2015年03月26日 (木)AED教育が命を救う


平成24年度までの5年間に、学校の中でAEDや心肺蘇生が実施された数は、821件ありました。
児童や生徒が倒れた場合、子どもが第一発見者になる可能性があることから、日本循環器学会は、学校教育の中でAEDなどの救命法の指導と訓練が望まれるという提言を出しました。
その必要性を実感する出来事がことし1月に起きました。

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【山口県の駅伝大会で中学生が男性救う】

ことし1月に山口県萩市で開かれた駅伝大会の中継所で、緊急の事態が発生しました。
60代の男性ランナーがたすきを渡した直後に、倒れたのです。
その様子を、同じ区を走り終えた中学生が見ていました。
的場浩一郎さんです。
的場さんは「ふとあちらを見たら、男性があおむけに倒れていて、口と目が半開きの状態で胸が全く動かず、明らかに不自然な形だったので、すぐに心肺停止かと思いました」と、当時の状況を振り返ります。
的場さんはとっさに、「AEDが必要だ。スポーツ施設ならあるかもしれない」と考え、近くのフィットネスクラブに向かいました。
フィットネスクラブには誰もいませんでしたが、下駄箱の上にあったAEDを手に現場に戻りました。
的場さんは「僕がこういうことをしてもいいのかという多少不安な気持ちもあったんですが、現場にAEDがない雰囲気だとすぐに分かったので、AEDがないよりもあった方がいいかなと思ったのと、まずは一刻も早く届けたいというその一心でした」と話します。
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的場さんがAEDを取りに行っている間、現場では、居合わせた医師たちが心臓マッサージを行っていました。
的場さんが駆けつけたのはその時でした。
的場さんがすぐにAEDのバッグを開けたので、医師はすぐにパッドを貼ることができたということです。
AEDの音声に従って、心臓マッサージと電気ショックを繰り返しました。
3回の電気ショックのあと、救急車の中で男性の心臓は動き出しました。
倒れてから11分後でした。
医師の1人は「心臓マッサージをしても反応がなかったものですから、あとの手段はAEDかなと思っていました。幸いAEDが届いたのでほっとしました。中学生が自主的に持ってきたと聞いて、びっくりしましたね」と、的場さんの行動を高く評価しています。
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【的場さんが受けたAED授業】

なぜ的場さんは、AEDを取りに行ったのでしょうか。
的場さんがAEDの大切さを知ったのは、半年前に受けた学校の授業でした。
このとき救急救命士の田村寿則さんから、AEDと心肺蘇生について学びました。
その時、田村さんが話した、桐田明日香さんのことが心に残っていたと言います。
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明日香さんは小学6年生だった4年前、さいたま市の小学校で心臓発作を起こして倒れました。
学校にAEDはありましたが使われず、亡くなりました。
的場さんは「明日香ちゃんの事例のように、救える命があったのに救うことが出来なかったということが、現実問題として発生しているということが、一番心に残っています。
授業を受けていなかったら、一瞬の判断ができなくて、あそこまで取りに行くということはできなかったと思います」と、授業を受けていたことがとっさの判断につながったと話します。
授業をした山口県の長門市消防本部の田村寿則さんは「的場さんは講習の内容をしっかり理解してくれて、勇気をもって動いてくれたので、大変嬉しく思います」と話しています。

【AED授業の普及に向けて】

しかし、AEDや心肺蘇生の講習を行っている学校は、小学校で15%、中学校では57%、高校では72%にとどまっているのが現状です。
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こうしたなか、明日香さんが育ったさいたま市では、事故を教訓に、中学校に加えて、今年度からすべての小学校でAEDと心肺蘇生の授業を始めています。
教えるのは学校の先生です。
専門家とともに作った小学生向けの副読本を使いながら、誰かが突然倒れた時の対処法を学びます。
授業では、誰かが倒れ反応がなければ、大人や救急車を呼ぶことやAEDを持ってきてと頼むことを、勇気を出してできるようにしようと呼びかけています。
授業を受けた児童は、「AEDがあるのは知っていたんですが、どう使うものなのか知らなかったので、知ることができて良かったです」とか、「そういう場所に居合わせたらパニックになったりすると思いますが、人の命が助けられたらいいなと思いました」と、授業の感想を話しています。
AEDや心肺蘇生を授業に取り入れている、さいたま市教育委員会は「大人がいない場合に誰かが倒れているところに遭遇したときに、何も知識としてなかったらゼロになってしまいますので、大きい声を出せばいいんだ、AEDはあそこの場所にあるから持ってこようという、そういう知識としての選択肢を与えておくことでも、人の命を助けるというところにかなりつながってくると思います」と、授業で教えることの大切さを話しています。
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的場さんが助けた男性は、倒れる前と変わらない生活をしています。
的場さんは「助かる命がそこにあったのに助けられないというのは、何よりも悔しいことです。
今度はAEDを取りに行くだけでなく、いち早くその事態に気づいて、心臓マッサージだったり、そういったことができるようになりたい」と話し、将来は命を救う仕事に就きたいと考えています。

【学校での心臓突然死ゼロへ提言】

電気ショックで心臓の動きを元に戻すAEDへの理解が教職員や子どもたちの間で進めば、学校で起きる心臓突然死はゼロにできる可能性があるとする提言を日本循環器学会がまとめ、AEDの学校現場への普及と活用方法の教育の推進を呼びかけています。
提言では、運動中に起こることが多い心停止に備えて、AEDは運動場の近くに配置すること、確実に使用するため、教職員の日常的な訓練だけではなく、子どもたちにも授業で教えて緊急時には取りに行ってもらうなど、学校全体のチームワークが重要だと指摘しています。
提言をまとめ、AEDの普及活動を行う三田村秀雄医師は、「救命率は1分ごとに10%ずつ下がっていく。チームワークを発揮して、速やかに119番し、その場での心臓マッサージと併用する形で迷わずAEDを使い、突然死ゼロを実現させてほしい」と話しています。

提言の詳細は日本循環器学会のHPから
http://www.j-circ.or.jp/cpr/suggestion.html

投稿者:松岡康子 | 投稿時間:08時00分

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