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調査あれこれ 2024年01月11日 (木)

幼児のテレビ・ネット動画利用は平日と土日でどう違う?【研究員の視点】#522

世論調査部 (視聴者調査) 築比地真理

「ママ、なんできょうは朝のテレビやってないの?」
日曜の朝、Eテレを見ている4歳の娘から問われました。
「日曜日は、お休みの日だから子どものテレビもお休みなのかな」と私は答えました。
日曜もふだんと変わらない時間に起きて、子どもはテレビの前に座り、いつもの番組が始まるのを待っているのに、日曜日はなぜ平日や土曜日に比べて子ども向け番組の放送が少ないのだろうと、放送局で働くひとりとして疑問に思った瞬間でした。

さて、NHK放送文化研究所では、小学校に入る前の2歳~6歳の幼児を対象とした「幼児視聴率調査」を1990年から実施しています。
「大人」のメディア利用実態の調査は世に多くありますが、幼児のみに特化して調査したものは珍しく、保護者による代理記入・回答ではありますが、日記式とアンケートの結果を組み合わせ、幼児のメディア利用の現在地を知ることができる調査になっています。

今回は、2022年に実施した最新の調査結果から、こうした幼児のメディア利用が平日と土日でどのような違いがあるのかに注目して、結果をご紹介します。
(『放送研究と調査』1月号の内容を再構成しています。全文はこちら

以下の図は、下記4項目の30分ごとの平均利用率を時刻別に積み上げて、山のような形にして示したものです。それぞれ、平日・土曜・日曜のものとなっています。

① NHK総計(地上波+衛星波)
② 民放総計(地上波+衛星波)
③ インターネット動画
④ 録画番組・DVD  

NHK総計/民放総計/ネット動画/録画DVDの30分ごと平均利用率の積み上げ

           〈平日〉
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           〈土曜〉
doyou.png           〈日曜〉
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朝の時間帯の視聴状況

まず、冒頭のエピソードで紹介した朝の時間帯に注目すると、この4項目の合計(以下、「4項目計」)の山の高さは、平日・土曜・日曜とも大きく変わらないことが分かります。
平日・土日に関係なく、子どもが毎日規則正しく生活しており、朝は何らかのコンテンツを視聴する習慣がついている可能性が感じとれます。
ただ、朝の「4項目計」を項目ごとで分けてみると、平日と土曜ではNHK(赤色)がよく見られているのですが、日曜はNHKと民放(ピンク色)の割合が逆転していることが分かります。ちなみに、幼児の場合、NHKでの視聴はEテレが大半となっています。

冒頭でも述べたように、平日と土曜の朝はNHKのEテレで子ども向け番組が多く放送されているのですが、日曜の朝は他の曜日ほど子ども向け番組が放送されていません。一方、日曜の朝にはテレビ朝日が長年放送している、戦隊ヒーローや仮面ライダー、ヒロインが変身して戦うシリーズなどの幼児~小学生向けの番組があります。本調査では「よく見られた番組」についても聞いていますが、その結果からも日曜は幼児がこれらの番組を見ていることが分かります。

日中から夕方の視聴状況

朝以外の時間はどうでしょうか。平日の夕方では、「4項目計」が朝に匹敵するボリュームであり、午後6時30分~7時30分では3割に迫っています。一方で、日中のメディア利用はほとんどない状態です。平日は、幼稚園や保育園に登園している幼児が多いことからもこの結果は納得ですね。

これを、テレビやインターネット動画などに分けて見ていきます。まずテレビについてみると、NHKは土日の夕方から夜にかけては平日ほどの勢いがありません。一方、民放は土日でも大きな減少はみられず、土曜は午後7時~7時30分、日曜は午後6時30分~7時によく見られています。週末の夕方はどちらかというと民放のテレビの方が視聴されているようですね。
実際に週末の夕方に民放でよく見られた番組としてあげられていたのは、土曜ではテレビ朝日の「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」、日曜ではフジテレビの「サザエさん」「ちびまる子ちゃん」などのアニメでした。
また、動画の利用については、平日では日中の利用は少ないものの、午後から夜にかけてよく見られています。一方で土日は、日中においても一定の視聴があるなど、幅広い時間帯でコンスタントに利用されており、土日とも午後1時から5時の時間帯で3~7%台を維持していました。
土日の午後によく見られたコンテンツを確認してみると、YouTubeのゲームやYouTuberの動画、「アンパンマン」や「ポケットモンスター」関連の動画など、さまざまな内容が挙げられており、幼児の関心に応じた幅広いコンテンツが選択されているとも言えそうです。

ここまで見てきたように、平日と土日で幼児のメディア利用を比較すると、曜日によって見ている放送局や番組が異なるほか、土日では日中からネット動画を見ているなど、テレビのリアルタイム視聴以外のコンテンツへの活発な接触も見られることが分かりました。

バラエティー豊かなコンテンツを楽しむ幼児

テレビの視聴は、どうしてもその時間帯の番組編成に左右されがちな面もあるかと思いますが、見たいコンテンツが放送されていない時間帯でも、ネット動画やタイムシフトなどをうまく活用して、それぞれの時間帯ごとに、自分が見たいと思うものに応じてコンテンツを視聴している様子が感じられます。
最近では、子どものYouTuberによるYouTubeチャンネルなども人気を博していたり、動画配信サービスでも幼児向けコンテンツが豊富になってきたりしており、さまざまな選択肢が選べる環境が整ってきたと思います。そうした環境の中で子育てをするひとりの親の視点から言うと、さまざまなコンテンツを選びやすくなったからこそ、NHK・民放・ネット動画などのそれぞれの強みやメリットを生かして、子どもには多彩なコンテンツに触れて、感性を高められるようになってほしいと、調査結果から考えさせられました。

この調査ではほかにも、幼児がインターネット動画をどのように利用しているのか、さまざまな角度から分析しています。下記よりぜひご覧ください。

『放送研究と調査』2024年1月号 
幼児はテレビやネット動画などをどのように使い分けているのか
~「幼児視聴率調査」から~

『放送研究と調査』2022年12月号
幼児はテレビ放送やインターネット動画などをどのように見ているのか
~2022年6月「幼児視聴率調査」から~ 

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【築比地 真理】
2014年NHK入局。高知放送局・札幌放送局で番組編成などを担当し、2020年より放送文化研究所にて幼児視聴率調査や国民生活時間調査・メディア利用の生活時間調査などに関わる。名前の読み方は「ついひじ」