2014年01月27日 (月)"お通し" 大学生たちが投げかけた疑問


忘年会、新年会と居酒屋を利用したという方も多かったのではないでしょうか?
居酒屋で、最初に出てくるのが「お通し」です。お通しは、数百円程度かかるのが一般的ですが、日頃、よく利用する大学生たちが「断れるかどうか調査」し、疑問を投げかけました。
その結果は?

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お通しは、居酒屋で最初に出てくる簡単な料理で、突き出しとも呼ばれます。300~400円かかるのが一般的ですが、中には1000円を超えるものもあります。
店側としては、食材を有効活用できる・一定の利益が見込めるという側面もあります。
140127toshi_29_1.jpgこれに疑問を投げかけたのが、立教大学法学部で消費者問題を学ぶゼミナールの3年生です。お酒を飲むようになって初めてお通しの存在を知りました。
「注文していないのに出てきてお金かかる。これはいったい何なのだろうか」。素朴な疑問から、メンバー18人が3人1組になって、先月から今月にかけ、大学の地元の池袋と、ターミナル駅の新宿で、代表的な居酒屋5グループ、合わせて10店舗で、断れるかどうか調査しました。
140127toshi_5.jpgその結果は。
お通しはいらないと思っても、半数は断ることができませんでした。
また、500人以上にインターネットでアンケート調査をしたところ、▼お通しの値段について、66%が「高い」「やや高い」と回答し、▼質については、48%が「不満」「やや不満」と回答し、不満が多いことも分かりました。
140127toshi_8.jpg改善に向けて、学生たちは、今月22日、東京都に対応を要望しました。条例で分かりやすい表示を義務づけられないか検討してほしいと訴えたのです。
また、あわせて、消費者庁にも、何か対応ができないか要望しています。
140127toshi_9.jpg立教大学3年の中野堅介さんは、「学生の目線で言えば、お通し代の300円は昼食1回分になる。消費者が選択しやすい環境をお店には整えてほしい」と話していました。
140127toshi_12.jpg実際に居酒屋で客に話を聞いてみました。
すると、「レジの会計で高いと思った時に確認すると、お通し代がかかっていることが分かり、いらなかったということになる」、「お通しを食べればその店の実力が分かるので、あったほうがいい」、「どんな料理が出てくるのか楽しみ」、「最初にお酒を飲むときにお通しがあると、つまみがあっていいかなというときがあるが、二次会、三次会ではいらない」など、ざまざまな意見があり、「いる」「いらない」は、半々という印象でした。
140127toshi_15.jpg店側の対応も、さまざまです。
断れることをうたったり、種類を選べるようにしたりしているところがあります。
さらに、大阪に本社がある焼き鳥チェーン店ではお通しそのものを廃止してしまいました。必要な人にはすぐに出せるメニューを用意しているということで、マネージャーの柴山智さんは、「何だかよく分からない料金は取れないので廃止した。利益は出づらいが、その分、少しでも客が足を運びやすい環境をつくれる」と話していました。
140127toshi_19.jpg逆に、お通しは「おもてなし」だとして、こだわる店もあります。
東京・杉並区の高円寺には個人経営の居酒屋が多くあります。取材をした店では、その日、水菜とレモンペッパー風味の蒸し鶏が出されていました。
店長の渡辺芳法さんは、「お通しは店の看板だと思って恥じないようにやっている。一人暮らしの方も多いので、野菜を入れるなど、栄養面を考えて作っている」と話していました。
140127toshi_25.jpg結局、お通しは断れるのかどうか。
消費者問題に詳しい東京経済大学教授の村千鶴子弁護士に、法的な解釈を聞くと、お通しは、名目が料理代ならば断れても、席料であれば断れないということです。このため、消費者と店に、次のように対応するようアドバイスしています。
「店は、どういう名目の費用がいくらかかるかメニューなどで明示し、消費者は、それを了解した上で、自分がそこで飲食するのかどうか選択することが大事だ」。
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【取材後記】

料亭などの高級店では、席料やサービス料があるという共通認識があったり、なじみの店ではおいしいお通しが出てくるため不満が出ることは少ないようです。
その点、村弁護士は時代の変化を指摘していました。学生がよく利用するような、初めて来る「一見さん(いちげんさん)」を対象にした大衆居酒屋の発展とともに違和感を感じる人も出てきたならば、店側もそれに合わせて対応すべきだというのです。
お通しは外国人も戸惑うようで、少なくとも分かりやすくはしてほしいと思います。
また、毎週1回居酒屋に行くたび、お通し代が300円かかるとすると、現役時代を40年間としたとき、合計額は60万円を超えます。学生たちが投げかけた問題。常識と思っていた大人たちも、一度、考えてみてはいかがでしょうか。
140127toshi_28_1.jpg加えて、最後に特にお伝えしたいのは、大学生たちの行動です。疑問をそのままにせず、調べて、行政に要望したことです。
日々の暮らしの中で、何か疑問や不満に思っても、そのままにしていませんか?
言われるままに受け入れていると、いつの間にか大変な被害に遭うことがあります。
例えば、架空の投資取り引きや振り込め詐欺などの、お年寄りの財産被害です。被害者に取材をしていると、なぜ見抜けなかったのだろうと思うようなことがあります。
しかし、一方で、そうした姿勢はなかなか持てるものではありません。「賢い消費者」を育てるには、「消費者教育」が重要なのです。大学生たちがゼミナールでの勉強を通じて行動したことは、まさにその「消費者教育」にあたります。
その疑問は、みんなが感じていることかもしれません。その不満は、何かひっそりと起きている問題が明らかになるきっかけになるかもしれません。何か気になったら、確認する。調べて行動する。要望までは難しいですが、最寄りの「消費生活センター」への相談なら電話1本で済みます。
消費者の行動は議論を呼び、その結果、より暮らしやすい社会につながっていきます。こうした考え方を「消費者市民社会」と言います。大学生たちの行動に、その第一歩を感じた取材でした。

投稿者:三瓶佑樹 | 投稿時間:08時00分

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