2019年08月06日 (火)#スニ活って知ってますか?


※2019年4月4日にNHK News Up に掲載されました。

「#スニ活」って知っていますか。

大学生の就職活動が本格化している今、ネット上で大きな反響を呼んでいます。
固定観念や理由がはっきりしないマナーを変えて、自分にあうものを使おうという呼びかけです。

ネットワーク報道部記者 管野彰彦・ 玉木香代子

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<#スニ活 なぜ始まった?>

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「#スニ活」は、就職活動で履く靴を男性は革靴、女性はパンプスと決めつけるのではなくて、スニーカーなど自分がいいと思った靴を履いてもいいんじゃないかと呼びかけるものです。

就職活動では採用試験を受ける会社から別の会社へとよく歩きます。このため革靴やパンプスでは長距離を歩くと靴ずれができてしまい、痛みを我慢しながら歩き続けるケースも多いということです。
この「#スニ活」、先月、ヘルスケアメーカーの「ジョンソン・エンド・ジョンソン コンシューマーカンパニー」がキャンペーンを始めたことで、ネットで話題となりました。

なぜ、「#スニ活」の呼びかけを始めたのか?

その理由を会社の担当者に聞いたところ、「就職活動をしている学生たちが『靴ずれ』で苦しんでいるという話は以前から聞いていました。ただでさえ大変な就職活動ですから、足元くらいは快適な環境で過ごしてもらいたいという思いで、キャンペーンを始めることになりました」と教えてくれました。

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<売り上げでマイナスでは?>
ところで、実はこの会社、「バンドエイド」のブランド名で、ばんそうこうを販売していて、過去には就活生に靴ずれ用のばんそうこうをPRしていたこともあったそうです。

そうなると、靴ずれを減らそうという今回のキャンペーンは、会社の売り上げ的にはマイナスにもなりそうですが、社内で反対はなかったのでしょうか?
「もちろん社内からはビジネスとしてどうなのかといったさまざまな意見が出ましたが、私たちのブランドはもともと『頑張る人たちに寄り添い応援する』というミッションを掲げているので、大きな反対はなく、会社を挙げてキャンペーンを進めていくことになりました」(広報担当者)
この会社のばんそうこうは、本社があるアメリカで、およそ100年前、台所仕事でたびたび指を傷つけている妻を見かねた男性社員のアイデアで誕生したそうです。

そうした経緯があって、ビジネス面だけで考えるのではなく、頑張る就活生を応援したいという思いが込められているとのことでした。

<血を流しながら就活っておかしくないですか?>

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会社ではキャンペーンの一環として4月15日から1週間、東京メトロの大手町など4つの駅に広告を出して、「#スニ活」を広めていくことにしています。

そのなかには、「靴ずれで血を流しながら就職活動って、おかしくないですか?」といったメッセージのほかに、「通りすがりの人事部のあなた!」などと書かれているものもあり、ほかの企業にもキャンペーンへの賛同を呼びかけていくことにしています。

ちなみに、この会社では、もともと採用試験を受ける場合の服装に決まりはなかったそうですが、今回のキャンペーンを機に、説明会などで「楽な服装や靴で来てほしい」と積極的に呼びかけるようになったそうです。

取材をした日も、採用試験のまっただなか。
実際の就活生たちの足元はどうだったのか?

気になって聞いてみたところ、まだ少ないもののスニーカーで来ている人たちもいて、徐々に人数は増えてきているとのことでした。

<ネット上で多くの反響>
「#スニ活」をめぐって、ネット上では、賛同する声から就活生の心境をつづる声まで、さまざまな声が上がっています。

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「両足のかかと絆創膏はってたのめちゃくちゃ痛々しい…なので就活生もスニーカーにしてあげて…」
「沢山歩く就活生には、スニーカーで構わないと思う好きなもん履いたら良い」
「スーツにスニーカーだから同じ就活生に足元めっちゃ見られる…ヒールちゃんと持ってきたって」
「3.11のとき交通網がメタメタになる中、営業職の友人が徒歩で帰ってきた。履いてたパンプスは途中でダメになって道すがらの靴屋に飛び込んで…こういう話を聞くと就活生以外にも拡がれっ!て思うわ」

<広がる「#スニ活」>
「#スニ活」は就活生にとどまりません。

“社員”を対象に服装の選択肢として、「スニーカー」を選ぶことができる取り組みを始めた企業もあります。

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それは、東京・千代田区にあるIT企業。

もともとこの企業は、就活生に対しても、“自主性に応じた服装で”などと、細かな服装や靴を指定していないそうですが、去年10月から、社員に対して品位や清潔感がある服装であれば、“スーツ一辺倒”でなく、一人一人の業務に合わせて働きやすくなるよう、ジーンズやスニーカーも選べるようにしました。

suni190404.7.jpgスニーカーを履く社員

導入の背景には、“多様化する働き方”がありました。この企業では、夜遅くまで際限なく働いてしまう社員の職場環境を見直そうと、5年ほど前から社員の声を聞きながら、さまざまな働き方改革を進めてきました。
例えば午後8時以降の勤務を原則禁止し「朝型勤務」を促そうと、午前9時前の勤務に早朝手当を上乗せ。

自分の生活スタイルに合わせて働く時間をずらす「スライドワーク」に加えて、在宅勤務についても週3日までとれるように選択肢を広げ、社員からは健康面だけでなく、「メリハリのある働き方を実現できる」とか「業務効率が向上した」という声があがったそうです。

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こうした流れの中で、服装についても、自分にあったものを選べるようにしたということです。

その結果、社員からは、好意的に受け止めるこんな声が上がっています。

「帰りがけに歩きやすくなった」
「子供を会社帰りに迎えに行くこともあり、だっこしながらや、雨の日など、歩きやすく、滑りづらいのでたすかる」
「以前は、スニーカーで移動して持ち歩いていたりもした」

伊藤忠テクノソリューションズ広報部の浅野純平さんは「服装の選択肢」の期待値について次のように話します。
「働き方が多様化する中、服装についても、社員の自由を尊重した分、状況や相手に応じて自ら考える機会が生まれます。これまで固定で決まっていた身の回りの格好を考えたり工夫したりすることは、社員が柔軟で豊かなアイデアを生んだり、挑戦したりする姿勢を育むものにもなると思います。社員の意思を尊重することは、ひいては生産性を上げ、優秀な人材を確保する機会になるのではないでしょうか」

<さまざまな選択肢を>
就職活動で何を履くべきか。

先日もパンプスやヒールの着用に対して、女性たちが疑問を投げかけた「#KuToo」というハッシュタグが注目を集めたばかりです。

スニーカーだからいい、革靴やパンプスだからダメという話ではなく、さまざまな選択肢のなかで、就活生たちが自由に自分を表現できる環境が整えられていくことは、企業側にとってもメリットがあることだと思います。今後、どれだけ広がりを見せていくのか注目していきたいと思います。

投稿者:管野彰彦 | 投稿時間:15時06分

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