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メディアの動き 2024年01月19日 (金)

【メディアの動き】テレビ史を彩る数々の名作ドラマ,脚本家の山田太一さん死去

 テレビドラマの脚本を中心に活躍した山田太一さんが,11月29日に89歳で亡くなった。

 松竹で映画作りに携わったあと,1965年に脚本家として独立。76年から放送された連続ドラマ『男たちの旅路』は,鶴田浩二さん演じる元特攻隊の警備員と若者の相克とともに社会問題を浮き彫りにし,大きな反響を呼んだ。また,学歴や容姿に劣等感を抱く若者の群像劇『ふぞろいの林檎(りんご)たち』をはじめ,『岸辺のアルバム』『早春スケッチブック』など,市井の人々の生活から人間や時代を描いた。東日本大震災をテーマにした2014年放送の『時は立ちどまらない』で放送文化基金賞の最優秀賞を受賞した。

 「山田太一 生きる哀しみを見つめて」と題した12月18日放送の『クローズアップ現代』(NHK総合)では,氏の最晩年の音声記録が紹介された。強い思い入れのある作品として挙げたのは,『男たちの旅路』の1作「車輪の一歩」。周囲に遠慮しながら暮らす車いすの若者に対して,主人公が「迷惑をかけてもいいんじゃないのか,(中略)いや,かけなければいけないんじゃないか」と諭すシーンが,時代を超えて今も共感を広げていることを伝えた。ゲスト出演の映画監督の是枝裕和さんは,山田さんを最も影響を受けた脚本家の1人とし,「時代の価値観に対する違和感とか,もっと言えば怒りみたいなものが強くあっただろう」と語った。

 立場の弱い人,マイノリティーの声がかき消されてしまい,生きづらさを抱える人が後を絶たない現代。世相を鋭く見つめてきた山田さんの作品は,人が最も大切にすべきことは何かと私たちに問いかけ続けている。