#67 いま「ポッドキャスト」が新しい?
メディア研究部(海外メディア研究) 柴田 厚
3月1日(水)・2日(木)・3日(金)に行われる「NHK文研フォーラム2017」の2日目に『米ラジオ・オンデマンド時代の到来か? ~拡大する「ポッドキャスト」サービス~』の研究発表を行います。
「ポッドキャストって、いつの話?」というご指摘は、ある意味ごもっともです。日本のラジオはNHKの「らじる★らじる」、民放の「radiko」で多くの番組のストリーミング配信が聞け、世界的に見てもかなり進んだ状況です。でも、国土が広く、日本ほど通信環境が整備されていないアメリカでは、スマートフォンなど自分の携帯端末にコンテンツをダウンロードして聞く「ポッドキャスト」の“第2(第3とも)の波”が訪れ、いま静かなブームになっています。
その牽引役は、まずは「スマートフォン」。そして、確かな番組作りで知られる公共ラジオ「NPR」です。彼らの特徴は、政治・経済から、音楽、映画、歴史、笑い、クイズ、ドキュメンタリーまでさまざまなジャンルのポッドキャストを提供していることです(全て無料)。1回20分から30分程度、難しすぎず、かと言って薄っぺらくもない内容は、個人的には「万人受けはしないけれど、好きな人にはたまらない“NHK教育テレビ的”だ」と思っています。
そして、もうひとつ別の“波”も。世界を揺るがせているトランプ新政権をきびしくウォッチングするために、アメリカを代表するNew York TimesとWashington Postの2大紙が、相次いでポッドキャストを始めました。いわば、異業種からの参入です。NYTは『The Daily』の名の通り、毎日の配信。WPは『Can He Do That?』、(彼にできるの?)というタイトルが痛烈です(週1回の配信)。デジタルの普及でメディアの垣根が低くなっている今、ポッドキャストはさまざまな人が参加できるメディアになっています。
もちろん収益につなげることや、たくさんのコンテンツの中から見つけてもらう難しさなどの課題もありますが、デジタル時代に“個人の息吹を感じとることができるメディア”として、その可能性は今後広がるのではないかと感じています。実際、出演したNYTの記者に「そんなことまでしゃべっていいの?」と驚いたり、WPの記者が言いよどんだりするところで、妙に安心したりしました。ああ、人間らしくていいな、と。テクノロジーの力もありますが、『語りの力』を再認識できるアメリカのポッドキャスト。
まだまだ発展途上の“古くて新しいメディア”ポッドキャストの可能性について一緒に考えませんか。3月2日(木)の研究発表へのご参加をお待ちしています。
(参加申し込みはこちらから↓)