2017年10月19日 (木)いま"文通" その魅力は?


※2017年9月28日にNHK News Up に掲載されました。

家に帰って、ポストに手書きの封筒が入っていると、なんだか気持ちがほっこりしませんか。私の休日の楽しみは、喫茶店でコーヒーを飲みながら手紙をつづること。文通を続けているのです。このインターネットの時代、自分はちょっと変わり者なのかなと思っていましたが、実は、文通がひそかに人気を集めているようです。

ネットワーク報道部記者 牧本真由美

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<手紙を書く癒やしの時間>

im170928.2.jpg私が文通を始めたのは2年前。仕事に追われて気持ちの余裕がなくなっていたころ、ある新聞の投稿欄に目がとまりました。「文通しませんか」。仕事柄、文章を書くことは多く、毎日パソコンを使っています。なのに、いえ、だからこそ、かもしれません。あえて手書きでつづる手紙に魅力を感じたのです。

投稿欄に書かれた住所に手紙を送り、その後、月に1通か2通ほどのやり取りを続けています。お相手は、北海道に住む60代後半の男性。お目にかかったことはありません。

手紙の中身は、「家の近くでこんな花が咲いていた」とか、「新聞におもしろい記事が出ていた」とか、いわばたわいのないやり取りです。でも、「何を書こうかな~」と思いを巡らせながらつづる、ゆったりとした時間に癒やされています。


<文通の人気じわじわと>
携帯電話にインターネット、そしてツイッターなどのSNSが普及したこの時代、文通を始める人なんていないだろうと思っていましたが、実態は違っていました。

文通相手を紹介する団体「青少年ペンフレンドクラブ」は、日本郵便が運営し、70年近い歴史があります。登録すると、会員の名前と自己紹介が書かれた冊子が送られてきて、その中から文通したい相手を選んで紹介してもらう仕組みです。

im170928.3.jpg青少年ペンフレンドクラブの会報
事務局に尋ねたところ、会員は平成元年には3万5000人余りいましたが、インターネットや携帯電話の普及に伴って、平成21年には4500人に減りました。ところがその後、徐々に増え、現在は9000人余りに。30代までが半数以上を占めているそうです。


<20代女性「手書きでワクワク」>

im170928.4.jpgパソコンや携帯とともに育ってきた若い人の中にも、文通を始めた人がいます。鈴木千秋さん(26歳)。文通歴1年です。

以前はSNSが好きでした。その日の出来事などをツイッターにアップして、リツイートを楽しみにしたり、ラインで「既読」がつくと伝わっていると分かって安心したりしました。すばやく情報交換できることに便利さを感じていたと言います。

ところが、だんだんと急かされている感じがして、手っ取り早いことや便利なことにも飽きてきました。不特定多数の人に一方的に発信し「いいね」と言ってもらうより、特定の誰かと深くやり取りしたいと感じるようになりました。

そしてもう1つ、漢字が思い出せなくなっていることも気になりました。パソコンやスマホの変換に頼りすぎていると思ったそうです。そんなとき、ネットで見つけたのが文通でした。

鈴木さんは、「手書きでわざわざ時間をかけて文字を書くことが、新鮮でワクワクするように思えたんです」と話していました。


<匿名でのやり取りも>
文通を始めるとき、1つ気がかりなことがありました。知らない人に名前や住所を伝えると、家に突然来られたり、名前を悪用されたりしないか、ということです。そこで選んだのは、匿名でやり取りできる会費制の仲介業者、「文通村」です。登録した人は、皆、ペンネームを名乗り、インターネットで見ることができるプロフィールで相手を選びます。そして、書いた手紙を文通村の事務所に送ると、相手に届けてもらえます。文通村によりますと、活動を始めた8年前には新しい会員は月に2、3人でしたが、最近は60人ほどに増加。20代と30代の人たちが増え、会員数は1000人に達しようとしているそうです。


<手間かける喜びとぬくもり>
鈴木さんは今、5人と文通しています。相手は、20代の男性と、40代から50代の女性たち。日頃あまり接点のない世代の人ともつながって、好きなミュージカルや映画の話を書いているそうです。

時間に余裕がある時に机に向かい、辞書を片手に下書き。そして、相手のことを想像しながら便箋を選び、1文字ずつ丁寧に書きあげます。手間をかけるその時間すべてが楽しいと話しています。

また、手紙を受け取るのも大きな喜びです。郵便配達のバイクの音が聞こえると、すぐにポストを見に行くこともあります。もらった手紙は大切にとっておいて、何度も読み返すそうです。

「もらった手紙の便箋や文字を見て、どういう人なのかと想像するのも楽しいです。かわいい便箋を選んでくれたり、飾りつけをしてくれたり、一方でシンプルなのもすてきです。SNSと違って人柄が伝わってくる気がして、ぬくもりを感じます」


<文通人気の背景には>
鈴木さんのように、SNSに疲れたという人たち、決して少なくないようです。

ネットを調べると、ラインやツイッターなどについて、「反応の早さに疲れる」「情報量が多すぎてパンクする」などという若者のつぶやきがあふれています。「SNSやめる」「放置する」といった“宣言”も見られます。


<顔色うかがう窮屈さ>
ことし6月から7月にかけて、18歳から29歳の若者1000人を対象にマーケティング会社が行ったインターネット調査では、半数近い45%の人が、1日に1時間以上、SNSを使っていると答えました。
SNSを使う人に、投稿するときの気持ちについて聞いたところ、「友人・知人の顔色をうかがっている気持ちがする」と答えた人が47.5%、「SNSの世界だけでのやり取りでは窮屈さを感じる」と答えた人が43.5%で、いずれも40%を超えていました。

im170928.5.jpgさらに、SNSを使っている人の4人に3人が「アナログ的な商品・サービスを使ってみたい」と答え、具体的には「アナログ手帳」を挙げる人が最も多く、次いで「手書きの手紙」、そして「着物や浴衣」を使いたいと答えていました。「紙の手帳を使ったことがないんだ…」という感慨もありますが、あえて手紙を書きたいという若者が多いことも新鮮な驚きでした。

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<グローバルに進化>
人気を集める文通、さらに進化を遂げています。ポルトガル人が2005年に立ち上げた無料サイト「POSTCROSSING(ポストクロッシング)」。文通で、世界中の人たちとつながることができます。

会員は現在、200か国以上のおよそ70万人。会員になると無作為に選ばれたほかの会員の住所が知らされ、そこに絵はがきを送ると、送った枚数だけ別の人から絵はがきが届くシステムです。

送る絵はがきに自分の住所を書く必要はなく、もらった相手に送り返す必要もありません。このサイト、日本人の登録が急速に増えています。最近の1か月で200人が入会し、現在の日本人会員は9200人ほどだということです。

im170928.7.jpg魅力は何なのか。ポストクロッシングの利用法を紹介するワークショップを開く森友亜さんに聞いてみました。森さんはポストクロッシング歴10年余りのベテランで、ブログで紹介したところ、やり方をぜひ教えてほしいという声が上がったそうです。

30か国以上から届いた絵はがきを見せながら語ってくれました。

「書かれたメッセージは英語ですが、絵はがきは文字を書くスペースが少なく手軽です。手に取ることで人の存在も感じられます。遠く離れた国のいろんな人とのつながりを気軽に体感したいという人が増えているのだと思います」

手軽に、素早く、人とつながりたい…。そんな思いから生まれたデジタル時代のSNS。一方で、ペンと紙だけでできるアナログな文通は、利便性を追求する中で失われたゆとりやぬくもりを取り戻したい現代人の心を引きつけて、さらに発展しているようです。さて、きょうもポストを開けるのが楽しみです。

投稿者:牧本 真由美 | 投稿時間:16時00分

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