2021年08月20日 (金)おうちでプールもだめなの?


※2020年8月7日にNHK News Up に掲載されました。

本格的な暑さが到来する中、子どもたちの楽しみの1つといえばプール。でもこの夏は、新型コロナウイルスの影響でプールの営業が中止になったり、お出かけをひかえたりする人もいるようです。そんな中、SNS上には「せめて、おうちで」とマンションのベランダでプールを楽しむ子どもたちの姿がたくさん投稿されています。とっても楽しそうですが、思わぬトラブルになってしまうこともあるようです。
「おうちでプールもだめなの?」
専門家にも聞きました。

ネットワーク報道部記者 秋元宏美・斉藤直哉・有吉桃子

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おうちプールを楽しむ夏、でも

「ことしはコロナで学校のプールがないのでベランダで水遊びです」

「どこにも行けないのでおうちでプール」

ツイッター上には楽しそうにベランダなどで遊ぶ子どもたちの姿が投稿されています。

一方で、こんな声もありました。

「ベランダでビニールプールって何が楽しいの?水漏れや騒音を撒き散らしてないかな」

「上の部屋の人がベランダに水流してるんだけど(プール遊びかな?)、床に隙間があるのか水が漏れてきてうちの窓が水浸しっていう…」

苦情をいただいてしまった

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「先日、ベランダでビニールプールをやったら、下の階のお宅の洗濯物を濡らしてしまったらしく、苦情をいただいてしまった。現在、管理人さんに隣接の公園かマンションの敷地でビニールプールをやらせてもらえないか相談中」

こうツイートしたのは東京都内で保育園児2人を育てているきーちさんです。
きーちさんはことし5月後半、保育園が休園し、子どもたちが外に出られずにストレスをためていたことからせめて家でも楽しめるものはないかとベランダにプールを出したそうです。
しかし、遊び終わってプールの水を流した時、水がまとまって落ちたようで下の階に住んでいる人から「洗濯物が全部濡れて洗い直しになった」と言われたそうです。

きーちさん
「こちらが悪いことは確かなので、申し訳ない気持ちでひたすら謝りました。そして、子どもが楽しめるように精一杯考えたのにこんな小さな楽しみもかなわないのかと悲しい気持ちでいっぱいになりました」

そこできーちさんは、管理人にプールができる場所がないか相談することにしました。
管理人は快く応じ、すぐに管理組合に確認してくれたそうで、敷地内の空きスペースを使わせてもらえるようになりました。

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「管理人さんから了承を得て、空きスペースでビニールプールをさせてもらうことになりました。本当にありがたい」

きーちさん
「子どもたちはその後もプールを楽しんでいます。今回、自分では周りに配慮しているつもりでもそれができておらず、迷惑をかけていることがあるということがよくわかりました。あらかじめ相談しておけばよかったと思っています」

そもそもベランダって誰の物? プールは…?

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マンションのベランダといえば、日々、洗濯物を干したり、趣味のガーデニングを楽しんだり、自分の生活空間として使っているのではないでしょうか。
では、自分の部屋のベランダを使うときのルールはどうなっているのでしょうか?
専門家に聞きました。

ouchidepu-ru.20200807.5.jpg池田泰介弁護士

話を聞いたのは、マンション管理士の資格も持つ、池田泰介弁護士です。

池田泰介弁護士
「考慮していただきたい点は、ベランダは、あくまで『共用部分』であるという点です」

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池田弁護士によりますと、マンションのベランダは、いざというときに住民の避難経路となることなどから、廊下やエレベーターと同じように、住民が共同で使う「共用部分」にあたるということです。
このため、その部屋の住民がある程度は自由に使うことができるものの、使い方についてはマンションのルールに従う必要があるということです。
それでは、ベランダでのプール遊びはどうでしょうか?

池田泰介弁護士
「ベランダの使い方についてはマンションの管理規約やさらに詳しい使用細則に禁止行為が記載されていて、それに該当したり、準じたりする場合は、プールの使用はできません」

ouchidepu-ru.20200807.7.jpg池田弁護士は、ベランダでのプールの使用については、分譲マンションの場合は、マンションの管理規約と使用細則、賃貸の場合はこの2つに加えて賃貸契約書をよく確認してほしいとしていますが、原則としてプール遊びは難しいことが多いということです。
さらに、プール遊びがOKだとしても、注意してほしい点があると言います。

池田弁護士
「水の処理のしかたと騒音に気を付けてほしいと思います。ベランダの排水溝は雨水を流す想定で作られているので、大量の水を一気に流すと、水があふれたり、溝がつまるなどして、隣や下の階の住人とトラブルになる可能性があります。また、大きな声で長時間遊んでいると騒音トラブルにつながりかねません」

一方、全国およそ2800の管理組合が加入するNPO法人、全国マンション管理組合連合会はプール遊びについて管理規約などに明確に書かれておらず、判断に迷う場合は、管理組合に確認してほしいとしています。

連合会の川上湛永会長は「例年、ベランダでのプール遊びに関する問い合せは一定数来ますが、ことしは新型コロナウイルスの影響で相談が増えるのではないかと思います。ただ、外出できずストレスを抱えている子どもたちも多いと思うので、マンションの決まりを確認し、できる場合は、安全性やほかの住人のことを考えて、ルールを守って使ってほしい」と話しています。

子どもから目を離さないで
ベランダでのプール遊びは、ルールやマナーを守るだけでなく子どもを守るための注意も欠かせません。
おうちでプール遊びをしていて起きた事故を、消費者庁が医療機関からの報告をもとにまとめています。

プール遊びでの事故

●友人宅のプールで保護者たちが見ていないときに自分でアーム浮き輪を外して1人で飛び込んでしまい、15秒程度溺れた
(3歳の子どものケース)

●父親が部屋に戻ってテレビを見ながらガラス越しに様子を見ていたら子どもの顔が水没していて意識と呼吸がなかった
(7か月の子どものケース)

●兄弟で遊んでいた際、母親が1~2分間目を離した隙に弟がプールに沈んでしまった
(3歳の子どものケース)

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消費者庁は、おうちでプール遊びをする際には、わずか10センチの深さの水でも溺れるおそれがあるため、必ず大人が付き添って子どもから目を離さないようにしてほしいと呼びかけています。

消費者庁消費者安全課の担当者
「ことしの夏は新型コロナウイルスの影響で海やプールに出かけるのを控えて、自宅でプール遊びをする家庭も多いと思います。家の中だからとか水深が浅いからなどと油断せずに絶対に目を離さないようにしてください。もし溺れている子どもを見つけて助け出したら応急処置をするとともにためらわずに救急車を呼ぶようにしてください」

投稿者:秋元宏美 | 投稿時間:17時09分

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