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北九州ラヴァーズ#10 舛本哲也さん/養蜂家

ーー“幻のはちみつ”にかける思い
  • 2023年07月18日

舛本哲也さん
北九州市門司区で生まれ育つ。10年前から在来のニホンミツバチの養蜂に取り組んでいる。

工業都市に残る緑のなかで

工業都市、北九州。
その一角にあるのが舛本哲也さんが養蜂を行っている山田緑地です。

山田緑地は戦前から戦後にかけ、日本軍やアメリカ軍により弾薬庫として使用され、立ち入りや開発が制限されたため、豊かな自然が手つかずのまま残り、今では市民の憩いの場となっています。

緑地内に設置された巣箱のふたを外すと中にはハチの巣がびっしり。
黄金色の蜜がしたたり落ちます。

“幻のはちみつ”

養蜂では一般的にセイヨウミツバチが用いられますが、舛本さんが飼育しているのは日本に古くから生息する二ホンミツバチです。

体が小さく、おとなしい性格で、めったに刺すことはないといいます。
その一方で生息数は少なく採れる蜜の量も限られていることから、市場に出回る量はごくわずかで“幻のはちみつ”とも呼ばれています。

舛本さん

二ホンミツバチはさまざまな植物から蜜を集めてくるのが特徴で、そのはちみつは季節や場所の違いにより風味に特色が出ます。まろやかで場所によってフルーティーにもなり、セイヨウミツバチとは全く違う味がします。

北九州と二ホンミツバチ

舛本さんが養蜂を始めたのは公園の設計の仕事をしていた10年前。
山田緑地で二ホンミツバチの巣を見つけたのがきっかけでした。

舛本さん

北九州は非常に緑が多くて照葉樹林、シイとかタブとかカシなんですけれども、そういった木をニホンミツバチが好むんです。だからニホンミツバチにとっては、非常に適した環境でもあると思います。

北九州と二ホンミツバチとのつながり。
古くは小倉城主だった細川家に関する江戸時代の書物にも見ることができ、そこには“長崎から移した蜜蜂を城内で飼育していた”と記されています。

原風景を守りたい

そして、二ホンミツバチがいる光景は舛本さん自身の原風景でもあるといいます。

舛本さん

小さいころ裏山でよくで虫捕りをやっていて、ちょうちょうとか捕っていた時に二ホンミツバチをよく見かけました。庭でも父親が二ホンミツバチを飼育していたんです。ニホンミツバチは森をつくると言われていて、原風景であるその環境を守っていきたいし作っていきたい。

二ホンミツバチの養蜂技術が確立されていないなか、当初はほとんど、はちみつを採ることができませんでしたが、試行錯誤を重ね、今では20の巣から年間およそ100キロの蜜が採れるまでになりました。

デパートの物産イベントなどに出展し、採れたてのはちみつを味わってもらっています。

おいしい、非常に甘い!

生き物のパワーを感じます!

ニホンミツバチが生息できる豊かな自然を残したい。

舛本さんは定期的に講座も開いて、巣箱の設置方法など飼育のノウハウを伝授するとともに、環境のバロメーターと呼ばれる二ホンミツバチの役割を伝えています。
県内だけでなく茨城や広島など各地から参加する人もいるといいます。

舛本さん

ニホンミツバチは、いろんな樹木の花粉を媒介するポリネーターとして有名ですが、それだけじゃなくて、人と人もつないでくれている気がします。養蜂を通じて地域間の交流が盛んになれば、街も活気づくと思います。

“幻のはちみつ”で里山再生

そんな舛本さんが今、特に力を入れているのが、はちみつを新たな地域資源にする活動です。

過疎が進む八幡東区の猪倉地区で地域のNPOが進める里山再生プロジェクトに参加し、耕作放棄地で養蜂に取り組んでいます。

ここで採れたはちみつを“里山のはちみつ”として商品化することを目指しています。

舛本さん

全国の拠点とまではいきませんが、ここから二ホンミツバチの情報を発信し、いろんな町とつながっていく。そして、北九州市産のニホンミツバチのはちみつ、幻のはちみつでPRして北九州を盛り上げていきたいと思います。

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  • 新屋敷美玲

    北九州放送局記者

    新屋敷美玲

    平成23年入局 北九州市政の担当キャップ。

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