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メディアの動き 2024年04月15日 (月)

【メディアの動き】2023年度BPO年次報告会,故ジャニー喜多川氏の性加害問題で議論

 BPOは3月22日,都内で2023年度の年次報告会を開いた。例年はその年度の委員会決定の内容を報告する場だが,今回は故ジャニー喜多川氏による性加害問題をめぐって,放送と人権について考える特別シンポジウムを開催した。

 冒頭で,BPOの大日向雅美理事長が「今回の問題を報道してこなかった放送局を取り締まるべきという意見が届いているが,BPOとしては,放送局の自律的な検証と改善の取り組みに注目し,後押ししていきたい」と述べた。

 続いて,東京大学の田中東子教授,NHK記者出身のジャーナリスト鎌田靖氏,桜美林大学の西山守准教授のパネラー3人が議論。

 田中教授は,「この問題にメディアが沈黙したことは,タレントを使ったジャニーズの支配や性暴力に寛容な日本社会といった問題が見えない状況を生み出し,間違った認識へと視聴者を方向づけた」と厳しく指摘した。

 一方,この問題を報道した『週刊文春』を1999年にジャニーズ事務所などが提訴した際,NHKの司法キャップだった鎌田氏は「『文春』は『ホモ・セクハラ疑惑』と報じていたので,放送で取り上げる話ではないと判断してしまったと思う。広くアンテナを張っていれば問題に気づけたはずで,責任は免れない」と述べた。

 西山准教授は広告専門家の立場から,人権問題に敏感なグローバル企業の例を挙げ,メディアが人権意識の変化に対応する必要性を強調した。

 この問題をめぐって今,放送局に何が求められるのか。「放送局には語る資格はないかもしれないが,語る責任がある」という田中教授の言葉が心に残った