2014年01月01日 (水)正月 餅の窒息事故に注意!


おけましておめでとうございます。
正月のお雑煮などで、みなさん、お餅を食べていますか?大好きな方も多いと思いますが、のどに詰まらせて窒息する事故に注意が必要です。
グラフは、窒息の事故で亡くなった人を月別に表しています。毎年、特に増えるのが1月。餅が原因となっているケースが多いとみられています。去年1月の死者は1300人を超え、その9割がお年寄りです。
▽餅による窒息事故を防ごうという取り組みと、▽詰まらせない食べ方、▽万が一、詰まらせた場合はどうすればよいか、ご紹介します。

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【食べやすい新商品】

餅の窒息事故も背景に、国内最大手の餅メーカーでは、今シーズン、切り餅の新商品を発売しました。
餅をこれまでより3ミリ薄くしたほか、切り込みを増やして、分かれる部分を4つから6つにしたのです。
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実際に食べてみると、切り込みの分だけ口の中で餅が伸びずに簡単に分かれ、分かれた餅も薄い分だけボリュームが抑えられ、食べやすい印象でした。
餅メーカー各社は、これまで商品パッケージの裏面などの表示で注意を呼びかけてきましたが、窒息事故は減らず、危機感を持っています。
サイコロ状にするなどの食べやすくした餅は、これまでにも販売されていましたが、ここへ来て最大手も動き出した形です。

佐藤食品工業の赤塚昌一開発部長は、「どうしたら少しでも窒息事故を防げる、食べやすい餅ができるかということもあわせて開発を進めている」と話していました。
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【飲み込みやすい「もち小麦」】

餅の材料を変える工夫もあります。餅米ではなく、「もち小麦」を使うのです。
「もち小麦」は、餅のような食感が得られる新たな小麦の一種で、実際に食べてみると、弾力があって餅のような歯応えがある一方、簡単にかみ切れるので、飲み込みやすくなっていました。
「もち小麦」の研究を続けている青森県立保健大学の藤田修三教授に餅米との違いについて、実験してもらいました。
計測機器で両方をついてみると、歯応えにあたる弾力は同じくらいでしたが、粘りが強い「餅米」に対し、「もち小麦」の粘りはその半分ほど。
このため、簡単にかみ切ることができ、飲み込みやすいのです。
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【福祉施設で好評】

「もち小麦」は、福祉施設で好評です。
青森県にある特別養護老人ホーム「木崎野荘」は、去年から、「もち小麦」を独自に仕入れ、月1回ほど、「すいとん」などにして出しています。
入所している高齢者に感想を聞くと、「歯切れもいいし、飲み込みもいい」、「以前、串だんごがのどに詰まり、これで死ぬのかなと思った経験があるが、これは普通の餅と全然違う」と話していました。
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【餅を詰まらせないために】

餅メーカーの新商品も「もち小麦」も、店頭やインターネット通販などで購入できますが、餅にどんなに工夫をしても、窒息のリスクは残ります。
餅をのどに詰まらせないためには、どうすればよいのか、帝京大学医学部附属病院救命救急センター長の坂本哲也主任教授に聞きました。
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“高齢者に多いのは?”

坂本教授は、高齢者が餅を詰まらせやすい理由について、▽餅が好きで、食べる機会が多い、▽年をとると、のどの機能が低下し、いったん詰まると吐き出しにくい、▽認知症や物忘れがあるような場合は、ついうっかり大きな塊のまま飲み込むことがあると分析しています。

“詰まらせない食べ方は?”

このため、坂本教授は、次のような食べ方を提案しています。
▽大きな餅は危ないので、小さくする。
のどに詰まっても、うまく飲み込めるよう、できるだけ一口で食べられる大きさにする。
▽餅は、水分が足りないと、のどに張り付いて飲み込みにくくなったり、詰まりやすくなったりするため、雑煮にするなど、できるだけ水分と一緒に。
▽高齢者が餅を食べる時は、家族や周囲が目を離さないようにする。

“詰まらせた場合は?”

万が一、餅を詰まらせてしまった場合の応急手当ての方法です。
▽まず、意識がある間は、せきをするよう促す。
▽吐き出せなければ、手のひらの付け根部分で、相手が痛いと思うくらい強く、背中の真ん中辺りをたたく。
▽同時に、誰かに頼んだりして119番通報をする。
▽意識がなくなって倒れた場合は、救急車が来るまでの間、餅を押し出すため、手で胸の真ん中辺りを、5センチ沈み込ませるくらいの力で押す(ドッジボールを5センチくらいへこませるイメージで、小柄な女性であれば全体重を乗せるくらい)。
うろ覚えでもいいのでためらわず、1秒間に1回以上、1分間に100回程度を目安に押し続ける(心臓マッサージと同じ動き)。

【窒息のリスクを知り、おいしく食べて】

餅は伝統食品ですが、窒息のリスクは確実にあります。
毎年、注意喚起がされながら、なかなか事故がなくならない背景には、食べ慣れている分だけ、「自分は大丈夫」、「家族は大丈夫」という過信があるのかもしれません。
窒息のリスクを知って、食べ方に気をつけ、万が一のために応急手当ての方法も把握したうえで、餅をおいしく食べてほしいと思います。
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投稿者:三瓶佑樹 | 投稿時間:08時00分

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