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筑豊ラヴァーズ そのだ正治さん/現代アート作家

筑豊をアートであふれる街に
  • 2024年02月13日

 

そのだ正治さん(64歳)
福岡県飯塚市出身。現代アート作家。筑豊を拠点に30年以上活動し、これまでに30か所以上、鉄のアート作品を制作しています。

飯塚の商店街に「大きないす」

飯塚市の飯塚本町商店街にある高さ約6メートルの「大きないす」のオブジェ。
2003年にそのださんが制作、地域のシンボルとして親しまれています。  

商店街に多くの人が来て、みんなが喜ぶものをと考えたら、みんなが知っている形を作りたいという思いがあって、ここに “大きないす” があったらみんなが驚くかな、おもしろいよな、という発想でいすをデザインしました。

美術と触れ合った幼少期

筑豊の炭鉱住宅で幼少期を過ごしたそのださん。幼いころから絵を描くことが大好きでした。

小学校の時に学校で絵を描いて賞状をもらったんですね。そうしたら母がすごく喜んでくれて、それがうれしくて時間があったら家で絵を描いたり、新聞紙を丸めて工作したりしていました。

オブジェとの出会いはニューヨーク

中学校を卒業後、定時制高校に通いながら看板店に就職。
そして20代後半、知人がいるニューヨークを訪れたときにオブジェと出会いました。

ニューヨークの街を歩くと、街のいたるところにオブジェがあるんです。
家の中は個人の空間やけど、外はみんなのもの。そういうアメリカの開放的な感覚に驚きました。それで “わがまち飯塚にもそういうオブジェがいるね” と思いました。

筑豊を彩るそのださんのオブジェ

帰国後、ふるさとで鉄のオブジェを作り始めたそのださん。
飯塚市の八木山展望台には「しあわせの鐘」を設置しました。

「しあわせの鐘」
1296枚の小さいハートをつないで制作

八木山展望台は福岡市から来ると筑豊の玄関口となる場所です。
夜景がきれいで昔はデートスポットでしたが、最近はさみしい雰囲気になっていたので、“どこにもない鐘を作りたい”とデザインしました。

田川市の石炭記念公園には「百年(とわ)の鐘」。
100年以上の歴史がある2本煙突が “夫婦(めおと)煙突” とも呼ばれることから、
ここで永遠の愛を誓うスポットにと制作しました。

「百年(とわ)の鐘」

ほかにも、嘉麻市の射手引神社にはゆかりが深い神功皇后をイメージしたオブジェ。
飯塚本町商店街には猫と龍のオブジェなど、筑豊各所に30以上の作品を作ってきました。

「幸運猫(左)」と「銀龍(右)」

“アートで街を活気づけたい”

今は商店街などでも空き店舗が多いです。自分が小さいときは炭鉱が盛んだったけど、小学校の時に炭鉱が閉山して友達が転校していった。人がいなくなると街がさみしくなるので、人が増えることで街を活気づけたいとの思いがあります。“アートで人を呼ぶことができるんじゃなかろうか”と考えて、
地域の人たちの協力のもと、さまざまな場所にオブジェを設置していきました。
多くの人が飯塚に遊びに来られたらいいな、と思っています。

子どもたちが喜ぶいすを作りたい

去年12月。そのださんは近所の店から頼まれた、いすを制作しました。
通学路に設置されるため、子どもたちが喜ぶいすを作りたいと考えました。

鉄を曲げていすの背もたれ部分を作る
いすの脚の部分を制作する

イメージ図はありますが、あくまでも最初のイメージです。
鉄を加工しながらここはクネクネ曲げてみようとか、作りながら考えていくので、全然違う感覚が加わっていきます。それが作品作りのおもしろさだと思います。みんなが驚くような感じの物を納品したいですし、そういう作品を作っていきたいですね。

いすはカラフルな色にして、飛行機や雲、ペガサスのオブジェも取り付けました。
通学路が華やかになり、依頼した人からも喜ばれていました。

3週間かけて完成したいす

大好きなふるさとを“アートであふれる街に”

私はやっぱり筑豊、生まれ育ったこの場所が好きです。何が一番好きかというとやっぱり人です。本当に心温まる人が多くて、自分の思いを伝えられる方が多いです。自分は自分の思いを伝えるのがアート作品だと思っているので、形を通してその思いを表したい。
優しさとか、ほっとするとか、人の思いやりとか、そういうものを感じる空間を、自分の生まれ育ったこの街に残したいというのが、アートでまちづくりを進める大きな理由です。ふるさとをアートがあふれる楽しい街にしていきたいです。

今後についてそのださんは、空き家を活用して、
地域の人たちと一緒に“アートな家”を作りたいと話していていました。
家を丸ごとアートにするという取り組み、どんな家になるのか楽しみです。

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  • 北九州局 ディレクター

    門田浩樹

    ふだんはギラヴァンツ北九州の取材も担当しています。

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