文研ブログ

調査あれこれ 2021年12月09日 (木)

#353 テレビを見ない人々にも「届けきる」~SNSを活用した報道の新たな取り組み~

メディア研究部(番組研究) 宮下牧恵


 こちらの動画をまず、ご覧ください。


 若年層のテレビ離れが進む中 1)、NHKの報道局映像センターでは、2019年7月から、ふだんテレビを見ない人たちに、情報をデジタルで届けきる「モバイル・ジャーナリズム(MOJO)」と呼ばれる取り組みを始めています。「命や暮らしを守る情報」や「生活に役立つ情報」などを自分のこととしてより身近にとらえてもらえるよう、放送で伝えた内容をTwitterやFacebook、LINE、Instagram、YouTubeなどの外部プラットフォームに最適化した動画に編集して投稿するという取り組みです。
 上の動画は、2021年5月17日にBS1で放送された「#アスリートは黙らない」(『スポーツ×ヒューマン』)を再編集したものです。心の傷と向き合いながら、社会を変えようと行動する4人のアスリートを取材した番組で、中でも、学生時代の「体罰」の記憶に苦しめられ、慣習を変えようと活動している元バレーボール日本代表選手の益子直美さんについて編集したこの2分の動画は、もっと短い動画が多いSNS上では長めのものでしたが、それでもTwitter上のNHKニュースなどの複数の公式アカウントから投稿した結果、多くのユーザーからの反応がありました。
 動画を作成したのは、入局11年目で、MOJOチームのプロジェクトリーダーを務める寺田慎平カメラマンです。番組の撮影担当となり、テレビを視聴していない20代、30代にも、出演したアスリート達のメッセージを届けたいとSNSからの動画投稿を提案しました。
 放送局のコンテンツへの接触動向を確認すると、20代、30代は男女ともに、SNS上の公式アカウントからの接触が目立ち、特に、Twitterから接触している傾向が見られます 2)
 寺田カメラマンも、動画を投稿するにあたり、Twitterで視聴されやすい動画の作りを意識して作成を行ったそうです。具体的には、Twitter上では動画の音声を聴く人が少ないため、読み物のようにテロップで理解できるようにすることや、投稿文の冒頭で関心を持ってもらえるようにユーザーが読んだときにどのような気持ちになるかをイメージしながらディスカッションし、文章を考えるなど、工夫を行ったということです。
 こうした取り組みについて、「放送研究と調査」2021年8月号に掲載した放送研究リポート「テレビでは届かないメッセージをSNSで ~「スポーツ×ヒューマン」の事例から~」で詳しく書いています。ぜひ、お読みいただければと思います。
 私が取材した6月時点では、地域の放送局や報道現場のカメラマン、編集マンなど500名以上がオンライン上で議論や意見交換をしながら600本以上の動画を制作していました。今では参加者も約700名に増え、作成した動画も750本を数えるまでになったそうです。
 例えば、スマホを見ながら点字ブロックの上を歩いたり、立ち止まったりする行為、いわゆる「点ブロスマホ」の歩行者と衝突し、全盲の男性が救急搬送された体験を当事者の目線から訴えた動画には、視聴した多くの人々が、こうした社会の課題に対して自分自身が感じている問題意識をコメントしました。

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 また、多様性を認め合い、お互いを尊重しあえる社会の実現を目指す動きを伝える放送とあわせて、「生理の貧困」や、生理用品を保健室に貰いに行くことが出来ないなどの中学生の悩みについて特集したNHKのWEB記事に関連して、山口放送局の入局2年目の女性カメラマンが、公立中学校の校長が始めた取り組みを動画にしてTwitterに発信。さらに「NHK広報局note」で、職場での自分自身の生理に関する悩みや体験を記事にして掲載しました。こうした動画や記事などに、男性や、10代・20代の女性に、より接触してもらうためにはさらにどういうことができるのか、プロジェクトでは議論が進められています。

 8月25日に総務省が発表した「令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」 3)によると、すべての年代で<平日の「インターネット利用」の平均利用時間が「テレビ(リアルタイム)視聴」の平均利用時間を初めて超過>しました。また、<「世の中のできごとや動きについて信頼できる情報を得る」については、年代別に見ると、20 代を除く各年代で「テレビ」を最も利用しており、20 代では「インターネット」を最も利用しているという結果になっている。>ことも報告されています。
 放送局が発信する情報やコンテンツに、特に若い世代にどのようにして接してもらい、信頼を得られるのかが、NHKのみならず民放各社にとっても課題となっています。

 放送の現場でも、これからは放送だけでなく、自社サイトやネット配信、さらにSNSなどの外部プラットフォームをどのように組み合わせて発信を行い、信頼される情報基盤を維持していくことができるのかが鍵になりそうです。こうした取り組みについて、今後も注目していきたいと思います。


1) 若年層のテレビ離れの様相については以下の論文に詳しく記載されている
世論調査部 渡辺洋子/ 伊藤 文 / 築比地真理 / 平田明裕 「新しい生活の兆しとテレビ視聴の今 ~「国民生活時間調査・2020」の結果から~」『放送研究と調査』(2021年8月号)P19-P21 
2) 世論調査部 保髙隆之 「人々は放送局のコンテンツ,サービスにどのように接しているのか~「2020 年7月全国放送サービス接触動向調査」の結果から~」」『放送研究と調査』(2021年3月号)P4-P7
3) 「令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」 (令和3年8月 総務省情報通信政策研究所)p3、P78
https://www.soumu.go.jp/main_content/000765258.pdf



メディアの動き 2021年12月01日 (水)

#352 総務省で新たな検討会開始。どこまで踏み込んだ議論が行われるのか?

メディア研究部(メディア動向) 村上圭子


 11月8日、総務省で「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会(本検討会)」がスタートしました。放送行政を包括的に議論する場としては、2015年11月から行われていた「放送を巡る諸課題に関する検討会(諸課題検)」に次ぐ、6年ぶりの検討会の立ち上げとなります。諸課題検で行われていた受信料制度や民放の経営基盤強化等の議論は今後、本検討会に引き継がれていくと思われます。
 私は初回の会合をオンライン傍聴しましたが、放送行政の議論では長年踏み込んでこなかった問題提起が行われたと感じました。また、放送やメディアを巡る議論の場にはこれまであまり登場してこなかった、金融サービスや情報銀行といったデジタル化の幅広い知見を持つ構成員の人選と、彼らの発言にも関心を持ちました。総務省のウェブサイトには初回の議事要旨が公開されていますので、どんな議論だったのか、詳細をお知りになりたい方はそちらをご覧いただければと思います1)。本ブログでは、諸課題検が発足した時から放送政策の取材を重ねてきた私の視点で所感を記しておきます。

●影の主役は“ブロードバンド”?
 この検討会の影の主役は“ブロードバンド”ではないか、初回を傍聴して私が最も強く感じたのはこのことでした。そう感じた理由を、順を追って説明していきたいと思います。

*棚上げとなっていた“ミニサテ”問題
 まず前提として、地上テレビ放送の仕組みについて簡単に触れておきます。放送法上、地上放送局は、制作した番組や取材した情報を全国津々浦々の人々に届ける義務を負っています2)。そのため、現在、NHKと127局の民放はそれぞれ、放送波を送信する東京スカイツリーを始めとした大出力の親局、大規模中継局、そして、ミニサテと呼ばれる小規模中継局を設置し、維持・管理を行っています3)(図1)。


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 地上テレビ放送には、放送波で番組を直接自宅や集合住宅等のアンテナに送信するこの方法の他に、ケーブルテレビやIPTV(IPマルチキャスト方式5))による「再放送サービス」があります。現在、日本の全世帯の50%強は、自宅にアンテナを設置することなく、このサービスで地上放送を視聴しています。それでも世界的に見ると、日本は地上波を直接受信する世帯の割合は極めて高く、言い換えれば地上放送局が多くの親局・中継局を維持・管理している国であるといえます。
 ただ、同じ放送局でも、平地が多いエリアを基盤とする局とそうでない局では、状況に大きな差があります。前者では親局と数局の大規模中継局だけでエリア内の人達に放送を送り届けられますが、後者の山間部や離島を抱えるエリア等では、中継局とミニサテを合わせると100局以上を維持・管理しなければならないところもあります。私は取材や調査でよくローカル局を訪れるのですが、そこでは、雪が降る中、大雨が降る中、山の上にある中継局から放送波が途切れずきちんと送信できるよう地道で弛まぬ取り組みを続けていることや、それが局にとっての使命であり誇りでもあるということを伺うことも少なくありません。ただ、こうしたインフラに関わる負担が、近年の広告収入の減少で苦境に陥るローカル局の経営を圧迫しているということは事実でもあります
 2020年3月に議論がスタートした諸課題検の「公共放送の在り方に関する検討分科会(公共放送分科会)」では、民放連から、全人口の10%に満たない人達が住むエリアをカバーするために維持するミニサテの諸費用については、受信料収入で成り立つNHKがより多くの負担をすべきではないか、という考え方が提起されました6)。ミニサテは2020年代半ばから更新の時期を迎えるため、局によっては大きな出費が想定されています。これを踏まえてまとめられた改正放送法案では、NHKは難視聴解消に関して民放に協力するよう努めるという項目が設けられました。しかし、この改正案は国会に提出されたものの、審議未了のまま廃案となりました。
 こうして棚上げとなっていた“ミニサテ”問題ですが、本検討会では主要な検討項目となっています。会合の冒頭に金子恭之総務大臣からは、「地上テレビ放送については、地方部において従来の放送ネットワークインフラの維持が困難な状況にあり、早急な対応が必要」、中西祐介副大臣からも、「今、全国津々浦々に張り巡らされております放送のネットワークインフラについても、 やはり時代の変化を見据えて、効率的なコスト構造への転換を図っていく、そういう検討を重ねる必要があるのではないか」との発言がありました7)

*新たに出てきた「ブロードバンド代替」というキーワード
 さて、前置きが長くなりました。なぜ私は本検討会の影の主役がブロードバンドであると感じたのか。その理由を示すのが、事務局から提出された図2の資料です。これは、先程から述べているミニサテを含めた放送ネットワークの将来像についての論点を示したものですが、NHKと民放で設備共用を検討するという項目の下に、「ブロードバンド等による代替の可能性」という内容が示されています。
 去年の諸課題検の時は、あくまで放送波で送り届けるための設備としてのミニサテの更新や維持・管理を巡る負担をどうするのか、という議論でした。しかし本検討会では、それに加えて放送波をブロードバンドで代替する可能性と、それをなしうるための条件が議論の柱に据えられており、これまでの議論から一歩踏み込んだ問題提起に変わっていることがわかります。言い換えれば、諸課題検ではローカル局の経営を圧迫するインフラ部分の費用をどう削減していけるかがこのテーマの主眼でしたが、本検討会ではブロードバンドという放送波ではないインフラの整備にも受信料を活用することができるかというテーマへと、主眼が移っているとも言えるでしょう。
 更に事務局の資料には、具体的な代替手段の例として、光ファイバ、4G、5Gが入っているということにも注目しておきたいと思います。これまで地上放送の再放送サービスは先に述べた通りCATVとIPTVでしたが、一般的なオープンインターネットサービスであるユニキャスト方式による伝送も、今後、検討の照準に入ってくる可能性もありえます。この場合の技術的、制度的な位置づけをどうするのか。そして、この位置づけと、既に始まっているNHKを始めとする放送局による同時配信サービスとの関係はどう整理するのか……。ブロードバンド代替という提起をきっかけに、様々な議論が広がっていくことになるのではないかと思います。



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●今後の議論に期待すること

*“融合”議論どこまで?
 「通信放送融合」という言葉が一般的に使われるようになって既に10年以上が経ちました。その間、ユーザーにとっての融合は劇的に進みました。では、政策の議論はどこまで融合してきたでしょうか。
 私はこれまで、放送行政側から政策議論をウオッチしてきましたが、情報通信行政の中において、放送はやや特殊な存在として扱われ続けてきた気がします。これは、放送法による様々な規制の下で行われる免許事業であるということもさることながら、当事者である放送局自身が、今後も放送波という伝送路を活用した「垂直統合モデル」を守ることによってこれまでの公共的役割を果たし続けていくのだという意志と、あくまで放送の高度化によってメディアとしての将来を切り拓いていきたいという願望が強かったことも一因としてあるのではないかと思います。
 2017年に内閣府で規制改革推進会議が開始され、議論の一部には放送の実情が十分に理解されていない発言や、いささか乱暴ともいえるような問題提起が行われたりもしましたが、結果的には通信放送融合を前提に、将来のこの国のメディアの姿を考えていこうという方向性が出てきたように思います。そして今年は、総務省に情報通信行政を横断する若手改革提案チームが発足し、「情報通信行政に対する若手からの提言9)」をまとめるなど、総務省の中でも融合の議論が本格化してきました。こうした中、本検討会は、どこまで踏み込んだ議論を行っていくことになるのでしょうか。本日のブログでは放送ネットワークの将来についてのみ触れましたが、本検討会はこのほかにも、ローカル局の将来や配信サービスの今後、NHKのあり方にも関わる検討課題が提示されています。2回目以降の議論にも注目していきたいと思います

*単なるミニサテの置き換えか?それとも・・・?
 最後に、ミニサテの代替としてブロードバンドを整備・活用していく可能性を議論するにあたり、いくつか私が気になっている点を記しておきます。
 まず、仮にブロードバンド(5G等の無線も含む)が個々の世帯まで整備されたとして、そこで提供されることになる放送サービスを利用するため、日々発生する通信費用は誰が負担するモデルにするのかです。テレビの電源を入れるだけで誰もが安心して安定したクオリティの放送を(受信料を支払えば)見る事ができるという環境の整備に努めてきた放送局としては、視聴者にさらに新たなコストが発生するというモデルはあり得ないと考えます。
 次に、そもそもミニサテの更新・維持・管理にNHKにより多くの負担を、ということで始まったこの検討ですから、それがブロードバンド代替となった場合には、放送波ではない伝送路の整備・維持・管理に果たして受信料をあてられるかどうか、その場合の額はどの位までは許容されうるのか、ということが議論されることになると思います。公共放送から公共メディアに向けて歩みを進めるNHKとして、どれだけ丁寧に国民・視聴者に納得できる説明を行い、理解を求めていけるか、その姿勢が改めて問われるということは言うまでもありません。
 そして、この検討は単にミニサテで提供していた放送サービスのみをブロードバンド上で提供するということにとどめるのか、それともそうでないモデルをめざすのかです。代替という言葉から連想すると放送サービスのみの提供という印象を受けますが、それぞれの地域、それぞれの世帯でブロードバンドが活用できる環境が整備されたにもかかわらず限定的なサービスに限るというのは、やはり経済合理性に欠ける気がします。
 現在、光ファイバや5Gの整備を加速させて、人々の暮らしや地域社会のデジタルトランスフォーメーション(DX)10)を加速させたいという国の大きな政策の機運があります。この機運はコロナ禍で一気に高まり、岸田新政権では「デジタル田園都市国家構想11)」も示されています。ただ、基盤となるブロードバンドインフラを全国津々浦々に整備し、全ての人々、全ての地域がその恩恵を享受できるようにすることは容易ではありません。条件不利地域の整備・維持を担う事業者には何等かの支援(交付金)が必要であり、その財源を誰がどう負担するのかという課題も解決していません。総務省では、電気通信事業法が全国一律のサービス提供の確保を求めているユニバーサル・サービスに、電話だけでなく光ファイバ等のブロードバンドを加える検討が続けられていますが、ミニサテがカバーするエリアは、ブロードバンド整備における事業者の非採算地域と重なり合うところも多いと思います。だとしたら、放送やメディアの政策を越えて、もっと大きな国の政策と連動させて考えていくことが出来るのではないでしょうか。そうすれば、かかる負担は放送局だけでなく、自治体や国など、多くの主体で背負い合うことができると思いますし、地域や人々にとっては、生活していく上で利便性が高まり、多様なメディアに触れることのできる可能性も高まると思います。そして放送局は、こうした地域DXに参画し、その担い手の一翼を担うことで、これまでの“放送の公共性”の役割に留まらず、新たな公共性の可能性を開拓していくことが出来るのではないでしょうか
 本検討会には、こうした俯瞰的でダイナミックな政策議論を期待しています。そして放送局には、守りではなく攻めの姿勢で検討課題に向き合うことを期待しています。


1) https://www.soumu.go.jp/main_content/000779340.pdf
2) NHKは義務、民放は努力義務
3) 親局や中継局、ミニサテは、局単独ではなく、複数の局による「共建」も多い。また、維持・管理については、青森県や長崎県のように、県内の民放が系列を越えて共同で会社を作り、そこに委託しているケースもある。
4) https://www.soumu.go.jp/main_content/000777188.pdf
5) 閉鎖的なネットワーク上に一斉に番組情報を配信し、そこからユーザーがリクエストした番組のみを受信する方式。1対1のユニキャスト方式に比べ、高画質のコンテンツを効率的に配信できる。契約者はケーブルテレビ同等のサービスを受ける事ができる。著作権法上もケーブルテレビと同様の扱いとなっている。
6) 背景も含めて詳細をまとめた文研ブログはこちら
7) 1)参照
8) https://www.soumu.go.jp/main_content/000777193.pdf
9) https://www.soumu.go.jp/main_content/000777197.pdf
10) ICTの浸透によって、人々の生活や企業や組織の活動をより良い方向に変化させるというもの11) https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_denen/index.html


おススメの1本 2021年11月24日 (水)

#351 放送のいまを未来に届ける―――『NHK年鑑』

メディア研究部(メディア史研究) 居駒千穂


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211119-3.jpg 10月30日に『NHK年鑑2021』を刊行しました。1931年に『ラヂオ年鑑』として創刊されて以来、戦時中と終戦直後の3年間を除いて毎年刊行され、本号は86冊目にあたります。今回は「見出しデザイン」なども一新し、読みやすさを追求しました。
 本号では新型コロナウイルス感染拡大へのNHKの対応や、発災から10年の東日本大震災について冒頭に掲載しました。また一年の動きを社会、NHK、国内・海外メディアに分けてコンパクトに一覧できる「放送日誌」や、1,000に及ぶNHKの定時番組・特集番組の概要をまとめた「番組解説」、NHKの本部だけでなく地域放送局の業務内容も詳細に掲載しています。

 さて、ここで「問題」です。いま放送中の『あさイチ』『うたコン』『ガッテン!』。
この3番組の初回放送日を古いものから順に並べてください。正解はぜひ『NHK年鑑2021』377~378ページでお確かめください。ご覧になるとわかりますが、意外な「事実」も浮かび上がります。


――― 時代とともに歩み続け、放送のいまを未来に届ける、『NHK年鑑』。
 これからも「いま」を刻み続けます。



『NHK年鑑』は書店またはNHK出版にお申し込みください。
Web版は次の画像をクリック!

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(答え)
初回放送日の古いものから、
   『あさイチ』第1回放送日 2010年3月29日
   『うたコン』第1回放送日 2016年4月12日
   『ガッテン!』第1回放送日 2016月4月13日
の順になります。
 『ガッテン!』は21年間にわたって放送した『ためしてガッテン』をリニューアルした番組で、意外にもこの3番組の中では「一番若い番組」。
 リニューアル後の初回放送は、『うたコン』と同じ2016年4月。わずか「一日違い」の4月13日です。


調査あれこれ 2021年11月19日 (金)

#350 紅白シーズン到来! 音楽コンテンツはテレビ放送から?それとも動画?

世論調査部(視聴者調査) 保髙隆之


 早いもので11月も終盤に入ってきました。コロナ禍で季節感を感じる機会が例年より少なかった気がする2021年ですが、個人的には毎年、この時期に楽しみにしている恒例のイベントがあります。それは…「紅白歌合戦」の出場者発表!

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 我が家では家族そろって紅白を見て、両チームを採点するのがお約束。誰が初出場で、誰が出場しない、というのは子どもの頃は“重大”ニュースでした。大みそかには、父の「若いアイドルはみんな同じ顔に見える」なんて声を聞きながら、「これは人気ドラマの主題歌なんだよ!」などと、「ザ・ベストテン」仕込みの知識で解説したものです。40代以上の方なら同じような経験をした方も少なくないのではないでしょうか?
 最近は発表と同時に、若年層と高年層の双方から「知らない人ばかり」「なぜ私の推しが出ないの!」などと激しい応酬がSNS上で繰り広げられることも風物詩となっています。刺さる人にはとことん刺さるけど、そのアーティストのファンコミュニティーの範囲を超えることは難しい。そんな昨今の音楽シーンの背景には「音楽」ジャンルの映像コンテンツへの接触パターンの変化もありそうです。
 下のグラフは昨年11月から今年の1月にかけて実施した世論調査「コロナ時代のテレビの価値」(全国13歳以上対象)の結果です。動画利用者(1,377人)に、「テレビ放送(録画含む)」(図中では「放送」)、NHKプラスやTVerなど「インターネット経由のテレビ番組」(同じく「番組配信」)、YouTubeやAmazonプライム・ビデオのオリジナルコンテンツなどの「インターネット動画(テレビ番組除く)」(同様に「動画」)の3つに分けて、それぞれ視聴ジャンルを複数回答で尋ねました。

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 「音楽」ジャンルと、参考に「ニュース・報道」ジャンルの接触パターンを年層別に比較すると、「放送のみ」での接触がどの年層でも多い「ニュース・報道」に比べ、「音楽」は「動画のみ」での接触が目立ちます。動画利用者へのインタビュー調査では、自分の好きなアーティストのパフォーマンスだけを見たいという声が多く聞かれました。ひと昔前なら、自分の聞きたい歌手の出番が来るまでテレビの前で待つしかありませんでした。(その代わり、思いがけない歌手との出会いの楽しさもありました。)しかし、今は違います。ハードなニュースで問題になりがちな社会の「分断」ですが、「音楽」ジャンルにも「自分」と「他者」のお気に入りを隔てる壁が存在しているようです。
 一方、「放送&動画」の両方で接触する人が幅広い年層で一定数いることも確か。これは他のジャンルと比べても「音楽」の大きな特徴になっています。そういえば、私も昨年の紅白で、それまで食わず嫌いだったYOASOBIの曲を初めて聞き、以来、サブスクやYouTubeで新曲は必ずチェックするようになりました。「ザ・ベストテン」世代の私でさえそうなのですから、デジタルネイティブのZ世代は各メディアとジャンルの特性を理解し、賢く効率的に使い分けているはずです。さて、今年の紅白では、どんなアーティストが世代をこえた出会いの喜びと感動を届けてくれるのでしょうか。今から楽しみです。
 コロナ禍を経た今、ジャンルや生活場面によって異なるテレビや動画の見方について、また、紅白のように家族そろってテレビ「放送」をみる習慣が変化する可能性について、「放送研究と調査」10月号「コロナ禍はテレビと動画の利用者にどんな影響を与えたか」で詳しく報告しています。ぜひ、ご一読ください。


メディアの動き 2021年11月11日 (木)

#349 「『テラスハウス』ショック② ~制作者と出演者の関係を考える~」

メディア研究部(メディア動向) 村上圭子


 私はこれまで5回にわたり、文研ブログで『テラスハウス』に関する記事を書いてきました。『テラスハウス』とは、2012年にフジテレビ系列で放送が開始され、NetflixとFODで配信が行われてきたリアリティ番組1)です。2020年5月、番組に出演中だったプロレスラーの木村花さんが、番組の内容をきっかけとしたSNS上の誹謗中傷に苦しみ自ら命を断つという痛ましい出来事があったことは、多くの方の記憶に残っていると思います。

 現在、花さんのお母さんである木村響子さんは、誹謗中傷の被害者と加害者を減らすことを目標に啓蒙活動を行う「Remember HANA 2)」というNPOを設立し、活動を続けています。響子さんの問題提起もあり、この1年でSNSの誹謗中傷対策は大きく進みました。しかし、番組・コンテンツ制作のプロフェッショナルである放送局やメディアが、番組に協力、参加してくれる出演者や取材者に対しどのような姿勢で向き合うべきかという課題については、十分に議論がし尽くされたとは思えません。花さんが亡くなった当時は、こうした切り口の指摘や報道も数多くなされていましたが、1年半経った今では報じられることもほとんどなくなりました。メディア研究に携わる私の役割は、メディアの問題として「花さんをわすれない」ことだと考え、発信し続けています。

 「放送研究と調査」の10月号では、これまでのブログの内容に加筆修正した論考を発表しました。11月1日からは文研のウェブサイトでも全文を公開中です3)。論考では、木村響子さんの申立てをきっかけに審理が行われてきた放送倫理・番組向上機構(BPO)放送人権委員会の決定4)、花さんの死後に進められてきたフジテレビのSNS対策5)、リアリティ番組“先進国”イギリスで進められている独立規制機関Ofcomによる放送局への規制の強化の動き等について取り上げました。

 これらの内容に通底するのは、制作者と出演者の関係はどうあるべきか、というテーマです。このテーマをもう少し広げて取材者と被取材者の関係性までも含めると、古くから存在する問題であるといえます。制作者や取材者は、出演者や被取材者に対して、どこまで演出や取材の意図を細かく説明すべきなのか……。また、制作のプロセスにおいて、出演者や被取材者の要望や不満にどこまで耳を傾けるべきなのか‥‥‥。対立が生じた時や出演者が悩みを抱えこんでしまった場合、どこまでコミュニケーションを深めればいいのか‥‥‥。番組制作に携わったことがある人なら、誰しも悩んだ経験があるはずですし、20年近く報道番組のディレクターをしてきた私自身も、当時は葛藤の連続でした。更にSNS時代を迎え、誹謗中傷への対策やそれによって傷つく出演者へのケアという大きなテーマが加わってきたのです。
 個々の現場の制作者はこれまで、出演者や被取材者との間で作る信頼関係と、番組編集の自主・自律を前提とする緊張関係とのバランスの中で悩みながら作業を進め、その方法が個人の経験として積み上げられ、それが組織内で共有される形で継承されてきました。SNS時代に急速に発展してきた『テラスハウス』をはじめとしたリアリティ番組は、若い一般の出演者と制作者が一蓮托生の状態の中で関係を構築し、台本なきドラマを紡いでいく、その難しさを魅力に昇華させていく力量が問われる新たな現場でした。こうした現場では様々な新たな模索が行われ、その結果、『テラスハウス』は世界的なブームとなるコンテンツとなったと同時に、花さんの死という痛ましい出来事も生んでしまったのです。

 リアリティ番組において出演者が自ら命を断つ事案が多く発生しているイギリスでは、放送局に対し、出演者契約や番組内容・演出、出演によって生じるリスク、提供可能なケア等について、詳細なインフォームドコンセントが義務付けられました。これまでは個々の現場の取り組みに委ねられてきた日本でも、今後、こうした議論は行われなければならないのではないかと私は考えています。プロフェッショナルメディアとして社会から信頼される存在であり続けるためには、出演者や被取材者への姿勢がどうあるべきか、より自律的に社会に示していくことが問われると思います。

 一方で、一部のリアリティ番組が目指してきたであろう、生きづらさを抱えながらも前を向いて生きていこうとする人達の発信や自己表現、そしてそれを通じた成長や挫折、そこからの立ち直りを見守っていくというスタイルの番組制作や取り組みは、今後一層、メディアが担うべき社会的機能になっていくのではないかと私は考えています。特に、プロフェッショナルメディアである放送局は、花さんの死をメディアの問題としてしっかりと受け止めた上で、こうした取り組みに果敢に挑戦していってほしいと考えています。

 

1) 制作者が設けた架空のシチュエーションに、一般人などの“素人”を出演させ、そこに彼らの感情や行動の変化をひき起こす仕掛けを用意し、その様子を観察するような内容
2) https://rememberhana.com/
3) https://www.nhk.or.jp/bunken/research/domestic/20211001_7.html
4) https://www.bpo.gr.jp/?p=10741&meta_key=2020
5) https://www.bpo.gr.jp/wordpress/wp-content/themes/codex/pdf/brc/determination/2020/76/taiou/76_taiou_cx.pdf


メディアの動き 2021年11月09日 (火)

#348 衆院選・結果の受け止め方は? ~世代で異なる納得と不満の度合い~

放送文化研究所 島田敏男


 11月10日、憲法が衆議院選挙後30日以内に開くことを定めている特別国会が召集され、岸田文雄・自民党総裁を改めて総理大臣に選出し、第2次岸田内閣がスタート。

 岸田総理は辞任した甘利明幹事長の後任に茂木敏充外務大臣をあて、参議院から衆議院に鞍替えした林芳正氏を外務大臣に起用。年内に臨時国会、年明けに通常国会と続きます。

 さて、10月31日に投票が行われた衆議院選挙で、自民党は解散時より議席を15減らしましたが、絶対安定多数の261を獲得。自民党単独で過半数を大きく超えました。


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 これに公明党を加えた与党の議席は293に上り、衆院の議席総数465の63%を占めて岸田総理大臣は引き続き安定した政権基盤を確保しました。

 これに対し野党側では、第1党の立憲民主党が共産党との候補者一本化によって各地の小選挙区で接戦を演じましたが、解散時よりも議席を14減らしました。政権交代を目指した枝野代表は、逆に議席を減らした責任を取って代表辞任を表明せざるを得ませんでした。

 野党の中で議席を増やした日本維新の会と国民民主党は、立憲民主党や共産党とは一線を画し、是々非々の立場で自公政権と向き合うとしています。

 この選挙結果を国民はどう受け止めたのか、11月5日から7日にかけて行ったNHK電話世論調査の結果を読み込んでいきます。

☆岸田総理は就任早々の10月14日に衆議院を解散して、31日には投票という異例の短期決戦に持ち込んで勝利しました。まず岸田内閣の支持率です。

「支持する」53%、「支持しない」25%という数字で、就任直後の10月調査よりも「支持する」4ポイント増、「支持しない」1ポイント増となりました。

 内閣支持率が50%を超えたのは、去年11月の菅内閣支持率56%以来1年ぶりです。菅総理が繰り返し押し寄せる新型コロナウイルス感染拡大に翻弄され、苦闘を続けてきたことを窺わせます。

☆衆院選の結果についてです。調査では「衆議院選挙で、自民党は、単独で過半数の議席を確保しました。今回の結果をどう思いますか」と尋ね、3つの選択肢から1つを選んでもらいました。


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「与党の議席がもっと多い方がよかった」10%、「今回の結果でちょうどよい」41%、「野党の議席がもっと多い方がよかった」40%、と割れました。

 岸田総理のもとで自公政権が継続され現状維持が図られたことに納得する人と、与野党の勢力がもっと接近して緊張感があった方がよいと考える人。双方がほぼ横並びです。

☆同じ設問について、与党支持者、野党支持者、特に支持する政党はない無党派の別に、それぞれ最も多かった答えを見てみます。

与党支持者では「今回の結果でちょうどよい」63%、野党支持者では「野党の議席がもっと多い方がよかった」75%、無党派では「野党の議席がもっと多い方がよかった」53%でした。

 与党支持者は与党支持者らしく、野党支持者は野党支持者らしく受け止めていると言えるでしょう。


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☆今度はこれを世代別に見てみます。


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18歳~39歳は「今回の結果でちょうどよい」54%、「野党の議席がもっと多いほうがよかった」24%。
40歳代は「今回の結果でちょうどよい」49%、「野党の議席がもっと多い方がよかった」37%。

  若い世代では選挙結果に対する納得度が比較的高くなっています。しかし、これが中高年齢層では傾向が異なります。

50歳代は「野党の議席がもっと多いほうがよかった」44%、「今回の結果でちょうどよい」42%。
60歳代は「野党の議席がもっと多いほうがよかった」55%、「今回の結果でちょうどよい」33%。
70歳以上は「野党の議席がもっと多いほうがよかった」42%、「今回の結果でちょうどよい」37%。

 若い世代では政治の安定が重要だと考える人が多いのに対して、中高年では安定よりも与野党の論戦や政策の競い合いに期待する人が多い一面が浮かび上がってきます。

 選挙結果に対する世代間の受け止めの違いは、今後どういう現象を生むことになるのでしょう?私は、日本という国の姿形がどう変わっていくか、どう変えていくかを考える上で、極めて興味深い傾向のように感じます。


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 今後、高齢世代が次第に退場する一方で、若い世代の投票率が高くなっていった時、どういう政策や政治の意思決定が求められて行くことになるのでしょう。

 今の政権与党が時代の変化に即した答えを示し続けることができるのか?政府与党以上に野党がこれからの有権者に望ましい道筋を提示できるのか?

 今回の衆院選では議員の世代交代を印象付ける選挙結果もありました。それと並行して、有権者の側も世代交代が進んでいくことに想像力を巡らせていく必要がありそうです。


メディアの動き 2021年11月01日 (月)

#347 最新の民意は「熟議への期待」 ~政治に小休止無し~

放送文化研究所 島田敏男


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 10月31日に投票が行われた衆議院選挙で、自民党は解散時より議席を15減らしましたが、単独で絶対安定多数の261を獲得しました。自民党単独でも国会を安定的に運営できる数です。

 これに公明党を加えた与党の議席は293に上って衆院の議席総数465の63%を占め、就任から間もない岸田総理大臣は引き続き自公政権の安定した基盤を確保しました。

 これに対し野党側では、第1党の立憲民主党が共産党の候補者絞り込みに助けられて各地の小選挙区で接戦を演じましたが、解散時よりも議席を14減らし党勢拡大に至りませんでした。枝野代表にとっては厳しい結果です。

 このように自民、立民の双方が議席を減らす中で、日本維新の会は解散時の4倍を超える41議席を獲得。全国各地での積極的な候補者擁立が功を奏し、公明党を抜いて第3党に躍り出ました。

 コロナ禍との戦いが続く中、第5波の感染拡大が一旦収まったタイミングに狙いを定めて行われた今回の解散・総選挙。この日程を組んだ岸田総理の判断が与党にとっては功を奏した格好です。

 ただ、自民党は野党候補の一本化によって甘利幹事長が小選挙区で議席を得ることができず幹事長辞任の表明に追い込まれるという痛手を負いました。また自ら派閥を率いる石原伸晃幹事長も野党の一本化候補に敗れ、議席を失う事態となりました。

 それでも全国的に見ると接戦で競り勝った小選挙区が多数あったわけですから、自民党は損害を「小破」にとどめたと言えそうです。


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 今回の衆院選で示された民意を全体としてどう受け止めるべきでしょうか。
立場によって受け止め方は様々で、新聞論調の中には「勝者なし」というものもあれば、「立民・共産の共闘不発」を強調するものもあります。

 私は是々非々を唱える日本維新の会が大きく躍進したことも併せて見ると、有権者は日本が直面する様々な課題に向き合うために「政治の舞台で展開される熟議への期待を示した」と見ることもできると考えます。

 短期的にはコロナウイルス対策の一層の強化。中期的には中国の台頭がもたらす経済・軍事の安全保障分野での不安の解消。さらに長期的には社会保障制度の持続可能性を担保する国家財政の健全化。温暖化対策。

 こういった課題について、国会の場で与野党が論戦を交わし、それを基に政府が必要な政策を立案する。そしてそれを実現するために必要な法律の制定や改正などを、国民によく見える形で積み重ねる。

 これまで2年近く続いてきたコロナ禍との戦いの下で委縮し先送りされてきた感がある、こうした政治本来の役割の再活性化を国民が期待していると見るのは決して的外れではないでしょう。


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 今回の衆議院選挙の投票率は55.93%で、前回(53.68%)前々回(過去最低の52.66%)を上回りました。SNSで投票を呼び掛ける芸能人やアーテイストの行動なども話題を呼びました。若い世代に「選挙に行く」ことの大切さを伝えようという機運が盛り上がってきたのは好ましいことです。

 この背景には、コロナ禍の緊急事態宣言の経験を通じて、国民に我慢を強いることができるのは政治の意思決定だということが実感され、政治参加プロセスへの接近が大切だと気付いた人が増えたという面もありそうです。

 「政治に小休止無し」という言葉があります。現代社会が未来に向かって進んでいくために乗り越えなくてはならない課題は次から次へと現れます。政治はその一つ一つに向き合い続けるのが宿命です。

 来年夏には次の大きな政治参加のプロセスである参議院選挙があります。まずはそれまでの間に国会の場で熟議が展開され、より多くの国民が政治参加に意義を見出してくれるようになることを期待しています。


調査あれこれ 2021年10月21日 (木)

#346 年代によって異なる関心ジャンルの傾向 ~「全国メディア意識世論調査・2020」の結果から~

世論調査部(視聴者調査) 内堀諒太


211025.png文研では、2020年10月から12月にかけて、人々のメディア行動や意識をたずねる新調査「全国メディア意識世論調査」を実施しました。
(調査結果の詳細は、「放送研究と調査」9月号「多メディア時代における人々のメディア利用と意識」で報告しています。)


このブログでは、その調査の中から、テレビ番組やインターネット動画の“関心ジャンル” についてたずねた質問の結果をご紹介します。


調査では、テレビやインターネット動画で視聴するジャンルをたずねることに先駆けて、ご覧の17のジャンルの中から関心のあるものをいくつでも選んでもらいました。
皆さんの関心のあるジャンルはいくつあるでしょうか。



今回は便宜的に若年層(16~29歳)・中年層(30~59歳)・高年層(60歳以上)の3つの年層に分けたグラフにしています。


皆さんはピンク色で囲ったジャンルと水色で囲ったジャンルの違いにお気づきでしょうか。



ピンク色で囲ったジャンルは「政治・経済・社会」「天気予報」「旅行・街歩き」「ドキュメンタリー・教養」です。これらは年齢が上の年層ほど関心を持つ人の割合が高くなっています。


一方、水色で囲ったジャンル「音楽」「芸能人・アイドル」「アニメ」「ゲーム配信・実況」は若い年層ほど関心を持つ人の割合が高くなっていました。





この調査とほぼ同時期に、20代の男女を対象にインタビューを行いました。そこでテレビ番組やインターネット動画の視聴について聞いてみても、実際に「Instagramの通知で、気になる芸能人がYouTube配信を始めたことを知って見ることにした」「HuluやTVerで好きなアニメの最新話を探して見る」「見たいテレビ番組がないときはYouTubeでゲーム実況の動画を見る」などの声がありました。

「放送研究と調査」9月号では、これらのジャンルをそれぞれどんな視聴方法で見ているかについてもご紹介しているほか、メディアごとの利用実態や効用比較も掲載しています。ぜひ、ご一読ください。


メディアの動き 2021年10月19日 (火)

#345 あなたの声が選挙報道を変える ~『市民アジェンダ』の報道が持つ可能性

メディア研究部(海外メディア) 青木紀美子


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あなたの「声」で社会が変わる。

これは西日本新聞社「あなたの特命取材班(あな特)」のキャッチフレーズです1)。「あな特」は市民から寄せられた疑問や困りごとを記者が取材する「ジャーナリズム・オン・デマンド(JOD)」のプロジェクトとして2018年に始まり、地方紙を中心に各地のメディアがパートナーとして参加するJODのネットワークを全国に広げてきました。その力を示す連携報道が、2021年度の新聞協会賞を受賞しました。JODのパートナーである中日新聞社と西日本新聞社が、愛知県知事のリコール署名が佐賀県内で組織的に大量偽造されていたことを明らかにしたスクープでした。

取材のきっかけは市民からの「あな特」によせられたメッセージで、これを裏付ける具体的な証言も「あな特」取材班とLINEでつながる「通信員」から得られたといいます2)。新聞協会賞の受賞作品紹介には「民主主義の根幹を揺るがす重大な事実を、発行地域が異なる両紙が見事に連携してあぶり出した調査報道」とあります3)。「あな特」への言及はありませんが、今回の特報は、両社の取材力の賜物であると同時に、西日本新聞社が「あな特」を通して育んできた市民との信頼関係が持つ力、またJODのネットワークを通して、全国のJOD取材班とつながる市民が各地のジャーナリストとともに民主主義を見守るパートナーシップの可能性を示すものでもあります。

「あなたの声が選挙報道を変える」

2020年に行われた大統領選挙や地方選挙で、アメリカでは多くのメディアが、政党の戦略や政治家の主張、専門家が挙げる争点ではなく、市民が関心をよせる課題を出発点にした「市民アジェンダの選挙報道」にチャレンジしました。西日本新聞社が始めた「あな特」のJODとも重なる、市民の声に耳を傾けることから始まるエンゲージド・ジャーナリズムの試みの1つです。

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アメリカ中西部シカゴの公共ラジオWBEZは、この「市民アジェンダの選挙報道」のために声を寄せてほしいと市民に広く呼びかけるとともに、特にコロナ禍で大きな影響を受けた人たちの声を重視し、影響が大きかった人々のもとに足を運び、意見を寄せてほしいと働きかける「アウトリーチ」に力を入れました。健康影響と経済影響を考慮し、データをもとに人口比で△死者が多かった地区、△感染者が多かった地区、△初めて失業した人が多かった地区を特定し、その地域の住民が集まるイベントなどに参加し、聞き取り調査を行いました。


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アウトリーチの中心になったWBEZのエンゲージメント担当のプロデューサーのキャサリン・ナガサワさんは、住民にプロジェクトのねらいを説明し、話をしながら関心事を探り、その中から有権者が地域の政治家に取り上げてほしい、解決に力を入れてほしいと思う課題は何かを汲み取る努力も重ねました。また、地域で活動する市民グループや他の言語のメディアとも連携し、英語だけでなく、スペイン語、ベトナム語、中国語を含め4つの言語で質問や意見を受け付けた結果、オンラインと対面の聞き取りをあわせて2200件以上の声を集めました。


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質問が多かった期日前投票の仕組みや医療格差の問題などについては特集記事を出し、より広いテーマとして、△コロナ対策、△医療へのアクセス、△地域への投資、△治安と刑事司法改革など5つの課題を抽出し、取材の重点に掲げ、選挙戦中、そして選挙後にも地域の政治家に問うことを約束しました4)


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こうした「市民アジェンダ」に沿った発信は、選挙後も続けました。また、コロナ禍の影響が大きかった3つの地区では、住民から集めた質問を地元の政治家にぶつける公聴会型のオンラインイベントも開催しました。地域の住民から信頼されるネットワークや組織の協力を得たほか、多様な背景を持つ住民に配慮し、アラビア語、スペイン語、ロヒンギャ語の通訳もつけ、イベント1回あたり平均で5000人近くが視聴したということです。


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あなたの声が政治報道を変える

WBEZは、有権者の関心が高い課題について、有権者自身が政治家や行政担当者に直接、質問や意見を投げかけることもできるよう、課題ごとに予算や政策決定権限を持つ地元の政治家を一覧にし、その連絡先、政策や実績、それに対する市民グループなどの意見、さらに世論の動向などを説明する記事のリンクを1か所にまとめたページもつくりました5)。自分の住所を入力することで地元の政治家の情報を検索できるようにもなっています。意見や要望を伝えたくてもどうしたらよいか分からないといった有権者の声に耳を傾け、「ニュース記事とはこうあるもの」という定型に縛られない形で、市民が活用できるツールを提供しました。

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211018-88.JPGWBEZのエンゲージメント担当プロデューサーとして「市民アジェンダ」のとりまとめの中心になったキャサリン・ナガサワさんは、このように市民の声を取り込んで発信内容をかたちづくることは、市民とジャーナリストの距離を縮め、また、多様な人々が持つより幅広い経験にもとづく疑問や意見、解決策などのアイディアで、人数も経験も限られるジャーナリストの視野を広げ、発信内容をより豊かにするものだと話しています。



211018-99.JPGWBEZ政治・行政担当デスクのアレックス・キーフさんは、一連の取材を通して「市民は自分たちの声を聴いてほしいと切実に願っていることを実感した」と言います。長年の経験から、政治ニュースがともすると政治インサイダー情報のようになりかねないことを意識し、わかりやすく説明する努力はしてきたものの、コロナ禍を機に、市民の関心に応え、市民が暮らしの中で生かせる発信の必要性に目が開かれる思いをしたと言います。


あなたとともに報道を変える

選挙報道の出発点として市民の声に耳を傾けたWBEZの試みは、市民が選挙報道にとどまらず、政治報道、さらにはより広い報道のアジェンダ設定にも貢献できること、また、民主主義が機能しているかを市民とジャーナリストのパートナーシップで暮らしに身近なところから見守る可能性があることを示唆しています。西日本新聞社の「あな特」とJODにも重なり、情報があふれる中での埋没、多様な視点の欠如、信頼の低下など、メディアが直面する危機に、どう向き合い、どう報道のありようを見直していくか、人々の声に耳を澄ましながら見極めていく実験でもあります。

こうしたエンゲージド・ジャーナリズムの実践や実績について、文研では「放送研究と調査」で報告したほか、早稲田大学次世代ジャーナリズム・メディア研究所とオンライン講座を共催しています。今回ご紹介した内容は、第1回講座6)のゲストスピーカーとしてキャサリン・ナガサワさんが話をした内容とプレゼンテーションにもとづくものです。

講座の第2回は10月23日(土)、ゲストにはWBEZの名物番組『Curious City』の初代プロデューサーで、その成功を機にメディアのエンゲージメントを支援するビジネスHearkenを起業したジェニファー・ブランデルさんを予定しています7)


1) あなたの特命取材班 (西日本新聞社)
https://anatoku.jp/

2) 「リコール署名偽造」あな特投稿が端緒 地域との信頼関係の成果(西日本新聞社)
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/812147/

3) 署名大量偽造 連携し特報(新聞協会賞2021年度受賞作)
https://www.pressnet.or.jp/journalism/award/2021/index_2.html

4) You Told Us What You Care About This Election Season. Here’s How We’ll Report On It(WBEZ)
https://www.wbez.org/stories/wbez-ca-2020/23b8de3d-cf5e-4cc0-978b-dbf797ad1991

5) Whose Job Is It Anyway? Your Field Guide To Local Government In Chicago(WBEZ)
https://www.wbez.org/stories/whose-job-is-it-anyway-your-field-guide-to-local-government/18c4d2cd-b8b9-4744-9a2f-fb67cf73f84c

6) 次世代ジャーナリズム・メディア研究所:NHK放送文化研究所共催 オンライン連続講座 「市民とともにつくるエンゲージド・ジャーナリズム」第1回
https://www.waseda.jp/inst/cro/news/2021/06/29/6233/

7) 次世代ジャーナリズム・メディア研究所:NHK放送文化研究所共催 オンライン連続講座 「市民とともにつくるエンゲージド・ジャーナリズム」第2回
https://www.waseda.jp/inst/cro/news/2021/10/15/7271/


メディアの動き 2021年10月12日 (火)

#344 衆院選 最新の民意の行方は?~必要なのは政治の緊張感~

放送文化研究所 島田敏男

 

 10月4日に召集された臨時国会の冒頭、衆参両院で行われた総理大臣指名選挙で自民党新総裁の岸田文雄氏が第100代の内閣総理大臣に選ばれました。明治憲法の下での第1代伊藤博文から数えて第100代。これは記念すべき節目なのですが、第100代総理はそう長くは続かない運命にあります。

 なぜならば、衆議院議員の任期が満了になる10月21日直前の総理大臣選びだったので、憲法の定めに従って、衆院選後30日以内に開かれる特別国会で改めて総理大臣選びをするのです。岸田総理は10月14日の衆議院解散を選択し、19日公示、10月31日投開票の日程を組み立てましたが、選挙後の特別国会で改めて総理大臣選びをするのは同様です。

 そこで選ばれる総理大臣は第101代になります。従って第100代は2か月足らずでおしまい。仮に岸田氏が選挙で与党の多数を維持し、特別国会で再び選ばれれば、最新の民意に基づく第101代総理大臣ということになります。

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 岸田氏は「新しい民意の信任を得て国政にあたりたい」と語り、立憲民主党の枝野代表や共産党の志位委員長は、これを阻止しようと政権交代を訴え、4年ぶりの衆院選が繰り広げられます。

 そこで10月のNHK世論調査です。岸田内閣が発足して最初の調査で、10月8日から10日にかけて行われました。

☆岸田内閣を「支持する」49%で、「支持しない」24%でした。菅内閣最後の9月調査と比べると「支持する」+19ポイント、「支持しない」-26ポイントで、はっきりと上向きました。

 ただ、この内閣発足後最初の支持率を、データのある1998年の小渕内閣以降で比べてみると、岸田内閣の49%は発足の時点で30%台だった小渕内閣、森内閣を上回っていますけれども、48%だった麻生内閣と同じ程度です。小泉内閣の81%、民主党・鳩山内閣の72%には遠く及びません。

 手堅いけれども飛びぬけた勢いは感じられないといったところです。

☆一方、政党支持率はどうか?自民党が9月の37.6%から41.2%に上向き、立憲民主党が5.5%から6.1%にやや上向き。無党派層の全体に占める割合が40.2%から36.1%に下がり、その分が各党への支持に向かっています。

☆では、有権者は衆院選にどう臨もうとしているのでしょう?あなたは与党と野党の議席がどのようになればよいと思いますかと聞いた結果です。

 「与党の議席が増えた方がよい」25%、「野党の議席が増えた方がよい」28%、「どちらともいえない」41%となっています。 

   9月調査と比べると与党の推しは3ポイント増、野党の推しは2ポイント増で、その分「どちらともいえない」が6ポイント減っています。

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 今後、この数字がどう変化してくるかが選挙結果を探るポイントになりそうです。岸田総理の所信表明演説と、それに対する衆参両院での代表質問の中で、野党側は「自民党総裁選で岸田氏が掲げていた改革の具体策が、所信表明ではいくつも消えていた」と批判しました。

 総裁選で岸田氏は国民への成長と分配の好循環を実現するために、金融所得の多い富裕層を対象にした課税の見直しを掲げていましたが、所信表明には盛り込まれませんでした。こうした点を有権者が投票日までの論戦を通じてどう受け止めるか。最新の民意の行方を方向付ける上で、焦点になりそうです。

 短期決戦を前にして予測報道が様々出始めました。しかし選挙結果というものは流動的です。国民にとって一番大切なことは、衆院選の結果がどうあれ、選挙で示された最新の民意を謙虚に受け止め、その後の国会で、どこまで中身の濃い論戦が交わされるかです。

 安倍・菅政権では、ともすれば国会での論戦を軽視する政府・与党の姿勢が垣間見え、「数は力なり」がまかり通っている観がありました。特にコロナウイルスに翻弄されてからは先々を見据えた議論が尽くされたとはいえず、社会保障にしても安全保障にしても踏み込み不足が続きました。

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 来年7月には参議院議員の半数が6年間の任期満了を迎え、3年おきの参議院選挙が行われます。10月31日の衆院選から来年夏の参院選までの「選挙の1年」。国民にとっては、衆参両院であらゆる政策課題について政府・与野党が論戦を深める「熟議の1年」になってくれなければ困ります。

 日本社会の人口減少と高齢化が進み、隣国中国はアメリカをしのぐ超大国をめざし、ひたすら突き進んでいるように見えます。これを日本の政治はどう乗り越えていくのか。国民に対し将来に向けた判断材料を示すことが、国会に議席を持つ人たちの大きな責務に他なりません。

 国会論戦は言葉によって相手を打ち負かすだけでなく、言葉によって共通点を浮かび上がらせ、幅広い国民の理解と納得を形成する作業でもあります。

 そこには政治の緊張感が必要です。私たちは責任ある有権者として、選挙結果を背にした国会論戦の緊張感と、それがもたらす政治的果実にしっかり目を向けて行きましょう。