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北九州市で開催 ウクライナの子どもたちの絵画展

ウクライナ留学生の思い
  • 2024年02月08日

ロシアのウクライナへの軍事侵攻が始まってまもなく2年となる中、北九州市立美術館分館でウクライナの子どもたちが描いた絵の展示会が開催されました。作品を集めたのは北九州市立大学で学ぶウクライナの留学生。遠く離れた地でなぜ絵画展を開いたのか、母国への思いを聞きました。(北九州放送局:大倉美智子)

戦禍を生きる子どもたちの絵

「生きて帰ってきて」というタイトルがつけられた絵。子どもが見つめる先で破壊される建物。1月から北九州市立美術館分館で開催されている絵画展には、ウクライナに住む7歳から14歳までの子どもたちの絵134点が展示されています。

作品を集めたのはウクライナから北九州市立大学に留学しているイレーナ・バランさん(22)です。取材に訪れた日、絵画展に込めた思いを語りながら会場を案内してくれました。

イレーナさん

戦争はニュースで伝えられる壊された建物や政治だけでなく、すべての人に影響を与え、子どもまで影響を受けていることを知ってほしい

北九州に来たわけは…

2023年4月 イレーナさんと同級生のみなさん

イレーナさんが来日したのは、2023年3月末。桜が咲き誇るなか、緊張した面持ちで北九州市立大学の入学式に参加していました。イレーナさんはウクライナ西部・テルノピリ出身で、リビウの大学で建築を学んでいました。将来は、ウクライナで建築デザインの仕事に就きたいと考え、日本や外国への留学は考えていませんでした。しかし、2022年2月、ロシアが軍事侵攻を開始したことでイレーナさんの生活も一変しました。

日々変化する戦況。イレーナさんは、北九州市立大学の教授がウクライナの若者を受け入れる留学プログラムを作っていることを知り、日本への留学を決めました。

北九州市立大学 国際環境工学部 建築デザイン学科
バート・デワンカー教授

受け入れを担当したのは、ベルギー出身のバート・デワンカー教授。北九州市立大学の建築デザイン学科で20年以上教えています。イレーナさんは、バート教授のもとで、母国の将来の復興を担いたいと、大学院で建築デザインを学ぶことになりました。

バート教授

いまの戦闘が終結した後、ウクライナの復興には建築の技術がある人材がきっと役に立ちます。イレーナさんには、北九州で学び将来の復興を担う人材になってほしい。

来日から10か月。イレーナさんは日本での生活にも慣れ、研究室を訪ねた際には日本語での自己紹介も披露してくれました。ただ、毎日ふるさとで暮らす両親のことが頭を離れることはないといいます。

両親とイレーナさん

家族とは毎日連絡を取っています。現地では毎日のように空襲警報やミサイル攻撃があり安全な場所はありません。

子どもの絵が伝える戦争

そうした状況で開催した今回の絵画展。イレーナさんは、母校など4つの学校に掛け合って作品を集めました。ウクライナの子どもたちは、戦場にいる父親に物資とともに送る絵を描いていたのだそうです。

展示は「War(戦争)ゾーン」と「Hope(希望)ゾーン」の2つのエリアに分けられています。

「War(戦争)ゾーン」に展示された絵には、瞳の中に映る戦車や上空を飛ぶミサイル、破壊された建物など、子どもたちから見た戦争が描かれています。イレーナさんは絵を見たとき強い衝撃を受けたと話します。

最初に絵を見たときはパニックになりました。子どもたちは、戦争のことをあまり理解していないだろうと思っていましたが、絵を見て、これほど深く理解しているのだとわかりました。とても印象的で悲しく思いました。

「Hope(希望)ゾーン」には、平和の象徴とされる鳩や平和を祈る少女の絵など、色とりどりの絵が展示されています。イレーナさんは、子どもたちが未来への望みを忘れていないことに励まされたといいます。

ポジティブな絵で見るだけでたくさんの幸せを感じられると思います。子どもたちが前向きな気持ちを失っていないことが本当にうれしいです。

“学びの環境を守りたい”日本で今できること

いま、イレーナさんが心を痛めているのは現地の学校の状況です。ユネスコによると、ウクライナではおよそ3800の教育機関が被害を受けました。イレーナさんが通っていた大学でも寮の窓ガラスなどが破壊されたといいます。

ゼミの授業で発表するイレーナさん

イレーナさんは、北九州市立大学での修士論文のテーマを、「ウクライナの学校の再建」として研究を進めています。指導するバート教授もウクライナの学校のデザインを考える国際建築コンペを企画しています。取材をした日は、一緒に学ぶゼミ生たちがコンペに向けたデザインを考えるための授業が行われ、イレーナさんは学びの環境を守る重要性を訴えました。

現地で戦争はまだ続いていますが、できるだけ早く学校を再建する必要があります。子どもたちには学ぶ場所が必要です。

同級生

イレーナと友達になったので、ウクライナ語も勉強したし、ウクライナについて考える機会が増えました。建築物のデザインなど、私にできることをしたいです

ロシアによる軍事侵攻が始まってまもなく2年。戦闘が長期化する中、イレーナさんは遠く離れた北九州で学びを続けながら、母国への思いを募らせています。

(イレーナ・バランさん)
この苦しい時期に家族と遠く離れていますが、家族やウクライナの将来のために、日本で頑張ることが大切だと思っています。すべてのウクライナの人たちと同じ気持ちですが、とにかくこの戦争が早く終わってほしいと願っています。

【現地のこどもたちが描くウクライナ展】
2024年1月14日~2月19日 北九州市立美術館分館(北九州市小倉北区)

  • 大倉美智子

    北九州放送局・記者

    大倉美智子

    絵画展で最初に絵を見たときは、子どもたちにこんなに悲しい絵を描かせる現実があっていいのかと、深いため息が出てしまいました。北九州で「自分ができること」は何か、今後も取材を続けたいと思います。

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