文研ブログ

メディアの動き 2023年11月17日 (金)

【メディアの動き】ジャニーズ事務所が社名変更・廃業へ民放各局の検証番組相次ぐ

 故ジャニー喜多川氏による性加害の問題で,ジャニーズ事務所が10月2日,記者会見し,同月17日付で社名を「SMILE-UP.」に変更すると発表。被害者への補償はこの会社が行い,将来的に廃業するとした。またタレントのマネージメントなどを行う新会社の設立を明らかにした。この会見をめぐっては,運営担当のコンサルティング会社が,質疑応答で指名しないようにする記者をまとめた「NGリスト」を作成していたことが後日,明らかになり,批判を浴びた。

 当面の焦点は,被害者への補償や再発防止の取り組みがどこまで実行されるかにある。NHKはこうした取り組みが着実に実施されると確認されるまで,『紅白歌合戦』を含めた新規の出演依頼は行わない方針を明らかにしている。民放各局も「適切に判断する」などとして,対応を慎重に見極める構えだ。

 その一方で,メディア自身の責任も免れない。今回の性加害問題では,被害拡大の背景に「マスメディアの沈黙」があると指摘された。9月のNHK『クローズアップ現代』に続き,10月に入ると民放各局の検証番組が相次いだ。日本テレビは同月4日の『news every.』,フジテレビは21日の『週刊フジテレビ批評特別版』,テレビ東京は26日の『特別番組』で,いずれも社内調査の結果を伝えた。またTBSの『報道特集』は7日,関係者への独自の取材をもとに自社の対応を検証した。社内調査や取材の対象になったのはフジテレビで77人,テレビ東京で134人,『報道特集』で80人以上にのぼった。

 この中でまず問われたのは,報道機関としての姿勢である。1999年に始まった『週刊文春』のキャンペーン報道をめぐり裁判結果を報じなかったことや,今年(2023年)3月にイギリスBBCのドキュメンタリー番組が放送されたあとも迅速に対応しなかったことについて,「男性の性被害に対する認識が鈍かった」「芸能ネタ,週刊誌ネタだと思っていた」など,報道局の反省の弁が伝えられた。検証のもう1つの柱は旧ジャニーズ事務所と各局との関係である。日ごろ事務所側と直接向き合ってきた番組制作・編成部門への調査・取材では,一部の社員から,事務所側の圧力や自局の忖度(そんたく)を感じていたという証言が出たことが伝えられた。これを受け,番組では「社内でジャニーズを特別扱いする空気が20年以上にわたって醸成された」(日本テレビ),「必要以上に気を遣う意識が根づいていた」(フジテレビ)との認識が示された。『報道特集』は,テレビ局自身が報道とエンターテインメントの両方を担っていることが大きな矛盾になっているという,制作担当者の声を報じた。

 一連の検証番組はいずれも社内の調査・取材にとどまっているのが現状だ。その一方で,性加害の深刻な被害を訴える新たな証言も報道されている。NHKは10月9日の『ニュース7』で,2002年秋に当時高校生の男性が東京・渋谷のNHK放送センター内のトイレで,ジャニー氏から複数回にわたり性被害に遭ったと証言していることを伝えた。局によって濃淡はあるにせよ,実態の解明がまだ緒についたばかりであることを端的に示すものといえる。こうした中,TBSは番組での検証とは別に,外部の弁護士を交え中立的で第三者的な立場から評価する社内調査を実施すると明らかにした。重大な人権侵害を長年見過ごし,結果的に被害を拡大させたメディアの責任が引き続き問われている。

メディアの動き 2023年11月16日 (木)

【メディアの動き】オーストリア憲法裁判所,公共放送の監督機関の委員の選任方法に違憲判決

 オーストリア憲法裁判所は10月10日,公共放送ORFの2つの内部監督機関である財団評議会と視聴者評議会の委員の選任方式を定めたORF法の条項について,連邦政府の影響力が大きすぎ,公共放送の独立性と多元性の保障を定めた憲法に違反するとの判決を出したと発表した。2022年6月に東部ブルゲンラント州が,同条項が違憲だとして提訴していた。

 財団評議会は,ORFの予算と決算の承認,会長の任命,受信料額の決定などを行う監督機関。35人の委員で構成され,このうち連邦政府が9人,9つの州政府が各1人,国会に議席を持つ政党が6人,視聴者評議会が6人,ORF職員総会が5人を選任する。憲法裁判所は,連邦政府と視聴者評議会が選任する分について多元性を確保する規定がないこと,また連邦政府が選任する数が,政府から独立した視聴者評議会より多いことが,独立性と多元性保障の原則に反するとした。

 視聴者評議会は,視聴者を代表し,ORFの番組や編成について勧告を行う機関。30人の委員からなり,このうち13人を,商工会議所,労働組合,教会など法定の13団体が直接選任する。残りの17人は,教育,芸術,スポーツなど14分野の団体が3人ずつ候補者を政府に提出し,その中から連邦首相または担当大臣が任命する。憲法裁判所は,首相が任命する人数が13団体が直接選任する数より多いこと,また首相の裁量の余地が大きいことが,独立性と多元性保障の原則に反するとした。

 同裁判所は,2025年3月末までにORF法を改正することを求めた。

メディアの動き 2023年11月16日 (木)

【メディアの動き】豪ABC,放送前の素材映像の提出を警察から命じられる

 オーストラリアの公共放送ABCが10月9日に報道番組で放送した環境団体の抗議活動をめぐって,西オーストラリア(WA)州警察がABCに対し,放送前に素材映像を提出するよう命じていたことがわかった。ABCは命令に応じておらず,今後,法的措置に発展する可能性がある。

 WA州では,天然ガス施設の拡張をめぐり,気候変動などへの懸念から環境団体の活動家による抗議活動が激化している。8月には,開発側企業の最高経営責任者の自宅前にいた活動家らが逮捕された。こうした中,ABCの調査報道番組『Four Corners』の取材班は,環境団体の活動を撮影したが,その際,活動家に対し,匿名性を保障する旨を伝えていた。

 ABCのアンダーソン会長は10月6日,州警察に対し情報源を明かさないとの説明を行ったものの,今後も素材映像の提出はしないという明確な方針は示さなかった。

 メディア業界の労働組合MEAAは,警察による今回の命令が情報源の機密性を侵害するとして,10月9日,ABCの経営陣に請願書を提出し,州警察の命令に応じないよう求めた。また,国際ジャーナリスト連盟(IFJ)は10月12日,州警察に対し,命令の撤回を求めた。

 州警察は,10月10日に発表した声明で,命令の対象となった映像は犯罪の容疑に関連しており,合理的な理由がなく命令に従わない場合,12か月以下の禁錮刑および1万2,000オーストラリアドル(約117万円)以下の罰金が科される可能性があると表明した。

メディアの動き 2023年11月16日 (木)

【メディアの動き】イスラエル・ハマス軍事衝突,困難な中で報道続く,課題も浮き彫りに

 中東パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスは10月7日,イスラエルへの大規模な攻撃を行い,これに対する報復としてイスラエル軍は,ガザ地区への水や食料,燃料の供給を断ったうえで,陸空から大規模な軍事行動に踏み切った。10月31日までに,イスラエル側で少なくとも1,400人が死亡,パレスチナでは3,500人を超える子どもを含む8,525人が死亡した。ジャーナリストの死者も増える中,公平性など報道の課題も議論になっている。

 ニューヨークに本部を置くCPJ(ジャーナリスト保護委員会)によると,10月31日までにジャーナリスト31人が死亡した。このうちイスラエル人が4人,パレスチナ人が26人,レバノン人が1人となっている。また8人がけがをし,9人が行方不明となっている。

 イスラエルに封鎖され,往来が厳しく制限されてきたガザでは,以前から日々の取材の多くをパレスチナ人のジャーナリストが担ってきた。NHKガザ事務所でもプロデューサーのムハンマド・シェハダとカメラマンのサラーム・アブタホンが家族の避難場所を探したり,食料を求めたりしながら,現地の状況を取材し続けている。ロイター通信は10月27日,イスラエル軍がハマスは意図的にジャーナリストや市民の周辺で軍事行動を展開しているとし,こうした中でジャーナリストの安全を保証することはできないとの警告文を同社に送ってきたと伝えた。

 CPJは,死亡した1人1人の履歴を紹介しながら,「ジャーナリストは紛争を報じるという大切な仕事をしている一般市民であり,紛争当事者から攻撃の対象になってはならない」と,増え続ける犠牲に懸念を示している。

 イスラエル,ハマス双方が情報戦を繰り広げる中,正確性や公平性についての議論も起きている。10月17日,ガザの住民が避難先として身を寄せていた病院で,数百人が死亡した爆発では,発生直後,イギリスの公共放送BBCやNew York Timesなど複数のメディアが,イスラエルによる攻撃を示唆した。アメリカ政府などがガザから発射されたミサイルの可能性を示すと,各メディアはハマスの情報に頼り十分な検証をしなかったなどと認め修正した。各社とも現場の映像などをもとに検証を続けているが,最終的な事実の確定には至っていない。

 また,アメリカのAP通信やBBCは,編集ガイドラインの中で,政治的な意味合いを持つ「テロリスト」という言葉は,発言を引用する場合を除いて使用せず,「武装勢力」と形容していたが,イギリスでは閣僚などから批判が相次いだ。一方,ハマスの攻撃だけを「大量虐殺」と形容し,イスラエル軍による市民の犠牲とのバランスを欠くなどの不満も出て,BBCの正面玄関に赤いペンキが投げられる事件も起きた。

 ソーシャルメディアでも,過去の映像やAIで合成した画像を使った偽情報が拡散された。また多くの国でテロ組織に指定されているハマス関連のコンテンツが投稿されていることも問題視された。2023年8月,大手プラットフォームに偽情報やヘイトスピーチを監視し,削除する責任を課すデジタルサービス法が発効したEU(ヨーロッパ連合)は,10月10日から13日にかけX(旧Twitter),Meta,TikTok,YouTubeに違法コンテンツの削除など対策をとるよう警告文を送った。MetaもXも,対応をとったと説明したが,その後も誤情報,偽情報の拡散は続いている。 

2023年11月15日 (水)

岸田総理の思い違いは何なのか? ~減税が国民の心に届かない訳~【研究員の視点】#509

NHK放送文化研究所 研究主幹 島田敏男

 週明けの11月13日。神田憲次財務副大臣が就任から2か月足らずで辞任しました。事実上の更迭です。神田衆議院議員は、もともと税理士でもありますが、地元である名古屋の市税事務所から税金の滞納で4回にわたって差し押さえを受けていたことが9日に発覚していました。 

kanda2.jpg しかし税に関して重い責任を持つ財務副大臣でありながら直ちに職を辞することをせず、野党側はこぞって「辞任は当然」と攻め立てました。そして週末をまたいで遅きに失した辞任となったわけですが、山田太郎文部科学政務官、柿沢未途法務副大臣に続いて、9月の内閣改造後、不祥事が明らかになって辞任した3人目の政務三役となりました。

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 この財務副大臣の進退問題が議論の的になっていた11月10日(金)から12日(日)にかけてNHKの月例電話世論調査が行われました。国民の不興を買っていた問題が岸田内閣を直撃しました。

☆あなたは岸田内閣を支持しますか。それとも支持しませんか。

  支持する   29%(対前月ー7ポイント)
  支持しない   52%(対前月+8ポイント)


おととし10月に岸田内閣が発足して以来、初めて30%を割り込みました。支持する29%、支持しない52%という数字は、おととし8月調査=菅内閣末期の数字と全く同じです。永田町・霞が関に激震が走りました。

 思い返せば、当時、菅義偉総理は衆議院議員の任期満了を前に、自民党総裁選挙で再選を果たして政権継続を目指す腹積もりでした。しかし、支持率の低迷で自民党内から「菅では選挙を戦えない」の大合唱が起き、総裁選への立候補を断念したいきさつがあります。

 上記の内閣支持率を与党支持者、野党支持者、無党派の別に見てみると、「支持する」は与党支持者で53%、野党支持者で12%、無党派でも12%となっています。

 野党支持者、無党派の支持率の低さもさることながら、与党支持者(自民党支持者が9割以上)の支持率も5割程度ですから足元がおぼつかない状態です。

 ちなみに岸田内閣の支持率が発足以来最も高かった去年7月調査の59%の時には、与党支持者の支持率は今回調査より30ポイント以上高い86%に上っていました。今は与党支持者の岸田離れが顕著になっています。

  内閣改造が浮揚力を生まず、逆に政務三役の辞任続きが低迷の最大要因かというと、それ以上にもっと大きな問題が横たわっているようです。 

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☆政府は物価高に対応するため、所得税などを1人あたり4万円減税し、住民税が非課税の世帯には7万円給付する方針です。これを評価しますか。評価しませんか。

  評価する   36%
  評価しない   59%


この回答についても与党支持者、野党支持者、無党派の別に見てみると、「評価する」は与党支持者で50%、野党支持者で20%、無党派で29%となっています。

  内閣を支える立場の与党支持者でも半数しか評価していないという結果で、減税と給付を柱に据えた経済対策が広く国民の心に届いたとはいえないでしょう。ではなぜ国民の心に届かないのでしょうか?

☆岸田総理大臣は、今回の減税と、防衛費の財源確保に向けた将来的な増税は「矛盾するものではない」と説明しています。これに納得できますか。納得できませんか。

  納得できる   19%
  納得できない   67%


納得できないが7割近くに上っています。与党支持者でも57%が「納得できない」と答えています。1回だけの減税と給付を掲げる一方で、去年の暮れに閣議で決めた「5年後の防衛費を対GDP2%水準にまで増やす計画」を実現するためには増税も必要としていることを国民はよく知っています。

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 国民の中に「先に減税を掲げ、時間がたってから後で増税するつもりだろう」という、さいぎ心に満ちた受け止めが広がっていることに、岸田総理とその周辺がどこまで気づいているのでしょう。

  岸田総理と周辺は「政権の継続のためには国民の評価が得られる減税を先に進め、国民に我慢をお願いする増税は先送りするのが得策」と判断している様子が見え隠れします。しかし、そう判断するのであるならば財政健全化に欠かせない「増減税一体」の原則の下に、増税の時期と規模を明確にすべきです。さらには社会保障制度の維持のために必要な国民負担の増加の時期と規模についても明らかにするのが誠実な姿勢でしょう。

  こうした先々を見通すことが可能な発信がないために、減税や給付という話に対し、与党支持者も含めて「場当たり的な延命策にしか見えない」というシニカルな受け止めが広がっていると言わざるをえません。このあたりに岸田総理の思い違いの核がありそうです。

  ついでに言えば、3年前の安倍内閣当時、新型コロナ禍に向き合う緊急事態宣言を全国に広げるために国民1人あたり10万円を給付したのと比べ、1人あたり4万円の減税というのはどう映るか。物価高が続く中でありがたみが薄いと感じる人が決して少なくないという面もあります。 

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 岸田総理は来年9月に予定されている自民党総裁選挙で再選を果たし、長期政権を目指したいという気持ちに変わりはないようです。そのためには、遅くとも来年夏までの間に衆議院の解散・総選挙に踏み切り、最低でも現在の単独過半数の議席を維持する必要があります。

  しかしながらここまで見てきたように、岸田内閣を取り巻く環境には厳しいものがあります。とりわけ与党支持者の岸田離れは深刻で、これを受けて自民党内から「解散はさせない。首のすげ替えが必要だ」といったうねりが表面化しないとも限りません。

  「政界、一寸先は闇」と言います。当面は岸田総理が局面の打開のためにどういう一手を打つことができるのかに注目です。ただ、国際情勢が混とんとしているのと同様に、国内情勢も先月末に衆議院議員の4年間の任期を折り返した後、さまざまな選択肢が渦巻き始めているように感じます。 

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島田敏男
1981年NHKに入局。政治部記者として中曽根総理番を手始めに政治取材に入り、法務省、外務省、防衛省、与野党などを担当する。
小渕内閣当時に首相官邸キャップを務め、政治部デスクを経て解説委員。
2006年より12年間にわたって「日曜討論」キャスターを担当。
2020年7月から放送文化研究所・研究主幹に。長年の政治取材をベースにした記事を執筆。

調査あれこれ 2023年10月20日 (金)

部活にまつわるエトセトラ ~「中学生・高校生の生活と意識調査2022」から~【研究員の視点】#508

世論調査部(社会調査)村田ひろ子

 猛暑の夏が終わり、ようやく秋らしくなってきましたね。近所の商店街で、テニスラケットを持った中高生たちがたい焼きをおいしそうにほおばっているのを見かけて、「秋といえば、スポーツ、それからなんといっても食欲だよね」と一人納得したのでした。もちろん芸術の秋も楽しみたいですよね。

 話は少しそれますが、中高生にとって、スポーツや芸術といえば、部活動ではないでしょうか。イマドキの中高生たちは、どのように部活動に取り組んでいるのか、気になりませんか?NHK放送文化研究所が昨夏、全国の中高生を対象に実施した世論調査※1の結果を確認してみましょう。

 学校で、部活動をしているかどうかを尋ねた結果、中学生では、「体育系(運動部)にだけ入っている」という人が6割以上を占めています。高校生では4割近くで、中学生より少なくなっています。また、部活動に『入っている(体育系+文化系+両方)』人は、中学生が8割、高校生が7割で、多くの中高生たちが部活動に入っていることがわかります。

部活動に入っているか1020_1_nyuubu.png

 それでは、中高生たちは自分が入っている部活動にどのくらい満足しているのでしょうか? 中高ともに『満足している(とても+まあ)』が9割近くにのぼります。部活動の内容別にみると、「体育系(運動部)にだけ入っている」人も、「文化系にだけ入っている」人も、『満足している』が9割近くで、差はありません。

部活動に満足しているか(分母:部活動に入っていると回答した人)1020_2_manzokudo.png

 中高生の多くが、部活動に満足しているのはなぜでしょうか?部活動に入っている理由を複数回答で尋ねた結果をみると、中高ともに「自分がやりたかったから」が他の選択肢を引き離して最も多く、中学生が72%、高校生が76%にのぼります。「自分がやりたかったから」を選んだ人の部活動の満足度は9割を超えていて、それ以外の回答を選んだ人の満足度(約7割)と比べてかなり高くなっています。やりたいことが選べて満足できている人が多いようです。一方で、学校で必ず入ることになっているという回答が1割程度あります。学校の方針なのでしょうが、納得できていればいいのですけど、少し心配もしてしまいます。

部活動に入っている理由(複数回答、分母:部活動に入っていると回答した人)1020_3_riyuu.png

 さて、中高生は、部活動を通じて多くの人と知り合い、交流を深めていると考えられますが、部活動と友だちづきあいの間には関連がみられるでしょうか? 高校生では、「ちょっとした悩みごとを相談できる友だち」や「深刻な悩みごとを相談できる友だち」がいる人は、部活動への参加の有無では差がありません。一方、中学生では、部活動に入っている人のほうが、いずれの場合についても、割合が高くなっています。高校生と比べて行動範囲が限定され、おのずと学校内の友人関係が中心になるなか、部活動に入っている子のほうがクラス以外の交友範囲が広がって、深い関係の友だちのいる割合が高くなっているのかもしれませんね。

友だちがいる人の割合(部活動への参加の有無・中高別)1020_4_yuujinnsuu.png

 中高生について調べた世論調査の結果は、他にもたくさん!SNS利用やジェンダー意識、親子関係、学校生活など、イマドキの中高生の意識、ぜひ、こちらからチェックしてみてください!
今どきの中高生たち~第6回「中学生・高校生の生活と意識調査2022」単純集計結果~

※1 第6回「中学生・高校生の生活と意識調査2022」

○おすすめ記事
コロナ禍の不安やストレス,ネット社会の中高生~「中学生・高校生の生活と意識調査2022 」から①~
ジェンダーをめぐる中高生と親の意識~「中学生・高校生の生活と意識調査2022」から②~

【村田ひろ子】
2010年からNHK放送文化研究所で社会調査の企画や分析に従事。これまで、「中学生・高校生の生活と意識」「生命倫理」「食生活」に関する世論調査やISSP国際比較調査などを担当。

メディアの動き 2023年10月17日 (火)

【メディアの動き】『1. 5℃の約束』,NHK 民放6局連動で放送,メディア自身の温暖化対策も紹介

 地球温暖化対策を考える番組『1.5℃の約束–いますぐ動こう,気温上昇を止めるために。(以下,1.5℃の約束)』が9月24日,NHK総合で放送された。NHKと民放のあわせて6局のアナウンサーが参加し,「地球沸騰化」といわれるほどの熱波や,山火事・洪水など地球温暖化の影響による被害が世界で相次いでいる現状,それに日本各地で行われている温室効果ガスの排出削減といった取り組みが紹介された。

 この番組は,2021年の「COP26」で「世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5℃に抑える」という新たな決意を世界各国が表明したことをきっかけに,2022年から国連と日本のメディアが共同で始めた同名のキャンペーンの一環で,昨年に続き2回目の放送である。今年のキャンペーンには150を超える国内のメディアが参加しており,番組やウェブサイトなどで気温上昇を抑えるための対策などを視聴者や読者に伝えた。また,キャンペーンではメディア自身が地球温暖化対策を実践することを視野に入れている。こうした事業者が対策に取り組む「環境経営」は,他業種では積極的に導入されている。このため番組では,TBSのニュース番組『Nスタ』で2022年5月から原稿や進行表をタブレットに変えペーパーレス化を進めたことや,『1.5℃の約束』のセットの一部は廃棄物をリサイクルして作ったことなどが紹介された。

 地球温暖化の影響が深刻さを増す中,メディアには,これまでの「対策を伝える」役割だけでなく,「自ら積極的に排出削減に取り組む」という環境経営の推進がいっそう求められる。

メディアの動き 2023年10月17日 (火)

【メディアの動き】ニュース記事の使用料,著しく低い場合は独禁法違反のおそれと公取が指摘

 インターネット上でニュースをまとめて表示するポータルサイトやアプリの運営事業者に対して,記事を提供している新聞社などのメディアから,使用料をめぐる不満の声があがっている。このため公正取引委員会は,メディア220社と消費者2,000人のアンケート,事業者や有識者への聞き取りなどをもとに取引実態を調査し,9月21日,報告書を公表した。

 それによると,2021年度に支払われた使用料の単価は運営事業者によって5倍程度の開きがあり,一方的に著しく低い単価を設定した場合は,独占禁止法違反のおそれがあると指摘した。特におよそ6割のメディアが,使用料の支払額が最も多い事業者として挙げたヤフーについては,「ニュースメディア事業者との関係で優越的地位にある可能性がある」と言及した。

 これを受けてヤフーは25日,メディア事業者に対して契約内容について丁寧に説明するとともに,配信の実績に応じた契約の見直しなどを検討していくなどと発表した。

 記事使用料をめぐる論争は海外でも広がっており,カナダでは2023年6月,ポータルサイトなどを運営しているプラットフォーム事業者に対して,ニュース記事の掲載で得た利益の一部を報道機関に分配することを事実上義務づける法律が成立した。カナダ政府は,民主主義に不可欠なニュースメディアの存続のために必要だとしているが,Meta社はカナダでの自社サービスではニュースを閲覧させないようにすると発表するなどの動きが出ている。

 メディアとプラットフォームが共存する新たな仕組みが確立されるかが注目される。

メディアの動き 2023年10月17日 (火)

【メディアの動き】"メディア王"マードック会長引退発表

 アメリカのFOX Newsなどの親会社Fox CorporationとWall Street Journalなどを傘下に持つNews Corporationは9月21日,ルパート・マードック氏(92歳)が11月に会長職を退いて名誉会長となり,長男ラックラン氏が会長に就任すると発表した。英米豪3か国にまたがる同氏の事業の行方に関心が集まっている。

 オーストラリア出身のマードック氏は,父親の急死により1952年に南部アデレードの地方紙を引き継いだあと,経営手腕を発揮して新聞事業を拡大し,同国初の全国紙を創設する一方,テレビ事業にも乗り出した。1969年にはイギリスに進出して大衆紙News of the World(NoW)やSUN,さらには高級紙Timesを買収し,衛星放送にも出資して“メディア王”とも呼ばれるようになった。1980年代には映画事業も取得してアメリカに進出し,90年代にかけて地上テレビネットワークのFOX,スポーツのFOX Sports,ケーブルチャンネルのFOX Newsなどを立ち上げた。

 同氏は衆目を集めるビジネス戦略に長け,NoWやSUNでは芸能人の醜聞,性や暴力に関わる話を煽情的な見出しで伝え,スポーツや戦争報道では愛国心をあおる立場を強調して販売数を伸ばし,1つの文化を成したとも評される。取材では手段を選ばず倫理を顧みない姿勢が目立ち,NoWは王族など著名人や犯罪被害者の携帯電話の留守録を盗聴していた違法行為が発覚して,2011年に廃刊に追い込まれた。

 マードック氏は各紙の論調などにも関与し,その世論誘導の力を政治家に恐れられ,オーストラリアの歴代首相,サッチャー,ブレアなどイギリスの歴代首相とも密接な関係を築き,両国政界への影響力を誇った。EU離脱を問う2016年の英国民投票では,最大部数のSUNを中心にEUを批判するキャンペーンを展開し,離脱の世論形成を後押しした。

 アメリカではFOX Newsのトーク番組に,社会の価値観や宗教観の変化,格差の拡大に不安を抱く人たちの恐れや怒りをあおる右派ラジオのビジネスモデルを採用。視聴者数でCNNやMSNBCを超えるチャンネルに成長させた。

 これらのトーク番組は新型コロナウイルスのワクチンや気候変動,銃規制,人種差別,移民の問題などで根拠を欠く主張を展開する保守派に寄り添い,2020年のアメリカ大統領選挙では投票・集計機を使った不正などで結果が変えられたとするトランプ前大統領の陣営の主張を繰り返し放送。投票機器メーカーに名誉毀損で訴えられ,FOX側が7億8,750万ドル(約1,200億円)の和解金を支払った。この裁判ではマードック氏が「選挙不正」の主張は偽りだと知りながら,前大統領寄りの視聴者離れを恐れて虚偽の主張を放送し続けることを認めていたことなどが明らかになり,利益を何よりも優先する同氏の経営姿勢が浮き彫りになった。

 ジャーナリストのカーラ・スウィッシャー氏は,マードック氏のメディアが偽情報を意図的に拡散して事実への信頼を損なうなど「英米豪3か国のメディアで最も破壊的な力だった」と評価。FOX Newsの放送はアメリカ社会の分断と民主主義の危機を際立たせた2021年の連邦議会議事堂襲撃事件に影響したとの指摘もあり,70年にわたる同氏の業績には批判的な意見が多い。株主の懸念も伝えられているが,引退発表は長男の後継者としての地位確立がねらいともされ,当面,経営方針は変わらないとの見方が強い。

メディアの動き 2023年10月16日 (月)

【メディアの動き】関東大震災100年,各メディアが特集「災害教訓の誤った語り継ぎ」の事例も

 9月1日で,1923(大正12)年の関東大震災の発生から100年になった。各メディアは1日の前後に特集番組や特集記事を相次いで放送・掲載。関東大震災の被害を振り返り,今後の大地震への備えなどを訴えた。

 このうち4日にNHK総合で放送された『映像の世紀バタフライエフェクト』は,関東大震災で奇跡的に焼け残った東京の神田佐久間町・和泉町を取り上げた。周辺がことごとく焼失する中,この地区の住民はバケツリレーなどで消火にあたり延焼を食い止めた。この2つの地区が焼失を免れたのは,すぐそばに神田川が流れていたことや,火が迫ったタイミングが,はじめは地区の南側,次に西側,東側,最後に北側と時間差があり,消火活動を1方向に集中できたことなどが大きな要因だった。しかし,「住民の団結によるバケツリレー」ばかりが強調され,美談として語り継がれた。番組では,このエピソードが戦争遂行のために次第に都合よくすり替えられ,「住民は空襲から逃げず立ち向かう」「焼夷弾が落ちたら1秒でも早く駆けつけ消火にあたる」などの無謀かつ危険な行動の手本として利用されたことを紹介。そして1945(昭和20)年3月10日の東京大空襲では,神田佐久間町・和泉町も焼け野原となり多くの人が逃げ遅れて亡くなったことを伝えた。

 災害時の教訓は,ときに一部だけが強調されて美談となり,誤った内容で語り継がれる危険性があることを,この事例は示している。情報の途絶によって拡散し,朝鮮人の虐殺などを引き起こした「流言飛語」とともに,100年前の震災が今に伝える教訓である。