2017年01月11日 (水)風疹から幼い命を守るには


※2016年6月27日に放送されました。

風疹が流行すると、妊娠中の女性は注意が必要だということはよく知られていますが、国立感染症研究所などの研究チームの調査の結果、その深刻な影響が改めて明らかになりました。

平成24年から25年にかけて風疹が大流行した結果、全国で45人の赤ちゃんが耳や目、心臓などに障害が出る「先天性風疹症候群」と診断され、このうち11人が1歳3か月までに亡くなっていたことが分かったのです。

どうしたら風疹から幼い命を守ることができるのか。
その鍵を握っているのは実は男性なのです。

<先天性風疹症候群で生まれた娘>
大阪府内に住む八木明日香さん。
おととし、生後4か月だった娘の、ゆずきちゃんを亡くしました。
ゆずきちゃんは生まれた時、体のあちこちに出血斑がありました。
血小板が少なかったため、詳しく調べると、のどから風疹ウイルスの遺伝子が検出され、先天性風疹症候群と診断されました。

先天性風疹症候群は、母親が妊娠20週くらいまでに風疹に感染したことが原因で、生まれてくる赤ちゃんの耳や目、心臓などに障害が出る病気です。
しかし、八木さんには妊娠中、風疹に感染した自覚がありませんでした。

16062704.jpg八木さんは、ゆずきちゃんが先天性風疹症候群と診断された時の気持ちについて、「自分を責めるしかないというか全部背負っていくのは、この子だと思ったら何をしてあげられるんだろうと思った」と話しています。

<職場で風疹が流行、知らずに感染>
八木さんが妊娠していた平成25年は、成人の間で風疹が大流行し、八木さんの職場でも、同僚が相次いで発症しました。

八木さんは、当時の状況について
「5月の初めに妊娠がわかったので、そこから次の月には風疹が職場で流行っていたので、まずいかなとは思いました。
妊娠初期だったので。
妊娠が分かったときに仕事を辞めておけば良かったと思います。
いま考えたら」と当時を振り返ります。

子どもの頃、風疹のワクチンを1回、接種していた八木さん。
妊娠中、症状は出ませんでしたが、身近で風疹が流行したことで、知らないうちに感染し、胎盤を介して、ゆずきちゃんにもうつったとみられています。

<生後4か月で失われた命>
ゆずきちゃんは、両耳とも聞こえにくい重度の難聴でした。
ミルクをうまく飲むことができず、体重がなかなか増えませんでした。
そして、生後2か月の時、高熱を出して入院。
その2か月後、亡くなりました。

16062707.jpgゆずきちゃんが入院していた大阪府立母子保健総合医療センター新生児科の北島博之医師は、肺炎が急激に悪化し、治療をしても全く効果がみられなかったといいます。
北島医師は、
「感染に対して非常に弱い、免疫力が低下した状態を疑いました。
これまでに経験したことがない経過で、酷い進行状況でした。
先天性風疹症候群でなければ、こういう風な亡くなり方はしなかっただろうと思います」と話します。

16062708.jpg<先天性風疹症候群死亡率20%超>
平成24年から25年にかけての風疹の大流行で、先天性風疹症候群と診断された赤ちゃんは45人。
国立感染症研究所などの研究チームは、
45人の病状などについて、追跡調査をしました。

16062710.jpgその結果、最初に診断された時に、難聴が30人、心臓の疾患が26人、白内障が7人にみられたほか、肝臓や脳の障害など、さまざまな症状が出ていたことが分かりました。
そして、24%にあたる11人が、心臓の疾患や肺炎、呼吸不全などで、1歳3か月までに亡くなっていたことも明らかになりました。

16062713.jpg研究グループは、生まれてくる命を守るために、ワクチンの接種を徹底して、風疹の流行をなくすことが重要だと訴えています。
調査を行った国立感染症研究所の砂川富正室長は、
「一番感じることは、この病気がワクチンで防げる病気であるということです。
風疹の赤ちゃんに対する影響は非常に甚大なものがあって、それを防ぐためにはワクチンで風疹の流行そのものをなくすことが最重要だと改めて認識しています」と話しています。

<男性も風疹の予防接種を>
八木さんは、同じような思いをする人をなくしたいと、今回、取材に応じてくださいました。

妊娠初期に風疹に感染すると、赤ちゃんに障害が出る確率は、50%以上と非常に高いんです。
八木さんのように、風疹に感染していても15%から30%くらいの人には風疹の症状が出ないため、知らないうちにかかって、赤ちゃんに障害が出るケースもあります。

16062715.jpg実は平成24年から平成25年にかけての流行で、風疹に感染したのは、多くは今の20代から50代で、その8割が男性でした。
男性は、子どもの頃に風疹のワクチンを接種する機会がなかった人もいます。
また、女性もですが、子どもの頃の1回だけの接種で、免疫が低下している人も少なくありません。

風疹は、妊娠する女性の問題と思われがちですが、男性がワクチンを接種して、風疹を広げないようにすることも重要です。
今も風疹の患者が報告されています。
男性も自分が感染源になって、生まれてくる赤ちゃんに障害をもたらさないように、しっかり予防接種をしてほしいと思います。

投稿者:松岡康子 | 投稿時間:14時19分

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