2017年11月27日 (月)進化中!今どきの「七五三」事情


※2017年11月10日にNHK News Up に掲載されました。

子どもの健やかな成長を願う「七五三」。晴れ着を着たかわいい姿を見かけることも多くなりました。
七五三というと、家族そろって神社にお参り。ちとせあめをもらって、写真館でパチリ。そんな一日が定番でしたが、今では様子が変わってきています。

ネットワーク報道部記者 野町かずみ・飯田暁子

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<ご祈とうするともらえるのは…>
七五三は、子どもの成長を祝って神社などを詣でる年中行事です。

乳幼児の死亡率が高かった昔、七五三の年齢まで育ったことに感謝し、その後の健やかな成長を願ったのが起源とされ、江戸時代以降、11月15日にお祝いするようになったと言われています。
今では前後の週末などに参拝することも多く、インターネット上には、すでに七五三詣でを済ませたという書き込みが見られます。

神社でご祈とうをするともらえるのが「お下がり」と呼ばれるいただきもの。これが今“進化”しているんです。

ツイッターを見ると、「ちとせあめの袋の中に、クレヨンや縄跳び、紙風船など子どもの喜ぶものがたくさん入っていた」などと、充実した中身に驚く声が投稿されています。

神社の中には、「お祝いのお子さんにはパズルを差し上げます」「風船を用意しています」などと情報発信しているところもありました。


<選べるおもちゃや貸衣装>

sin171110.2.jpg名古屋市千種区にある城山八幡宮は、さまざまな工夫を凝らしています。

お守りなどを授ける授与所には20種類のおもちゃが掲げられ、ご祈とうが終わると、子どもは好きなものを1つ選べます。

sin171110.3.jpgつまみを回して、カプセルに入ったおもちゃをもらえる特典もあります。

親にとっても「いい子にしていたらおもちゃがもらえるよ」などと言い聞かせることができ、神事に集中できると好評だそうです。

ほかにも、神主とみこの姿の子ども用衣装の貸し出しを行い、記念撮影することができます。
このように神社が力を入れるのには、理由があります。

「七五三詣でには、子どもだけでなく、両親と祖父母の大人6人など、大勢で来られることが多く、神社のことを知ってもらう絶好の機会になります。提供するおもちゃ選びを夏ごろから始めるなど準備も大変ですが、親にも子どもにも喜んでもらい、今後も神社に足を運んでほしいという思いで続けています」(城山八幡宮広報・後藤武さん)


<オリジナルの記念品も>
「すみよっさん」の愛称で親しまれている大阪・住吉区の「住吉大社」では、ご祈とうをすると、年齢に応じて、子ども服の老舗ブランドが手がけた弁当袋やリュックサック、シューズ入れなどがもらえます。

オリジナルの非売品とあって、これを目当てに参拝する人もいるようです。

東京・千代田区の「日枝神社」は、5年前から、みこ姿のリカちゃん人形や、ミニカーなど、オリジナルの記念品を渡しています。

親にも好評で、ツイッターには「お祝いの品がリカちゃんだって知ってたらきっと行った」「7歳の時はそちらでお願いすることを決めた」という書き込みもありました。


<ちとせあめには新しい味>
定番のちとせあめにも変化が見られます。
全国の神社からも注文を受け、年間200万本以上を作るという菓子メーカーの不二家では、ことしから新しい味が登場しました。ぶどう味とミックスジュース味です。

sin171110.4.jpg取材に訪れた東京・銀座の数寄屋橋店では、七五三の特設コーナーを設け、おなじみの紅白のちとせあめと並んで販売されていました。

場所柄もあって、興味を持った外国人観光客が買い求めることもあるそうです。

店長の小林由実さんは、「ちとせあめは長くて食べにくいと言われることもありますが、子どもが好きな味を増やすことで多くのお子さんに親しんでもらい、日本の伝統文化として大切にしていきたい」と話していました。


<ペットもお参り>
最近では、七五三詣でをするのはヒトだけではないようです。

東京・新宿区の市谷亀岡八幡宮は、以前からペットのためのお守りを扱っていましたが、飼い主からの要望を受けて、9年前からペットの七五三のご祈とうをするようになりました。

評判は口コミで広がり、取材に訪れた日は、平日にもかかわらず8件のご祈とうの予約枠がすべて埋まっていました。

sin171110.5.jpgちょうどお参りに来ていたのは、飼い主の女性に連れられた3歳のメスのトイプードル、花ちゃん。しっかりと着飾っていました。

初穂料は5000円。ご祈とうの内容は人間の場合と同じで、神職が無病息災を祈り、お清めをしてくれます。花ちゃんも神妙な面持ちで、おとなしくしていました。

sin171110.6.jpg飼い主の女性は、「ペットも七五三のお参りができると聞いて、いつまでも元気でいてほしいと申し込みました。犬の着物を用意するなど、私のほうがこの日を楽しみにしていました」と話していました。

神社によりますと、ペットの七五三の問い合わせは年々増え続け、ことしは去年より50件ほど多いおよそ400件のご祈とうを行い、中には、北海道や九州からペット連れで訪れる人もいるそうです。

9割は犬、次いで多いのは猫ですが、これまでに、うさぎや亀の七五三詣でもあったということです。


<記念写真に出張サービス>
そして、七五三といえば記念写真。
家族そろって写真館を訪れ、緊張しながら表情を作った“いかにも”なものだけではありません。
最近注目されているのは、「出張撮影サービス」です。

sin171110.7.jpg写真館やスタジオに足を運ぶのではなく、プロのカメラマンに自宅や参拝先などに来てもらい、自然な姿を撮影してもらうのです。

写真は、パソコンやスマートフォンで見たりSNSで発信したりできるよう、データで受け取れます。
この記事を書いている私も、子どものお宮参りで出張撮影を利用したことがあります。

カメラを持たなくていいので神事などに集中できる上、家族の自然な表情をプロの腕で切り取ってもらえるので仕上がりは大満足でした。

sin171110.8.jpg5年前から出張撮影サービスを手がける東京の会社「ライフスナップ」では、1時間から1時間半ほどの間に撮影した写真の中からカメラマンが100カットほどを選び、色補正などをしたうえで提供しています。これで料金は3万2000円です。

七五三は特に関心が高く、ことしは年明けから問い合わせが相次ぎ、5月に予約の受け付けを始めたところ、10月、11月の週末や日柄のいい日は次々と予約が入ったということです。

「口コミなどで年々利用者が増え、リピーターもいます。七五三については早い時期から問い合わせが多く、特別な思い入れがあるのだなと感じています」(「ライフスナップ」富井義人社長)


<健やかな成長を願って>
ハロウィーンのあとは七五三、そしてクリスマス、お正月…と、なんだか忙しい気もしますが、七五三には、いつの世にも変わらない子どもへの深い愛情が込められているように感じます。

進化した今どきのお祝いのしかたで、家族の絆を確かめ合い、思い出に残る楽しいひとときを過ごすのもいいかもしれません。

投稿者:野町かずみ | 投稿時間:16時38分

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