2014年01月29日 (水)仮想通貨ビットコイン アメリカでは


インターネットで生まれた新しい通貨、ビットコイン。その価値は1年で100倍以上に急騰しました。中央銀行などが発行し政府の裏づけがある通常の通貨と違い、発行者も管理者もいないビットコイン。普及の現状や課題について、アメリカの状況を取材しました。
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【ビットコイン アメリカでの状況】
ビットコインが日本でも徐々に広がりつつある現状については、先月ニュースでお伝えしました。実際にどのように使われ、何が課題になっているのかを探ろうと、私たちはアメリカに取材に行ってきました。
bitcoin16.jpg最初に訪れたのは、アメリカ経済、そして世界経済の中心地、ウォール街。ニューヨーク証券取引所の近くに1月、ビットコイン・センターNYCがオープンしました。インターネット上の仮想通貨、ビットコインについての普及・啓発を図るこの施設。会社帰りの大勢のビジネスマン達がチャートを見ながらビットコインの取引を行い、また今後のビジネスの展望について情報交換していました。
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 アメリカでは、1月に入り大手インターネット通販サイト「overstock.com」が、ビットコインでの決済を受け入れ始めたほか、プロバスケットボールチーム・NBAの「サクラメント・キングス」がチケットやグッズについて、ビットコインで決済することを表明するなど注目が集まっています。

取材で訪れたサンフランシスコのカップケーキ屋も、ビットコインで決済するようになってから客足が増えたといいます。実際にビットコインで購入してみました。カップケーキの代金は1個3ドル25セント。店側のタブレット端末に表示されたQRコードを自分のスマートフォンで読み取ります。1個0点004ビットコインと表示されたのを確認して、送信ボタンを押します。これで支払い完了です。ビットコインの注目の高まりに、夫はゲームメーカーを退職し、ビットコイン関連ビジネスの会社を立ち上げたということです。
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 【誰が作ったのか】
世界に広がりをみせるビットコインですが、誰がなんのために作ったのかはよく分かっていません。元となったのは、2008年、サトシ・ナカモトと名乗る謎のプログラマーが、ネット上に公開した論文です。ここではビットコインの目的を、国家から独立した通貨を作ることだとしています。
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 その考え方に賛同した、世界中のプログラマーによって作られたのが、ビットコインなのです。今回の取材で、アメリカに住む開発者の1人にたどりつくことができました。コンピューター関連企業に勤めていた、ギャビン・アンドリーセンさん。開発には、世界中の100人以上のプログラマーが関わり、その中で中心的役割を担っていたといいます。開発者同士のやりとりも、インターネット上のみ。アンドリーセンさんは、サトシ・ナカモトと何度もメールでやり取りしていましたが、会ったことも直接話したこともありません。メールでも技術的な話には応じるものの、プライベートな話題には返信がなかったといいます。
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「サトシ・ナカモトが誰なのかは知りませんし、私はナカモトではありません。誰が発案したかは、どうでもいいことです。」そして、1枚の紙幣を取り出しました。「これはジンバブエで使われていた、100兆ドル紙幣です。紙幣を発行し過ぎたため紙くずになりました。政府を信用しすぎた結果です」
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ビットコインは通常の通貨と違い、価値を担保するために、発行量が上限2,100万に制限されています。国家の経済政策に左右されない通貨システムで、ネットの世界に、自由な取り引きを作ろうと考えたのです。
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「ビットコインでは、主導権は政府や銀行ではなく、利用者にあるのです。民主主義的なお金だからこそ、人を動かす力があるんです。」アンドリーセンさんは自分のことをオタクを意味する「GEEK」と表現していました。アンドリーセンさんのように高いコンピューター技術を持つ人たちがネット上でつながり、国に左右されない通貨を作ってしまおうと生まれたのがビットコインでした。
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【見過ごせない負の側面】
しかし、ビットコイン開発者の想いとは裏腹に、ビットコインの特徴が悪用されるケースも現れています。
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この男性は、ロス・ウルブリヒト容疑者、29歳。去年(2013年)10月、FBI・アメリカ連邦捜査局に逮捕されました。ウルブリヒト容疑者が運営していたとされる、「シルクロード」。違法な売買を仲介する闇サイトで、世界各地から麻薬、偽造パスポートなどが出品されていました。ここで唯一、支払いに使える通貨。それがビットコインでした。FBIの調べに対し、ウルブリヒト容疑者は、容疑を否認しています。しかし、容疑者のパソコンを調べたところ、14万ビットコイン、およそ30億円を蓄えていたことが明らかになりました。
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【全取引のおよそ1割が闇サイト】
なぜビットコインが、闇取引で使われるのか。私たちはアメリカで取材を始めました。まず訪ねたのは、カーネギーメロン大学のニコラス・クリスティン准教授。シルクロードの実態調査を続けてきました。取り扱われていたのは、麻薬など、違法な商品2万4,000点以上。アメリカやヨーロッパを中心に、少なくとも十数か国にまたがる巨大闇市場に、膨れ上がっていたことが分かりました。さらにクリスティン准教授は、全世界のビットコイン取り引きのうち、この闇サイトでの取り引きが、およそ1割を占めていたことを突き止めました。
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クリスティン准教授は「闇取引で使われるビットコインの割合は、見過ごせないほど多いのです。犯罪者は非常にずる賢く、新しい技術を悪用するのが得意です。ビットコインは、大規模な犯罪に利用される可能性があります。」と話していました。
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【闇取引の実態は】
ビットコインを使った闇取引の実態は、どのようなものなのか。取材を進めた私たちは、サイトを利用していた人物と、接触することができました。指定されたのは、西海岸の、ある都市の郊外。ひと気のない駐車場です。現れたのは、自称22歳の男でした。詳しい素性を明かさないことを条件に、取材に応じました。
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男性は世界各地から麻薬を手に入れるため、ビットコインを使っていたといいます。男性は「ドイツとイタリアから買うことが、一番多かった。どんな麻薬でも買えたんだ、本当に驚いたよ。」と話していました。この人物が闇サイトを利用したのは、ビットコインが持つ、ある特徴にありました。個人情報を一切知らせずに、匿名で入手でき、取り引きに使うことができるのです。
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男性は「最初は捕まるんじゃないか、本当に大丈夫だろうかと思った。そうしたら、うまくいったんだ。ビットコインならば、絶対に足がつかない。インターネットの奥深くで、誰にも知られずに取り引きできるんだ。」と話していました。ウルブリヒト容疑者が逮捕されたことで、サイトは閉鎖されました。しかし、取り引きには影響はないといいます。「ビットコインはこれからも、闇市場で使われると思いますか?」という質問に対しては、「闇取引でビットコインは、当たり前だよ。“シルクロード”は、ただの始まりに過ぎない。ビットコインが使える闇市場が10はある。」と答えました。
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実際、インターネット上では閉鎖されていたはずの闇サイトが復活していました。運営者は不明です。トップページにはこう書かれていました。「we rise again」私たちは何度でも立ち上がる。

アメリカではシルクロード事件の摘発を受けて、上院の緊急の公聴会が開かれ、麻薬取引だけでなくビットコインが、犯罪で得た収益を隠すマネーロンダリングの新たな手段になっていると指摘しました。司法省や治安当局が関係機関が連携して対応することにしています。
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1月27日には、アメリカの捜査当局は、違法薬物の売買を支援するためにおよそ1億円分の「ビットコイン」を提供し、マネーロンダリングに手を貸したとして、ビットコインの取引業者2人を刑事訴追したと発表しました。このうちビットコインの取引会社のCEOを務めるチャーリー・シュレム容疑者は、ビットコインの普及を目指す団体の幹部も務めていて業界の顔役としても知られていました。

ネット上での犯罪は国境を越えて広がっていきます。日本の警察庁によると、今のところビットコインが犯罪に悪用されたケースは確認されていないという事ですが、監視・警戒を強めていきたいとしています。

 【分かれる 各国の対応】
中央銀行などが発行し政府の裏づけがある通常の通貨の場合、法律による強制通用力があるため、たとえば日本で「円」が受け取ってもらえない店はありません。これに対しビットコインは、政府などによる裏づけがないため、それを「通貨」として認める人の同士の信用によって成り立っていて、その点だけが支えとなっています。

その支えとなる部分が「違法取引に便利だ」ということによって支えられてきたという点は、ビットコインが今のように普及するようになった歴史の中で見過ごせない点ですし、闇サイトで悪用されている点について、ビットコインを規制するきっかけにする政府が多いのも事実です。
bitcoin8.jpg海外でのビットコインの取り扱いも様々です。ドイツやシンガポールはビットコインを金融商品として認め、課税の対象にするいわば容認の立場をとっています。一方で中国、インド、タイは金融機関などでの取り扱いを禁止する措置をとっています。中央銀行が発行する通貨、法定通貨に対する脅威になるという事で今のうちに、しっかり禁止してしまおうという意味合いが強いです。アメリカやフランスは、危険性についての警告を出していて、政府の裏づけが無いから何かあったときは自己責任だと理解した上で使ってくださいというメッセージを発しています。

一方の日本ですが、日銀の黒田総裁が「調査中」と発言し、全国銀行協会の会長は「利用者保護の観点から規制を検討する必要がある」と発言しています。規制するにしても法律を作る前提として、仮想通貨をどのように定義するかというところから始めなければならず、まだまだ時間がかかりそうです。
bitcoin18.jpg電子通貨が専門で、ビットコインについて研究を行なっている国立情報学研究所の岡田仁志准教授は「通貨というのは、みんながお金だと信用するものがお金だという、そういう特殊な、循環論法のような性質を持っていますので。このビットコインというのは、まさにお金だと思う人が多いから、お金として流通している。法律がない以上は、全て自己責任なのでそこは強く認識する必要がある」と話しています。

インターネットのサービスは、みんなが使っているからという理由で広がりやすいという特性を持っていて、ビットコインもまさにその特徴を体現しているといえます。利用者の信用によってのみ成り立っているため、一度信用を失ったり、政府による規制が行なわれたりすれば、価値が暴落するリスクも抱えています。新しいサービスやビジネスの可能性が広がっている一方、利用には細心の注意が必要だと今回の取材を通して感じました。

投稿者:成田大輔 | 投稿時間:08時00分

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