2014年01月20日 (月)破損相次ぐベビーカー 長期間"公表せず"


母親による通報をきっかけに、ようやくメーカーがリコールすることになったベビーカーがあります。
販売されたおよそ2万3000台のうち650件が破損、けがもありましたが、重大事故ではないため、決められた行政への報告義務はなく、公表は見送られていました。
詳しくお伝えします。

vlcsnap-2014-01-17-13h50m48s190.png

【突然壊れたベビーカー】

去年10月、東京都内に住む女性が、2歳の娘をベビーカーに乗せて歩いていたところ、突然、アームレストと呼ばれる部品が、音を立てて割れました。
女性は、「何の前触れもなく、バキっという音とともに完全に破断してしまった」と証言しています。
vlcsnap-2014-01-17-13h51m09s129.png
ベビーカーごと前のめりになって、娘は衝撃で肩をぶつけ、打撲をしたといいます。
女性は、「完全に折れて断面がとがった面がむき出しになり、思わず子どもに刺さっていないか安全を確認した」と当時の緊迫した状況を振り返っていました。
vlcsnap-2014-01-17-13h51m41s205.png
【リコールされたのは「コンビ」の「F2」】

デザインのよさなどで人気を集めていたこのベビーカーは、東京のベビー用品メーカー「コンビ」が、おととし1月から12月まで出荷していた「F2」です。
およそ2万3000台が、部品を無償で交換するリコールをされることになりました。
コンビのフリーダイヤルは、0120-055-051です。
vlcsnap-2014-01-17-13h48m56s62.png
【問われる安全意識】

実は、メーカーは1年半前には最初の破損の情報を把握していました。
メーカーにはその後も破損の報告が相次いでいましたが、公表されることはなく、その事実は、長期間知らされませんでした。
決められた行政への報告義務はありませんが、問われているのは、メーカーの安全意識です。
vlcsnap-2014-01-17-13h52m59s211.png
【なぜ公表が遅れたのか】

詳しい経緯です。
メーカーが最初にこの事態を把握したのは、発売から半年後のおととし7月。
消費者からの報告が相次いだことを受け、去年1月には部品の強度を上げた改良品に切り替えました。
vlcsnap-2014-01-17-13h55m05s217.png
しかし、すでに販売した以前のタイプ、およそ2万3000台については、破損の公表をせず、部品の交換も行ってきませんでした。vlcsnap-2014-01-17-13h56m13s82.png
これまでにメーカーが把握しているだけで、破損は650件に上り、子ども7人が腕や指に軽いけがをしています。
vlcsnap-2014-01-17-13h57m06s140.png
公表しなかったことについて「コンビ」は、「業界の安全基準は満たしていた。破損の原因が複雑で分かりにくく、検討に時間がかかってしまった。公表が遅くなり申し訳ない」としています。
vlcsnap-2014-01-17-13h57m32s104.png
【公表のきっかけは「消費生活センター」】

では、公表のきっかけはなんだったのか。冒頭に紹介した母親は、他に被害が出るのを心配し、当時、メーカーに対し、「事故が起きる可能性があると認め、公表すべきではないか。せめてホームページで注意喚起などをすべきではないか」と意見を伝えました。
しかし、「やらなければいけないという義務はない」というような回答をされ、驚いたといいます。

対応に疑問を抱いた母親は、自治体が運営する消費生活センターに相談します。
その内容が先月、工業製品の事故情報を収集する独立行政法人のNITEを通じて、経済産業省に届き、指導の結果、リコールに至ったという流れです。
vlcsnap-2014-01-17-13h59m29s28.png
【経産省「原因確定前でも対応を」】
経済産業省の岡部忠久製品安全課長は、「法律に違反しているということではないが、何か事故が起きたときに、消費者の安全というものを第一に考え、対応については原因が確定してからでなくても、注意喚起なり、何らかの形で消費者の安全を考えてほしい」と話しています。
vlcsnap-2014-01-17-14h01m21s129.png
大事な子どもを乗せるベビーカーで起きた今回の事故に、母親は「自分では何も対応できない赤ちゃんなので、それを守ってあげるのは大人の仕事。守るための方法があるのであれば早く情報を回してほしかった」と訴えていました。
vlcsnap-2014-01-17-14h02m06s210.png
【「メーカー」と「消費者」に求められること】

製品の事故に詳しい中村雅人弁護士も、企業がもっと積極的に公表すべきだったと指摘しています。
「行政が通報を義務付けているレベルは、非常に重大な事故だけだが、重大な事故ではないから誰にも言わなくていいのかというと、そんなことはない。いち早く消費者に伝えてもらわなければ、消費者は自己防衛も何もできない。そういう消費者のほうを向いた企業のあり方が問われているのだと思う。
そして、高齢者や障害者、子ども、こうした人たちに対しては、やはり特別の配慮が必要だ。自分では被害を避けることがほとんどできないので、問題が出たらいち早く回収して、事故を未然に防がなけれなならない。メーカーは、もっと消費者の安全を考えて動かなければ、法的には国の基準に到達していなくても、責任が認められるケースはいくらでもある」。
vlcsnap-2014-01-17-14h03m46s247.png
その上で、情報を広く共有するために消費者にもアドバイスしています。
「消費者もそういう経験をしたら、こういう製品でこういう事故に遭いましたと、たいしたけがではないかもしれないが一応報告します、ということを企業や販売店に言うのと同時に、消費生活センターなどに伝えてほしい」。


【取材後記】

美白化粧品の白斑の被害や、冷凍食品の農薬混入の被害も、企業には情報が集まっているのに、注意喚起や行政への報告が遅れ、その間に被害が拡大しました。
何もよりもまず、企業には公表などの迅速な対応が求められます。
vlcsnap-2014-01-17-14h02m37s78.pngそれと同時に、やはり消費者の行動が鍵を握っています。
今回650件の不具合がありましたが、リコールのきっかけにもなった消費生活センターへの相談は、これまでのところ全国で2件しか寄せられていません。
数の少なさの背景には、「自分だけなのではないか」、「自分が悪かったのではないか」、「相談するのは面倒だ」、「相談先を知らない」など、さまざまな理由があると思います。
しかし、情報が集まると分かることがあります。それが、企業の対応や法制度を変えていくことになるのです。
最寄りの消費生活センターにつながる「消費者ホットライン」の番号は、0570-064-370です。

投稿者:三瓶佑樹 | 投稿時間:08時00分

トラックバック

■この記事へのトラックバック一覧

※トラックバックはありません

コメント

※コメントはありません

コメントの投稿

ページの一番上へ▲