2018年03月06日 (火)五輪支えるテストジャンパー まなざしの先に映るのは


※2018年2月15日にNHK News Up に掲載されました。

高梨沙羅選手の銅メダルに沸いたピョンチャンオリンピックのスキージャンプ女子。実は、その競技の前や途中に出場選手ではない若者たちがジャンプをしていたことを知っていますか?「テストジャンパー」と呼ばれる人たちで、風の強さが際立つピョンチャンで大きな役割を果たしているんです。そして彼らのまなざしの先に映るものとは…

旭川放送局記者 岡崎琢真
ネットワーク報道部記者 佐藤滋

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<ピョンチャンの風試すテストジャンパー>
「風」が何かと話題のピョンチャンオリンピック。日本中が固唾をのんで見守ったジャンプ女子も1回目から強風での中断を余儀なくされる場面が目立ちました。

高梨選手たちが毛布のようなものに身を包んで寒そうに競技再開を待つ姿を見た人も多いと思います。

man180215.2.jpgこうした時に大切な役割を果たすのがテストジャンパーです。

このまま競技を続けても危険はないか、スピードが出過ぎないようスタート位置を変える必要はないか。大会を運営する側はテストジャンパーによる実際のジャンプを見て判断するのです。

この夜も、テストジャンパーであることを示すFの文字をつけたジャンパーたちが、黙々とジャンプを行いました。


<日本から異例の27人派遣>
このテストジャンパーに今回、日本から女子代表の勢藤優花選手の妹や、男子代表の小林潤志郎選手と陵侑選手の弟など若手選手27人が派遣されました。

実は日本からこんなに多くのテストジャンパーを送り込むのは異例のこと。次の時代を支える若者に大きな舞台を経験させようという狙いがあるのです。

man180215.3.jpgその1人に選ばれた、鴨田鮎華選手は北海道北部の下川町の高校2年生。現地に来る前、このように語っていました。

「オリンピックに出て金メダルを取りたいという夢があるので、その雰囲気を今から味わえることはいいことだと思っています」


<大逆転の金メダル導いたテストジャンパーたち>
テストジャンパーの存在が一躍、注目を集めた大会があります。20年前の長野オリンピックです。猛吹雪の中で行われた男子団体。1回目4位の日本が逆転をかけた2回目を前に雪や風が強まりました。バランスを崩す選手も出たため競技は中断。

man180215.4.jpgもし、再開できなければ1回目の結果をもって順位を決定することになり、日本は4位のままでメダルすらありません。再開か、打ち切りか、テストジャンパーたちのジャンプを見て、判断することになりました。

この状況に挑んだのが日本の25人のテストジャンパーたち。しかし、条件は最悪です。吹雪で視界は悪いうえ、万が一にも転倒しようなら競技の中止を決定づけてしまいます。

man180215.5.jpg「競技が続けられることを見せて逆転につなげたい」

困難と恐怖心を乗り越えテストジャンパーたちは次々とジャンプを決めました。

会場には競技再開のアナウンスが流れました。このあと、日本は次々と大ジャンプを決め金メダルを獲得したのです。

man180215.6.jpg私(佐藤)は、そのうちの1人に話を聞いたことがあります。
「とにかく安全だということを証明しないといけないので、『きちんと飛ばないといけない』という思いがあった」

相当なプレッシャーがあったことは想像に難くありません。ただこの選手は、この時の経験が後の競技人生に大きな影響を与えたことも語ってくれました。

「観客席が黒い塊のように見えて声援が地響きのように感じた。こんなところで飛んでみたいと思った」

この選手はのちに日本のジャンプ界を代表する選手の1人に成長しました。


<憧れの人と同じ舞台で>
今回、ピョンチャンに派遣された鴨田選手は、この世代のトップクラスで、今シーズンはワールドカップにも出場しました。憧れは、同じジャンプ少年団にいた日本代表の伊藤有希選手。もらったジャンプスーツを今も大切に持っています。

man180215.7.jpg鴨田選手は「ジャンプスーツは中学2年生の時にもらい高校1年生まで使っていました。伊藤選手からは成績がよい時に『おめでとう』といった連絡をもらいます。いろいろと面倒を見てくれてすごく優しく、お姉ちゃんみたいな存在です」と話しています。
小学1年生からジャンプを始めた鴨田選手。伊藤選手と同じピョンチャンの舞台で飛べることを心待ちにしていました。


<羽ばたけ!テストジャンパー>
そして12日に行われたジャンプ女子の競技当日。鴨田選手は3回、テストジャンプを行い、その役割を果たしました。

man180215.8.jpgジャンプを終えた感想について鴨田選手は「自分が飛ぶ時は緊張しませんでした」と説明してくれました。

そしてオリンピックのジャンプ台はどう見えたのか。

「いつもとはまったく雰囲気が違いました。選手たちが飛ぶ前の様子を近くで見ることができたので、すごく勉強になりました。次のオリンピックでは、今回テストジャンプをして学んだことを生かせるように、まずは出場できるように頑張ります」

4年後の北京オリンピック。今回、テストジャンパーを務めた鴨田選手が、憧れの伊藤選手や高梨選手を脅かす存在に成長し、大きく羽ばたく日を楽しみにしたいと思います。

投稿者:佐藤滋 | 投稿時間:14時31分

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