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メディアの動き 2024年01月19日 (金)

【メディアの動き】NHK『NW9』のインタビュー, BPOが「放送倫理違反」の意見

 NHKの『ニュースウオッチ9』で,新型コロナワクチンの接種後に亡くなった人の遺族を,新型コロナに感染して亡くなった人の遺族と誤認させる伝え方をしたことについて,BPOの放送倫理検証委員会は2023年12月5日,「放送倫理違反があった」とする意見を公表した。

 2023年5月15日に放送された番組では,エンディングで「新型コロナ5類移行から1週間・戻りつつある日常 それぞれの思い」と題して1分5秒のVTRを放送した。この中には,新型コロナワクチンで亡くなった人の遺族3人のインタビューがあったが,字幕で「夫を亡くした〇〇さん」などと紹介しただけで,ワクチンにはまったく触れず,新型コロナに感染した人の遺族と誤認される内容になっていた。

 審議した委員会では,問題点として▶インタビュー担当者が,映像編集を主業務とする職員で,取材経験が十分ではないのに,組織内のサポートが不十分だったことや,▶チェック機能が働かなかったこと,▶3人の遺族の声をわずか24秒で伝えるなど,「人の死」の伝え方としてあまりにも軽かったこと,を指摘した。そのうえで,「事実を正確に伝えるというニュース・報道番組としての基本を逸脱したものであった」として「放送倫理違反があった」と判断した。

 これを受けてNHKは,「取材・制作のあらゆる段階で真実に迫ろうとする基本的な姿勢を再確認し,ジャーナリズム教育の徹底など現在進めている再発防止策を着実に実行し,視聴者の信頼に応えられる番組を取材・制作してまいります」というコメントを発表した。