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メディアの動き 2024年01月19日 (金)

【メディアの動き】NHK社会部元記者の不正請求問題,歴代部長ら9人を懲戒処分

 報道局社会部の元記者が,私的な飲食を取材と称するなど,経費を不正に請求していた問題で,NHKは2023年12月19日,不正請求は410件,総額約789万円となることがわかったと発表した。これに伴って,歴代の社会部長3人について現職を解くとともに,前報道局長らとあわせて9人を停職などの懲戒処分とした。NHKは同年10月から外部有識者からなる第三者委員会を設け,調査を進めていた。

 不正請求を行った30代の元記者は11月に懲戒免職となり,全額を弁済させることとした。

 NHKは「受信料で支えられているNHKの職員として許されない行為であり,視聴者の皆様に深くおわびいたします」などと述べている。

 元記者はいわゆる「取材源の秘匿」として,飲食相手を偽る不正を重ねていた。

 調査報告書では,歴代の社会部長が,経費申請の承認に必要な決定印を庶務担当の管理職(庶務担)に預け,内容を確認していなかったと認定。「取材源の秘匿を背景に部局内で取材の内容だけでなく打合せの相手先情報や必要性についても厳しく追求しなかった組織風土や,報道局長や社会部長,庶務担,担当デスクの連携不足により決定者が打合せにおける取材の実態を把握していなかったことで記者への牽制効果が働かず,悪意を持った記者が取材源の秘匿を悪用する素地が形成された」と指摘した。

 「取材源の秘匿」という報道機関の重要な職業倫理を隠れ(みの)にした不正は,国民・視聴者のNHKへの信頼を大きく失墜させた。不正を生まない組織風土作りや仕組み作りに臨むNHKの姿勢が問われている。