メディア研究部(海外メディア) 税所玲子
世界の公共放送のお手本ともいわれるイギリスBBC。
世界で週あたり4億6800万の人がそのサービスを利用し、王室とならびイギリスのソフトパワーの一翼を担うともいわれる組織ですが、現地では、いま、「創設以来の危機にある」との論が後を絶ちません。1)
その背景には、技術革新とともに台頭したNetflixなど、新しいビジネスモデルを持つグローバル企業の動画配信サービスにおされ、テレビの視聴時間の減少に歯止めがかからないことがあります。BBCのストリーミングサービスiPlayerも、2014年には40%を占めていたシェアが2019年には15%まで減少しています。
また、EU=ヨーロッパ連合からの離脱を問う国民投票をきっかけに世論が真っ二つに割れてしまったことで、不偏不党を掲げるBBCは、離脱派、残留派のどちらからも不満の矛先を向けられるようになりました。離脱派のジョンソン首相は、BBCを“Brexit Bashing Corporation”(離脱叩き協会)と呼び、受信許可料制度の見直しも示唆しています。
こうした中で、放送通信の外部規制監督機関Ofcom(The Office of Communication)は、2020年、BBCを含む公共サービス放送2)の将来について、集中的な討議を行いました。
市場調査や世論調査のほか、学識経験者による提言などが寄せられる中で、私が最もイギリスらしいと感じたのは、2020年7月から8月にかけて開催された「Citizen Assembly(市民会議)」という名の討論でした。ディベート大国らしく、市民46人が、公共テレビの役割と課題について専門家のレクチャーを聞いた後、論点を整理して、討論します。そして、4回目の会合で洗い出された課題について投票を行い、順位をつけていくというものです。
結果は次のようになりました。上位5つを記します。
①BBCの政府からの独立を守ること
②科学や教育番組を提供すること
③十分に多様な視点や見方を提示して、市民の判断材料を提供すること
④ニュースは、スピードよりも正確性とディテールを重視すること
⑤様々なプラットフォームを通じて番組が視聴できるようにし、最新の技術を使ってオンラインでも目につきやすいようにすること
また、10月には、3日間にわたる討論会が開かれ、その様子が配信されました。
BBC改革論者の前文化・メディア・スポーツ相やメディア界の重鎮などが自説を展開した後の最終セッションでは、BBC、ITV、Channel 4、Channel 5の会長やCEOが討論にのぞみました。アメリカ資本の衛星放送Skyの政治キャスターが、1時間にわたって「あなたたちの価値はなにか」と問い詰める様子は現在でもネット上で公開されています。
こうした一連の議論を経てOfcomがまとめた報告書は、「このままでは公共サービス放送が生き残ることは難しい」と結論づけました。そして、▼放送通信法の改正、▼長期に維持可能な財源制度の検討、▼コンテンツを届ける方法を放送に限らないこと、▼放送局どうしや、配信サービスとの連携強化の検討などを提言として示しました。
Ofcomは、ことし3月までこの報告書に対する意見を公募した後、最終提言として政府に提出し、それをふまえて政府の改革案がまとめられる予定です。
この議論は、「分断」「対立」という言葉が当たり前のように使われるようになってしまった今の社会で、市民ひとりひとりが、よりよい判断をし、豊かに暮らしていくために必要な情報を届けていくためにはどのような仕組みがよいのか?そんな問いかけに対するそれぞれの答えを探すプロセスに思えます。
来年の今頃には、その問いに対しイギリスなりの答えが出され、公共メディアのデッサンが完成しているのではないかと思います。輪郭を書いたり消したりしながら進められるその作業から目を離さずにいたいと思います。
1) Guardian 2020年9月30日”Andrew Marr: There is a drive to destroy the BBC”
https://www.theguardian.com/media/2020/sep/30/andrew-marr-there-is-a-drive-on-to-destroy-the-bbc; Financial Times 2021年1月6日“The BBC, Fleet Street and the future of journalism" https://www.ft.com/content/74570d49-75c0-40a6-a9dd-dc246dc46c97
2) 正式には公共サービス放送(Public Service Broadcaster)と呼ばれ、BBC,ITV, Channel4, Channel5, S4Cが含まれる。財源は様々だが、不偏不党なニュースや社会情報番組などを制作する責務を負う。
メディア研究部(海外メディア) 山田賢一
ここ数年、香港は激動の中にありました。
2014年に香港の行政長官選出をめぐって「真の直接選挙」を求める「雨傘民主化運動」が起き、香港の繁華街の道路を2か月半にわたって占拠しました。このこと自体、従来「ノンポリ」で知られてきた香港人の大きな変化を示すものでしたが、2019年にはさらに大きな事件が起きます。行政長官が進めようとした「容疑者送還条例」改定に対する反対運動で、6月9日には100万人、そして翌週の16日には200万人が参加する特大規模のデモが起きました。
しかし、筆者がかつてインタビューした人物で、3月末の初期段階の反対デモ(参加者1万2000人)には顔を見せていた林栄基氏の姿は、6月にはすでに見られませんでした。林氏は中国に批判的な書籍を発刊する銅鑼湾書店の店長で、2015年10月に中国本土に入境した後、行方不明となります。そして林氏を含む同書店の幹部5人がほぼ同じ時期に次々と失踪していたことが分かりました。林氏は翌年2月、他の拘束された2人と共に香港のテレビに登場し、違法な書籍の販売に関わったと罪を認めます。
ところが釈放後の6月、林氏は香港で記者会見を行い、自らの自白ビデオが中国当局に強制されたものだったことを暴露しました。釈放された他の幹部たちが沈黙を守る中、林氏の勇気ある行動は大変な反響を呼びました。しかし同時に、林氏はいつ中国政府から仕返しを受けるか分からない恐怖の中での生活を余儀なくされます。
「容疑者送還条例」への反対運動は、条例改定そのものは阻止できたものの、その後中国政府から「香港国家安全維持法」の制定という、強烈な反撃を受けます。この法律では、第9条で「メディア・インターネットへの監督・管理強化」が明示された他、第43条では、国家安全に危害を及ぼす犯罪に関与した疑いのある人物に対し、通信を傍受し秘密裏に監視することができるとされるなど、報道の自由を窒息させかねない内容です。
実際、2020年6月に同法が施行されたあと、8月には中国に批判的な論陣を張ってきた大手紙『りんご日報』の創業者である黎智英(Jimmy Lai)氏が同法違反の疑いで拘束され、りんご日報への家宅捜索も行われました。容疑者送還条例反対運動が盛り上がりを見せる中で、林氏が香港から台湾に移住したことは、今日の香港を当時すでに予見していたのかもしれません。
詳しくは、『放送研究と調査』1月号をご覧ください!
メディア研究部(番組研究) 七沢 潔
『放送研究と調査』2020年12月号、2021年1月号に連載した論文「『新型コロナウイルス』はどのように伝えられたか」では「テレビ報道とソーシャルメディアの連関」に注目しました。
ここでは、その研究がいまなぜ必要なのか、という「理由」について考えてみたいと思います。
インターネット時代の到来が宣言されてから四半世紀がたちました。
いまや世界中の人がTwitterやFacebook,Instagram,YouTubeといったソーシャルメディアを使って自らの言葉や思いを社会に伝え、自らが作ったり、選んだり、出演したりする映像を発信するようになっています。新型コロナウイルス感染者が、スマホで自撮りした動画を通じて世界にメッセージを送る時代なのです。
この間、放送事業者はソーシャルメディアの反応に敏感になり、これを取り込もうと、あるいはコラボ(協業)しようと時流をキャッチアップして来ました。それは視聴率が大きな意味を持つ娯楽番組=ドラマやバラエティ番組などで顕著で、双方向性を生かした新しい表現領域を生むと同時に、出演者を自殺に追い込むような負の側面もあらわになりました。そして、この「娯楽」領域については、これまで文研でも研究対象になってきました。(「朝ドラ」について二瓶亙・関口聰2014、「リアリティショー」は村上圭子2020など)
今回着目したのは「報道」という、比較的距離が置かれてきた領域です。「フェイクニュース」という言葉が流布するここ数年は「ファクトチェック」や「流言」の研究(福長秀彦2018)などが見られるようになりましたが、多くはネガティブな現象に光が当てられてきました。今回の「コロナ報道」の研究でも、第1部では「番組の本質からずれたバズり」や「内容を反映しない引用」など、「道ならぬこと」をしてテレビ報道を揶揄したり、足を引っ張るネットの「特性」が強調されています。
それでも筆者は今回の論文の第2部で「ソーシャルメディアはテレビとともにPCR検査問題に対峙したのではないか?」と仮説を立て、検証を試みました。見えにくい「相互作用の軌跡」を可視化するために、「アジェンダセッティング」、日本語にすると「議題設定」という古くからのジャーナリズム研究の概念も持ち出しました。
そのアイデアはある日突然、個人的な記憶とともに浮上しました。10年前、福島第一原発事故直後に作った番組『ETV特集 ネットワークでつくる放射能汚染地図』(2011年5月15日OA)は、放送にこぎ着けるまでにも、放送後にも、Twitterなどからたくさんの応援を受けました。
その記憶がなぜか蘇ったのです。
「ネットワークでつくる放射能汚染地図」より
この番組は事故発生の3日後に企画され、当時大手メディアが足を踏み入れなかった原発から半径30キロ圏内に入って取材をしたのですが、その行動が「通達」に反すると内部で問題視され、取材が中断されました。しかし高濃度の汚染地帯と知らずに地域の集会所に滞在する人々などの取材映像を、別の番組(『ETV特集 原発災害の地にて』同年4月3日OA)で放送するとネット上で評判となり、再放送希望の電話やメールがNHKに多数届けられました。
これを契機に流れが変わり、条件付きで30キロ圏内の取材ができるようになり、『放射能汚染地図』本編も放送できるようになったのです。
放送後もネットはバズり、YouTubeに番組映像がアップされ、1500件を超える再放送希望が殺到、総合テレビを含め、都合5回再放送されました。
「行き詰った企画をネットに救われた」
そんな思いもあってタイトルに「ネットワーク」という言葉を配したことも思い出されます。
この話を研究チームの同僚に当てると「それは稀有な成功例でしたね」と素っ気なかったのですが、「ネットはある条件下ではテレビの強力な支援者、あるいは盟友にもなる」
という筆者の確信は揺るぎませんでした。
感染が気になり検査を受けたくても、受けられない状況の告発に始まった「PCR検査問題」も
番組を視聴し、Twitterの反応を精査していくと、『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)や『news23』 (TBS)など先行するテレビ番組にTwitterが盛んに反応、それを受けて番組はさらに動きを加速し、他局の番組も後追いをしています。
途中、検査拡充に反対する投稿や出演者への誹謗中傷もあったものの、結局政府は拡充に向け舵を切らざるを得なくなりました。
テレビとソーシャルメディアのコラボが「成功」した二つの事例は、「放射能汚染」「ウイルス感染」という、生命にかかわる危害が誰の身にも及ぶ可能性のある緊急事態でありながら、行政による情報公開や検査が不十分で、視聴者の不安が高まる状況下で進行した点が共通しています。
問題に対峙し、率先して警鐘を鳴らすテレビ番組が現れ、それをネットが拡散力でバックアップして事態の解決にむかう社会的な「うねり」を作り出したことも、共通しているかも知れません。
筆者は30年以上にわたり原発事故という「失敗例」の取材や研究を続けてきました。それは「成功」が宣伝される「安全神話」の時代だからこそ重要な課題でした。
他方で「テレビとソーシャルメディアの関係」のようにトラブルや「失敗例」ばかりが目立つテーマでは、その数を上積みするばかりでなく、逆に数少ない「成功例」を掘り起こし、ケーススタディを行うことも重要なのではないでしょうか。
それによって、本格化するネット時代の中で、テレビが公共性を維持・発展するために、
必要でかけがいのない知見をつかむことができないか―
それが、筆者がこの研究にこだわる個人的で、公共的な理由なのです。
(本稿第1部、2部はそれぞれ下記のURLからPDFで読むことができます)
第1部 https://www.nhk.or.jp/bunken/research/domestic/20201201_7.html
第2部 https://www.nhk.or.jp/bunken/research/domestic/20210101_6.html
メディア研究部(番組研究) 高橋浩一郎
1918-1919年のインフルエンザ(通称「スペインかぜ」)がもたらした疫禍を描いた『史上最悪のインフルエンザ 忘れられたパンデミック』で、著者のアルフレッド・W・クロスビーは、当時のアメリカの記録を丹念に調べる中で「まるで大船団が恐ろしく強烈な潮流の上を横切ろうとしている光景を、丘の上から見おろしているような感じがする」と述べ、続く文章で「船乗りたちはほとんどその流れに気づかず、舵をしっかり握りしめ、羅針盤を覗きこみ、決められた進路を忠実に守ろうとしている。だが彼らの軌跡は、自分たちの位置から直進しているように見えても、我々から見れば彼らに見えない潮流によってはるか下流の方に押し流されている」(西村秀一 訳、みすず書房 出版)と書いています。
この文章を読んで、新型コロナウイルスによって、少し先の予定さえも立てることができなくなった現実に直面しているにもかかわらず、「決められた進路を進むことができる(もしくは、しなくてはならない)」という思い込みから抜け出すことができないままでいる今の日本の状況を言い表しているように思えたのは私だけでしょうか。そこに書いてあるのは過去の出来事なのに、あたかも現在のことを表現しているような記述に出会うと、生きていくうえで歴史を学ぶことが不可欠であることを思い知ります。
『史上最悪のインフルエンザ』とは扱っている病気も時代状況も異なりますが、放送文化研究所で毎月発行している「放送研究と調査」では、2020年1月から7月の間になされた新型コロナウイルスについてのテレビ報道と、それに関するソーシャルメディアの反応を記録・考察した論稿「『新型コロナウイルス』はどのように伝えられたか」を掲載しています。2020年12月号掲載の【第1部】では、朝・昼・夕・夜の時間帯から、NHKと民放の計25番組を選び、それらの番組が、どの時点で、どのようなことを、どの程度報道したのか、またそれらの報道に対し、ソーシャルメディア(主にTwitter)がどのように、どの程度反応し、両者の間でどのような連関があったのかを検証しています。2021年1月号掲載の【第2部】では、「PCR検査」を事例に、ソーシャルメディアと連関する中でテレビが果たしたと考えられる機能を仮説として取り上げています。
今月7日、東京では2447人、全国では7570人といずれもその時点での過去最多の感染者が確認され(NHK新型コロナウイルス特別サイトより)、1都3県を対象に再び緊急事態宣言が発出。その後、他の府県にも対象が拡大されるなど、国内の新型コロナウイルスの感染拡大は依然収束の目途が立っていません。時々刻々と事態が変わっていく中で、数か月前のテレビとソーシャルメディアの記録をまとめ、発表することにどのような意味があるのか、研究に関わった一員として今も考えています。その問いに対する答えはまだ十分に得られたとは言えませんが、現時点では「遠くない過去からも学べることがある」という、至極当たり前なことではないかと思っています。
というのは、人間というのは、少し前に起こったことについては、ある程度記憶しているし、理解していると思いがちですが、往々にして知っているつもりでいてよくわかっていないことがあると思うからです。例えば、新型コロナウイルスに関わるTwitter投稿が一体どのくらいの数あり、その中でテレビ報道に関するツイートはどの程度の割合を占めるのか、Twitterはどういうテレビのトピックに反応し、どういうトピックには反応しないのか、また投稿をするのはどういう人たちで、どのような内容が幅広く共有されるのか、といったことを私はほとんど知りませんでした。しかし、今回の研究を通じてそれらに対する一定の答えを初めて得ることができ、それまでテレビとソーシャルメディアの関係について抱いていた、得体のしれない、どちらかといえばネガティブな、漠然としたイメージが、現像液につけた印画紙から画像が浮き出てくるように、少しずつ輪郭を露わにしてきたように感じました。それらはあくまでも数か月前に起きた個別の事象で、必ずしも現在起きていることに敷衍できる一般性があるわけではありません。けれども、9か月前に続いて再度「緊急事態宣言」が出された今、これからのテレビとソーシャルメディアの関係を考えるうえで学べることもあるのではないかと思っています。
新型コロナウイルスに関するテレビ報道とTwitter投稿の関係について、現時点で必ずしもその全容がつかめているわけではありませんが、多分にズレや齟齬を含んだ、いびつなものだということが分かってきました。テレビ報道が意図していない部分でTwitter投稿に大きな反応が見られたり、誤解や意図的な曲解に基づいた情報拡散がなされたり、テレビ側が伝えたいことが思ったように伝わらない状況が生まれています。一方で、テレビとソーシャルメディアが連関することで、従来マスコミが独占的に手掛けていた一方的な情報流通ではありえなかった、いびつかもしれないけれど、一種の“コミュニケーション”の可能性が生まれているようにも思えます。その存在が最早前提となりつつある中で、恐れすぎるだけではなく、リスクを正しく踏まえたうえで、テレビを含む既存メディアが、ソーシャルメディアとどのようにしたらよりよい関係を築くことができるのかについても今後考えていく必要があります。おそらくそれは「テレビだけではどうしようもできないことと、どう向き合っていくか」という難題であることは間違いありませんが、そこを避けて通ることはできません。
ネットという大きな流れに巻き込まれ急速にメディア環境が変わる中で、テレビが今後社会の中でどのような役割を果たしていけるのか、そこにはどのような課題や可能性があるのか。この1年間にテレビがソーシャルメディアとの間で経験したことからなんらかの教訓を学び取るうえで、本稿が少しでも役立つことを願っています。
冒頭に挙げた『史上最悪のインフルエンザ』は、今からおよそ100年前の出来事を約30年前に書いた本です。筆者のアルフレッド・W・クロスビーが、当時のアメリカ社会を冷徹に「恐ろしく強烈な潮流を横切ろうとしている大船団」と評し、自らの立ち位置を「丘の上から見下ろしているような感じ」と書いているのは、そこに、ものごとを客観的に見て評価するのに十分な70年という時間が横たわっているからだと思います。一方、私たちは新型コロナウイルスに巻き込まれてまだ1年という時間しか経っておらず、その渦中にいるため、十分に客観的な見方をすることができません。言い換えれば、それは「強烈な潮流を横切る」だけが唯一の現実ではなく、今から軌道修正をし、あるべき未来を手繰り寄せる可能性をまだ手にしているということでもあります。
メディア研究部(メディア動向) 大髙 崇
先月のブログにも書きましたが、私は現在、コロナ禍でテレビの再放送が急増したことを受けて、「再放送に関する意識調査」の結果分析と考察に取り組んでいます(*)。
今は研究に専念していますが、もともと私は番組ディレクターで、なかでもNHK・Eテレの番組制作に長く携わってきました。
番組ディレクターは概して「変わり者」が多いのでありますが、Eテレの面々は中でも「変わり者率」がかなり高い、というのが私の経験に基づく独断と偏見です。
とにかくマニアック、よく言えばその道一筋の職人たちの集団、という感じで、その人の得意ジャンルについて質問したが最後、水を得た魚のように喋り始めて夢中になっちゃうので、「そんな詳しいところまで聞いてないんだけど…」と後悔する時もしばしばありました。
現代絵画の専門家。能や歌舞伎の「玄人」。昆虫愛のかたまりのような人。古代中国の漢詩のほとんどを暗唱できる人。あまりに仏教に詳しくてお寺の和尚さんを恐縮させちゃう人。甲冑を見ただけで、いつのどの武将のものか言い当てる戦国オタク。お前、何か国語話せるんだ⁉と度肝を抜くほど外国語をすぐに習得する“絶対語学感”の持ち主。どうしたら赤ちゃんが笑うかに全身全霊を捧げているオジサマ・・・。Eテレのディレクターが天職のような面々で、いい意味で「いい歳して子どもだなあ」と羨ましくなります。
Eテレの番組群は「視聴率」だけを基準にすると、正直なかなか“分が悪い”です。
しかし、手前味噌ではありますが、「職人」たちの知の蓄積と感性が冴える優れた出来栄えの番組も多く、とにかく一度ご覧ください、損はさせません!と訴えたい作品が(あくまで私見ですが!)たくさんあります。もちろんのことですが、Eテレ職人たちも番組制作にあたっては、皆さんどなたにも「見て良かった」と思っていただけるようにと、わかりやすく丁寧に、品質重視をモットーに取り組んでおります。念のため。
さて、冒頭で触れた再放送の意識調査の中で、ドラマやドキュメンタリー、教養番組などのジャンルごとに「どんな“要素”を持った再放送番組が見たいか」と質問しました。
そして、その結果がこちらです。
赤文字で強調したのが・・・何を隠そう、Eテレのおすすめ番組が持つ要素ではないか、と私なりに希望を感じている部分です。
「名作」かどうかはさておき、Eテレ職人たちが個々の感性を武器に「好みや趣味」をとことん追求した番組は枚挙にいとまがありません。そして、「知られていない」「レア」な番組が・・・言い切ってしまうことにややためらいつつも・・・たくさんあります!
この年末年始の番組表を覗いてみると、Eテレでは、調査結果にあるニーズに合致するかもしれない番組の再放送が続々登場です。そのいくつかをご案内しましょう。
●12月26日(土)午後4時25分~
こころのおはなし ABUアジアこどもドラマシリーズ名作選
Eテレで2005年から15年続く「こどもドラマシリーズ」、ご存知ですか? ABU(アジア太平洋放送連合)が主催する国際共同プロジェクトで制作され、過去には「名作」「話題作」が数多くあります。“知られていない優れた番組”と言っていただけるかもしれません。
この日放送される『ヒカルの掃除』(2012年8月初回放送)は、今年のドラマ「おじさんはカワイイものがお好き。」(日本テレビ系)でも人気だった眞島秀和さんが父親役として出演する“レア”な作品。
そして、『ブラジルへの近道』(2015年7月初回放送)は、海外の映像祭での受賞歴もあり、今をときめく寺田心(当時6歳)さんが出演している、これまた“レア”な一品です。
『ブラジルへの近道』より
なお、12月29日(火)午前10時からは、同シリーズの新作・ABUこどもドラマ2020『あやとり』が放送されます。こちらもお楽しみに!
●12月29日(火)午後10:00 ~
先人たちの底力 知恵泉 選「新しい女の生き方 昭和編 長谷川町子」(2020年9月初回放送)
「サザエさん」の作者、長谷川町子さん。今よりずっと女性の社会進出が難しかった昭和の時代に、どんな知恵をもって生き抜いてきたのか? 西原理恵子さんや熊谷真実さんのトークも必見です。「ために」なって、「今見ることに意義」を感じていただけたら幸いです!
コロナ禍に翻弄された2020年も残りあとわずか。年末は英気を養いつつ、Eテレの「底力」をご堪能ください!
そして、再放送に関する意識調査の結果は、年明けの『放送研究と調査』(2月号に前編を掲載予定)や、3月開催の『文研フォーラム2021』で詳しくお伝えしようと思っております。報告をお待ちください!
(*)2020年9月に実施したインターネットでのアンケート調査。対象者は全国20~69歳の男女1,000人で、テレビを1日1時間以上、NHK地上波を週1回以上視聴する人。サンプル構成は世代(20代~60代)ごとに男女100人ずつ(計200人×5世代)。
放送文化研究所 島田敏男
見通しのよくない山道を車で走る時は、早めの減速が鉄則であるのは言うまでもありません。まして初めてのルートを走る時は、「平坦な直線道路の先に、突然こう配のきつい降り急カーブが現れるかもしれない」と考えるべき。従って、すぐに減速できるように、早めのシフトダウンを心掛け、安定したブレーキ操作につなげるのが普通でしょう。
ところが、これと全く逆の姿に見えたのが「Go Toトラベルを年末28日から年明け11日まで全国一斉に一時停止する」という12月14日の決定までの菅総理大臣の2週間でした。
元々菅総理は、二階幹事長と並ぶ自民党きっての観光業界の理解者として知られてきました。官房長官当時には、赤坂迎賓館や京都迎賓館を観光の目玉になる見学場所として活用しようと尽力し、インバウンドの観光誘客に拍車をかけてきました。
12月初旬にまとめた総合経済対策には「Go Toトラベル事業の来年6月末までの延長と予備費活用」を盛り込み、経済活動を支える菅内閣を印象付けました。まさに「アクセルを踏み込む運転」に他なりませんでした。
しかしそれとは裏腹に、新型コロナウイルスの感染者数は全国的に拡大傾向が続き、12日には東京都内でそれまでで最多の621人の感染者が報告されました。大阪や北海道でも医療崩壊の一歩手前の地域が出はじめ、自衛隊の看護師らが災害派遣される事態が生じました。
感染拡大防止か経済か。難しい判断を伴う二律背反の問題ですが、国民の間では大型の感染第3波が押し寄せているにもかかわらず、菅内閣の対応が経済優先に傾きすぎているのではないかという受け止めが一気に広まりました。
毎日新聞と社会調査研究センターが12月12日に行った世論調査で「菅内閣を支持する」40%、「支持しない」49%で、不支持が支持を上回り、政権内に動揺が走りました。
そして11日から13日にかけてNHKが行った月例世論調査は、「菅内閣を支持する」42%、「支持しない」36%という結果でした。逆転こそしませんでしたが、菅内閣発足直後の62%の支持率が、わずか3か月で42%へと20ポイント下落しました。支持が3分の2に縮んだわけです。
このNHK調査を詳しく見ると、「新型コロナウイルスをめぐる政府の対応を評価しますか?」という質問に対し、答えは「評価する」41%、「評価しない」56%という結果でした。菅内閣が9月に発足して以来、この質問で「評価しない」が「評価する」を上回ったのは初めてです。
これを11月の調査と比べてみると、「評価する」が19ポイント減り、「評価しない」が逆に21ポイント増えています。この1か月で国民の受け止め方が急激に変化したことが分かります。
そして菅総理が経済の下支えとして強くこだわるGo Toトラベルについては、極めて厳しい眼が向けられました。「政府はGo Toトラベルを延長する方針です。あなたは、このまま続けるべきだと思いますか。それともいったん停止すべきだと思いますか」と聞きました。
結果は「続けるべき」12%、「いったん停止すべき」79%でした。実に国民の8割が「いけない、急ブレーキが必要だ!」と感じたということです。まさに菅官邸の“未熟運転”ぶりが見えてしまった出来事です。
もちろん菅総理周辺が発している「Go Toを来年6月末まで延長したのは、旅館業、観光業の人たちが金融機関から事業継続の融資を受け易くするための環境整備だ」という説明には一理あります。
確かに旅館業、観光業に従事する人たちは、関係者の間では900万人とも言われ、決して少ない数ではありません。しかし、その10倍以上になる国民の多くが、「行動範囲の拡大を奨励するような誤ったメッセージを送り続けるのはいかがなものか」と感じる間は、慎重に対処した方が良いでしょう。
新型コロナウイルスを抑えるワクチンの開発・製造の知らせが続々と世界各地から伝わり始めました。これがどういうスピードで接種され、感染拡大にブレーキをかけてくれるのか。
学術会議をめぐる問題でも指摘されたように、様々な局面で国民への説明不足が目立つ菅総理。今回の支持率急落を挽回するには、コロナ禍を乗り越えるための政策展開について、これまで以上に説明の努力を重ねるしかありません。
安倍前総理大臣が8月に退陣の決断をした背景の一つに、コロナ禍対応で泥にまみれて終わるのは避けたいという思いがあったのは透けて見えました。それほど困難な情勢です。これを乗り越えるには、国民の納得を得ることが一番の力となるのではないでしょうか。
メディア研究部 (海外メディア) 青木紀美子
「数えるべきではない票を数えている」「票の有効無効の判断に信頼がおけない」
アメリカ大統領選挙の開票・集計作業に対するこうした批判を筆者が初めて耳にしたのは、2020年ではなく、20年前のことです。2000年11月、ブッシュ対ゴアの選挙直後、南部フロリダ州パームビーチ郡で始まった票の手作業による数え直しの最中でした。選挙の勝敗を決めるフロリダ州の得票を数百票差でリードしていた共和党ブッシュ陣営は数え直しに反対の立場。全米各地から共和党議員や知事、法律顧問たちが選挙委員会の拠点、郡の緊急事態センターを訪れ、駐車場に中継車やテントを並べて待機する報道陣を前に、数え直しの作業への疑念を表明しました。理由のひとつは票の有効無効を判断する選挙委員会委員長の判事が民主党支持者だということでした。
筆者は「民主主義の先進国」と当時は考えられていたアメリカで、選挙の運営と管理を託された公の組織に不信の念を示す政治家の発言に少なからず衝撃を受けました。有権者を味方につける戦略として公的な機関への信頼を損なうことも厭わぬ言動に危うさを感じたためです。連邦最高裁で決着をみるまで1か月以上かかったこの選挙、現地のテレビは入れ替わり立ち替わり現れる政治家の発言を長時間の生放送のコンテンツとして歓迎していました。ジャーナリストの多くは経験したことのない事態を追いかけることに忙しく、筆者も抱いた違和感を整理して伝えるにはいたりませんでした。
「違法な票を数えている。選挙が盗まれるかもしれない」
あれから5回目の大統領選挙となったこの11月。候補者である現職の大統領自身が、選挙の結果とプロセスに激しく異議を唱える異例の事態になっています。トランプ氏は選挙前から郵便投票が不正の温床だという主張を繰り返してきました。選挙直後の4日未明には、ホワイトハウスでの会合で「私に投票した多くの人々の選挙権を情けない人たちの集団が奪おうとしている」と発言。5日には、アメリカ東部時間の夜のニュースの時間帯にあわせてホワイトハウスで記者会見を開き、法的に有効な票の集計では自らが余裕をもって勝利したと表明。開票が進むに連れてバイデン氏との票差が縮まっているのは、民主党が「どこからか票を見つけてきた」からだと非難しました。アメリカのテレビ3大ネットワークは、この日も大統領の発言を生中継で伝えていましたが、いずれも途中でキャスターが割って入るかたちで生中継をそのまま放送にのせることをやめました。NBCのキャスター、レスター・ホルト氏は「大統領がいくつもの虚偽の申し立てをしたため、ここで遮らざるをえない」と述べるなど、各社とも会見が終わるのを待たずに映像をスタジオに戻し、大規模な不正が行われている証拠はなく、大統領の発言は事実に反していると指摘しました。
「郵便投票への不信を広げることを大手メディアが助けていた」
メリーランド大学のサラ・オーツ教授は3大ネットワークが会見の中継を打ち切ったことについてホワイトハウスが発信するプロパガンダがニュースではないことをメディアがようやく受け止め、方向を転換する画期的な判断をしたと評価しました。それまで、市民に情報を伝える媒体としての責任を果たそうとしたメディアが、大統領の発言をまずは真偽にかかわらず報道し、そのうえで問題を指摘してきたことが、かえって大統領に「メディアは偏っている」と批判する口実を与え、偽情報の拡散に利用されてきたというのです。 1) その一端をうかがわせる調査の結果をハーバード大学のヨハイ・ベンクラー教授のチームが発表しています。調査では2020年の3月から8月の半年間に「郵便投票による不正」を取り上げたオンライン記事、TwitterやFacebookへの投稿とその情報の源や流れを分析。この結果、トランプ大統領とその側近による「不正」の主張を初期の段階で幅広い層に拡散させる中核的な役割を果たしたのはこれをニュースとして取り上げた大手メディアだったと結論づけています。 2)
「メディアはトランプをどう伝えればよいか学びきれなかった」
トランプ大統領の発言をどう伝えるかは4年前の就任以来、多くのメディアが日々、直面してきた難題でした。大統領の発言に含まれた誤・偽情報は、就任を祝いに首都に集まった人の数に始まり、2020年9月までに2万件を超えたとWashington Postのファクトチェック・チームは報じています。 3) それでもジャーナリストは大統領という職位への敬意を持ち続け、「大統領の発言はニュース」というそれまでの常識に従い、意見の対立があれば両論を併記するというメディアの原則のもとに報道を続けてきました。また、大統領の言動が、常識や事実を逸脱するほど記事の扱いは大きくなり、それに対する憤りが大きいほど反響は大きく、さらに、その内容をめぐって激しい意見を戦わせるほどテレビは視聴率を伸ばすといった具合に、ビジネスとしてのメディアを潤わせてきたという側面もありました。こうした要素が重なった結果、間違いや嘘を指摘されても認めず、逆に事実を伝えるメディアを「フェイク・ニュース」「人民の敵」と攻撃する大統領にメディアはどう対応すべきか学習しきれないまま、振り回されてきたとWashington Postのメディア・コラムニスト、マーガレット・サリバン氏は述べています。 4)
「異なる現実の中で生きてきたアメリカ人」
大統領選挙から4日目の11月7日、アメリカの大手メディア各社はバイデン氏の勝利が確実になったと報じました。一部の州ではまだ集計作業が続いていましたが、残る票で結果は覆らないとの読みに基づくものでした。「大規模な選挙不正」の証拠は示されず、各地の裁判所はトランプ陣営の訴えを相次いで退けています。しかし、YouGovとEconomistが11月15日から17日にかけて行った調査では、トランプ氏に投票したという回答者の91%が、郵便投票は「おそらく」または「間違いなく」バイデン氏に有利になるように操作されていると回答し、88%がバイデン氏の勝利は法的に正当なものではなかったと回答しました。 5) 政党支持による社会の分断は政策についての考えや価値観だけでなく、現実認識の違いを生み、事実の積み重ねでは超えられない壁になりつつあることはこれまでの調査でも示唆されていましたが、今回の選挙でより明確になりました。トランプ氏に投票した有権者は前回4年前の選挙を上回り、7000万人を超えています。ペンシルベニア大学のマイケル・デリ・カルピーニ教授は、「アメリカ人は異なる現実の中で生きてきた」と社会の分断への危機感を表明しています。選挙が公共の利益がどこにあるかを決する民主主義のシステムとして機能するには、事実の共有と、選挙プロセスへの信頼とが必要になるためです。 6)
「大統領選挙はメディアの報道にとっても分岐点」
大統領選挙で際立った「異なる現実」。その種は20年前のフロリダの数え直しのときにはすでに蒔かれ、長い時間をかけて育てられてきたといえるのかもしれません。政治の取材を政治家ではなく、市民の側の視点から行うよう呼びかけてきたニューヨーク大学のジェイ・ローゼン教授は、10年近く前からメディアが政治の動きを政党や政治家の戦略や駆け引きとして解説するインサイダー的な視点に重点を置いていることの危険性を指摘してきました。そして、「一方がこう主張したのに対し、他方はこう述べた」という双方の主張を並べるだけの両論併記は、何が事実かを検証して伝えるジャーナリストの役割を放棄するものではないかと疑問を投げかけてきました。 7) ローゼン氏は、そうした報道が、トランプ流政治に翻弄されることにもつながったとしたうえで、今回の選挙では、何が起きるかをメディアが予想して備え、根拠のない主張を退けたと評価しました。そのうえで、今後、メディアは従来の報道に戻るか、これを機に変わるか、分岐点に立っているとしています。 8)
「虚偽と真実の両論併記をやめる」
前出、サリバン氏も偽情報が蔓延して社会の基盤を揺るがす現状はトランプ大統領が生み出したものではなく、加速度的に悪化させたものであり、陰謀論を拡散するオンラインのニュースチャンネルやソーシャルメディアの存在もあって、これからも続くと警鐘を鳴らしています。将来に向け、事実にもとづく報道をするメディア(reality-based press)の役割は、まず、公平という名のもとに根拠を欠く虚偽と、事実にもとづく真実とを同等に扱う誤った両論併記をやめること。次に「真実を守り(pro-truth)、有権者の権利を守り(pro-voting)、民主主義を守る(pro-democracy)」など拠って立つところを明らかにすること。3つ目に、市民が情報の真偽を見分ける能力、メディア・リテラシーを高めることに貢献することだと提言しています。 9) また、ウィスコンシン・マディソン大学のスー・ロビンソン教授らは、メディアは今、事実よりも帰属意識、情報よりもアイデンティティーを拠りどころにする人々にどう向き合い、ジャーナリズムを担うものとしての役割をどう果たせるのかを試されているのだと述べています。 10)
アメリカのジャーナリストたちは2020年の大統領選挙の取材で期日前投票から開票・集計作業まで、現場の動きを記録し、伝えることで、「大規模な不正」という主張を退ける一助になってきました。また、この4年間、その調査報道やファクトチェックの活動によって、トランプ大統領や側近の言動に含まれるさまざまな虚偽や矛盾にも光をあててきました。しかし、選挙を通し、それが多くの有権者に届いていないという現実を改めてつきつけられたことで、これまでの報道を検証し、メディアの責任と役割を考える動きはアメリカで今後も続いていくでしょう。メディアとジャーナリズムの課題を考えるうえで学ぶところは多く、引き続き注視し、報告していきたいと思います。
1) The day the music died: turning off the cameras on President Trump(Sarah Oates-U.S. Election Analysis 2020)
https://www.electionanalysis.ws/us/president2020/section-4-news-and-journalism/the-day-the-music-died-turning-off-the-cameras-on-president-trump/
2) Mail-In Voter Fraud: Anatomy of a Disinformation Campaign (Yochai Benkler ほか-Berkman Klein Center for Internet and Society at Harvard University)
https://cyber.harvard.edu/publication/2020/Mail-in-Voter-Fraud-Disinformation-2020
3) In 1,323 days, President Trump has made 22,510 false or misleading claims
(Fact Checker-Washington Post)
https://www.washingtonpost.com/graphics/politics/trump-claims-database/?itid=lk_inline_manual_3
4) The media never fully learned how to cover Trump. But they still might have saved democracy. (Margaret Sullivan-Washington Post)
https://www.washingtonpost.com/lifestyle/media/media-cover-trump-save-democracy/2020/11/08/e23fc35e-21c1-11eb-952e-0c475972cfc0_story.html
5) The Economist/YouGov Poll November 15 - 17, 2020
https://docs.cdn.yougov.com/02yn0jg6d7/econTabReport.pdf
6) When worlds collide: contentious politics in a fragmented media regime(Michael X Delli Carpini-U.S. Election Analysis 2020)
https://www.electionanalysis.ws/us/president2020/section-4-news-and-journalism/when-worlds-collide-contentious-politics-in-a-fragmented-media-regime/
7) Why Political Coverage is Broken (Jay Rosen-Pressthink)
https://pressthink.org/2011/08/why-political-coverage-is-broken/
8) Two paths forward for the American press (Jay Rosen-Pressthink)
https://pressthink.org/2020/11/two-paths-forward-for-the-american-press/
9) The disinformation system that Trump unleashed will outlast him. Here’s what reality-based journalists must do about it. (Margaret Sullivan-Washington Post)
https://www.washingtonpost.com/lifestyle/media/trump-disinformation-journalism-next-steps/2020/11/20/6a634378-2ac8-11eb-92b7-6ef17b3fe3b4_story.html
10) When journalism’s relevance is also on the ballot (Sue Robinsonほか-U.S. Election Analysis 2020)
https://www.electionanalysis.ws/us/president2020/section-4-news-and-journalism/when-journalisms-relevance-is-also-on-the-ballot/