メディア研究部(番組研究) 二瓶 亙
<朝ドラを習慣的に見続ける人が増えてきている>
文研の調査で、朝ドラを比較的よく見ている視聴者の中では、作品を問わず朝ドラを習慣的に見続ける人が最近増えてきていることがわかりました。
お気づきになっている人も多いと思いますが、ここ数年の朝ドラは20%を超える高い視聴率1)を獲得する作品が多くなっています。『あさが来た』(2015年度下半期放送)は、21世紀に放送された朝ドラ32作品中の最高視聴率(23.5%)を獲得しましたし、それに続いて放送した『とと姉ちゃん』(2016年度上半期放送 22.8%)は第3位、現在放送中の『べっぴんさん』も先週末(3月18日)までの平均で20.4%と20%を超えています。
<注>1)ここで言う“朝ドラの視聴率”は、すべてビデオリサーチ社の関東地区の世帯視聴率(各作品の全回平均)です。
ビデオリサーチ社の視聴率は、番組が放送される時間帯に、その番組が放送されるチャンネルをつけていたかどうかを機械で測定したテレビ受像の“実態”です。したがって、“テレビでその番組は流れていたが見ていなかった”ということも起こりえます。つまり、視聴率では、その人がその番組を「見た」と意識していたかどうかはわかりません。そこで、文研朝ドラ研究プロジェクトでは、2015年上半期放送の『まれ』から、朝ドラ視聴者がどのように各作品を見て、どう受け止めたのか、朝ドラに対する“意識”を探る視聴者調査を始めました。その調査によれば、図1のように、作品を追うごとに「朝ドラを見ることが習慣になっている」と“意識する”人が増え、『とと姉ちゃん』では8割を超えていました!最近の朝ドラは視聴率だけでなく、視聴者の意識の上でも視聴が増えていることが明らかになったわけです。
<朝ドラが高視聴率を維持し続ける要因は何か>
では、人びとのテレビ離れが進んでいると言われる中で、このように朝ドラが高視聴率を維持し続けている要因は何なのでしょうか?朝ドラ研究プロジェクトは、その要因を解明することを通して、テレビがより魅力的なものになり今後も多くの人びとに見続けてもらえるようになる一助になることを目指しています。今回、3作品を調査したことで朝ドラ高視聴率維持の要因がいくつか見えてきましたので、文研の月刊誌『放送研究と調査』3月号 「『とと姉ちゃん』と前2作の視聴者調査を通して、朝ドラ高視聴率の要因を探る」にまとめました。例えば、『まれ』『あさが来た』『とと姉ちゃん』の主人公は明るく前向きに突き進む女性ですが、調査では、この“明るく”“前向き”というイメージは視聴者が朝ドラに求めるイメージの上位に位置しているのです。
一方、現在放送中の『べっぴんさん』の主人公は明るく前向きと言うよりは“おっとり”していて前3作の主人公とはかなり性格が異なります。しかし、それでも『べっぴんさん』は視聴率20%以上をキープしています。はたして朝ドラ高視聴率維持の要因は何なのか…『放送研究と調査』3月号の論文をお読みいただいた上で『べっぴんさん』の残り1週間を見ていただくと、皆さんにも新たな発見があるかもしれません! ぜひご一読ください。
世論調査部(視聴者調査) 渡辺洋子
先日、実家に帰ったところ、“床拭きロボット”がせっせと床を磨いていました。
新しもの好きの父が、早速購入していたのです。
私も普通のお掃除ロボットの導入を検討していたのですが、年老いた親に一歩も二歩も、先を越されていました。
昨今、食器洗い機、ロボット掃除機など家事を便利にしてくれる道具が次々と開発され、普及しています。
ネット通販が身近になったり、お惣菜がコンビニでも購入できたりと、
便利なものやサービスが身のまわりにあふれ、その気になれば、家事にかける時間は大幅に減らすことができます。
では、こうした家事にかける時間は、実際には、減少しているのでしょうか。
こちらのグラフは、2015年にNHK放送文化研究所で行った国民生活時間調査の結果から、
家事時間の長い女性の30代と40代について、炊事・掃除・洗濯にかける時間の変化を示したものです。
<女30代、40代の炊事・掃除・洗濯の全員平均時間の変化(平日)>
30代は1995年から2005年にかけて、40代はこの20年で、
それぞれ30分以上も炊事・掃除・洗濯にかける時間が減っていることがわかります。
データからも、家事の短時間化が進んでいることがみえてきます。
未婚の女性や働く女性の増加もこうした現象を後押ししていると言えます。
でも、減った家事がある一方で、増えた家事もあるんです。
<女30代、40代の子どもの世話の全員平均時間の変化(平日)>
こちらのグラフは、同じく女性30代と40代について、子どもの世話にかける時間の変化をみたものです。
女性30代では2000年以降、女性40代では1995年以降、増加傾向にあります。
晩婚化で、40代でも幼い子どもを育てる人が増えたのでしょうか。
もしくは、少子化で、少ない子どもにより手をかけるようなったのでしょうか。
例えば、ベネッセ教育研究所の調査では、少子化により、友だちと遊ぶ機会が減り、
母親と2人で過ごす時間が増えたというデータもあります。(「第5回幼児の生活アンケート」より)
確かに、我が家の娘も一人っ子で、近所に遊び相手がいないので、大半の時間を親と遊んで過ごします。
自身を振り返っても、育児以外の家事をかなり省力化して、子どもに手をかけている実感があります。
このように女性の家事時間は、炊事・掃除・洗濯にかける時間は減っているものの、
子どもの世話にかける時間が増加し、全体としてはなかなか大きくは減っていかない、ということが分かります
女性の家事時間がなぜなかなか減らないのか、そして男性の家事時間がなぜなかなか増えないのか、
間もなく刊行される『放送研究と調査12月号』で、生活時間調査の結果をもとに詳細に分析しています。
よろしければ、是非、ご覧ください。
メディア研究部(番組研究) 齋藤建作
近年、朝ドラ視聴率は何かと記事になります。
先月からの新番組『べっぴんさん』が始まると
「『べっぴんさん』初回、20%超えスタート」
「『べっぴんさん』第1週平均視聴率は20.0%!大台好スタート」
こんな具合。
その『べっぴんさん』、初回視聴率は21.6%(ビデオリサーチ・関東)。「初回は『あさが来た』よりいい数字」などと報じられました。
毎回朝ドラの新番組が始まると、きまって初回の視聴率がニュースになります。注目されるのはありがたいことですが、最初の回の視聴率がどれほど大事でしょうか。試しに、初回とその後のシリーズ平均視聴率が連動するかどうか、過去38作品の朝ドラについて確かめてみました。前作よりも初回が上がったから平均視聴率も上がるのでは?とか、初回が下がったから平均視聴率も下がるかも、などと予想したとしたら、その予想が当たったのは38回のうちで20回。つまり当たるも八卦(はっけ)、当たらぬも八卦(はっけ)ということ。うーん、これだと初回の結果で一喜一憂するのはちょっと早計。
最初の1回だけで先を占うのはさすがに無理があるとして、せめて最初1週間の平均だったらどうでしょう。初回と週平均とでどちらの方がシリーズ平均視聴率に似通っているのか、相関係数という数字で見てみましょう。相関係数は1に近いほど二つの数字の並びが似通っているというもの。下の表に示したように、初回とシリーズ平均だと0.583、週平均とシリーズ平均だと0.642、ということで、やはり週平均の方がまだしも、ということが分かります。ただ、もう少しいい数字はないものか。
と、あれやこれや調べているうちに、いいものを発見しました。同じ最初の1週間分だけを集計した数字ですが、先を占うにはもっとよさそうなデータです。最初の1週間にその朝ドラを1回以上見た視聴世帯の比率、いわゆる「リーチ」です。表にまとめたように、朝ドラは全視聴世帯の概ね30%台の世帯に最初の1週間のうちに見られています。さて、この「第1週リーチ」はその後のシリーズ平均をどの程度占えそうなのでしょう。そこで相関係数を出してみると、0.828になりました。ぐっと改善です。
それではいよいよ大胆予測。「第1週リーチ」から計算した『べっぴんさん』のシリーズ最終平均視聴率は20.2%!
ところで皆さんご存じの通り、初回がまずまずだった『べっぴんさん』ですが、その後は、
「NHK『べっぴんさん』初めて大台を割る18.3%」
「『べっぴんさん』第2週平均視聴率は19.8%…『まれ』以来大台割れ」
こんな記事が続いてはや1か月。10月の平均視聴率は20.1%! がんばれっ! 今後の健闘を祈りましょう!
さて宣伝です、『放送研究と調査』11月号に「【朝ドラ研究】 新番組が始まるとき ~視聴率による視聴行動の分析~」と題した論文を掲載しました。論文ではなにも、視聴率の当てっこをしているわけではありません。新番組が始まったとき視聴者にどのように見られたかがどれほど大事なのか、少々細かく分析してみました。あわせて今世紀最高視聴率を記録した『あさが来た』の視聴率分析も行っています。ぜひお読みください。
世論調査部(社会調査) 政木みき
「うちの息子、おままごとで、ご飯を作るパパの役をやっているらしいの」
―子どもの保育園時代、“ママ友”から聞いた話です。そのお宅では、朝食作りはパパの担当だそうで、息子さんもその父親像に影響を受けているんだとか。共働きで子育て中のママにとって、夫との家事分担は、日々の切実な問題です。それだけに、男の子が料理をするという、イマドキのままごとのエピソードは、とても感慨深いものでした。
実際、料理をする男性は増えているのでしょうか。みなさんの周りではいかがでしょう?
今年NHKが全国の16歳以上の人を対象に行った「食生活に関する世論調査」の結果をみると、男性の49%が、ふだん自宅で料理を「まったくしていない」と答えました。最近では、男性タレントが料理の腕を振るう番組が人気を集めたり、“弁当男子”なる言葉もはやったりしていますが、男性の半数が料理をしていない状況、実は10年前から変わっていないんです。
◆共働きでも6割が、食事作りは“妻任せ”
夫婦での食事作りの分担もあまり行われていません。「ふだん自宅で食事を作る」のが「妻だけ」という既婚男性は、片働き世帯で76%、共働き世帯で61%と、共働きでも多数が“妻任せ”です。「妻」と「自分」で分担して作ると答えた既婚男性は、片働き・共働き世帯ともに2割弱にとどまりました。
◆料理する男性は増える?
料理における男性の活躍を期待する身としては、やや残念な結果が並びましたが、調査からは、 “料理男子”が増えそうな兆しもみてとれました。
一人暮らしの男性では84%もの人が料理をしていますし、10年前と比べ、中高年男性では料理を「いつもしている」人がじわりと増えています。背景には、結婚していない人や一人暮らしの増加があるようです。今後、単身世帯はさらに増えると予測されていますが、こうした社会の変化によって、料理をする男性はもっと増えるかもしれません。
男性が料理をするかどうかについては、子ども時代に親に料理を教わったかどうか、といった“教育の効果”と関係がありそうなこともわかりました。
そこで期待できるのは、若い男性たちです。1990年代に中学・高校で男女必修となった家庭科で料理を習った世代で、子どものころ親から料理を教わったという人が多くいます。共働き家庭や単身世帯が増えれば、自炊できることが、男女を問わず大切になっていきます。こうした若い男性が、料理をする男性のすそ野を広げるのか、興味深いところです。
冒頭の男の子のお父さんは、平日は仕事で帰宅が遅く、子どもとのコミュニケーションの時間を確保する目的で、朝食作りを始めたそうです。男性がもっと料理ができるようになるためには、深刻な長時間労働を見直すなど、根本的に解決すべき課題もありますが、このお父さんのように、“必要に迫られて”ということではなく、家族を喜ばせたり、楽しく食事をしたいという思いで料理に関わる男性がもっと増えるといいな、と今回の分析を通じて感じました。
「放送研究と調査」10月号と、来週火曜日に刊行する11月号に連載の「食生活に関する世論調査」の報告では、さらに詳しい内容や、一人暮らしのお年寄りで広がる“孤食”の実態など、日本人の食の今を様々に読み解いています。ぜひご覧ください。
世論調査部(視聴者調査) 星 暁子
小さいころ、教育テレビ(2011年からEテレと呼ぶようになりました)をご覧になっていましたか? お気に入りの番組はありましたか?
文研では、毎年6月に、2~6歳の幼児を対象に「幼児視聴率調査」を実施しています。今年の結果では、1週間に15分以上Eテレを見た人(週間接触者率)は72.8%でした。昨今、「テレビ離れ」「NHK離れ」などと話題になることがありますが、小さい子はEテレを見てくれているんだと、NHKに勤める身としてはちょっとだけホッとする数字です。
この調査では、 テレビ視聴と録画番組・DVDの利用状況のほかに、自由記述のかたちで、“お子様がお気に入りの「録画番組」、「DVD」、「インターネット動画」”をそれぞれ書いてもらいましたので、きょうはその一部をご紹介したいと思います。
お気に入りの「録画番組」「DVD」には、Eテレの番組をはじめ、民放の人気アニメ番組や、ディズニーやジブリの映画など、大人でもよく知っている映像の名前がたくさん挙がっていました。
一方で、お気に入りの「インターネット動画」では、「アニメ」や「乗り物の動画」、「おもちゃを紹介する動画」のほか、タレントなどではない一般のお子さんの日常生活や、おもちゃで遊んでいる様子を撮った動画(「○○チャンネル」などとそのお子さんの名前が冠されているような動画)がいくつも挙がりました。
この「○○チャンネル」などの動画をいくつか見てみたのですが、私には正直のところ面白さがよくわかりませんでした…。ですが、周囲の小さい子がいるお母さん数人に聞いてみると、子どもはこういう動画が好きで、見始めるとじーっと見ているんだそうです。子どもは、年が近いと親近感を覚えるのかもしれません。
同じく自由に記述してもらった「4月以降のNHK幼児番組についての意見・要望」からは、親は家事をしながら、幼稚園・保育園に出かける身支度をさせながら、という状況でテレビを見せている様子がうかがえました。毎日の生活に組み込まれているので、とても親しみを持っているけれど、子どもが熱中しすぎたり、家庭の生活時間と合わなかったりすると困るようです。
「英語番組を増やしてほしい」、「教養が身に付く番組をこれからも続けて」とか、「片付けができなかったり騒がしかったりするキャラクターが出る番組は、まねをされると困るので見せない」などのほか、「最近タブレットでYouTube動画をひたすら見ています。子どもをタブレットから離れさせるくらいの魅力的な番組をぜひお願いします」といった回答があり、子どもはインターネット動画も楽しんで見るけれど、親としては、「ためになる」「見せたくなる」「安心して見せられる」番組をEテレに放送してほしいと期待してくれているのかな、と思いました。
幼児にテレビはどのくらいの時間見られているのか、最も見られている番組は何か、録画番組やDVD利用の状況…などの詳細な結果は、「放送研究と調査」11月号(11/1刊行予定)でお読みいただければ幸いです。
あなたが小さいころお気に入りだった番組が、今も小さい子たちに親しまれているかもしれません。
メディア研究部(番組研究) 菅中雄一郎
NHK放送文化研究所では、2006年から地域放送局が制作しているさまざまな番組について視聴者意向調査を行い、結果を地域放送向上のために活用しています。このうち昨年度実施した四国地方の調査で、ニュースキャスターに関する興味深いデータが得られたので、ご紹介します。
調査は、四国の愛媛・高知の2県で夕方に放送されているローカルニュース番組への視聴者の番組印象や評価をウエブ・アンケート調査で探りました。番組キャスターへの評価を尋ねる質問の中で、「全国放送ニュースキャスターの魅力と、地域放送ニュースキャスターの魅力」について聞きました。その結果が下のグラフです。
■全国放送/地域放送ニュースキャスターの魅力
(愛媛県・高知県の調査回答者/複数回答)
※NHKを含む全放送局のキャスター対象:番組は特定せず
(クリックすると大きなサイズで表示されます)
全国放送のニュースキャスターでは、「アナウンスの正確さ」「コメントの上手さ」「安心感」「はっきりものをいう」「番組進行の上手さ」などが30%を超えており、視聴者がキャスターの“技術的な要素”を魅力と感じている傾向がうかがえます。一方、地域放送のニュースキャスターでは、「慣れ親しんだ感」「気さくさ」「親近感」「庶民的なところ」「一生懸命さ」などが25%を超えており、総じてキャスターの“情緒的な要素”を魅力と感じている傾向がうかがえます。
この違いは、どのような要因から生じるものなのでしょうか。「好きな地域放送キャスターの理由」を聞いた自由回答からヒントを探ってみましょう。
「新人の頃から毎日見聞きして、ほとんど親のような気持ち」(男性60代)
「実際に近所でお会いして、庶民的な対応と人柄に触れて好きになった」(女性30代)
「かわいいけどはっきりものを言うところが同郷人らしく好感をもてる」(男性50代)
「時々、方言でしゃべってくれるので、見ていて親しみやすいイメージ」(女性40代)
テレビで眺めているだけの全国ニュースキャスターと比べて、「街を歩いていたら会ってしまうかもしれない物理的な距離の近さ」や、「長年慣れ親しんできた心理的な距離の近さ」が、“地域ニュースキャスターならではの魅力”を醸成していることがうかがえます。
では地域ニュースキャスターには情緒的な面だけで、技術的な面は期待されていないのでしょうか。実はそうではありません。地域放送キャスターに対する自由回答の中で最も多いのが、「発声、原稿読みの正確さ、コメント」などに対する厳しい意見なのです。キャスターとしてのしっかりした技術のベースがあった上での「親しみやすさ」が求められていることが分かります。さらに地域ニュースキャスターに求められるのが「伝える工夫」です。地域では毎日大きな話題がある訳ではありません。地味だけど大切なニュースを、いかに分かりやすくかみ砕いて、視聴者に関心を持って見てもらえるかが、地域放送ニュースキャスターの腕の見せどころでもあります。同じニュースでも、「○○キャスターが伝えるから」という理由で特定の番組を見ている視聴者が多いことも調査結果から見えてきました。
ふだん、何の気なしに見ているニュース番組。時間があるときにでも、是非、全国放送のキャスターと、地域放送のキャスターを見比べてみてはいかがでしょうか。きっと、ここでご紹介したこと以外にもいろいろなことが見えてくるはずです。
メディア研究部(番組研究) 二瓶 亙
近年、テレビドラマの視聴率が振るわないと言われる中で、NHKの連続テレビ小説(通称・朝ドラ)は視聴率好調です。朝ドラは、2010年上半期放送の『ゲゲゲの女房』(番組全回平均視聴率18.6% *1))以降視聴率が上昇傾向にあり、2015年度下半期に放送した『あさが来た』(2015年9月28日(月)~2016年4月2日(土)放送)では番組全回平均視聴率が23.5%に達し、朝ドラとしては今世紀になって最高の視聴率を獲得しました *2)。
視聴者は『あさが来た』を見てどのように感じていたのでしょうか。
文研では、朝ドラ研究プロジェクトを立ち上げ、実際にその作品を見ている視聴者の番組印象や評価を、量的調査(WEB調査)と質的調査(グループインタビュー)を通して探る定期的調査を、2015年度上半期放送の『まれ』から開始しています。朝ドラの好調要因を明らかにすることを通して、高度情報化社会が進展する中でも多くの人に見てもらえるテレビ番組のヒントを得ることを目指しています。
この定期的調査の2作品目に当たる『あさが来た』の調査結果がまとまりましたので、『放送研究と調査』9月号に【「朝ドラ研究」連続テレビ小説『あさが来た』はどのように見られたか~視聴者調査から見た特徴と成功の要因】として掲載しました。
突然ですが、ここでクイズです。
朝ドラ研究プロジェクトでは、『まれ』『あさが来た』『とと姉ちゃん』について、各作品を比較的良く見ている人に100点満点で点数をつけてもらっています。次の点数はそれぞれどの作品の点数でしょうか。
① 86点 ② 81点 ③ 69点
答えは…
① 86点=『あさが来た』
② 81点=『とと姉ちゃん』…放送期間の中盤である7月下旬時点での調査の結果
③ 69点=『まれ』 *3)
です。みなさんの評価と一致していたでしょうか。
『あさが来た』は、90点以上をつけた人が回答者の過半数を占め、大変高い評価をする人が多い作品でした。調査では、評価の理由や良かった点・良くなかった点、番組のイメージ、印象に残った登場人物などについても聞いています。その中には意外な指摘も…。詳しくは本文にて。
現在放送中の『とと姉ちゃん』も『あさが来た』と同様に、実在の人物をモデルにしたドラマです。はたして、最終的に『あさが来た』と同じように高い評価を得ることができるでしょうか。『あさが来た』の調査結果を読んでいただくと、似ているようで大きく違う『とと姉ちゃん』の特徴もよりはっきりと感じていただけるのではないかと思います。『放送研究と調査』9月号【「朝ドラ研究」連続テレビ小説『あさが来た』はどのように見られたか~視聴者調査から見た特徴と成功の要因】をぜひご一読ください。
(注)
*1) 視聴率データは、以降すべてビデオリサーチ社関東地区の世帯視聴率です。
*2) それまでの今世紀最高視聴率は2002年度上半期放送の『さくら』23.3%でした。
*3) 『まれ』の調査結果については、『放送研究と調査』2016年3月号・4月号【「朝ドラ研究」最近好調な「朝ドラ」を、視聴者はどのように見ているか】をご覧ください。
世論調査部(視聴者調査) 保髙隆之
いきなり私事で恐縮ですが、いま話題の映画「シン・ゴジラ」を仕事帰りに見ました。
公開初日でしたが、客の入りは半分ほど。ただ、上映終了後に出口へ向かう観客たちが熱く感想を語り合っていて、他の映画とは何かが違うぞ、と感じました。その後、週末の観客動員が公開後2週連続でトップ、累計興行収入が45億円を超える大ヒットとなっています(8月21日現在)。客層も私のようにゴジラ映画に親しんでいた中年男性だけではなく、子どもの頃に見た記憶はあっても離れてしまった若年層や女性にも広がりを見せているそうです。公開前には「ゴジラは若い観客にとって既に過去のものでは」という冷めた声もあったようですが、それを覆したのが、封切直後にSNSで爆発的に拡散した観客の評価だったとネットニュース上で話題になっています(もちろん、作品の力があればこそですが)。
知名度抜群の「怪物」ゴジラでさえ、SNSという現代の口コミネットワークなしでは、映画を見るという行動の導火線に簡単に火をつけられない。しかし、いったん点火すれば、関係者の予想を超えるような勢いで爆発の連鎖が起こる。そんな往年の大怪獣が新しい形で暴れまわる姿に私が重ね合わせたのは現在の「テレビ」でした。
文研では今年、20代を対象にグループインタビューを行いました。目的は、若年層のテレビの「リアルタイム視聴」と「録画再生」、「(ネット)動画利用」の使い分けの実態を知り、巷で言われている「テレビ離れ」の背景に迫ることでした。調査を通じて強く私の印象に残ったのはテレビとの接点の変化です。調査に協力して下さった20代の皆さんにとって、テレビを見るきっかけは、コンテンツとしての魅力よりも、それが世間でどう受け止められたか、というツイッターやYahoo! ニュースなどでの反響でした。そのため、話題になった番組のポイントだけを後から確認できれば十分で、YouTubeなどで番組の一部が切り出された動画を「つまみぐい」している様子が浮かび上がりました。また、一人暮らしをするタイミングでテレビを買わなかった、という人も少なくありません。若年層で想像以上にテレビとの接点がなくなっている現状は、「テレビっ子」だった40代の私にとって衝撃でした。
テレビの代わりにタブレットで動画を見る若者
一方で、話を掘り下げていくと、彼(彼女)らはテレビ番組を潜在的に好きなことも伝わってきました。送り手であるテレビ局と、受け手である若い視聴者の求めるものが今はズレていても、「シン・ゴジラ」のように新たな経路を通じて合致させることができれば、再び爆発的な広がりを実現できるかも知れない。そんな希望も(放送に携わる者として)感じました。今回のグループインタビューの詳しい報告は、「放送研究と調査」8月号に掲載されています。是非、ご一読ください!
メディア研究部 (番組研究)小平さち子
1959年放送開始の『おかあさんといっしょ』は、3世代に親しまれてきた幼児向け番組ですが、それより前に、幼児向けテレビ番組の定時放送が始まっていたことをご存じでしょうか。1956年に、幼稚園・保育所向けの番組として、『人形劇』と『みんないっしょに』の2番組が登場していました。
1953年のテレビ放送開始から間もない時点から、家庭での視聴だけでなく、幼稚園や保育所という保育の場で、保育者の指導の下に、幼児たちが集団で視聴することを想定して、放送が行われてきたことは、世界的にも珍しいといえます。
このような背景もあって、文研では、テレビやパソコンなどの機器の普及や、NHKのテレビ・ラジオ教育番組をはじめとするさまざまなメディアの利用の様子を調べる全国調査を、1950年代から行ってきました。
最近では、2015年10月から12月にかけて「幼稚園におけるメディア利用と意識に関する調査」を実施しました。
早い段階で普及していたテレビや録画機器に加えて、パソコンやインターネット接続環境も一定程度整ってきたことや、デジタルカメラ・デジタルビデオカメラも9割を超える幼稚園が保有していることが、明らかになりました。
実際に保育の場で使われているメディアとしては、「絵本・物語本」「紙芝居」「図鑑」などの印刷メディアと、「CD教材」といった音声メディアの占める位置づけが大きいのが特徴です。特に「絵本・物語本」は、全国の幼稚園の9割が、毎日利用していることが、調査の結果に表れています。
NHKの幼児向け番組は、放送番組としての利用だけでなく、ビデオ・DVD教材やCD教材といった形でも利用されています。さらに、番組に関連した楽譜や絵本、テキスト等の印刷物を利用している幼稚園もあります。全国の幼稚園の3分の2が、何らかの形でNHKの教育サービスを利用しています。
現在、小学校以上の教育では、ICTの積極的な活用が国の施策として推進されていますが、その枠組みに含まれていない幼稚園では、パソコンやタブレット端末を保育の場に取り入れ、幼児に触れさせることについては、全般に慎重な傾向がみられます。しかしながら、タブレット端末等の新しいメディアを活用した成果を発表する幼稚園も登場し始めていますし、20代・30代の若い保育者たちの間では、パソコンやタブレット端末を、今後利用してみたいという関心もみられます。
今回の調査では、全国の幼稚園の各種メディア利用実態のほか、幼稚園のメディア利用観や、若手保育者のメディア利用経験と利用関心についても、細かく調べています。調査の結果は、NHK幼児向けテレビ番組の年表とともに、『放送研究と調査』7月号に掲載されています。
(ウェブ上では、8月に文研ホームページで全文を公開します。)
※また、幼稚園・保育所から高等学校までを対象に、1950年から60年余、定期的に文研が実施してきた「NHK全国学校放送利用状況調査」の結果を総合的に分析した論文も、『NHK放送文化研究所年報2014』に発表しており、ホームページで全文公開されています。ご関心がおありでしたら、併せてお目通しください。
上記の論文はこちらから。