2019年11月13日 (水)悲報?花粉症薬の保険適用外とは


※2019年8月23日にNHK News Up に掲載されました。

「病院に行けば3割負担でもらえる花粉症治療薬を全額自己負担にすべきだ」
こんな提言がまとまりました。
ネット上では荒ぶる声…
「もはや国民病なのに10割負担はキツイ」
「杉をなんとかしてからにしろ」
どういうことなのでしょうか。

ネットワーク報道部記者 加藤陽平・野田綾・宮脇麻樹

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衝撃の提言まとまる

提言をまとめたのは、大企業の従業員らが加入する健康保険組合でつくる健保連=健康保険組合連合会。23日、記者会見を開き、提言を発表しました。

現在、保険が適用されれば、1割から3割の自己負担の花粉症治療薬のうち、市販薬と効能が同じものについては保険の適用外として、費用をすべて患者に負担してもらうべきだというのです。

刺激的な提言をした背景にあるのが「危機的だ」という保険財政です。

一段と進む高齢化で医療費が増加する一方、保険料を支払う立場の現役世代の人口が減少しているからです。

健保連は、今回の提言が実現すれば、最大で年間およそ600億円の医療費削減の効果があると試算しています。

hihou.190823.2.jpg健保連 幸野庄司理事
健保連の幸野庄司理事は、会見で「財政が厳しくなる中で、一定の痛みを伴う改革が必要になっている」と理解を求めました。

うそだと言って!
この提言に対してSNSには、荒ぶる声があふれています。

hihou.190823.3.jpg一方、提言を肯定的に受け止めている意見も見られました。

hihou.190823.4.jpgすべての薬が対象ではありません

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写真はイメージ
ただ、花粉症治療薬と言ってもさまざまで、提言では引き続き3割負担の薬もあるとしています。
「待て 花粉症薬保険適用外なんてされたら 1年中花粉症の自分はどうなるんだよ」
今回のニュースを受けてこうつぶやいた20代の男性は、その後「アレグラより強い薬飲んでいるからセーフか?」とつぶやいています。

どういうことでしょうか?
この男性は幼い頃から花粉症と診断され、アレルギー検査では全種で陽性反応が出ました。

医師からは、1年中症状が出ると診断されました。

男性は定期的に耳鼻科を受診していて、そのつど診療費と薬代で、3割負担の今でさえおよそ5000円を負担しています。

そこで処方される薬は現在、市販されていないより強い薬などで、提言ではこうしたものは従来通り、3割負担とされています。
このため男性は自分の場合「セーフか?」とつぶやいたのです。

働き盛りを狙い撃ち?
一方でSNS上では「花粉症は働き盛りに多い」として憤りをあらわにしている人もいます。
「現役世代が病院の世話になることなんか滅多にないのに、保険料負担は増えて、花粉症薬すらも全額負担。花粉症くらい適用させてくれよ」
こうつぶやいたのは、毎年春の花粉症の時期に薬を服用している20代の女性です。

この女性が病院を受診するのは花粉症の時期ぐらい。
その薬代すら全額自己負担になるのであれば、現役世代だけ負担が増すと感じています。
「高齢者の医療にかかる費用など別の課題をそのままに現役世代にしわ寄せがいくような提言で納得がいかない。ほかで無駄を削れるのではないか」

hihou.190823.6.jpg健保連に聞いてみた
実は自身も軽度の花粉症だという健保連の担当者は「一般の方から反対の声があがるのは理解します」としたうえで、こう理由を説明しました。
▽花粉症の治療薬が保険の適用外になったとしても、流通する市販薬の種類も多く、テレビCMなどで一般にも浸透しているため、個人が買い求めやすい

▽ほかの病気などの薬と比べて、花粉症の治療薬は一定の需要があるため、医療費削減の効果が大きい

現場の医師はどう見た?
今回の提言について、現場の医師はどう見ているのでしょうか?

SNSである投稿が目にとまりました。

hihou.190823.7.jpg投稿したのは、順天堂大学医学部総合診療科の高橋宏瑞助教です。

(記者)
「市販で買える薬を保険診療から外すことになぜ賛成なのですか?」

(高橋助教)
「市販薬は、副作用がないことが多いので、あえて医療機関を受診して薬を処方してもらう必要はないと考えています。実際に診療の現場では、湿布や風邪薬などを『いっぱいください』と薬を安く入手する目的で受診していると感じることも結構あります。病院は本当に医療的な介入が必要な場合に受診してほしいと思うからです」

(記者)
「ではなぜ花粉症をターゲットとするのは反対なのでしょうか?」

(高橋助教)
「市販薬で済ますということになると、診察を受けない人が出てきます。花粉症は人によって症状が重い場合もあります。薬もいろいろな種類があるため市販薬だけでは対応できないケースもあって診察の必要性があります。それに加えて、花粉症の患者は比較的若い、働く世代の人たちで日本の労働力の担保のためにも花粉症の治療は必要だと思うんです。花粉症は集中力が低下してしまいますから」
また高橋さんは「それよりも保険適用外にすべきは風邪薬だ」と指摘します。

hihou.190823.8.jpg順天堂大学医学部総合診療科 高橋宏瑞助教
「日本人はかぜをひいたら病院に行くのが常識ですが、海外の人はかぜを引いたら家で寝ているのがいちばんだと知っているので病院には行きません。処方される風邪薬には症状を抑える効果しかないので、そもそも薬を飲む必要もありませんし、つらかったら市販の総合感冒薬を飲めば十分です」

今後は?
今回の提言は今後、中医協=中央社会保険医療協議会などで議論される見通しです。

ちなみに日本医師会は今回の提言について反対の意思を示しています。

花粉症の治療薬を自己負担とすることで得られる600億円の医療費の削減効果は花粉症の患者たちの苦しみと表裏一体です。

それを踏まえた議論がきちんと行われるのか、注目していく必要があります。

投稿者:加藤陽平 | 投稿時間:10時24分

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