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調査あれこれ 2023年08月25日 (金)

朝のメディアに求めるものは?【研究員の視点】#501

世論調査部(視聴者調査)渡辺 洋子

 朝は必ず決まったテレビのチャンネルを見る、あるいは起きたらまず、好きなYouTuberの配信を確認するなど、毎日同じ時刻に特定のメディアを見るというような習慣はありますか?

 毎日の生活の中にメディアはどのように組み込まれているのか、そしてそれはなぜ使われているのでしょうか。
 調査からは、朝のメディア利用には、情報取得という目的に加えて、気分という要素も重要だということがみえてきました。
 世論調査のデータ、そしてオンラインインタビューで聞いた声をご紹介します。


 まずは、朝、決まって見たり聞いたりしているメディアについて、世論調査の結果をご覧ください。複数のメディアを使う人も多いと思いますが、ここでは「もっともよく利用するもの」を回答してもらっています。

朝:毎日、同じような時刻や状況で、決まって見たり聞いたりしているメディア
(もっともよく利用するもの)real-time-tv.png

※詳細な数値は『放送研究と調査』2023年8月号「朝のテレビ視聴減少の背景を探る~オンラインインタビューの発言から~」をご覧ください。

 「毎日決まって見たり聞いたりしているメディアはない」という人は全体では21%と、8割弱の人は何らかのメディアを決まって見たり聞いたりしていることがわかります。そして全体では、朝にもっとも利用するものとして、リアルタイムのテレビ放送を挙げた人が50%と、テレビが大きな存在感を占めています。
 もっとも利用しているメディアは性別や年齢で異なり、男性の30代以下ではリアルタイムのテレビ放送を挙げる人が3割以下と全体と比べて低くなっている一方、YouTubeは6~8%と全体(2%)と比べて高くなっています(男性30代:8%、男性16~29歳:6%)。また、SNSも全体では3%に過ぎませんが、男女の16~29歳では17~18%でした。

 30代以下では、朝、習慣としてYouTubeやSNSをもっとも使うという人が、他の年層より多くを占めていることがわかります。


 では、具体的にYouTubeやSNSは、朝の生活シーンの中でどのように使われているのでしょうか。19~39歳の方々にオンラインインタビューで朝のメディア利用を聞いた様子をご紹介します。

 まずは、朝起きてすぐにSNSを見る方の声です。

【女性29歳 パート・アルバイト】
(今朝、起きてからの時間の過ごし方は)
  8時半くらいに目覚ましのアラームで起きて、10分くらい二度寝をした。
  布団の中でTwitterを見て、起きて朝ご飯を食べたり、着替えたりして、今に至る。

(朝いちで立ち上げるのは必ずTwitterか)
  ほぼTwitter。

(Twitterではどんな情報を見ているのか)
  フォローしている人のタイムライン見たりTwitterのトレンドを見たりしている。

(寝ながらTwitterのチェックとのことだが)
  中身を見るというよりは、眠気覚まし的に見ている感じ。

(どんなところが眠気覚ましとして働いているのか)
  情報量がほぼないつぶやきが多いので、すぐに頭に入ってくる。

【女性34歳 主婦】
(布団の中で何かメディアを見ていたか)
  スマホでネットニュースとLINEとInstagramを見ていた。

(それぞれどんな目的でどんな気分で見ていたか)
  ネットニュースは新しいことが起きていないかとチェックする習慣がある。
  Instagramも暇さえあれば開いちゃう習慣になっている。

(LINEは何を見ているか)
  友人から来ていたLINEと、公式のアカウントで登録しているものを見ていた。

(ベッドの中でゴロゴロしながら見るインスタ、LINEはどんな助けになっているか)
  目を覚ますため。ちょっと気分転換になる。

【男性36歳 会社員】
(起きてから触れたメディアは)
  インスタ。あとはLINE。

(何を見たのか)
  LINEはメッセージが来ていたのでその確認。インスタは完全に暇つぶし。まだ起きたくないと。

(布団の中で見ていたのか)
  そう。

(インスタで具体的に見ていた内容は、流し見だったか)
  暇つぶしで本当に流し見だった。

(朝の気分の何がインスタやLINEに合っているのか)
  まだ起きたくない葛藤があり、そのためにインスタとかLINEとかをチェックしている。
  まだちょっと起きるには体がだるい。だるさから起きようと思う気持ちまでのつなぎ

(インスタLINEから得られる情報がどんなものだからか)
  情報がというよりも見る行為、光を目に浴びているから。それが目を強制的に起こしている感じだと思う。

 3人とも、朝布団の中でSNSを見ています。情報を取得するというより、まだ覚醒しきっていない状態で、いつも利用するSNSをタップして画面を眺めているという状況が見受けられます。友人からのメッセージを確認する人もいますが、どちらかというと、目が覚める状態に持っていくまで、頭と体に負荷をかけずに一定の時間を過ごすための道具として使われている様子がうかがえます。

 SNSは1日の生活のさまざまな時間帯で使われていますが、寝起きの場面では、頭が完全に起きていない中、内容を楽しむというより、朝までに起きたことや寝ている間に届いたメッセージを確認したり、あるいはただなんとなく眺めたりするために使われていることがわかります。


 続いて、朝に習慣としてYouTubeを見ている方の声です。

【男性25歳 会社員】
(朝食を食べながらYouTubeと書いてあるが、好きなYouTuberとして直近では何を見ていたか)
  芸人の霜降り明星が好きで、それを見ていた。結構、朝はほぼ毎日の習慣と言ってよいほどに見ている。
  更新が結構1日ごとにあるので、毎回面白いし見ている。

(ヘビーなネタが多いかと思うが、朝に見るのか)
  笑う要素があり、気分も楽しくなってくる。

(寝床で朝ゴロゴロしながら見ている動画はどんな役割を果たしているか)
  気分を上げるもの。

(望ましい内容は)
  お笑いとかで気分を上げていくのが一番望ましい

【女性25歳 会社員】
(朝は目についたYouTubeをテレビで見ているのか)
  そう。

(お笑い系が多いか)
  これ(YouTubeの【食の雑学2chスレ】)はお笑い系というより、外のサイトで一般人が討論、文章ですごいやりあったものをまとめて音声で流すようなチャンネルで、画面を見なくても良いのが一番のメリット

(選びたくなる内容は)
  本当に何でも良いけど、ライフハックとか、こういう牛丼700日食べたとかの挑戦とか、面白い感じが良い

(出かけるまでの時間がどんな時間だから、ライフハック、チャレンジ系が聴きたくなるのか)
  とりあえず楽しい気分になりたい。ニュースとかよりも面白いとか、楽しい気持ちになれるものを選ぶ傾向にある。

(朝のメディア視聴、動画を見たり聴いたりしている時間はどんな時間なのか)
  朝の時間は自分の1日のテンションを上げるような時間にしたい

(そのために必要な要素は)
  やはり動画や音楽など受け取れるので、自分はすごく楽しい、頑張ろうと思えるコンテンツを見る。東海オンエアとか読み上げ系。


 この2人に共通しているのは、1日が始まる朝、気分を上げたりテンションを上げたりすることを求めて、楽しい気分になるコンテンツを選択しているということです。それぞれ、面白いと思うコンテンツの内容は異なりますが、YouTubeの幅広いコンテンツはこうした個々の好みやニーズに応えるものとして使われていることがわかります。

 今回のインタビューからは、朝のメディア利用では「起きようと思う気持ちまでのつなぎ」だったり「テンションを上げるもの」だったり、その時々の気分に応じたコンテンツが求められているということがわかりました。
 もちろん、朝のメディア利用には情報性も重要な要素です。前述の世論調査の自由記述からも、朝は、世の中の動向や自分の関心ごとを確認し、最新の情報に更新するためにメディアに接するケースが多いことがわかっています。インタビューでも、出かける前にその日の天気や交通情報、最新のニュースをリアルタイムのテレビ放送やニュースアプリなどから得ているという声がありました。
 しかし、それだけではなく、朝の生活に寄り添うメディアとなるには、そのシーンに応じた気分を満たすということも重要だと言えるのではないでしょうか。

『放送研究と調査』2023年8月号「調査研究ノート・朝のテレビ視聴減少の背景を探る~オンラインインタビューの発言から~」では、こうしたインタビューでの発言を基に朝のメディア利用について考察しています。ぜひご覧ください。

『放送研究と調査』2023年7月号「コロナ禍以降のメディア利用の変化と,背景にある意識~「全国メディア意識世論調査・2022」の結果から~」


おススメ記事
『放送研究と調査』2023年7月号
「コロナ禍以降のメディア利用の変化と,背景にある意識~「全国メディア意識世論調査・2022」の結果から~」
https://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/20230701_5.html
『放送研究と調査』2023年8月号
「調査研究ノート 朝のテレビ視聴減少の背景を探る~オンラインインタビューの発言から~」
https://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/20230801_4.html

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【渡辺洋子】
2001年NHK入局。仙台放送局、千葉放送局でニュースなどの企画制作、国際放送局でプロモーション・調査を担当。
放送文化研究所では視聴者調査の企画・分析に従事し、国民生活時間調査は2005年から担当している。
共著『図説日本のメディア[新版]』『アフターソーシャルメディア 多すぎる情報といかに付き合うか』など。