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北九州ラヴァーズ#16 中村勘九郎さん/歌舞伎俳優

4年ぶり北九州へ 「平成中村座小倉城公演」
  • 2023年08月25日

江戸時代の芝居小屋を再現した歌舞伎公演「平成中村座」。ことし11月、4年ぶりに北九州の地に帰ってきます。一座をひきいるのは、歌舞伎俳優の中村勘九郎・七之助兄弟。勘九郎さんに2度目の公演を決めたわけを聞くと、そこには北九州への思いがあふれていました。(北九州放送局 大倉美智子)

“小倉の街を元気にしたい”

2023年7月19日小倉城にて撮影

ことし7月、小倉城天守閣で会見に臨んだ、中村勘九郎さん。4年ぶり2度目となる「平成中村座小倉城公演」への意気込みを語りました。

北九州での2度目の公演は、実は2020年11月に行われることが決まっていたそうです。しかし、コロナ禍でやむなく延期に。さらに去年、北九州では追い打ちをかけるように旦過市場で2度の大規模火災が起きました。
そんな中、勘九郎さんは「小倉の街を元気にしたい」と考えたといいます。

勘九郎さん
1度目の火事で衝撃を受けて、そして2度目が。小倉昭和館が燃えている映像は今も忘れられません。北九州は4年前の公演で1か月しか滞在しなかったけれど、その間に受けた恩というか、みなさん一丸となって盛り上げてくださったので、ちょっとした故郷のような気持ちですごくショックでした。何かできることと言ったら舞台上でしかお返しすることができないので、早く、小倉城公演をやりたかったですし、チャリティーイベントができたらいいなと、ずっと思っていました。

よみがえる4年前の興奮

2019年10月撮影「お練り」の様子

4年前の2019年11月。
「平成中村座小倉城公演」は、小倉北区の勝山公園に設けられた特設劇場で約1か月にわたり上演されました。九州初上陸で約4万人が舞台を鑑賞しました。公演に先だって行われた「お練り」にも、大勢の人が詰めかけたほか、特設劇場の外にはチケットがない人も楽しめる売店も並び、大盛況でした。

ーーー4年前を振り返ってどんな印象が残っていますか?

勘九郎さん
4年前は「平成中村座」としても初めての九州上陸。小倉の街がどんなところかもわかりませんでしたが、本当に街の人を含めて、盛り上げてくださって、優しくしてもらいました。なんかちょっとふるさとなんじゃないかなって感じるまで良くしてくれたんです。

千穐楽(せんしゅうらく)近くの勝山公園は本当に野外フェスのような感じでした。演出の1つで舞台の後ろが開くんですが、そうすると外からも一瞬、中村座の中を見ることができるんですけど、その一瞬のために300~500人ぐらい集まってたんじゃないかな。

2019年11月撮影 芝居小屋の外に集まった人々

ーーーその様子を見てどう思いましたか?

ただで見やがって!と(笑)。それはうそ。でも、そうやって歌舞伎の世界を見たいなと思ってくださる方が増えるのはうれしい思いでしたね。

ご当地・舞台へのこだわり

2019年11月撮影 開演前の様子

「平成中村座」はご当地にこだわった演目が見どころの1つです。今回、昼の部では「義経千本桜」「風流小倉俄廓彩」、夜の部では「小笠原騒動」が上演されます。このうち「小笠原騒動」は、江戸時代後期に小倉藩で起きたお家騒動を題材にしたもので再演の声を受けて、今回も上演されます。前回同様、この演目で共演するのが、北九州の夏の風物詩で江戸時代から続く伝統芸能「小倉祇園太鼓」です。

ーーーどうして演目に小倉祇園太鼓を取り入れたのですか?

勘九郎さん
4年前に公演のPRで訪れた時に、控え室に「小倉祇園太鼓」のポスターが貼ってあって、これはなんだ?と、いつから続いているものなんだ?と聞きました。
江戸時代にお家騒動が起こった時にも、この太鼓を人々は聞いていたわけです。
その人たちと同じ鼓動を感じ、しかも小倉城のお膝元で演じるって、やっぱり魂の入り方だとか、見ているお客様も感じ方は違ってくると思うんですよ。それはやっぱり北九州でやるならではのことです。

親交深めた1か月“出会いは必然だった”

左:日高洋平さん 右:中村勘九郎さん

勘九郎さんは「小倉祇園太鼓」との共演を機に、地元の人たちとの交流を重ねてきました。その1人が「小倉祇園太鼓保存振興会」の日高洋平さん(42)です。舞台を終えると小倉の街を一緒に楽しむなど親交を深め、いまではSNSでメッセージのやりとりをするほどの仲なんだそうです。

ーーー4年前がきっかけで仲良くなったんですね?

勘九郎さん

そうなんです。実は「小倉祇園太鼓」に共演してもらうきっかけとなった控え室のポスターを貼ったのが、洋ちゃんだったんですよ!

日高洋平さん

ちょうどその時に小倉祇園太鼓も400周年の節目を迎え、祭りの後に勘九郎さんの記者会見があったので、せっかくだから「平成中村座」に取り入れていただけないかなと…ダメ元で貼ってみたらっていうところですね

勘九郎さん

僕がポスターをみて、なにかアクションを起こすんじゃないかって予想していたっていうから、驚きですよね。完全に、洋ちゃんの手のひらで転がされていますよね(笑)

共演のきっかけのポスターを眺める2人
勘九郎さん

しかも、不思議なことがまだありまして、同い年なんですよ。1981年の、しかも誕生日も一緒なんです、10月31日。こんな縁はないですよね、出会いは必然だったんじゃないかな。

ーーー改めて、一緒に舞台を作り上げて感じたことは?

「小倉祇園太鼓保存振興会」日高洋平さん(42)

日高洋平さん
われわれの小倉祇園太鼓を非常に尊重していただいて、ふだんだったら、あーして欲しい、こうして欲しいって、よく演出を言われることが多いんですが、「いや、そのままこれでお願いします」っていう形でそのまま使ってくれたので、本当に舞台の中にひとつ取り込んでいただいたなと思っています。

勘九郎さん
小倉祇園太鼓はチームがあって、日ごとに公演に出てくれて、それを応援に来る街の人たちがいて、本当にお祭りの一環みたいな感じだったんですよ。まあ楽しかったですね。皆さんが入って来てくださったことによって、地元との一体感が生まれた瞬間だと思っているので、毎回出てもらわなきゃダメですよ。

4年前をぶっ倒す!

ーーー最後に、今回の公演への意気込みを聞かせて下さい

勘九郎さん
映画でも「2」ってなかなか難しかったりするんですけど、今回は4年前をぶっ倒すというか、より盛り上がる公演にできたらいいなと思います。平成中村座という空間を少しでも多くの皆様に届けられるように、僕たちもワクワクしながら、今回は若手が多いので、熱気あふれる、フレッシュな舞台をお届けできるんじゃないかなと思います。

「平成中村座小倉城公演」は、2023年11月1日(水)~26日(日)まで、小倉北区の勝山公園内特設劇場で開催されます。期間中は旦過市場の復興を後押ししようと、映画の上映やトークショーなどのチャリティーイベントも行われます。

江戸時代の雰囲気を味わえる「平成中村座」と江戸時代から続く「小倉祇園太鼓」のコラボ。芝居小屋に一歩足を踏み入れたら、江戸時代の小倉を感じられるかも知れませんね!!

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  • 大倉美智子

    北九州放送局 記者

    大倉美智子


    勘九郎さんが北九州のことを「ふるさと」と何度もおっしゃていたのが印象的でした。
    北九州で歌舞伎が楽しめるって素敵ですね!

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