2020年06月18日 (木)さらば青春の "深夜ファミレス


※2020年1月20日にNHK News Up に掲載されました。

半世紀にわたって続けてきた24時間営業をすべての店で廃止。
ファミリーレストランの「すかいらーくホールディングス」が打ち出した方針のニュースが、全国を駆け巡りました。
ネットでは、おおむね好意的な意見が目立ちます。
ただ、中には深夜のファミレスが持つ「独特の空間」を惜しむ声もあるようです。

ネットワーク報道部記者 高橋大地・松井晋太郎

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“すばらしい”

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「働き方改革としては、素晴らしいし必要だと思う」
まずツイッターで目立ったのは、肯定的に捉える意見。
「真夜中など、1時間に数人しか来ない客の為に開けておくのは非効率」など、効率性の観点から支持する意見も多く見られました。

また、実際にファミリーレストランで働いた経験があると見られる人の「喜ぶスタッフ多いだろうなー。数年前に配達バイトしてて、深夜スタッフの問題、寝に来るお客様、酔っ払いのお客様の問題あって」といった書き込みもありました。

とまどいも

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もちろん賛成ばかりではありません。
「深夜に飯食う所が段々減っていくな」
「終電逃した時の逃げ場は減るけど…」など、実際に深夜に利用する人からは戸惑いの声もありました。
「深夜よく使ってたりしたから、たまに困るなぁ。まぁしゃーない」
そうは言ってもしかたがない、そんな空気も広がっているようです。

“そんな時代もあったよね”
さまざまな反応を見ていくと、24時間営業の廃止を、かつての「懐かしい思い出」とともに惜しむ声も見つかりました。

sara.4.jpg沖縄で建築設計事務所を主宰する30代後半の男性は
「学生の頃は試験前に24時間営業の恩恵を受けていた。翌日のフランス語試験に向けて、みんなで教え合いながら朝まで過ごしたり。そんな時代もあったよね、ということか」とツイッターに投稿しました。

この男性に、直接お話を聞いてみました。

男性(懐かしそうに)
「学生の時に、同じクラスの仲間と川崎市にある24時間営業のファミリーレストランを利用していました。今回のニュースで、10人ほどでよく、朝まで過ごしたことを思い出しました。勉強に集中したい人のテーブルと、話をしたい仲間のテーブルに分けてましたが、勉強は思ったほど、はかどらなかったかもしれませんね」

sara.5.jpg男性
「24時間営業の廃止は、今の時代や社会の流れを考えると賛成です。一方でドリンクバーの安さ、多くの人数が入れるスペース、長時間居られる場所を考えると友達の家ではそうはいきません。今の学生さんはどうするのかなと思ってしまいます」

と話は今の若者の居場所にまで及びました。

深夜ファミレス “独特の魅力”

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さらに深夜のファミレスについて調べていると、ちょっと興味深い人が…。

漫画家の石原まこちんさんです。
石原さんの代表作に深夜のファミレスでフリーター3人が、たわいのない会話をして過ごす「THE3名様」という漫画があります。
早速、お話を聞いてみました。

石原さん
「働き方改革もあるので、しかたないことだと思いますが、正直さみしいです。深夜のファミレスには、昼間にはない独特の魅力があるんです」

自身の体験などをもとに、この漫画を描いているという石原さんが語ってくれました。
17歳のころからファミレスに友人たちと入り浸り、朝まで何でもない会話を続けていたという石原さん。
ファミレスに行くこと自体が1つのエンターテインメントで、いちばん落ち着くのが深夜のファミレスだったといいます。
長い時は、大みそかから1月2日の3日間にわたって滞在していたことも。

sara.7.jpg漫画のキャラクターと同じように、当時フリーターだったという石原さんは、深夜のファミレスに独特の魅力を感じていたといいます。

石原さん
「昼間のファミレスだと、家族連れだったり、仕事をしている人たちがやってきて、基本的にはみんなごはんを食べていますよね。でも、深夜のファミレスは、ドリンクバーを頼んで、ずっといるだけの人が多い。パソコンをたたいて仕事をしているわけでもないし、なんとなく元気がない。そこにいる人たちはみんな同じ、というか平等な感じがしてくるんです」

一晩を過ごすだけならネットカフェでも可能ですが、その点は。

石原さん
「ネットカフェはほかの人と区切られていて、閉鎖的ですよね。それに比べて、ファミレスは開放的。夜通し過ごして、朝、大きな窓から空がしらんでくるのを見るのがまた、いいんですよ。別々の席に座っていた知らない人と朝まで一緒に過ごして、いつの間にか仲間意識のようなものが生まれる。お会計の時に、思わず、その人にあいさつをしてしまったり。ああいうのが大切だと思うんですよね」

sara.8.jpg確かに学生時代、どうでもいいような会話を朝までファミレスでしていた記憶は私(記者)にもあります。
そのとき、友人たちと共有したその時間は忘れがたいものがあります。

スマートフォンでいつでも気軽に友人たちと連絡が取れるようになった今の時代。
働き方をめぐる社会情勢もあり、深夜営業が当たり前だった世の中が変わるのは必然かもしれませんが、今回のニュースをきっかけに、かつての風景に思いをはせている人たちもいるようです。

投稿者:高橋大地 | 投稿時間:15時59分

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