2021年10月11日 (月)虫歯や歯痛はコロナのせい? 広がるお口の不安
※2020年9月17日にNHK News Up に掲載されました。
「コロナで歯磨きなくなっちゃった」
ネット上で、新型コロナウイルスの影響で虫歯やお口の健康への不安を訴える声があがっています。調べてみたら、コロナによる生活の変化や、マスク着用が、歯に悪影響を与える可能性が見えてきました。
ネットワーク報道部記者 野田綾・斉藤直哉
SNSリサーチ 三輪衣見子
「歯痛がコロナ後増えている」
SNS上では、新型コロナウイルスがお口の健康に影響しているという声が相次いでいます。
ある歯科医は、「歯が痛いという人がコロナ後、特に増えている」と指摘しているほか、「歯が痛くて歯医者に行ったら『歯ぎしりかストレスで歯を食いしばってる可能性がある』って言われた」と、コロナ禍のストレスが歯に影響していると指摘されたという声も。
特に目立ったのが、
「確実に虫歯になってる。コロナで歯医者の定期検診行ってなかったからなぁ」、
「1月ごろには虫歯あったけどコロナでちゅうちょしてたら痛くなってしまった」といった受診をためらうケースが相次いでいることです。
保育園の歯磨き中止も
中には、こんな声も。「うちの保育園コロナの関係で歯磨きなくなっちゃった」
新型コロナウイルスの感染予防という理由で保育園での歯磨き指導が中止になったというのです。
この投稿をした5歳の娘がいる岐阜県の30代の女性に話を聞きました。
岐阜県30代女性
「子どもには食事のあとには歯磨きをする習慣を身につけてもらいたくて家では毎食後歯磨きするよう言っています。
保育園にいる給食のあとだけ歯磨きができなくなり、いま虫歯もできてしまい困っています。
虫歯を防ぐためにもできれば歯磨きを再開してほしいです」
保育園を所管する自治体の担当者は。
自治体担当者
「感染を不安に感じる保護者や職員の要望から食後のうがいや歯磨きを中止しました。その後対策が進んだため、すでにうがいは再開していて歯磨きの指導についても再開を検討しています」
歯科医院の受診控えもさらに歯の健康に影響を与えているのが、歯科医院の受診控えです。
この女性も、ことしの春以降新型コロナウイルスの感染への不安から娘を歯科医院に連れて行くのを一時、控えていたということです。
岐阜県30代女性
「子どもへの新型コロナウイルスの感染が怖くて、歯科医院に連れて行くのを控えていました。以前は定期的に診察してもらっていましたが、コロナが深刻になった春先から行かなくなりました」東京・武蔵野市の「桜堤あみの歯科」がことし8月に虫歯治療中の小学生の子どもがいる親1100人余りを対象に行ったインターネット調査によりますと「おうち時間が増え子どもの虫歯リスクが高まった」と思う人は、全体の69%にのぼることがわかりました。
その理由としては、歯医者に行けないことや、甘い物を食べる機会が増えたことが挙げられています。「予定どおり子どもの虫歯治療が継続できているか」尋ねたところ、「予定どおりできている」が46%だった一方で、「予定よりも長引いている」が38%、「治療を中断している」のも9%で、全体の半数近くが虫歯治療に影響が出ていることがわかりました。
コロナ禍で子どもを歯科医院に通わせることを不安に思っているという声が多かったということです。
受診控えで重症化のケースも桜堤あみの歯科 網野重人 院長
アンケートを行った歯科医院の網野重人院長も、新型コロナウイルスの感染を心配して定期的な診療の頻度を少なくしたり中止したりするケースが相次いでいると実感しています。
定期健診を控えた結果、虫歯が重症化してから来院する子どもの患者も目立ってきているということです。
網野重人院長
「5歳の子どもが半年ごとの定期健診をコロナの影響で先延ばしにしていたところ深刻な虫歯が見つかったケースもありました。家庭での歯のケアは重要ですが、しっかりチェックしても初期の虫歯は見つけるのが難しく、痛みなどの症状が出たときにはすでに重症になっていることも考えられます。一生使う永久歯や、歯並びに影響が出てしまうおそれもあります」
マスクも口内に影響?日本歯科医師会 瀬古口精良専務理事
さらに、日本歯科医師会の瀬古口精良専務理事は、マスクも口内トラブルの原因になりうると指摘します。
日本歯科医師会 瀬古口精良専務理事
「マスクを着用することで話をしたり、口を動かしたりする機会が減ることに加え、口呼吸が増えることも指摘され、だ液の分泌量が減る傾向にあります。すると、口内細菌がたまりやすくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。口臭が気になることもあります」
瀬古口専務理事は、新型コロナウイルスによる生活環境の変化で生じるストレスが影響する「夜の歯ぎしり」にも注意する必要があると言います。
日本歯科医師会 瀬古口精良専務理事
「強く歯ぎしりすることで、歯が割れてしまったり欠けてしまうおそれがあります。歯周病の人は歯が揺らいでしまったり、あごの関節を痛めてしまうこともあります」
受診控えしないで日本歯科医師会にコロナ禍でどう備えたらいいのか聞きました。
日本歯科医師会は、新型コロナウイルスの感染防止のため、「延期しても問題が少ない治療、定期健診、訪問診療などの延期の検討もお願いしています」と呼び掛けていますが、不調を感じたら受診控えせず、すぐに受診してほしいと言います。
日本歯科医師会
「自己判断で受診を控えてしまうと、口内の病気が悪化してしまう恐れがあります。延期しても問題がない治療なのかは、自分で判断せず、かかりつけの歯科医師に判断してもらうことが大事です」
歯科医院では、それぞれ、消毒や手洗い、換気の徹底や、待合室で患者を減らすための予約調整を行っていて、これまでに歯科治療を通じて患者に感染したという報告はないということです。
だ液の分泌量増やす意識を
虫歯や歯周病のリスクを軽減するためには、だ液の分泌量を増やすことが大切だと指摘します。
1、よくかむ
食べるときはできるだけ多くかむことで、だ液が出やすくなるということです。1口30回を目安にかむと効果的です。
2、だ液腺マッサージ
日本歯科医師会は、「だ液腺マッサージ」を推奨しています。
お口の機能が高まって、だ液がよく出るようになる効果があるということです。
顔の表情がイキイキするメリットもあるそうです。だ液腺マッサージ
歯ぎしり予防はストレス発散で
歯ぎしりを防ぐにはストレスを発散することがいちばんの方法だと言います。
日本歯科医師会
「ストレスを発散することがいちばんの薬です。そのためには、人と会話をすることが有効ですが、人と会う機会も減っています。
電話などで誰かと話すと気持ちも晴れ、口を動かすためだ液も出やすくなります」
新型コロナウイルスが直接、虫歯や口内環境に影響することはないようですが、生活の変化が与える影響がいろいろとあることがわかりました。
大切なお口と歯を守るために今の行動をちょっと見つめ直してはいかがでしょうか。
投稿者:野田 綾 | 投稿時間:12時43分