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調査あれこれ 2019年03月22日 (金)

#176 北海道ブラックアウト どのメディアが機能したのか ~「北海道胆振東部地震」メディア利用動向インターネット調査から~

メディア研究部(メディア動向) 入江さやか
編成局 編成センター 西 久美子

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■  北海道で震度7 北海道がほぼ全域で停電

2018年9月6日午前3時すぎ、未明の北海道を震度7の激しい揺れが襲いました。地震の規模はマグニチュード6.7、北海道厚真町で震度7、安平町・むかわ町で震度6強を観測。厚真町で発生した大規模な土砂崩れなどで41人が亡くなりました。私(入江)は、東京にいましたが、地震発生を知らせるメールで目を覚ましました。テレビで緊急ニュースを見ていたところ、函館市の函館山に設置されたNHKのロボットカメラに映っていた夜景が一瞬で闇に沈んだのです。震源から函館市までは直線距離でも約150キロあります。「なぜ函館まで!?」最初は何が起きたのかわかりませんでした。

経済産業省によると、北海道最大の火力発電所である「北海道電力苫東厚真発電所」が地震の揺れによる自動停止や障害で停止。電力供給のバランスが崩れ、地震発生から18分後の午前3時18分に北海道全域約295万戸(発電所を持つ離島を除く)への電力供給が停止、過去に例のないブラックアウト(大規模停電)となったのです。道内ほぼ全域での停電は約11時間続き、全域への電力供給再開は約64時間後の9月8日午後7時でした。


■テレビ・ラジオにも大きな影響

停電のため各家庭などでテレビが見られないばかりか、北海道内の地上波テレビ放送の中継局160局のうち28%にあたる45局が停波しました。NHKはウェブサイトや防災アプリでテレビ放送を同時配信したほか、6日朝の『おはよう日本』ではアナウンサーが北海道以外の視聴者に向けて「NHKが報道する情報をメールやSNSなどで北海道の家族や友人などに伝えて」という異例の呼びかけをしました。北海道の民放4社も、各社のウェブサイトやYouTubeで地震関連情報を同時配信しました。


■その時使えた情報機器は?

NHK編成局編成センターでは地震発生当日のメディア利用動向を早期に把握するため、北海道全域(16~79歳の男女・3375人)を対象にインターネットによる調査を行いました。地震発生当日に使用できた端末・機器は、時間によって変わっていったことがわかりました(図1)。

すべての時間帯を通じて利用できた割合が高かったのは「ラジオ」でした。「テレビ」は、68%が「当日利用できなかった」と回答しました。

「インターネット(スマートフォン・タブレット端末)」は、「地震発生直後から未明」までは40%の人が利用できていましたが、夜間にかけて20%台まで下がりました。停電が長期化する中、電源節約のために使用を控えたことや、北海道内の各地で基地局の停波が相次いだことが背景にあると考えられます。

「ラジオ」を利用した人にその理由を尋ねたところ、NHK・民放ともに「情報が信頼できるから」「欲しい情報が得られると思ったから」というコンテンツへの評価も高かったのですが、「他になかったから」「電力やバッテリーの消費を節約するため」という理由も目立ちました。

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図1 地震発生当日に利用できた端末・機器(複数回答)


■「情報ブラックアウト」を避けるために

平常時はスマートフォンやタブレット、パソコンでラジオを聴くこともできますし、防災情報や交通情報などあらゆる情報が欲しいときに手に入ります。しかし、災害時に同じように使えるとは限りません。携帯電話事業者や電力事業者なども災害時の早期復旧対策に力を入れていますが、電力のブラックアウトが「情報ブラックアウト」にならぬように個人レベルでも情報面の防災対策をしておきたいものです。

ちなみに、災害情報の調査・研究に携わっている私は「紺屋の白袴」ではいけませんので、携帯ラジオ(テレビ音声・AM・FM受信可)を、スペアの電池と一緒にいつも持ち歩くようにしています。非常食や水の備蓄も大事ですが、情報面での備えも忘れないでください。

今回の調査結果の詳細は、NHK放送文化研究所のウェブサイトでご覧いただけます。

北海道ブラックアウト どのメディアが機能したのか~「北海道胆振東部地震」メディア利用動向インターネット調査から~

なお、『放送研究と調査』3月号では、昨年6月に発生した「大阪府北部の地震」に関するメディア利用動向調査の結果も掲載しています。こちらもあわせてお読みください。