文研ブログ

メディアの動き 2024年02月15日 (木)

【メディアの動き】アメリカ大統領選,報道が直面する難題

 11月のアメリカ大統領選挙に向け,与野党の候補者選びが1月に始まった。虚偽を主張し,刑事事件の被告となり,民主主義に反する発言も重ねるトランプ前大統領をどう伝えるか,同氏が野党・共和党の最有力候補となる中,メディアは難しい対応を迫られている。

 共和党の候補者選びの初戦となった1月15日のアイオワ州党員集会後,トランプ氏の勝利演説をMSNBCは生で伝えず,CNNも中継を途中で打ち切った。両チャンネルは同月23日のニューハンプシャー州予備選後の同氏の勝利演説は一部を中継したうえで,同氏が前の大統領選でも勝ったなどと虚偽の主張をしたことを指摘した。同氏の優勢が強まるにつれ,地上テレビを含め演説などの生中継は増えることが予想され,メディアは効果的なファクトチェックを行えるかどうかを試されることになる。Washington Postなどの調査(2023年12月)では,バイデン大統領の選出には不正があったとした人が2年前の調査時より増えており,事実への信頼をどう得るかも課題になっている。

 トランプ氏は,当選すれば大統領権限を拡大し,政府機関の独立性を廃するなどとしているほか,不正な選挙を正すためには憲法を含め,あらゆる法律を廃止できると公言し,「独裁者になるのは就任した初日だけだ」とも述べた。これらの発言を冗談や話題づくりをねらった挑発だとする見方がある一方で,民主主義への脅威であることを明確に伝えるべきだと警鐘を鳴らす専門家もいる。メディアはこうした問題を正面から受け止めて分析し,客観的と受け止められるように報道できるかどうかという点でも,その力量が問われている。