2019年04月15日 (月)嵐と"オトナの思春期"


※2019年1月28日にNHK News Up に掲載されました。

来年末で活動を休止すると発表したジャニーズの人気アイドルグループ「嵐」。リーダーの大野智さんは活動休止を決断した理由について記者会見で「自由な生活をしてみたい」と述べました。国民的アイドルもデビューしてから20年。大野さんは来年40歳、他のメンバーも30代後半です。ネット上では40代を目前にした世代が人生の決断を迫られる“オトナの思春期”だという共感の声が静かに広がっています。

ネットワーク報道部記者 和田麻子・鮎合真介・吉村美智子・佐藤翔

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<“大野くんの夏休み”拡散中>
国民的な人気を集める男性アイドルグループの「嵐」。活動休止を惜しむ声が各地に広がっています。

札幌市のCDショップ「タワーレコードアリオ札幌店」。以前、息子と2人で行ったコンサートのDVDを買いに来たという40代の女性は「嵐は家族で愛せるアイドルだと思います。活動を休止したあとに再び復活してくれることを願っています」と話していました。

190128ara.2.jpg一方、「嵐」が出演したテレビコマーシャルの舞台として知られるようになり、参拝者が急増したという福岡県福津市の宮地嶽神社では、ファンの女性が「かみしめながら境内を回りました。気持ちの整理がつきません」と話していました。

190128ara.3.jpgネット上でも活動休止を惜しむ書き込みであふれています。
ツイッター上では、嵐としての活動を終えたいと切り出したのがリーダーの大野智さんだったことから、「活動休止っていうとダメージ大きいけど、大野くんの夏休みって言うとほっこりするから、これからそう呼ぶことにする」というツイートが話題となり、活動休止を言いかえた言葉として「#大野くんの夏休み」というハッシュタグが拡散しています。
コラムニストの木村隆志さんは「ジャニーズ事務所では、去年、渋谷すばるさんが関ジャニ∞から脱退したほか、滝沢秀明さんが芸能活動を引退するなど、40代を前にして、人生の選択をするアイドルが相次いでいます。大野さん自身も、そうした選択を目の当たりにしながら、1人の男性としてセカンドキャリアについて考えたのではないでしょうか」と分析しています。


<アラフォーは微妙な年頃?>
40代を前にした人生の選択に自分を重ねる人もいます。
鹿児島県に住む鶴永稚子さん(36)はツイッターで「私も40歳を3年後に控えて、1度立ち止まって自分を見つめ直した結果、『まだ新しいことに挑戦できるはず』と今までとは若干違う業界へ飛び込む決断をした。同じく40歳を目前にした嵐の大野くんの中でもそういう微妙な感情が湧いたのかな」と投稿しました。
鶴永さんは、学生のときから15年近くにわたってコンビニエンスストアで、パートや正社員などとして働いてきましたが、2月から医薬品の『登録販売者』を目指してドラッグストアで働くことを決めました。

2年以上の実務経験が必要となるなど不安は大きく、悩みましたが、40代になると再就職が難しくなるのではないかと思い「思い切って一歩踏み出した」と言います。
鶴永さんは「同じ年代として自分と重ねた部分があった。アラフォーはいろいろな悩みを抱える微妙な年頃なんだと共感した」と話していました。

190128ara.4.jpg書家の目時白珠さんも「私もオトナの思春期を通ったんだ」と投稿しました。
書家になる前には17年間正社員として働いていましたが、一定のキャリアを積み、中間管理職なども経験するうちに「○○会社の目時さん」という肩書きがなくなったときに何が残るだろうと考えたそうです。
体力的にも精神的にもバランスが良く、もうひとふんばりがんばれるちょうど良い時期が40歳だったと言います。

今の仕事は「おばあちゃんになったらいずれやろう」とぼんやり思っていたことだそうです。
目時さんは「日々の生活では自分にとって良いこと悪いこと様々な出来事も起きますが、俯瞰できる余裕が少しずつ持てるようになるのも、この頃だからかもしれません」としています。


<転職希望多い30代>
40歳を目前にした世代は新たな環境を求める傾向が強いのか。

190128ara.5.jpg大手人材サービス会社アデコが去年9月、30代から50代の管理職、合わせて500人を対象にインターネットで転職に関する調査を行いました。それによると、30代では5割が転職への意欲をもっていて、年代別では最も転職意欲が高くなっていました。

一方、ほかの年代の転職意欲をみると、40代は35%、50代は26%と年齢が上がるにつれてその意欲が低下しているということです。
こうした状況について、アデコで転職コンサルタントを務める溝邉圭介さんは「一般の企業でいえば40歳になると、管理職の中でも課長か部長といった経営に近いところで仕事する人が増えます。そうすると、今までは自分本位で仕事をすればよかったことが、重責のある課長や部長だとそうはいきません。今後は会社側にたって仕事を続けていくのか、あるいは会社に左右されないプレーヤーとして続けていくのか、30代後半で悩む人が多いのです。
さらに、こうした傾向はここ4年くらいの傾向です。いまは人手不足の影響で、30代から40代にかけては超売手市場です。『自由にしたい』といっても世の中が許してくれるし、働き方の自由度も上がっています。30代や40代の可能性はどんどん広がっていて、何かしらまだやれると思わせる時代であることも影響しているとみられます」と話しています。
40歳前後は、人生の岐路など色々な悩みを抱える“オトナの思春期”。国民的アイドルの活動休止の発表は、働き盛りの世代の心にも静かに響いています。

投稿者:和田麻子 | 投稿時間:14時38分

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