 大阪 違い」と検索してみました。
非常に膨大な数の検索結果が出てきます。

今回「放送研究と調査」6月号では、東京圏と大阪圏の”生活時間“にフォーカスをして分析を試みました。そもそもこの2つの大都市圏の生活時間に違いはあるのでしょうか?2015年に実施したNHK国民生活時間調査の結果から、日本を代表する大都市圏をくらべてみました。


◆それほど大きな違いは無い!?
少し専門的な言葉になりますが、生活行動を大きく、睡眠や食事などの「必需行動」、仕事や学業、家事などの「拘束行動」、レジャー活動やマスメディア接触などの「自由行動」に分けて分析すると、実は、大まかな生活時間の配分(平日)は東京圏、大阪圏、それ以外の地域もほぼ同じなのです。それでは、どのような点に違いがあるのでしょうか?


◆東京圏の有職者のほうが朝型!?
2つのグラフをご覧ください。これは、仕事を持っている人(有職者)の睡眠の15分ごとの行為者率(睡眠をしている人の率)のグラフです。睡眠の行為者率が50%を切ると、半数の人が起きていることを意味します。

85-0630-111.png

平日朝をみると、半数が起床するのは東京圏が6時、大阪圏が6時15分となっています。東京圏の有職者の方が朝型と言えます。「放送研究と調査」6月号では、2000年調査と比較分析も試みており、両都市圏の朝の生活時間の変化の様相がわかります。


◆深夜までテレビを見るのは大阪圏!?
つづいてテレビ視聴についてくらべてみます。下のグラフは、平日30分ごとのテレビを見ている人の割合(平均行為者率)です。

85-0630-22.png

朝6時台と8時台は東京圏が高め、深夜0時台~1時台前半と2時台は大阪圏が高めということがわかります。では、リアルタイムでテレビを見る以外のメディア利用はどうでしょうか。HDDやインターネット(趣味・娯楽・教養目的)といったメディア利用に、果たして東京圏と大阪圏で違いがあるのでしょうか・・・?つづきは「放送研究と調査」6月号で。

調査あれこれ 2017年06月09日 (金)

#82 小学校の教室でよく見られている番組は?

メディア研究部(番組研究) 宇治橋祐之

子どものころ、小学校の教室でNHKの教育テレビの番組を見たことがありますか? 店長を目指すチョーさんが町探検をしてその結果を「たんけん地図」にまとめる社会科番組『たんけんぼくのまち』や、テーマソングが印象的な『みんななかよし』『さわやか3組』を覚えている人も多いのではないでしょうか。『ざわざわ森のがんこちゃん』『えいごリアン』など、今も見ることができる番組を思い出す人もいるかもしれませんね。

こうした学校の授業で教師と子どもが一緒に見ることを考え、年間のカリキュラムに沿って制作されている番組を「学校放送番組」といいます。NHKでは1935(昭和10)年から80年以上、ラジオやテレビで放送を続けてきました。最近ではNHK for Schoolというウェブサイトで、番組や関連する動画が見られます。

放送文化研究所では、学校放送番組をはじめとするさまざまなメディアがどのように授業で利用されているのかを継続して調査しています。昨年10月から12月にかけては、「NHK小学校教師のメディア利用と意識に関する調査」を実施し、全国の小学校から6割を超える先生方にご回答いただきました。本当にありがとうございます。

学校のテレビはビデオリサーチの世帯視聴率調査や放送文化研究所の個人視聴率調査の対象外なので、教室で子どもたちがどんなテレビ番組を見ているかが具体的にわかるのもこの調査の大きな特徴です。
今回の調査でもっともよく見られていたNHKの学校放送番組は、小学6年生対象の社会科番組『歴史にドキリ』でした。2012年から放送の番組です。小学校の先生全体でも利用がいちばん多い番組でしたが、全国の小学校6年生担任の先生の61%が、調査期間の2016年度に番組かウェブサイトのいずれかを授業で利用していました。

82-0609-1.jpeg


番組では歌舞伎役者の中村獅童さんが、卑弥呼や織田信長など、小学校で学ぶ52人の人物に変身します。各時代の学習ポイントをまとめた映像とあわせて、歴史上の人物に扮して歌い踊る「ドキリ★ソング」で楽しく歴史を学べます。例えば「卑弥呼」の回では、「むらからくにへ by卑弥呼」というタイトルで公開されています。
歌や踊りを交えながら、子どもたちが歴史に興味をもって学べるので、多くの先生に利用されているようです。
82-0609-2.jpeg


小学校の教室で今、どんな映像が見られているか。どんなメディアが利用されているか、そして最近急速に広がっているタブレット端末の利用の様子など調査の報告は、「放送研究と調査」6月号に『進む教師のメディア利用と1人1台端末時代の方向性~2016年度「NHK小学校教師のメディア利用と意識に関する調査」から~』として掲載されています。
(ウェブ上では、7月に文研ホームページで全文を公開します。)

調査あれこれ 2017年04月14日 (金)

#74 高齢者の生活はどう変わる? ~2015年NHK国民生活時間調査より~

世論調査部(視聴者調査) 吉藤昌代

先日、実家の父が70歳の誕生日を迎え、長年勤めた会社を退職しました。
父の会社は60歳が定年で、それ以降、父は契約社員として10年を過ごしてきました。
現役時代よりは働く時間を減らし夕方6時30分には帰宅していたようですが、それでも平日は仕事中心の生活を送っていたそうです。

平成28年度版 高齢社会白書(内閣府)によれば、就労を希望する60歳以上の割合は71.9%。理由はさまざまでしょうが、全体としては公的年金の支給開始年齢が引き上げられていることが大きな要因となり、実際に60歳を超えても働き続ける人は増加傾向にあります。
『60歳で定年退職したら、そのあとは悠々自適な毎日を送る』……
これまで当然のように思われていた日本の“老後の生活”は、変化の時を迎えているのです。

文研が5年ごとに実施している国民生活時間調査の結果からも、その変化を読み解くことができます。
下の表は、男性60代について、2010年と2015年の調査結果を比較し、差があった主な行動をまとめたものです。
(全員平均時間とは、その行動を行っていない人も含めた時間量の平均です。)

<男60代 2010年と2015年で変化のあった主な行動の時間量(平日)>
74-0414-11.png

男性60代では、前述の通り、定年後も仕事をする人が増えていることを背景に、5年前より仕事の時間が増えました。
このほかビデオ・HDD・DVDやインターネットの時間も増えています。
一方で、テレビと新聞にあてられていた時間がそれぞれ減少しています。
メディア環境の変化は今や60代にまで及んでいるのが分かります。

さて、冒頭の70歳の父ですが、退職後の毎日をどう過ごしているのか母に尋ねたところ、「とりあえずテレビの番人をしているわよ」との答えが返ってきました。

<50代以上のマスメディア接触、レジャー活動の時間量(平日)>
74-0414-2.png

生活時間調査の結果をみると、仕事などから離れ自由な時間が増える60代を境に、テレビなどのマスメディア接触の時間量は、男女とも70代後半まで年齢を重ねるごとに増加していきます。
父の生活の変化は70代男性の典型的な変化と言えますが、同調査では、スポーツや行楽・散策といったレジャー活動の時間量も、テレビには及ばないまでも年齢を重ねるごとに増え、70代前半がそのピークであることが分かっています。
健康で活動的な高齢者になってもらうべく、父にはテレビはほどほどに、まずは軽いウオーキングを始めるよう勧めたいと思います。

『放送研究と調査4月号』では、超高齢社会における高齢者の姿と生活の変化を、国民生活時間調査の結果をもとにさらに詳しく読み解いています。是非、ご覧ください。

調査あれこれ 2017年03月31日 (金)

#72 世界の"いま"を読み解く国際比較調査ISSP

世論調査部(社会調査) 村田ひろ子

71-0331-1.png

家庭生活に満足している日本人女性は33%、つまり3人に1人。これを多いととらえるか、少ないととらえるか。参考になるのが世界との比較です。
NHKが参加している国際比較調査グループISSP(International Social Survey Programme)は、世界約50の国・地域の調査機関が、毎年テーマを設定して共通の質問で世論調査を行っています。これまで「社会的不平等」「環境」「職業意識」など多岐にわたるテーマで調査を実施してきました。冒頭のデータは、2012年に実施した「家庭と男女の役割」調査の結果です。家庭生活に満足している日本人女性の割合は、調査を行った31の国・地域の中で、2番目に低い結果でした(詳しくは、「放送研究と調査2015年12月号」をご覧ください)。

ISSPが発足したのは1984年、NHKが参加するようになったのは1993年からです。以降、毎年国内で調査を行い、その結果は各国のデータを集約するドイツの研究機関を通じて、世界の政策担当者や研究者に活用されています。
調査テーマや質問項目は、毎年1回開催される総会で話し合われています。6~7か国から成るドラフティング(調査票設計)グループが練り上げた英語の調査票案について、通訳なしで活発な議論が交わされます。総会で確定した調査票は、それぞれの国の言語に翻訳したうえで調査を行います。

71-0331-2.png
2016年にリトアニア・カウナスで行われた総会の様子
(手前右から2人目が筆者)

総会で質問文や回答の選択肢を検討する際、イギリスの担当者に言い回しを確認する場面がたびたびあります。これは、ISSPのおおもとの調査票がイギリス英語で作られているためです。ところで同じ英語でも、イギリス英語とアメリカ英語とでは表現が異なることがあるのは広く知られています。ISSPでも、オリジナル版の調査票で“private creche”(民間の保育所)という選択肢は、アメリカの調査票では”private day care center”となっている例があります。“creche”は、アメリカ英語だと「キリスト生誕の光景」という別の意味にとられてしまう可能性があるからです。
2つ以上の言葉が使われている国では、複数の言語に翻訳して調査を行います。例えば南アフリカは6つの言語、フィリピンでは7つの言語、インドに至っては10もの言語に翻訳されています。調査票には、翻訳上の諸注意が記され、できるだけ原文の意図が伝わるような工夫がなされています。
71-0331-3333.png

「放送研究と調査3月号」では、2013年に実施した「国への帰属意識」調査の結果をもとに、国への愛着と外国人に対する意識の関係について考察しています。日本では各国と比べて、国への愛着が強い人が多いのか。2016年にEUからの離脱を選択したイギリス国民は、3年前の時点で、移民に対してどのような感情を抱いていたのか。排外主義が吹き荒れる2017年の「いま」を占うヒントが結果から読み取れます。ぜひご一読ください。

調査あれこれ 2017年03月24日 (金)

#71 最近の朝ドラはなぜ高視聴率を維持し続けているのか?

メディア研究部(番組研究) 二瓶 亙

<朝ドラを習慣的に見続ける人が増えてきている>

文研の調査で、朝ドラを比較的よく見ている視聴者の中では、作品を問わず朝ドラを習慣的に見続ける人が最近増えてきていることがわかりました。
お気づきになっている人も多いと思いますが、ここ数年の朝ドラは20%を超える高い視聴率1)を獲得する作品が多くなっています。『あさが来た』(2015年度下半期放送)は、21世紀に放送された朝ドラ32作品中の最高視聴率(23.5%)を獲得しましたし、それに続いて放送した『とと姉ちゃん』(2016年度上半期放送 22.8%)は第3位、現在放送中の『べっぴんさん』も先週末(3月18日)までの平均で20.4%と20%を超えています。
<注>1)ここで言う“朝ドラの視聴率”は、すべてビデオリサーチ社の関東地区の世帯視聴率(各作品の全回平均)です。

ビデオリサーチ社の視聴率は、番組が放送される時間帯に、その番組が放送されるチャンネルをつけていたかどうかを機械で測定したテレビ受像の“実態”です。したがって、“テレビでその番組は流れていたが見ていなかった”ということも起こりえます。つまり、視聴率では、その人がその番組を「見た」と意識していたかどうかはわかりません。そこで、文研朝ドラ研究プロジェクトでは、2015年上半期放送の『まれ』から、朝ドラ視聴者がどのように各作品を見て、どう受け止めたのか、朝ドラに対する“意識”を探る視聴者調査を始めました。その調査によれば、図1のように、作品を追うごとに「朝ドラを見ることが習慣になっている」と“意識する”人が増え、『とと姉ちゃん』では8割を超えていました!最近の朝ドラは視聴率だけでなく、視聴者の意識の上でも視聴が増えていることが明らかになったわけです。

71-0324-1.png


<朝ドラが高視聴率を維持し続ける要因は何か>

では、人びとのテレビ離れが進んでいると言われる中で、このように朝ドラが高視聴率を維持し続けている要因は何なのでしょうか?朝ドラ研究プロジェクトは、その要因を解明することを通して、テレビがより魅力的なものになり今後も多くの人びとに見続けてもらえるようになる一助になることを目指しています。今回、3作品を調査したことで朝ドラ高視聴率維持の要因がいくつか見えてきましたので、文研の月刊誌『放送研究と調査』3月号 「『とと姉ちゃん』と前2作の視聴者調査を通して、朝ドラ高視聴率の要因を探る」にまとめました。例えば、『まれ』『あさが来た』『とと姉ちゃん』の主人公は明るく前向きに突き進む女性ですが、調査では、この“明るく”“前向き”というイメージは視聴者が朝ドラに求めるイメージの上位に位置しているのです。

一方、現在放送中の『べっぴんさん』の主人公は明るく前向きと言うよりは“おっとり”していて前3作の主人公とはかなり性格が異なります。しかし、それでも『べっぴんさん』は視聴率20%以上をキープしています。はたして朝ドラ高視聴率維持の要因は何なのか…『放送研究と調査』3月号の論文をお読みいただいた上で『べっぴんさん』の残り1週間を見ていただくと、皆さんにも新たな発見があるかもしれません! ぜひご一読ください。

調査あれこれ 2016年11月25日 (金)

#55 女性の家事時間 減った?増えた? ~2015年NHK国民生活時間調査より~

世論調査部(視聴者調査) 渡辺洋子

先日、実家に帰ったところ、“床拭きロボット”がせっせと床を磨いていました。
新しもの好きの父が、早速購入していたのです。
私も普通のお掃除ロボットの導入を検討していたのですが、年老いた親に一歩も二歩も、先を越されていました。

昨今、食器洗い機、ロボット掃除機など家事を便利にしてくれる道具が次々と開発され、普及しています。
ネット通販が身近になったり、お惣菜がコンビニでも購入できたりと、
便利なものやサービスが身のまわりにあふれ、その気になれば、家事にかける時間は大幅に減らすことができます。

では、こうした家事にかける時間は、実際には、減少しているのでしょうか。

こちらのグラフは、2015年にNHK放送文化研究所で行った国民生活時間調査の結果から、
家事時間の長い女性の30代と40代について、炊事・掃除・洗濯にかける時間の変化を示したものです。

<女30代、40代の炊事・掃除・洗濯の全員平均時間の変化(平日)>
55-1125-11.png

30代は1995年から2005年にかけて、40代はこの20年で、
それぞれ30分以上も炊事・掃除・洗濯にかける時間が減っていることがわかります。
データからも、家事の短時間化が進んでいることがみえてきます。
未婚の女性や働く女性の増加もこうした現象を後押ししていると言えます。

でも、減った家事がある一方で、増えた家事もあるんです。

<女30代、40代の子どもの世話の全員平均時間の変化(平日)>
55-1125-22.png

こちらのグラフは、同じく女性30代と40代について、子どもの世話にかける時間の変化をみたものです。
女性30代では2000年以降、女性40代では1995年以降、増加傾向にあります。

晩婚化で、40代でも幼い子どもを育てる人が増えたのでしょうか。
もしくは、少子化で、少ない子どもにより手をかけるようなったのでしょうか。

例えば、ベネッセ教育研究所の調査では、少子化により、友だちと遊ぶ機会が減り、
母親と2人で過ごす時間が増えたというデータもあります。(「第5回幼児の生活アンケート」より)
確かに、我が家の娘も一人っ子で、近所に遊び相手がいないので、大半の時間を親と遊んで過ごします。
自身を振り返っても、育児以外の家事をかなり省力化して、子どもに手をかけている実感があります。

このように女性の家事時間は、炊事・掃除・洗濯にかける時間は減っているものの、
子どもの世話にかける時間が増加し、全体としてはなかなか大きくは減っていかない、ということが分かります

女性の家事時間がなぜなかなか減らないのか、そして男性の家事時間がなぜなかなか増えないのか、
間もなく刊行される『放送研究と調査12月号』で、生活時間調査の結果をもとに詳細に分析しています。
よろしければ、是非、ご覧ください。

調査あれこれ 2016年11月04日 (金)

#52 『べっぴんさん』 シリーズ平均視聴率を、最初の1週間データで大胆予測!

メディア研究部(番組研究) 齋藤建作

近年、朝ドラ視聴率は何かと記事になります。
先月からの新番組『べっぴんさん』が始まると
「『べっぴんさん』初回、20%超えスタート」
「『べっぴんさん』第1週平均視聴率は20.0%!大台好スタート」
こんな具合。

その『べっぴんさん』、初回視聴率は21.6%(ビデオリサーチ・関東)。「初回は『あさが来た』よりいい数字」などと報じられました。

毎回朝ドラの新番組が始まると、きまって初回の視聴率がニュースになります。注目されるのはありがたいことですが、最初の回の視聴率がどれほど大事でしょうか。試しに、初回とその後のシリーズ平均視聴率が連動するかどうか、過去38作品の朝ドラについて確かめてみました。前作よりも初回が上がったから平均視聴率も上がるのでは?とか、初回が下がったから平均視聴率も下がるかも、などと予想したとしたら、その予想が当たったのは38回のうちで20回。つまり当たるも八卦(はっけ)、当たらぬも八卦(はっけ)ということ。うーん、これだと初回の結果で一喜一憂するのはちょっと早計。

最初の1回だけで先を占うのはさすがに無理があるとして、せめて最初1週間の平均だったらどうでしょう。初回と週平均とでどちらの方がシリーズ平均視聴率に似通っているのか、相関係数という数字で見てみましょう。相関係数は1に近いほど二つの数字の並びが似通っているというもの。下の表に示したように、初回とシリーズ平均だと0.583週平均とシリーズ平均だと0.642、ということで、やはり週平均の方がまだしも、ということが分かります。ただ、もう少しいい数字はないものか。

と、あれやこれや調べているうちに、いいものを発見しました。同じ最初の1週間分だけを集計した数字ですが、先を占うにはもっとよさそうなデータです。最初の1週間にその朝ドラを1回以上見た視聴世帯の比率、いわゆる「リーチ」です。表にまとめたように、朝ドラは全視聴世帯の概ね30%台の世帯に最初の1週間のうちに見られています。さて、この「第1週リーチ」はその後のシリーズ平均をどの程度占えそうなのでしょう。そこで相関係数を出してみると、0.828になりました。ぐっと改善です。

52-1104-1.png

それではいよいよ大胆予測。「第1週リーチ」から計算した『べっぴんさん』のシリーズ最終平均視聴率は20.2%!

ところで皆さんご存じの通り、初回がまずまずだった『べっぴんさん』ですが、その後は、
「NHK『べっぴんさん』初めて大台を割る18.3%」
「『べっぴんさん』第2週平均視聴率は19.8%…『まれ』以来大台割れ」
こんな記事が続いてはや1か月。10月の平均視聴率は20.1%! がんばれっ! 今後の健闘を祈りましょう!

さて宣伝です、『放送研究と調査』11月号に「【朝ドラ研究】 新番組が始まるとき ~視聴率による視聴行動の分析~」と題した論文を掲載しました。論文ではなにも、視聴率の当てっこをしているわけではありません。新番組が始まったとき視聴者にどのように見られたかがどれほど大事なのか、少々細かく分析してみました。あわせて今世紀最高視聴率を記録した『あさが来た』の視聴率分析も行っています。ぜひお読みください。

調査あれこれ 2016年10月28日 (金)

#50 増えるか、"料理男子"

世論調査部(社会調査) 政木みき

「うちの息子、おままごとで、ご飯を作るパパの役をやっているらしいの」
50-1028-1.png

―子どもの保育園時代、“ママ友”から聞いた話です。そのお宅では、朝食作りはパパの担当だそうで、息子さんもその父親像に影響を受けているんだとか。共働きで子育て中のママにとって、夫との家事分担は、日々の切実な問題です。それだけに、男の子が料理をするという、イマドキのままごとのエピソードは、とても感慨深いものでした。

実際、料理をする男性は増えているのでしょうか。みなさんの周りではいかがでしょう?
今年NHKが全国の16歳以上の人を対象に行った「食生活に関する世論調査」の結果をみると、男性の49%が、ふだん自宅で料理を「まったくしていない」と答えました。最近では、男性タレントが料理の腕を振るう番組が人気を集めたり、“弁当男子”なる言葉もはやったりしていますが、男性の半数が料理をしていない状況、実は10年前から変わっていないんです。


◆共働きでも6割が、食事作りは“妻任せ”
夫婦での食事作りの分担もあまり行われていません。「ふだん自宅で食事を作る」のが「妻だけ」という既婚男性は、片働き世帯で76%、共働き世帯で61%と、共働きでも多数が“妻任せ”です。「妻」と「自分」で分担して作ると答えた既婚男性は、片働き・共働き世帯ともに2割弱にとどまりました。


◆料理する男性は増える?
50-1028-2.png料理における男性の活躍を期待する身としては、やや残念な結果が並びましたが、調査からは、 “料理男子”が増えそうな兆しもみてとれました。
一人暮らしの男性では84%もの人が料理をしていますし、10年前と比べ、中高年男性では料理を「いつもしている」人がじわりと増えています。背景には、結婚していない人や一人暮らしの増加があるようです。今後、単身世帯はさらに増えると予測されていますが、こうした社会の変化によって、料理をする男性はもっと増えるかもしれません。

男性が料理をするかどうかについては、子ども時代に親に料理を教わったかどうか、といった“教育の効果”と関係がありそうなこともわかりました。
そこで期待できるのは、若い男性たちです。1990年代に中学・高校で男女必修となった家庭科で料理を習った世代で、子どものころ親から料理を教わったという人が多くいます。共働き家庭や単身世帯が増えれば、自炊できることが、男女を問わず大切になっていきます。こうした若い男性が、料理をする男性のすそ野を広げるのか、興味深いところです。

冒頭の男の子のお父さんは、平日は仕事で帰宅が遅く、子どもとのコミュニケーションの時間を確保する目的で、朝食作りを始めたそうです。男性がもっと料理ができるようになるためには、深刻な長時間労働を見直すなど、根本的に解決すべき課題もありますが、このお父さんのように、“必要に迫られて”ということではなく、家族を喜ばせたり、楽しく食事をしたいという思いで料理に関わる男性がもっと増えるといいな、と今回の分析を通じて感じました。

「放送研究と調査」10月号と、来週火曜日に刊行する11月号に連載の「食生活に関する世論調査」の報告では、さらに詳しい内容や、一人暮らしのお年寄りで広がる“孤食”の実態など、日本人の食の今を様々に読み解いています。ぜひご覧ください。